科学技術・学術分野における国際活動の戦略的推進

OECD-文部科学省「科学の公正性確保と不正行為防止のための専門家会合」開催結果

1.目的

  OECD加盟国等における研究不正(論文の捏造、改ざん、盗用等)への対策状況について、加盟国等の行政官、専門家より紹介し、情報交換するとともに、研究不正への効果的な対策方法、研究不正の起きにくい科学システム等を探索する。(※OECD事務局によれば、OECDのような国際機関の下、このテーマで行政官、専門家が一同に会する世界初の会合である。)

2.日程

平成19年2月22日(木曜日)、23日(金曜日)

3.会場

三田共用会議所(東京)

4.主催

経済協力開発機構(OECD)、文部科学省

5.出席者

23ヶ国、3国際機関から約70名の行政官、専門家が出席。

日本からは遠藤文部科学副大臣が冒頭挨拶したほか、森口科学技術・学術政策局長、吉川科学技術・学術総括官、日本学術会議 浅島副会長、科学技術振興機構 永野理事(OECD/GSF副議長・日本政府代表)、OECD日本政府代表部 北島大使 等が出席。

参加国:

日本、韓国、米国、カナダ、オーストラリア、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スイス、オーストリア、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、ポルトガル、ポーランド、チェコ、ハンガリー(以上、OECD加盟国)、中国、インド、イスラエル、南アフリカ

参加国際機関:

経済開発協力機構(OECD)、欧州委員会(EC)、ASEAN(アセアン)事務局

<日本以外からの主な出席者>

(米国)

Nicholas Steneck

保健省研究公正局(ORI)顧問

Christine Boesz

米国国立科学財団(NSF)監察総監

(カナダ)

Nigel Lloyd

国家科学技術研究会議(NSERC)上席副会長

(豪州)

Mandy Thomas

国立オーストラリア大学副学長(研究担当)

(EU)

Peteris Zilgalvis

欧州委員会(EC)研究総局ガバナンス・倫理課長

(英国)

Andy Stainthorpe

英国生命科学研究公正委員会 委員長

(ドイツ)

Ulrike Beisiegel

ドイツ研究会議(DFG)オンブズマン

(ポルトガル)

Ligia Amancio

科学省科学技術財団副総裁

(ノルウェー)

Anne H. Nagel

国家人文社会科学研究倫理委員会 委員長

(デンマーク)

Vagn L. Hansen

科学・技術・開発省 科学的不誠実行為に関する委員会 委員

(OECD)

Michael Oborne

事務総長官房 分野横断問題担当部長

6. プログラム

2月22日(木曜日) 

 9時15分~10時

セッション1(開会) 

- 主催者挨拶
 (遠藤 文部科学副大臣)
(オボーン OECD事務総長官房分野横断問題担当部長)

- 基調講演 
(浅島 日本学術会議副会長)
(ロイド カナダ国家科学技術会議上席副会長)

10時~12時35分

セッション2(不正行為とその影響)

14時~17時40分

セッション3(不正行為の取扱い:総論)

2月23日(金曜日)

9時15分~12時20分

セッション4(不正行為の取扱い:各論)

13時45分~16時15分

セッション5(不正行為の防止と公正性の向上促進)

16時40分~17時40分

セッション6(まとめ)

7. 開催結果

概ね次のような議論がなされた。
この議論を踏まえたOECD報告書を今後とりまとめ、加盟各国政府に対して拘束力の無い形で提言することが参加者間で概ね合意され、今後最終報告書をまとめていくこととなった。

(1) 不正行為とその影響 

  • 各国における不正行為の定義を比較した結果、(文部科学省における定義と同様、)論文・データの捏造、改ざん、盗用(FFP)を不正行為として捉えることが国際的に通例であることが確認された。
  • 一方で、不正行為の周辺にも、様々な「疑わしい研究行為」(QRP:Questionable Research Practice)がある(データを過剰に解釈すること、過剰に装飾された研究提案書の作成、過剰に装飾された研究成果の発表等)。QRPは、厳密に不正な行為と言えないものの、研究の公正性を確保し、社会からの科学技術の信頼を維持していく上で、今後対策を検討していくべき懸案であるとみなしている国が多かった。
  • 不正行為の影響としては、科学の信頼性の低下が最も懸念されている。特に、不正が大きく報道されるために、ロールモデルとして科学者が認められなくなるのではないか、科学者を志す子どもが減るのではないか、といった点を懸念している国が見られた。

(2) 不正行為の取扱い 

  •  不正行為の取扱いについては、不正行為かどうかの判定を政府主導で行う北欧(デンマーク、ノルウェーなど)、政府とは独立した形で研究機関等が取り組むドイツなど、国ごとに多様な仕組みがあることが確認された。
  • 総論的に言えば、基本的には各研究機関レベルで不正行為を取り扱うという国が多い。一方で、複数の機関が関わる研究プロジェクトや、研究助成機関からの大規模な研究資金を得ている場合には、研究助成機関において不正行為を取り扱う国も見られた。
  • 国際共同研究で不正行為が発生する場合に、どう取り扱うかという問題が、欧州で議論され始めているとの報告があり、OECDなどグローバルなレベルでも不正行為の取扱いのハーモナイゼーションを検討していくべき、そのための対話を重ねるべき、との意見が多くの国から表明された。
  • 一方で、各国の研究文化や不正行為の取扱いには大きな相違があることから、「ハーモナイゼーション」は、一つのルールに統一していくという意味(equalization)ではない、と言う点で大多数の国の意見が一致した。
  • なお、不正行為対策に係る情報、ノウハウの共有のため、日中韓三カ国の行政官レベルでの対話が行われたことを日本より紹介し、国際協力の取組み事例として歓迎された。

(3) 不正行為の防止と公正性の向上促進

  •  不正行為を防止し、研究公正性を向上していくために今後重要となる視点として、ファンディングの仕組み、学会誌の編集方針、(若手)研究者の雇用・評価制度などの点が多数提起された。中でも、若手研究者、学生等の倫理教育という点が非常に重要である、と主張する国が極めて多かった。
  • 教育プログラムとしては、米国の大学でのプログラムの事例などが紹介され、先行事例として注目された。 

8. 今後のスケジュール

次のような日程が予定されている。

3月1~2日

OECD Global Science Forum会合(パリ)において開催結果を報告、最終報告書のとりまとめ方策を審議。

4月下旬

最終報告書ドラフティング会合

9月上旬迄

最終報告書とりまとめ

9月17~18日

欧州研究公正性会議(ポルトガル)において最終報告書概要を発表

10月1~2日

OECD/GSF会合(パリ)において最終報告書を報告、公表

【参考】会合の様子

遠藤副大臣と会合参加者
遠藤副大臣と会合参加者

遠藤副大臣からの冒頭挨拶
遠藤副大臣からの冒頭挨拶

お問合せ先

科学技術・学術政策局参事官(国際戦略担当)付

(科学技術・学術政策局参事官(国際戦略担当)付)

-- 登録:平成25年03月 --