基礎科学力強化総合戦略(平成21年8月4日、基礎科学力強化推進本部)

平成21年8月4日
基礎科学力強化推進本部

目次

1.基礎科学力強化の基本的認識
基本戦略
国是としての科学技術創造立国を再認識し、基礎科学力の強化に社会総がかりで取り組む

2.基礎科学力強化の進め方
戦略1
新たな研究人材養成システムを構築する
戦略2
大学院教育等の充実・強化を図る
戦略3
初等教育から高等教育まで未来を担う創造的人材を育成するとともに、国民の科学技術リテラシーを向上させる
戦略4
公的資金の拡充を目指すとともに、研究者を優先した柔軟な研究資金配分システムを構築する
戦略5
世界水準の拠点を形成するとともに、研究者の支援体制を強化する

関連施策一覧

1.基礎科学力強化の基本的認識 

基礎科学の意義:「人類の英知の創出と蓄積」と「イノベーションの創出」

 基礎科学の意義は、主として人類の英知の創出と蓄積とイノベーションを創出することにあり、人類活動の基盤となるすべての科学技術の源として重要な役割を担っている。急激かつ大規模に社会経済の革新が進む国際情勢の中で、科学技術創造立国を目指す我が国にとって、基礎科学の振興は諸外国以上に重要な課題である。
 「人類の英知の創出と蓄積」と「イノベーションの創出」は、ときに対立的な概念として捉えられる場合があるが、両者は対立的な構造ではなく、多様な連続性の中で包括的に捉えられるべきである。
 基礎科学の具体的な推進方策については、それぞれの特質や関係を踏まえて検討を行う。

基礎科学の特徴を踏まえた独創的・創造的な研究風土の醸成

 基礎科学の進展には、研究の継続発展とともに、前衛的な個人の発想などが不可欠であり、一般に高度に専門性が高く、成果が直ちに見えにくいなどの特徴がある。このため、研究活動の展開に当たっては、短期的な成果を求めることなく、じっくりと考え継続的に研究に専念することも必要である。
 また、「基礎科学力強化に向けた提言」(平成21年8月4日 基礎科学力強化委員会)(以下「提言」という。)で指摘されているように、「基礎科学は新しい発見や価値を生み出すことから、その担い手たる科学者には高い『志』が不可欠であり、同時に高い責任感、倫理観を持つことが求められる」ことについて認識を深めることが必要である。
 さらに、提言では、若手研究者の研究の方向性や進め方について、「厳しさだけではなく、寛容の精神も持ち、見守る姿勢が求められる」と指摘されていることから、各研究機関においては、真摯で徹底的な議論を行い、創造性豊かな若手研究者の自由な発想が具体化するような研究風土が必要である。
 研究評価については、提言において「評価の基準設定が難しいが、非連続的飛躍をもたらす萌芽を摘み取ってはならず、多数決評価、数値的評価が常に適切とは限らない。一定の論文数を求めることは望ましくない。『発見は計画できない』との認識が必要である。」との指摘がなされているように、研究をやりぬく力や努力を重視する研究風土を醸成することが重要である。
 さらに、提言においては「そうした風土を徹底させるため、研究者の社会だけでなく、我が国の社会全体の意識改革が重要である」ことも指摘されている。
 このような認識に基づき、基礎科学の特徴を踏まえて、我が国全体に独創的かつ創造的な研究風土を醸成する。

基本戦略:
国是としての科学技術創造立国を再認識し、基礎科学力の強化に社会総がかりで取り組む

【基礎科学力の強化による科学技術の振興】

 現下の金融経済危機のもと、世界規模での価値観の変革が進行し、人類の将来に対する不透明感が漂っている。
 こうした状況下において、我が国として、科学の知見に基づいて持続的発展を図るとともに、人類の未来に貢献するためには、国是としての科学技術創造立国の意義を再認識し、科学技術の振興に「社会総がかり」で強力に取り組む必要がある。
 また、多極化する国際情勢の中で、我が国が今後とも世界をリードする主要国として発展し、国民生活の一層の向上を図るには、世界水準にある科学技術の一層の振興を積極的に推進することが必要である。
 特に、基礎科学は、真理の探求により人類の根源知としての文化的価値を生み出し、人類の存続に係る諸課題を解決するとともに、イノベーションにより新たな価値や技術を創造し社会経済の発展の源泉として大きな役割を果たすものであり、基礎科学力の強化の重要性はますます増大している。

【総合的かつ体系的な基礎科学力強化策の展開】

 このため、平成21年を「基礎科学力強化年」と位置づけ、提言を踏まえ、「基礎科学力強化総合戦略」を策定する。
 提言では、「昨年の4名のノーベル賞受賞は我が国の基礎科学の水準の高さを世界に示したが、現在の我が国の状況は十分な世界水準にあるとは言えない。」との指摘がなされていることから、「基礎科学力強化総合戦略」においては、大学院教育等の充実・強化や初等中等教育における理数教育の充実を含めた人材育成、研究環境の整備、研究拠点の整備、研究システムの改善、さらには創造的な研究風土の醸成とその確実な定着までを包括した総合的かつ体系的な基礎科学力強化策の展開を図る。

【必要な公的投資の拡充】

 その際、提言では「第4期科学技術基本計画期間最終年度の平成27年度までの科学技術関係経費の総額の投資目標を設定するとともに、高等教育に対する公財政投資がOECD加盟国平均で対GDP比1.1%であるのに対し、我が国はOECD加盟国最低の対GDP比0.5%であることを踏まえ、高等教育の投資目標についても設定すべき」と指摘されていることから、必要な公的投資の拡充の在り方について検討を行う。

【基礎科学力強化の実現に向けて】

 今後の基礎科学力強化策の推進のため、以下の戦略のもとに具体策の実行を図る。「2.基礎科学力強化の進め方」において、各戦略実現のための考え方及び今後の課題を示すとともに、その実現に向けて特に当面重点的に取り組むべき施策を「重点施策」として示す。

戦略1:
新たな研究人材養成システムを構築する
戦略2:
大学院教育等の充実・強化を図る
戦略3:
初等教育から高等教育まで未来を担う創造的人材を育成するとともに、国民の科学技術リテラシーを向上させる
戦略4:
公的資金の拡充を目指すとともに、研究者を優先した柔軟な研究資金配分システムを構築する
戦略5:
世界水準の拠点を形成するとともに、研究者の支援体制を強化する

 提言を踏まえ、引き続き基礎科学力強化に向けて検討が必要な課題については、科学技術・学術審議会又は中央教育審議会の関係分科会等での調査審議を求め、早期の実現を図る。特に、第4期科学技術基本計画に盛り込むべき提案については、科学技術・学術審議会基本計画特別委員会で取りまとめる。

2.基礎科学力強化の進め方

戦略1:
新たな研究人材養成システムを構築する

【基本的な考え方】

 個性的で豊かな創造性を有し、挑戦し、「やりぬく力」のある基礎科学を担う人材の養成が必要である。そのためには、単にその人材の出現を待つのではなく、独創性や創造性等の能力を見出すための機会を提供することにより、「出る杭を最大限に伸ばし育てる」ことを基本として人材を見出し養成することが必要である。
 特に、国際的な頭脳獲得競争の激化による人材の流動性が高まる中、我が国が研究者にとって国際的に魅力ある国であることが必要であり、まず、国内の研究人材養成について創造性を伸ばす新たなシステムに転換する必要がある。
 新たな人材養成システムにおいては、研究活動をリードする優秀で創造的な人材の養成に社会総がかりで取り組むことが必要である。提言に指摘されているように、「研究体制は博士号取得者を主体として構成することを基本とする。」ことを念頭に置いた場合、特に、大学院における教育において、専門分野を核として包括的な基礎科学力を身につけることを通じて研究能力の涵養を図りつつ、自らの力で独創的な博士論文のテーマを開拓し、研究活動を実行すること等により、自立して創造的研究を行える人材を育成することが求められる。
 また、教養豊かなイノベーション人材の養成システムにおいては、人材育成の優れた取組や実績を適正に評価する視点が重要である。
 さらに、提言では「大学においては、人員構成を若手が多いピラミッド型に改善し若手研究者のポストの確保に努めるとともに、企業、行政分野等へのキャリアパスについても国際的な知識基盤社会の動向を見据えなければならない」との指摘がなされていることを踏まえ、能力主義を徹底し、企業等のニーズを踏まえ、修士課程修了後、博士課程修了後、ポストドクターの各段階で柔軟に就職できるシステムを構築することが必要である。

【今後の課題】

1.研究人材の当面の資質向上
  • 若手研究者が新たな知識やスキルを身に付けるとともに、思考方法や発想の転換が得られるよう、また、人脈等を通じた国際的情報ネットワークを拡げるため、海外の大学、研究機関への若手研究者等の派遣を促進する。
  • ノーベル賞受賞者等の著名な研究者との交流やアカデミックな文化に触れる機会を通じて研究意欲を触発するため、優秀な若手研究人材等の海外研鑽機会を充実させる。
  • プロジェクト型研究開発の中核を担う牽引力のあるリーダーを育成するため、企業研究者が教育に関与したり、企業等の研究拠点で、企業の研究者、大学教員と博士課程の学生等のチームが、実践的な課題解決型の演習を行ったりするなどの取組を支援する。
  • 創造性を磨くとともに、研究の「ひらめき」や知的触発が得られるよう異分野交流の促進を図るべく、若手研究者に対する産学官による研修機会を設けるともに、世界最先端の実験施設を若手研究者の触発の場として活用するよう支援する。
  • 海外研鑽や異分野交流、知的触発等を通じて若手研究者のコミュニケーション能力やプレゼンテーション能力を培う取組を支援する。
2.研究人材のキャリアパスの構築
  • 博士号取得後の若手研究者を対象とし、公正で透明性の高い選抜により、早期に自立して切磋琢磨しつつ研究できる環境を提供し、独創的な研究活動を通じて素質を伸ばす研究人材養成システムを構築し、普及・定着させる。
  • より多くの優秀な学生を博士課程に進学させるため、アカデミアとノンアカデミアなど多様な場を見据えて、博士号取得後のキャリアパスを明確に示すとともに、ノンアカデミアからアカデミアへの異動やアカデミアからノンアカデミアへの異動といった進路の多様化・柔軟化・双方向化を図る取組を支援する。
  • ポストドクターが自立して研究に専念できるようにするとともに、出産、育児による研究中断からの復帰を支援する。
  • 企業として博士号取得者に求める研究能力・水準を明確に示すことを促すとともに、企業研究者が大学教授になる、大学教員を企業へ派遣するなど産学の人事交流を活発化し、企業側の基礎科学に対する理解を高め、併せて博士号取得者の実践力向上を図る取組を支援する。
  • 国の科学技術政策に直結した研究開発や、国・アカデミーと社会・企業との間をつなぐ重要な役割を果たしている研究開発型独立行政法人の特長を活用して、目標達成型ないし領域設定型の研究プロジェクトのプロジェクトリーダー、高い専門性を有するエンジニア、研究開発の実施に必要なフロント人材など、研究開発を直接行う者だけでなく、幅広い人材のキャリアパスの構築に注力する。
  • 多様な視点や発想を取り入れた研究活動を活性化するためには、女性、外国人研究者などの多様性が不可欠であることから、大学等においてそのような人材が働きやすい環境を整備する。
  • 特に女性研究者の活躍促進にあたっては、研究と出産・育児等を両立できる環境の整備や女性研究者の採用促進はもとより、女性研究者支援に係る数値目標の設定など具体的な計画を示し、一層の取組に努める。

【重点施策】

若手研究人材養成総合プラン(仮称)」の推進

 若手研究者の養成に関連する以下の支援策について政策連携し、総合的に取り組む「若手研究人材養成総合プラン(仮称)」を推進する。

○ 若手の自立と活躍の場の確保

  • 「特別研究員事業」
     日本学術振興会の特別研究員事業の支援を充実し、対象となる研究者の拡大を図る。
  • 「若手研究者を活用した研究システムの改革支援事業(仮称)」
     特色ある優れた研究活動を展開する大学、大学共同利用機関等において、更なる飛躍を図るため、優れた研究活動に博士課程学生やポストドクターを参画させ、また、ポストドクター等の高度専門人材を活用した研究マネジメント体制及び組織横断型の研究・技術支援チームを整備することにより、若手研究者を活用した研究推進と人材育成を一体的に行う研究システムを構築するための取組を積極的に支援する。
  • 「若手研究者の自立的研究環境整備促進」(科学技術振興調整費)
     若手研究者が自立して研究できる環境の整備を促進するため、世界的研究拠点を目指す研究機関において、テニュア・トラック制に基づき、若手研究者に競争的環境の中で自立と活躍の機会を与える仕組みの導入を図る。

○若手による挑戦的・独創的な研究の推進

  • 「科学研究費補助金(若手研究)」等
     「若手研究」等科学研究費補助金による若手研究者向けの研究費の充実を図るとともに、若手研究者が、「若手研究」から科学研究費補助金の中核的な研究種目である「基盤研究」へと円滑に移行できるよう支援するため、「基盤研究」の充実を図る。
  • 「戦略的創造研究推進事業(さきがけ)」
     戦略的創造研究推進事業で若手研究者の応募が中心となる「さきがけ」の充実を図る。また、優秀な博士課程学生を研究に専念させる環境を整備し、優れた研究者として養成することを目的として、博士課程学生のRA(リサーチアシスタント)としての雇用を推進する。

○ 積極的な海外派遣による武者修行の奨励

  • 「若手研究者海外派遣事業」
     独立行政法人日本学術振興会の研究者海外派遣基金を活用し、平成25年度までの5年間で、1.5万人から3万人の優れた若手研究者、大学院生、大学生を海外の大学や研究機関に派遣する。
  • 「海外特別研究員事業」
     優れた若手研究者が、海外の大学等研究機関において、自らの研究計画に基づき長期間研究に専念できるよう支援することにより、我が国の学術の将来を担う国際的視野に富む有能な研究者を養成・確保する。

○ 牽引力のある研究人材の養成

  • 「高度研究開発リーダー育成事業(仮称)」
     産業界のイノベーション創出に不可欠な「チーム力」を最大化できる研究開発のリーダーを育成するため、博士課程学生や教員がチームを組み、企業等において、企業等が提示する実践的な課題演習を行う等の取組を支援する。
  • 「イノベーション創出若手研究人材養成」(科学技術振興調整費)
     イノベーション創出の中核となる若手研究人材が、狭い学問分野の専門能力だけでなく、国内外の多様な場で創造的な成果を生み出す能力を身につけられる研究人材養成システムの構築を支援する。

戦略2:
大学院教育等の充実・強化を図る

【基本的な考え方】

 科学技術に基づくグローバルな知識基盤社会の時代に、志ある最も優れた若者たちを、最高の知の府たる大学院で、世界水準で最高の基礎科学研究者及び関連知識人に育成することが必要である。
 アジア諸国は博士課程を中心に大学院生の拡充を図っている。少子高齢化が進む中、我が国の将来を支える人材を育成する上で、大学院の役割は極めて重要であり、その質の向上を確保した上で、科学技術を担う分野については、国際的に遜色ない量的な水準を目指し、国際競争力を高めることが必要不可欠である。
 このため、国の基本的な方針の下に、修士課程、博士課程の在り方を検討し、大学院教育等の充実・強化を図るとともに、それに必要な公的財政支援の拡充に向けて取り組むほか、必要な大学側の意識改革を進めることが必要である。

【今後の課題】

1.大学院教育の充実・強化
  •  世界に誇れる教育研究拠点の形成を図るため、大学院への人的、物的資源の集中投資を行い、国内外の優秀な学生・研究者に開かれた強い大学院を目指して、学問の変化に柔軟に対応できる体制を構築する。
  •  海外の大学、研究機関への若手研究者の派遣を促進する。
  •  大学院のコースワークの在り方、Comprehensive Exam(包括的基礎力の確認)とQualifier(論文着手前審査)の導入など大学院教育の質の向上の促進策を推進する。
  •  中央教育審議会において、人口動態のみならず、産業界など社会的な需要動向や国際的な競争力の確保等について総合的に勘案しながら、学問分野別・学位レベル別の大学院の規模の在り方を検討することについて議論が行われていることも踏まえ、今後必要な検討を行う。
  •  教育理念と目標、教育内容、さらに経済支援の具体的内容を国の内外の学生に対して、「入学試験前」に開示するとともに、大学院の選考方法や時期の見直しなどを図る取組を促進する。
  •  学生が将来の経済的な見通しを予め立て、安心して学習や研究に打ち込めるよう、進学に係る「ファイナンシャルプラン」を計画できるようにする取組を大学等へ促す。
  •  教育の機会均等を図る観点から、授業料や入学金の負担軽減を図るとともに、奨学金貸与人員の増を図るなど、家計に応じたきめ細かな負担軽減策を講ずる。
  •  高度の人材育成の観点から、TA(ティーチングアシスタント)やRA(リサーチアシスタント)等を活用した実質的給与型の経済的支援やフェローシップの拡充に向けて取り組む。
  •  現行のいわゆる「論文博士」について、企業、公的研究機関の研究所等での研究成果を基に博士の学位を取得したいと希望する者もいまだ多いことなども踏まえつつ、学位に関する国際的な考え方や課程制大学院制度の趣旨などを念頭にその在り方を検討する。
  •  企業等における研究能力の向上とともに産学官の人材交流を促進するため、企業や研究開発型独立行政法人などの社会人研究者が、博士課程で研究能力を向上させるとともに、博士号を取得しやすい環境に配慮した社会人コースの普及を図る。
  •  大学と産業界との連携による実践的・体系的カリキュラム開発などの取組を支援する。

2.大学における教育研究の充実
  •  大学自らがその果たすべき機能を明確にしたうえで、機能別分化していくことを促進する。
  •  各大学における教員評価について、論文数など研究面の評価に加え、教育活動の適正な評価を実施することが必要であることから、評価の際、教員の教育活動の客観的把握を行うとともに、可視化を図ることを促進する。
  •  基礎科学においては、自然科学に留まらず、人文、社会、芸術などの異分野を学ぶことが研究者自身の専門分野での一層の能力の発揮につながることから、学問分野間の様々な連携の取組を促進する。
  •  優秀な研究人材の養成のため、入試の在り方も含めた入学段階における学生の基礎的な能力を確認する方策を検討するとともに、国内外からの優秀な学生を獲得するための受入れ方策やそのための環境づくりについて検討する。
  •  各大学が国内外から優秀な学生や教員、研究者を獲得しやすい環境を整えるよう、留学生や外国人研究者の生活環境の整備や支援、英語の授業の導入や日本語指導の充実、ダブルディグリー、短期履修コースの導入を図るなど、各大学等における優秀な人材の受入れに向けた取組を支援する。
  •  若手研究者の登用ポストの拡充に向けて取り組むなど、切磋琢磨する環境づくりを行うよう促す。
  •  大学と社会との関わりがより深くなっていることから、各大学における産学連携機能や社会連携機能を強化するために必要な人材の育成・確保を図る取組を支援する。

【重点施策】

大学院生への経済的支援等大学院教育の充実 

○ 大学等の国際化の推進

  • 「国際化拠点整備事業(グローバル30)」
     英語による授業等の実施体制の構築や留学生受入れに関する体制の整備、戦略的な国際連携の推進など我が国を代表する国際化拠点の形成の取組を選定し、重点的に支援する。

○ 経済的支援等による大学院教育の充実

  • 競争的研究資金におけるTA・RAの雇用促進
     大学院に対する競争的研究資金において、TA(ティーチングアシスタント)、RA(リサーチアシスタント)の雇用を促進する。
  • 大学院生に対するTA等の経済的支援の強化
     TA等を通じた実験・実習・フィールドワーク等への大学院生の参加を促進する取組や、高度な教育活動を実施する教員を支援する取組を実施する大学院を支援する。

○ 教育研究支援体制の整備

  • 「教育研究高度化のための支援体制整備事業」
     大学内で教育研究プロジェクトに関わる大学教員・研究者、博士課程学生等が安心して教育研究に専念できるよう、教育研究業務やプロジェクトマネジメント等を支援する体制を整備する。 

戦略3:
初等教育から高等教育まで未来を担う創造的人材を育成するとともに、国民の科学技術リテラシーを向上させる

【基本的な考え方】

 小学校から大学までの各学校段階における理数教育等の充実を図るとともに、それぞれの取組を全体で関連づけて創造性豊かな人材を育成する仕組みを構築することが必要である。
 また、創造性豊かな人材を育成するためには、社会において科学技術に関する関心が共有されていることが重要であることから、科学技術に関する社会のリテラシーの向上を図ることが必要である。

【今後の課題】

1.初等中等教育における取組の充実
  •  青少年自然の家を活用し自然を探求することなどを通じ、子ども達が科学技術に興味を抱くよう、地域の指導者や関係者の科学技術に対する理解を一層深めるとともに、保護者の啓発を図る。
  •  小学校から大学までの各学校段階を通じ、知的好奇心の醸成、想像力の伸長、科学的素養や科学的な疑問を持ち考え抜く力の育成、科学に携わることへの関心と意欲の喚起など、将来の研究者たる若者を育成する仕組みを構築し、知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成のバランスのとれた教育の充実を図る。
  •  人材の育成には文化的教養が不可欠であり、文化的教養と科学的教養のバランスのとれた教育の充実を図る。
  •  「出る杭を見出し、伸ばし、育てる」ため、科学者や技術者などの外部人材を学校で活用し、理数好きの子ども達の裾野を広げつつ、才能豊かな子どもに高度な内容を学ぶ機会を提供する取組に対する支援を充実する。併せて、科学技術コンテストや科学部活動に対する支援を充実する。
  •  科学に興味を持つ子どもが、その個性に応じて、大学等の進路を適切に選択する能力を育成するため、キャリア教育を一層推進するとともに、進路選択に関する保護者の理解の促進を図る。
  •  企業や研究開発型独立行政法人等の研究者で初等中等教育等の教職を希望する者に対し特別免許状制度の活用を促すとともに、現職教員が最先端の科学技術と、それらの社会との関連に関する知識を得る研修機会の充実を図る。
  •  子どもの教育に意欲のある優秀なポストドクター等の学校教育への参加を促すため、大学や教育委員会等が連携して、優れた理科教育人材の発掘を行い、教員の理科教育の指導力向上につながるカリキュラムの開発に取り組む。
  •  数学、理科の教育について、教科書の充実や、観察・実験の充実を図るなど、改善に取り組む。
  •  「スーパーサイエンスハイスクール」の拡充に向けて取り組む。また、研究開発学校制度を活用して新たな理数教育の取組を推進するとともに、専門学科・総合学科や中高一貫教育制度などの活用による優れた理数教育の取組を支援する。

2.高等教育における取組の充実
  • 社会を支える科学技術を俯瞰的に理解する能力を身につけることができるよう、学生が多くの学問分野や異分野への接触を深めるとともに、異分野の人材との交流の機会を得られるような取組を促す。
  • 科学技術に対する意欲のある学生が、その能力を十分に伸ばせるような取組を強化する。
  • 意欲ある優れた理学・工学分野の博士課程修了者やポストドクターが初等中等教育段階の教員として活躍できるような機会の充実、理数系科目の教材、指導方法の開発やこれを行う施設・設備の充実など、理数教育の支援機能の強化を図る大学の取組を支援する。
  • 魅力ある理科授業を行うことができる理数系教員を養成するための取組を強化する。

3.科学技術リテラシーの向上
  • 科学技術と社会との橋渡しを行い、社会におけるリテラシーを高める「科学技術コミュニケーター」の養成・確保を図る。
  • 科学研究費補助金による研究成果を国民にわかりやすく説明するような取組を強化する。
  • 日本科学未来館や科学館など地域の身近な場で行われる科学技術コミュニケーション活動の充実や、科学技術に関する親子フォーラムの開催など、保護者の科学技術に対する興味・関心や素養を高める取組を支援する。

【重点施策】

子どもたちの理科・数学に対する興味・関心の喚起と能力の伸長及び国民の科学技術リテラシーの向上

○ 才能を見出し伸ばす取組の充実

  • 「スーパーサイエンスハイスクール」
     先進的な理数教育等を実施する高等学校等を「スーパーサイエンスハイスクール」として指定し、観察・実験等を通じた体験的・問題解決的な学習や課題研究の推進、理数に重点を置いたカリキュラムの実施等を支援する。
  • 「国際科学技術コンテスト支援事業」
     高校生等の理数科目や科学技術に対する興味・関心や目標意識、意欲・能力を高め、科学技術をリードする人材を育成するため、国際科学技術コンテストの国内大会開催や国際大会への日本代表選手の派遣、国際大会の日本開催に対する支援を行うとともに、大会受賞者間のネットワーク形成等を支援する。

○ 初等中等教育における理数教育の基盤の強化

  • 「大学の教職課程を中心とした理科教育の充実事業(仮称)」
     教職課程における理科教育指導法の体系を検討し理科教育指導力向上等につながるカリキュラムの研究開発、現職教員が持続的に資質向上を図るための仕組みづくりや資質向上モデルの確立等を、大学が各都道府県教育委員会等と連携して行う。また、子どもの教育に意欲のあるポストドクター等を教育界に招き入れるため、各都道府県教育委員会等の協力を得て、人材リストの作成、特別非常勤講師としての活用などを通じ て、潜在的な理科教育人材の発掘・供給システムを構築する。

○ 理数好きな児童生徒の裾野の拡大

  • 「理数系教員養成拠点構築事業」
     大学や大学院が、教育委員会と連携して、理数に優れた指導力を有し各学校や地域の理数指導において中核的役割を果たす小・中学校教員(コア・サイエンス・ティーチャー)を養成するための取組を支援する。

○ 大学等における取組の強化

  • 「未来の科学者養成講座」
     理数に関して卓越した意欲・能力を有する児童生徒をさらに伸ばすことに重点を置き、大学レベルも視野に入れた高度で発展的な学習環境を年間を通して継続的に提供する大学や高等専門学校の取組を支援する。

○ 科学技術に関する国民とのコミュニケーションの強化

  • 「地域科学コミュニケーション連携推進事業」
     地域における科学技術コミュニケーション活動を促進させるため、日本科学未来館のノウハウや科学コミュニケーターを活用して、地方の科学館の活動を支援する。

戦略4:
公的資金の拡充を目指すとともに、研究者を優先した柔軟な研究資金配分システムを構築する

【基本的な考え方】

 近時の未曾有の経済危機のなか、研究活動全般の発展に向けて、経済危機だからこそ未来への投資として高等教育や基礎科学を含めた科学技術への政府研究開発投資の拡充を目指す。
 また、研究資金の配分については、研究者を優先した柔軟性のある制度改善が必要である。具体的には、年度をまたぐ予算執行、評価や提出書類の簡素化による研究者の負担軽減等の執行の柔軟化を図ることが必要であり、特に競争的研究資金については制度の趣旨や目的に応じて、そのための方策を検討することが必要である。

【今後の課題】

1.公的資金の確保
  • 日本経済の再生のためには、国際水準を凌ぐ科学技術及び高等教育が不可欠であるとの認識を深めるため、国民への理解増進活動を強化する。
  • 国立大学、私立大学、研究開発型独立行政法人等の基盤的経費を確実に措置しつつ、各種の競争的研究資金の拡充に向けて取り組む。
  • 特に、研究者の自由な発想に基づく研究を支援する科学研究費補助金は、基礎科学力強化に極めて重要な役割を果たしているが、近年、伸び率が鈍化し、結果として直接経費が減っていることから、更なる拡充に向けて取り組む。
  • 政策に基づき将来の応用を目指す基礎研究についても、基礎科学力強化にきわめて重要な役割を果たしていることから、更なる推進を図る。
  • 大学、研究開発型独立行政法人等における民間資金の一層の活用を図るため、大学等に対する寄附や共同研究等についての税制上の優遇措置の充実について検討する。

2.研究費の配分
  • 競争的研究資金について、研究者に着目した配分制度、優れた若手研究人材を発掘し配分する制度、中堅の研究者への配分など、バランスとメリハリを両立した制度改善を図る。
  • 自然科学系や人文社会系などの分野、ビックサイエンスとスモールサイエンスについて、性格の違い、研究の多様性等を考慮したきめ細かなファンディングの仕組みを構築する。
  • 応用可能性とともに将来的な発展可能性を重視した評価を行いつつ、研究期間の長期化や切れ目のない研究支援を可能とする仕組みを構築する。

【重点施策】

公的資金の拡充と運用改善 

○ 大学、研究開発型独立行政法人等の基盤的経費の確実な措置
 大学等の教育研究活動を継続的・安定的に支えるために必要な国立大学法人運営費交付金、国立大学法人施設整備費補助金、私立大学等経常費補助金や、国が備えるべき研究開発機能の中核的な担い手である研究開発型独立行政法人の運営費交付金等の基盤的経費を確実に措置することにより、大学等の教育研究や研究開発型独立行政法人の研究開発等の充実と活性化を図る。

○ 公的研究資金の拡充と運用改善

  • 「戦略的基礎科学研究強化プログラム(仮称)」
     我が国の基礎科学力の強化を通じ、継続的に革新的なイノベーション創出を図るため、傑出した成果を出しうる潜在能力を持つ研究者を厳選して、長期間(最長10年)に支援することにより、基礎科学における世界的な研究成果の創出を図る。
  • 「科学研究費補助金」
     研究者の自由な発想に基づく研究を支援する科学研究費補助金の充実 を図るとともに、研究者にとってより使いやすい制度を目指した改善を引き続き進めることにより、重厚で質の高い知的資産の蓄積を図る。
  • 「戦略的創造研究推進事業」
     国の政策目標の実現に向けた目的基礎研究を推進する戦略的創造研究推進事業の充実を図り、今後の科学技術イノベーションの創出につながる社会・経済ニーズに対応した新技術の創出を図る。

○ 「最先端研究開発支援プログラム」
 総合科学技術会議の運用方針に基づいて、独立行政法人日本学術振興会の先端研究助成基金の柔軟かつ適正な運用を着実に実施する。

戦略5:
世界水準の拠点を形成するとともに、研究者の支援体制を強化する

【基本的な考え方】

 基礎科学力は、すべての科学技術の礎であり、我が国が得意な分野や相対的優位にある分野に加え、不得意な分野や相対的劣位にある分野についても、当該分野の研究の振興を戦略的に進めることが必要である。
 しかしながら、我が国は研究者への支援機能が欧米と比べ著しく劣っており、研究支援機能の充実・強化が必要である。特に、我が国が不得意であるが重要な分野については、早急に計画的な取組に着手すべきである。
 実験系の基礎科学力の成果は、大型研究施設等の研究インフラに大きく依存するものであり、国際協力等を活用しつつ、国内研究活動との一体的戦略の下、整備を進めることが重要である。
 また、オープンイノベーションが進む中、基礎科学分野における大学等と産業界との連携・協働を一層推進することが必要である。
 さらに、研究ポテンシャルを糾合した研究拠点の整備や、また、真に優秀な外国人研究者を受け入れ、定着させるなどグローバル化が必要である。

【今後の課題】

1.研究拠点の整備
  • 世界の第一線の研究者が結集する優れた研究環境と高い研究水準を誇る世界トップレベルの研究拠点の形成を推進するため、その拡充を目指すとともに、各拠点におけるシステム改革の持続・発展を図る。
  • 先端的研究に不可欠な各種の大規模な研究施設・設備の整備について、研究施設の共同設置を含め国際協力を推進する。ただし、我が国が得意とする分野については、国内研究活動と一体的に研究を進展させるとともに、強化すべき分野について関連する研究活動を総合的に振興する観点から、必要な研究施設・設備は国内整備を基本として取り組む。
  • 研究基盤施設については、施設の整備後も、技術支援者の適切な配置や運営費の確実な確保、共用の促進等、施設能力の最大限の活用を図る。
  • 国家として取り組むべき基礎研究の推進のため、研究ポテンシャルの結集、研究課題に応じた柔軟な研究体制の構築、優れた中心研究者と有能な責任者(マネージング・ディレクター)の登用を促進する仕組みを構築する。

2.研究体制の整備
  • 教員や研究者が教育研究により専念できるよう、研究資源・時間を最大限効率的に活用する教育研究支援体制(研究支援者、技術支援者等の育成・確保を含む。)を充実・強化する。
  • 基礎研究の成果について、研究データベースの構築、ネットワークの整備等を通じて研究者間で情報共有するとともに、産業界の現場での知見や視点を基礎研究に反映する仕組みとして、共同研究、研究人材の交流を促進する。
  • 大学においては、学術研究の新領域、新たな学際領域への発展が重要であり、社会的課題等について異分野交流を促進するための仕組みを構築する。
  • 研究開発型独立行政法人においては、国の戦略目標を効果的に達成するため、研究開発体制やシステムの改革に積極的に取り組み、新たな研究開発モデルを提示する。

3.グローバル化の推進
  • 世界最高水準の人材の積極的な確保、我が国の研究者との切磋琢磨、受入れ研究機関等における研究環境の国際化などのため、優れた外国人研究者の招へい制度の充実を図る。
  • 大学等研究機関における国際専門スタッフの養成・確保及び外国人研究者の生活環境や家族のケアなど周辺環境の国際化を推進する。

【重点施策】

世界水準の拠点形成と研究支援強化 

○ 世界的水準の研究開発拠点の形成

  • 「世界トップレベル研究拠点(WPI)プログラム」
     世界の第一線の研究者が結集する優れた研究環境と高い研究水準を誇る世界トップレベルの研究拠点の形成を推進するため、その拡充を目指すとともに、各拠点におけるグローバルスタンダードに相応しい先進的 なシステム改革の持続・発展を図る。このような取組により、外国人が日本であげた業績によりノーベル賞を受賞する状況の実現を目指す。

○ 研究支援体制の充実・強化

  • 「若手研究者を活用した研究システムの改革支援事業(仮称)」(再掲)
     特色ある優れた研究活動を展開する大学、大学共同利用機関等において、更なる飛躍を図るため、優れた研究活動に博士課程学生やポストドクターを参画させ、また、ポストドクター等の高度専門人材を活用した研究マネジメント体制及び組織横断型の研究・技術支援チームを整備することにより、若手研究者を活用した研究推進と人材育成を一体的に行う研究システムを構築するための取組を積極的に支援する。
  • 「先端研究施設共用促進事業」
     研究開発施設等を保有する大学等に技術指導研究員の配置等を行い、産学官への共用及び施設等を活用した共同研究を促進する。これにより、施設等設置機関の研究支援体制の強化を図る。

○ 教育研究支援体制の整備【再掲】

  • 「教育研究高度化のための支援体制整備事業」
     大学内で教育研究プロジェクトに関わる大学教員・研究者、博士課程学生等が安心して教育研究に専念できるよう、教育研究業務やプロジェクトマネジメント等を支援する体制を整備する。

○ グローバル化の推進

  • 「科学技術外交の基盤をなす人材強化・環境整備推進事業(仮称)」
     科学技術外交を強化するため、その基盤となる大学等研究機関、国際活動を推進する機関、それらの海外拠点等において、国際関係業務に従事する人材の育成・確保を図る。また、我が国における研究拠点への外国からの研究者受入れのため、周辺環境の国際化を推進する。
  • 「組織的研究者招へいプログラム(仮称)」
     様々なキャリアステージにある海外の研究者を包括的に招へいすることにより、大学等研究機関における研究活動の推進とそれを通じた若手研究者の養成、さらに当該機関の研究環境の一層の国際化を図る。

【関連施策一覧】 

戦略1:
新たな研究人材養成システムを構築する

○ 若手の自立と活躍の場の確保

  • 「特別研究員事業」【重点】
     日本学術振興会の特別研究員事業の支援を充実し、対象となる研究者の拡大を図る。
  • 「若手研究者を活用した研究システムの改革支援事業(仮称)」【重点】
     特色ある優れた研究活動を展開する大学、大学共同利用機関等において、更なる飛躍を図るため、優れた研究活動に博士課程学生やポストドクターを参画させ、また、ポストドクター等の高度専門人材を活用した研究マネジメント体制及び組織横断型の研究・技術支援チームを整備することにより、若手研究者を活用した研究推進と人材育成を一体的に行う研究システムを構築するための取組を積極的に支援する。
  • 「若手研究者の自立的研究環境整備促進」(科学技術振興調整費)【重点】
     若手研究者が自立して研究できる環境の整備を促進するため、世界的研究拠点を目指す研究機関において、テニュア・トラック制に基づき、若手研究者に競争的環境の中で自立と活躍の機会を与える仕組みの導入を図る。
  • 「独立主幹研究員制度」
     優れた若手研究者に独立行政法人理化学研究所で独創的な研究を独立して行う機会を提供し、研究ユニットを主宰する研究リーダーとして新たな研究領域を開拓していくことを支援する。平成21年度からは、外国籍研究者を研究リーダーとして迎えることで、研究環境を含め国際的競争力を高めることを目指す。
  • 「基礎科学特別研究員制度」
     独立行政法人理化学研究所において独創性に富んだ若手研究者に自発的かつ主体的に研究できる場を提供し、独創的・基礎研究を推進するとともに、研究分野の拡大を図る。また、新規採用者の3分の1程度を外国籍研究者とし、国際的競争力の更なる向上を図る。
  • 「ジュニア・リサーチ・アソシエイト制度」
     知識と経験を豊富に蓄積した研究者と柔軟な発想と活力に富む若手研究者とが一体的に創造的・基礎研究を推進するため、独立行政法人理化学研究所において国内外の大学院博士課程に在籍する若手研究人材を非常勤的に導入し、研究を展開する。
     また、学生を対象とした研究発表や異分野間交流の機会を設け、柔軟かつ総合力のある人材の育成に資する。
  • 「NIMSジュニア研究員制度」
     主として連係大学院制度を活用し、独立行政法人物質・材料研究機構(NIMS)で研究活動を行う国内外の大学院生を任期制研究員として雇用し、学位論文研究とは別に、NIMSで行われている最先端の研究現場に参加させ、研究活動を行わせる。
     また、学生による英語でのセミナーを企画する等、国際的な研究現場での経験を通じて、物質・材料科学分野における高度な研究型職業人を養成する。

○ 若手による挑戦的・独創的な研究の推進

  • 「科学研究費補助金(若手研究)」等【重点】
     「若手研究」等科学研究費補助金による若手研究者向けの研究費の充実を図るとともに、若手研究者が、「若手研究」から科学研究費補助金の中核的な研究種目である「基盤研究」へと円滑に移行できるよう支援するため、「基盤研究」の充実を図る。
  • 「戦略的創造研究推進事業(さきがけ)」【重点】
     戦略的創造研究推進事業で若手研究者の応募が中心となる「さきがけ」の充実を図る。また、優秀な博士課程学生を研究に専念させる環境を整備し、優れた研究者として養成することを目的として、博士課程学生のRA(リサーチアシスタント)としての雇用を推進する。

○ 積極的な海外派遣による武者修行の奨励

  • 「若手研究者海外派遣事業」【重点】
     独立行政法人日本学術振興会の研究者海外派遣基金を活用し、平成25年度までの5年間で、1.5万人から3万人の優れた若手研究者、大学院生、大学生を海外の大学や研究機関に派遣する。
  • 「海外特別研究員事業」【重点】
     優れた若手研究者が、海外の大学等研究機関において、自らの研究計画に基づき長期間研究に専念できるよう支援することにより、我が国の学術の将来を担う国際的視野に富む有能な研究者を養成・確保する。
  • 競争的研究資金を活用した海外研鑽へのインセンティブ付与
     若手研究者の海外研鑽に対するインセンティブを付与するため、各種競争的研究資金を活用して帰国後の研究を支援する。その際、日本学術振興会の若手研究者海外派遣事業等の対象者に対して情報提供等を行う。

○ 牽引力のある研究人材の養成

  • 「高度研究開発リーダー育成事業(仮称)」【重点】
     産業界のイノベーション創出に不可欠な「チーム力」を最大化できる研究開発のリーダーを育成するため、博士課程学生や教員がチームを組み、企業等において、企業等が提示する実践的な課題演習を行う等の取組を支援する。
  • 「イノベーション創出若手研究人材養成」(科学技術振興調整費)【重点】
     イノベーション創出の中核となる若手研究人材が、狭い学問分野の専門能力だけでなく、国内外の多様な場で創造的な成果を生み出す能力を身につけられる研究人材養成システムの構築を支援する。
  • 「産学人材交流促進事業(仮称)」
     大学の研究者が、一定期間、大学外部の企業研究施設において、産学共同研究を実施できるよう支援する。
  • 「若手トップサイエンティスト養成塾(仮称)」
     若手研究者の創造性を磨き、将来のノーベル賞受賞者等のトップサイエンティストを輩出するために、文部科学省の全研究開発型独立行政法人において、研究の「ひらめき」や知的触発が得られるよう異分野交流の促進をはじめ、優秀な人材の育成を図るため、塾・合宿を実施する。

○ 女性研究者が活躍できる環境の整備

  • 「出産・育児による研究中断からの復帰支援(特別研究員事業)」
     優れた男女の研究者が出産・育児による研究中断後に、円滑に研究現場に復帰できるよう、支援を充実する。平成22年度から、研究中断から復帰して十分な研究成果を上げるために必要な支援期間を確保するため、支援期間を2年から3年に延長するとともに、新規採用人数についても引き続き増員を図る。
  • 「女性研究者支援モデル育成」(科学技術振興調整費)
     女性研究者が研究と出産・育児等を両立し、研究活動を継続するための支援を行う仕組みを構築するモデルとなる優れた取組を支援する。
  • 「女性研究者養成システム改革加速」(科学技術振興調整費)
     特に女性研究者の採用割合等が低い分野である、理学系、工学系、農学系の研究を行う優れた女性研究者の養成を加速する。
  • 「戦略的創造研究推進事業 出産・子育て等支援制度」
     ライフイベント(出産・育児・介護)に際し、研究キャリアを継続・復帰できるよう男女共同参画促進費を支給する。
  • 「女子中高生の理系進路選択支援事業」
     科学技術分野で活躍する女性研究者・技術者、大学生らと女子中高生の交流機会の提供や実験教室、出前授業の実施など、女子中高生の理系進路選択を支援する取組を実施する。

戦略2:
大学院教育等の充実・強化を図る

○ 大学等の国際化の推進

  • 「国際化拠点整備事業(グローバル30)」【重点】
     英語による授業等の実施体制の構築や留学生受入れに関する体制の整備、戦略的な国際連携の推進など我が国を代表する国際化拠点の形成の取組を選定し、重点的に支援する。
  • 「留学生30万人計画」
     2020年を目処に留学生受入れ30万人を目指す「留学生30万人計画」を関係府省・機関と連携して体系的に推進する。特に、大学の国際化を推進し、教育研究水準の向上を図る。また、日本人学生の海外留学を支援する。
  • 「アジア・世界における高度産業人材育成支援拠点形成事業(仮称)」
     アジア地域等の留学生を受け入れ、産学連携により今後期待される成長分野や、大学におけるグローバルな人材育成が求められる分野について、高度で実践的な人材育成を行う拠点を形成する取組を選定し、重点的に支援する。

○ 教育研究拠点の形成等

  • 国際的に卓越した大学院の形成
     世界をリードする創造的な人材育成を図るため、国際的に卓越した教育研究拠点の形成を支援する。特に、拠点の教育機能の充実を図るとともに、新しい専攻を設置する等拠点の組織性・継続性を担保する取組や、拠点の全国共同利用化や他の拠点との間のネットワーク形成等、機関が協同で大学院生を教育する体制を構築する取組を重点的に支援する。
  • 「先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム」
     大学間連携のほか、先端企業等との連携により、実務家による講義、チーム演習など、多様な手法を用いた高度IT人材を育成する教育拠点を広く展開する。
  • 「サービス・イノベーション人材育成(産学連携実践型人材育成事業)」
     我が国の大学・大学院において、サービス産業の生産性向上等に関する教育の推進、ひいては産業各分野の革新、さらには国際競争力の強化につなげることを目指し、ビジネス、IT、人間系知識等を兼ね備え、サービスに関して高いレベルの知識と専門性を有するとともに、サービスにおいて生産性の向上やイノベーション創出に寄与しうる資質をもった人材を育成するための教育プログラムの開発・構築を支援する。

○ 大学院生への経済的支援の充実

  • 競争的研究資金におけるTA・RAの雇用促進【重点】
     大学院に対する競争的研究資金において、TA(ティーチングアシスタント)、RA(リサーチアシスタント)の雇用を促進する。
  • 大学院生に対するTA等の経済的支援の強化【重点】
     TA等を通じた実験・実習・フィールドワーク等への大学院生の参加を促進する取組や、高度な教育活動を実施する教員を支援する取組を実施する大学院を支援する。
  • 「特別研究員事業」【再掲】
     日本学術振興会の特別研究員事業の支援を充実し、対象となる研究者の拡大を図る。
  • 「独立行政法人日本学生支援機構奨学金」
     経済的理由により修学に困難がある優れた学生等に対して学資を貸与することにより、教育の機会均等に寄与するとともに、次代の社会を担う豊かな人間性を備えた創造的な人材の育成に資することを目的とする。

○ 教育研究支援体制の整備

  • 「教育研究高度化のための支援体制整備事業」【重点】
     大学内で教育研究プロジェクトに関わる大学教員・研究者、博士課程学生等が安心して教育研究に専念できるよう教育研究業務やプロジェクトマネジメント等を支援する体制を整備する。

戦略3:
初等教育から高等教育まで未来を担う創造的人材を育成するとともに、国民の科学技術リテラシーを向上させる 

○ 才能を見出し伸ばす取組の充実

  • 「スーパーサイエンスハイスクール」【重点】
     先進的な理数教育等を実施する高等学校等を「スーパーサイエンスハイスクール」として指定し、観察・実験等を通じた体験的・問題解決的な学習や課題研究の推進、理数に重点を置いたカリキュラムの実施等を支援する。
  • 「国際科学技術コンテスト支援事業」【重点】
     高校生等の理数科目や科学技術に対する興味・関心や目標意識、意欲・能力を高め、科学技術をリードする人材を育成するため、国際科学技術コンテストの国内大会開催や国際大会への日本代表選手の派遣、国際大会の日本開催に対する支援を行うとともに、大会受賞者間のネットワーク形成等を支援する。

○ 初等中等教育における理数教育の基盤の強化

  • 「大学の教職課程を中心とした理科教育の充実事業(仮称)」【重点】
     教職課程における理科教育指導法の体系を検討し理科教育指導力向上等につながるカリキュラムの研究開発、現職教員が持続的に資質向上を図るための仕組みづくりや資質向上モデルの確立等を、大学が各都道府県教育委員会等と連携して行う。また、子どもの教育に意欲のあるポストドクター等を教育界に招き入れるため、各都道府県教育委員会等の協力を得て、人材リストの作成、特別非常勤講師としての活用などを通じて、潜在的な理科教育人材の発掘・供給システムを構築する。
  • 「理科教育等設備整備費補助」
     学校教育における理科教育の振興を図るため、理科教育振興法に基づき、公私立の小・中・高等学校等の設置者に対して、理科教育等の設備整備に要する経費の一部を補助する。新学習指導要領に対応するため、理科教育設備基準の改訂について検討する。
  • 「理科教材開発・活用支援事業」
     科学技術や理科に関して児童生徒の知的好奇心、探求心に応じた学習機会を提供するため、教員や児童生徒等が利用できる理科学習用デジタル教材を開発し、インターネット等を通じて教育現場に提供する。
  • 「理数系教員指導力向上研修事業」
     理数系教員の実践的指導力の育成・向上を図るため、教育委員会と大学・科学館等の連携のもと、科学技術、理科・数学に関する観察・実験等の体験的・問題解決的な活動に係る教員研修を支援する。

○ 理数好きな児童生徒の裾野の拡大

  • 「理数系教員養成拠点構築事業」【重点】
     大学や大学院が、教育委員会と連携して、理数に優れた指導力を有し各学校や地域の理数指導において中核的役割を果たす小・中学校教員(コア・サイエンス・ティーチャー)を養成するための取組を支援する。
  • 「理科支援員等配置事業」
     理科授業の充実や教員の資質向上を図るため、大学(院)生や研究者・技術者等の外部人材を理科支援員や特別講師として小学校に配置することを支援する。
  • 「サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト」
     児童生徒等の科学技術や理科・数学に関する興味関心と知的探求心の育成、進路意識の醸成を図るため、高校等における科学部活動や、学校・教育委員会等と大学・科学館等との連携による体験的・問題解決的な取組を支援する。

○ 大学等における取組の強化

  • 「未来の科学者養成講座」【重点】
     理数に関して卓越した意欲・能力を有する児童生徒をさらに伸ばすことに重点を置き、大学レベルも視野に入れた高度で発展的な学習環境を年間を通して継続的に提供する大学や高等専門学校の取組を支援する。
  • 「理数学生応援プロジェクト」
     将来有為な科学技術関係人材を育成するため、理系学部を置く大学において、理数に関して強い学習意欲を持つ学生の意欲・能力をさらに伸ばすことに重点を置いた取組を行う。

○ 国際協力を通じたESD及びサステイナビリティ・サイエンスの推進

  • 持続発展教育の推進
     持続可能な社会の担い手を育むため、体系的な思考力や批判力、情報収集・分析力などを身につけさせることを目標とする持続発展教育(ESD)の推進と、その推進拠点であるユネスコ・スクール加盟校増加を図る。また、社会の発展のために科学が果たすべき役割の重要性に鑑み、国連教育科学文化機関(ユネスコ)とも協力し、サステイナビリティ・サイエンスの積極的な推進を図る。

○ 科学技術に関する国民とのコミュニケーションの強化

  • 「地域科学コミュニケーション連携推進事業」【重点】
     地域における科学技術コミュニケーション活動を促進させるため、日本科学未来館のノウハウや科学コミュニケーターを活用して、地方の科学館の活動を支援する。
  • 「科学コミュニケーター人材養成事業」
     日本科学未来館を拠点として、科学技術を分かりやすく伝える科学コミュニケーターを養成する。
  • 「日本科学未来館事業」
     最先端の科学技術に関する情報発信や科学技術を分かりやすく伝える手法の開発等の総合的な拠点として、「日本科学未来館」を運営する。
  • 「国立科学博物館の整備・運営」
     自然史や科学技術史の基礎研究を進めるとともに、標本資料の収集・保管・継承を行い、それらの成果を広く国民に提供する。
  • 「IT活用型科学技術情報発信事業」
     様々な科学技術を研究者や研究機関等と連携して分かりやすく紹介する科学技術番組等を制作し、インターネット等を活用して発信する。
  • 「地域の科学舎推進事業」
     科学館や大学、研究機関等が実施する実験教室など、身近な場で科学技術や理科に触れる機会を充実するための取組を支援する。

戦略4:
公的資金の拡充を目指すとともに、研究者を優先した柔軟な研究資金配分システムを構築する

○ 大学、研究開発型独立行政法人等の基盤的経費の確実な措置【重点】
 大学等の教育研究活動を継続的・安定的に支えるために必要な国立大学法人運営費交付金、国立大学法人施設整備費補助金、私立大学等経常費補助金や、国が備えるべき研究開発機能の中核的な担い手である研究開発型独立行政法人の運営費交付金等の基盤的経費を確実に措置することにより、大学等の教育研究や研究開発型独立行政法人の研究開発等の充実と活性化を図る。

○ 公的研究資金の拡充と運用改善

  • 「戦略的基礎科学研究強化プログラム(仮称)」【重点】
     我が国の基礎科学力の強化を通じ、継続的に革新的なイノベーション創出を図るため、傑出した成果を出しうる潜在能力を持つ研究者を厳選して、長期間(最長10年)に支援することにより、基礎科学における世界的な研究成果の創出を図る。
  • 「科学研究費補助金」【重点】
     研究者の自由な発想に基づく研究を支援する科学研究費補助金の充実を図るとともに、研究者にとってより使いやすい制度を目指した改善を引き続き進めることにより、重厚で質の高い知的資産の蓄積を図る。
  • 「戦略的創造研究推進事業」【重点】
     国の政策目標の実現に向けた目的基礎研究を推進する戦略的創造研究推進事業の充実を図り、今後の科学技術イノベーションの創出につながる社会・経済ニーズに対応した新技術の創出を図る。

○ 「最先端研究開発支援プログラム」【重点】
 総合科学技術会議の運用方針に基づいて、独立行政法人日本学術振興会の先端研究助成基金の柔軟かつ適正な運用を着実に実施する。

○ 大学・大学共同利用機関における大型のプロジェクト等の着実な推進
 大学、大学共同利用機関等における独創的・先端的な基礎研究の推進は、研究者の自由な発想に基づき、世界最高水準の研究成果の創出など人類の知的資産の拡充に貢献する重要なものであることから、大型プロジェクトを含む基礎研究の関連予算の充実を図ることにより、その着実な推進を図る。

○ 研究評価システムの改善

  • 「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」に基づく評価システムの構築
     新しい学問や研究の領域を拓く研究開発、世界的に高い水準にある研究開発、社会・経済の発展に貢献できる研究開発等の優れた研究開発を効果的・効率的に推進するため、「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」(平成21年2月改定)に基づき、研究の特性に応じて「創造へ挑戦する研究者を励まし、優れた研究開発を見出し、伸ばし、育てる」評価を推進する。

戦略5:
世界水準の拠点を形成するとともに、研究者の支援体制を強化する

○ 世界的水準の研究開発拠点の形成

  • 「世界トップレベル研究拠点(WPI)プログラム」【重点】
     世界の第一線の研究者が結集する優れた研究環境と高い研究水準を誇る世界トップレベルの研究拠点の形成を推進するため、その拡充を目指すとともに、各拠点におけるグローバルスタンダードに相応しい先進的なシステム改革の持続・発展を図る。このような取組により、外国人が日本であげた業績によりノーベル賞を受賞する状況の実現を目指す。
  • ITER計画及び幅広いアプローチ(BA)活動の展開
     核融合エネルギーの科学的及び技術的可能性の実証を目指したITER計画を7極(日・欧・露・米・韓・中・印)による国際協力のもとで推進するとともに、ITER計画を補完・支援する先進的核融合研究開発であるBA活動を日欧協力により我が国で推進する。
  • iPS細胞研究拠点の整備
     iPS細胞研究を加速化し、実用化に向けて世界を先導するため、基礎研究から前臨床研究・臨床研究まで一貫した推進体制を京都大学を拠点として構築する。

○ 研究支援体制の充実・強化

  • 「若手研究者を活用した研究システムの改革支援事業(仮称)」【重点】(再掲)
     特色ある優れた研究活動を展開する大学、大学共同利用機関等において、更なる飛躍を図るため、優れた研究活動に博士課程学生やポストドクターを参画させ、また、ポストドクター等の高度専門人材を活用した研究マネジメント体制及び組織横断型の研究・技術支援チームを整備することにより、若手研究者を活用した研究推進と人材育成を一体的に行う研究システムを構築するための取組を積極的に支援する。
  • 「先端研究施設共用促進事業」【重点】
     研究開発施設等を保有する大学等に技術指導研究員の配置等を行い、産学官への共用及び施設等を活用した共同研究を促進する。これにより、施設等設置機関の研究支援体制の強化を図る。
  • 研究開発型独立行政法人等の先端大型研究施設等の共用の促進
     「研究開発力強化法」や「特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律」等に基づき、大型放射光施設(SPring‐8)、X線自由電子レーザー装置(XFEL)、大強度陽子加速器施設(J‐PARC)やその他の大学、研究開発法人等が保有する研究開発施設等について、施設整備や運営費の着実な確保等を通じて、その共用を促進する。
  • 「産学官連携戦略展開事業」
     イノベーション創出の原動力である大学等において、大学等と産業界との連携・協働を一層推進するため、基礎研究段階からの戦略的な知的財産の創造・保護・活用をはじめとする知的財産戦略等を支援する。
  • 「ファクトリー・オン・キャンパス構築推進事業(仮称)」
     大学等の基礎研究に基づく研究成果を社会へ提供することや産学共同研究等につなげるため、大学等において学内のリソースを活用したビジネスモデルの構築やプロトタイプの開発を実施できる体制を整備する。
  • 「先端計測分析技術・機器開発事業」
     独創的な研究開発活動を支える基盤を整備するために、世界初・世界最先端の計測分析技術・機器の開発を推進するとともに、実用化に向けた展開を促進させる。
  • 「研究機器等利活用促進事業(仮称)」
     研究施設・設備・機器等の共用や再利用を促進するための情報提供システムの構築・保守管理及び大学等による当該システムの活用に係る取組を支援する。

○ 教育研究支援体制の整備【再掲】

  • 「教育研究高度化のための支援体制整備事業」【重点】
     大学内で教育研究プロジェクトに関わる大学教員・研究者、博士課程学生等が安心して教育研究に専念できるよう、教育研究業務やプロジェクトマネジメント等を支援する体制を整備する。

○ 産業界の現場での問題意識を基礎研究に反映させる研究体制の整備

  • 「企業研究者活用型基礎研究推進事業」
     企業の研究者が大学や公的研究機関などの場において研究を実施し、今後の発展が期待される基礎研究テーマに取り組むことで、研究者の人材交流、大学等での基礎研究の推進などによる更なる産学連携の促進を図る。
  • 「産業界との融合的連携研究プログラム(バトンゾーン制度)」
     独立行政法人理化学研究所(理研)における研究成果の社会還元を着実に推進するため、企業のニーズに適合した研究課題について、企業のイニシアティブのもと、理研に蓄積した、もしくは新たに生まれつつある研究資産等を活用しながら、企業と理研が一体となって研究開発を進める。
  • 「連携研究員制度」
     独立行政法人理化学研究所(理研)において、企業の優秀な研究者・技術者を理研の研究室・研究チームに受け入れ、人材・研究交流を活発化させるとともに、企業と理研との新たな連携への発展に向けた研究開発を本格実施する。

○ 研究成果の共有の推進

  • 「科学技術情報連携活用推進事業」
     研究成果情報等の研究開発活動に係る基本情報を整備し、インターネット上で関連情報と連携させて提供することにより、様々なユーザーが分野や業種の垣根を越えて科学技術情報を利用できる環境を整備する。
  • 「電子情報発信・流通促進事業」
     国内の学協会が発行する学術論文について全文電子化を支援することにより、我が国の科学技術論文情報の発信の迅速化と国際化を図る。
  • 「最先端学術情報基盤構築推進事業」
     大学等における学術研究・教育活動全般を支える学術情報ネットワーク等情報基盤の整備・運用により研究者・研究機関間の連携強化を図るとともに、大学等で生産される論文誌などの学術情報の体系的収集・保存や効果的な情報発信による情報流通の促進を図る。

○ グローバル化の推進

  • 「科学技術外交の基盤をなす人材強化・環境整備推進事業(仮称)」【重点】
     科学技術外交を強化するため、その基盤となる大学等研究機関、国際活動を推進する機関、それらの海外拠点等において、国際関係業務に従事する人材の育成・確保を図る。また、我が国における研究拠点への外国からの研究者受入れのため、周辺環境の国際化を推進する。
  • 「組織的研究者招へいプログラム(仮称)」【重点】
     様々なキャリアステージにある海外の研究者を包括的に招へいすることにより、大学等研究機関における研究活動の推進とそれを通じた若手研究者の養成、さらに当該機関の研究環境の一層の国際化を図る。
  • 「外国人特別研究員事業」等
     諸外国の優秀な若手研究者を我が国の大学等に受け入れ、共同研究等に従事させることにより、我が国の研究環境の国際化推進を図るとともに、当該国の研究者養成に貢献する。また、研究者のキャリアステージや目的に沿った多様な招へい事業を着実に展開する。
  • 「研究者ネットワークの形成・強化事業」
     外国人研究者招へい事業等の経験者を中心としたネットワーク形成を支援することにより、我が国と諸外国との間で学術情報の発信を促すとともに、持続的な協力関係の構築並びに新たな交流関係の創出を図る。
  • 「先端学術研究人材養成事業」
     我が国の先端研究拠点への海外の著名研究者及び若手研究者の招へいを通じ、国際競争力のある研究人材を養成する。

お問合せ先

研究振興局振興企画課

-- 登録:平成21年以前 --