平成10年4月9日
科学技術庁
本日開催された科学技術会議政策委員会(森 亘委員長)において、「平成10年度科学技術振興調整費の具体的運用について」(別冊)が決定され、平成10年度の科学技術振興調整費により実施する課題が決定された(平成10年度の新規制度等一部の課題を除く)。そのうち、新規課題は以下のとおり。
(研究担当機関:社団法人日本鉄鋼協会、早稲田大学、金属材料技術研究所等)
近年発展の目覚ましいナノレベル観察技術を応用し、水素侵入・分布・破壊過程を観察する技術を開発し、環境脆化機構の解明を目指す。
(研究担当機関:TDK株式会社、東京大学、無機材質研究所、物質工学工業技術研究所等)
「協奏増幅」という新たな切り口から現象をとらえて、磁界、電界、超音波などの外界のエネルギーを反応場に作用させて、その非線形応答を利用し増幅的に変化させることで、非平衡表面材料、特殊構造材料といった新機能・高機能材料を創製するための材料プロセス技術の基礎確立を目指す。
(研究担当機関:株式会社三菱総合研究所、横浜国立大学、国立がんセンター等)
インターネットにおける信頼性・高速性・利便性・安全性に関する問題の解決に資するため、これらについて極めて高度な要求を持つ遠隔地重粒子線がん照射影響シミュレータを業務として想定し、ギガビットレベルネットワークに向けた信頼性・高速性・利便性・安全性を確立することを目指す。
(研究担当機関:財団法人高度情報科学技術研究機構、九州大学、北海道教育大学、防災 科学技術研究所、建築研究所等)
地球変動予測の実現を目指し、国内外の地球科学技術及び情報科学技術の関係機関が連携し、地球規模の複雑な諸現象を忠実に再現することを可能とする地球シミュレータ(超高速並列計算機)を活用し、大規模シミュレーションを実現する高度な並列ソフトウェアの開発を行う。
(研究担当機関:財団法人電力中央研究所、筑波大学、航空宇宙技術研究所、産業技術融 合領域研究所)
大規模・複雑システムのモデル化、解析、制御及び設計の方法論を確立するとともに、その方法論、概念、モデル等を統合化しソフトウェア・システムとして具体化する。
(研究担当機関:東北大学、国立水俣病総合研究センター等)
生物工学的手法を用いた全く新しい種の維持・増殖法の開発に向けて、核心的な問題となる生殖系列の成立機構の解明と新たな発生工学的手法の開発を目指す。
(研究担当機関:東京工業大学、理化学研究所、国立循環器病センター研究所等)
複数種類の細胞、複数機能を持つマトリックスなどを人工臓器に取り込んだ複合ハイブリット組織体をベースとし、人工組織ユニットを構築するための研究を行う。
(研究担当機関:関西総合環境センター、千葉大学、国立環境研究所、地質調査所等)
地球温暖化に影響を及ぼす炭素の循環機構を明らかにするため、衛生データを用いて海域、陸域の炭素循環に係るパラメータの分布を観測し、一次生産及び関連諸量についてグローバルマッピングを行うとともに、その高度化を図る。
(研究担当機関:株式会社北九州テクノセンター、九州大学、建築研究所等)
生ゴミの衛生的、省力的な回収方法としてディスポーザー及び管路による搬送を利用し、回収された都市ゴミを原料として生分解性プラスチックを製造する技術システムを開発する。
(研究担当機関:社団法人建築学会、東京大学、建築研究所等)
住宅・建物内の化学物質空気汚染に関する問題を解明し、空気汚染が問題となっているホルムアルデヒド、揮発性有機化合物(VOC)などを対象として、汚染実態の解明を行い、室内空気環境評価法及び抑制対策を整備するととともに、化学物質汚染防止対策の実用化に関する研究を行う。
(研究担当機関:株式会社三菱化学安全科学研究所、横浜市立大学、国立環境研究所等)
内分泌攪乱物質とその生体影響を高感度に検出できる計測手法を開発し、またその影響の発現メカニズムを分子レベルで解明することを通じて、生物種の生存に与えるであろう影響の実態とその意味を明らかにする。
(研究担当機関:広島県立食品工業技術センター、広島大学、醸造研究所等)
伝統的な食品製造に利用されてきた酵母、こうじ菌などの「醸造微生物」を利用し、遺伝子工学の手法を用いてその機能を高度化することによって、人間に有用な各種の機能性物質を効率的に生産する技術の開発を目指す。
(研究担当機関:和歌山県工業技術センター、和歌山県立医科大学、大阪工業技術 研究所等)
こめぬかからこめサラダ油を製造する際に廃棄物として生じるこめぬかピッチから各種の有用成分の抽出を試みるとともに、すでに製造法を確立したフェルラ酸を基礎原料とした有機工業科学の確立を目指す。
(研究担当機関:高知県海洋深層水研究所、高知大学、四国工業技術研究所等)
深層水の特性、及び食品、生物利用、健康・安全分野での深層水の有する機能を明らかにし、深層水の生活関連分野での用途開発にかかわる基礎的・先導的研究を行う。
(研究担当機関:計量研究所、東京理科大学、アンリツ株式会社等)
量子標準(時間・周波数標準、光周波数標準、高エネルギーフォトン量子標準)について、それぞれの不確かさを低減するための技術の開発、それぞれの間の変換を高精度で行う技術の開発、並びに標準供給方法の高度化を行う。
(研究担当機関:理化学研究所、東京医科歯科大学、財団法人癌研究会癌研究所等)
ウイルスに関する知的基盤のコアとなりうる野生型ウイルス・組換え体ウイルス群を収集し、ウイルス・コアバンクを創設するとともに、その高度利用を行うための基盤整備に必要とされる技術の研究開発を行う。
(研究担当機関:財団法人大阪バイオサイエンス研究所、京都大学、国立精神神経セン ター神経研究所等)
転写因子による脳細胞の分化制御、脳の領域特異化による回路形成制御、細胞間相互作用による回路形成制御、シナプスの機能発現制御、機能分子可視化モデル動物の作成及び画像解析技術の開発の5つの課題について研究を行う。
(研究担当機関:株式会社浜松ホトニクス、自治医科大学、理化学研究所等)
虚血性神経細胞死の病態解明と制御を目標として、基礎的知見の獲得、治療法開発及び診断法の開発を行う。
(研究担当機関:株式会社日立マイコンシステム、筑波大学、電子技術総合研究所等)
曖昧な情報しか得られない状況でも、一連の情報断片から文脈を読みとり最適な解釈、判断を下せ、プログラムにない要求が与えられたり、新奇な状況に直面しても、当該要求の状況に対処できるシステムの構築を目指す。
270テーマ
西田(内線321)
事項 | 平成9年度 予 算 額 |
平成10年度 予 算 額 |
対前年度 増▲減 |
---|---|---|---|
産学官連携プログラム | 117.5 | 123.5 | 6 |
★総合研究 (うち情報科学技術) |
81.5 - |
84.5 (20.5) |
3 |
★生活・社会基盤研究 | 36 | 39 | 3 |
制度先導プログラム | 43 | 64 | 21 |
流動促進研究制度 | 3 | 6 | 3 |
★目標達成型脳科学研究推進制度 | 10 | 13.5 | 3.5 |
★知的基盤整備推進制度 | 30 | 34 | 4 |
ゲノムフロンティア開拓研究推進制度 | - | 10.5 | 10.5 |
国際プログラム | 19 | 17 | ▲2 |
★国際共同研究総合推進制度 | 19 | 17 | ▲2 |
国研活性化プログラム | 66 | 61 | ▲5 |
開放的融合研究推進制度 | - | 10 | 10 |
中核的研究拠点(COE)育成 | 40 | 29 | ▲11 |
★重点基礎研究 | 22 | 22 | 0 |
省際基礎研究 | 4 | - | ▲4 |
その他 | 4 | 4 | 0.5 |
★調査分析 | 3 | 3 | 0 |
緊急研究等 | 1 | 1.5 | 0.5 |
合計 | 249.5 | 270 | 20.5 |
(注)★印は、今回新規課題を決定したもの。
科学技術基本計画に基づき、柔軟で競争的な研究環境を実現するためには、競争的資金を大幅に拡充することが不可欠。このため、各省庁、大学、民間の研究能力を結集して基礎研究等の総合的推進を図るための競争的資金である「科学技術振興調整費」を拡充する。 平成10年度においては、新たに、ゲノムフロンティア開拓研究推進制度及び開放的融合研究推進制度を創設する。また、総合研究、生活・社会基盤研究、流動促進研究制度、目標達成型脳科学研究推進制度、知的基盤整備推進制度、緊急研究及び緊急受託研究の拡充等により、対前年度20.5億円増の270億円を 確保し運用。
事項 | 10年度 | |
---|---|---|
予算額(億円) | 課題数 | |
1.産学官連携プログラム | 123.5 | 提案数 |
1.総合研究 (うち情報科学技術) |
84.5 (20.5) |
39 継続 24 移行 7 新規 8←124 (FS 6) |
2.生活・社会基盤研究 | 39 | |
1)生活者ニーズ対応研究 | (30) | 10 継続 6 移行 新規 3← 55 (FS 2) |
2)地域先導研究 | (9) | 9 継続 6 新規 3← 8 (FS 1) |
2.制度先導プログラム | 64 | |
1.知的基盤整備推進制度 | 34 | 12 継続 10 新規 2← 32 |
2.目標達成型脳科学研究推進制度 | 13.5 | 6 継続 3 新規 3← 24 |
3.流動促進研究制度 | 6 | 19 継続 19 新規 未選定 |
4.ゲノムフロンティア開拓研究推進制度 | 10.5 | - |
3.国際プログラム | 17 | |
○国際共同研究総合推進制度 | 17 | |
1)交流育成 | (2) | 121 ←179 |
2)国際ワークショップ | (3) | 33 ← 53 |
3)二国間型 | (9.5) | 162 ←251 |
4)多国間型 | (2.5) | 2 継続 1 新規 1← 32 |
4.国研活性化プログラム | 61 | |
1.中核的研究拠点(COE)育成 | 29 | 10 継続 7 (2期) 3 |
2.開放的融合研究推進制度 | 10 | - |
3.重点基礎研究 | 22 | 270 (72機関) |
5.その他 | 4.5 | |
調査・分析 | 3 | 18 ソフト新規 5← 13 継続 4 FS 9 |
緊急研究等 | 1.5 | |
合 計 | 270 | 711 |
平成10年4月9日
科学技術会議政策委員会
平成10年度科学技術振興調整費の具体的運用については、科学技術政策大綱(平成4年4月24日閣議決定)及び科学技術会議諮問第18号「新世紀に向けてとるべき科学技術の総合的基本方策について」に対する答申(平成4年1月24日)を踏まえつつ、「科学技術振興調整費活用の基本方針」(昭和56年3月9日科学技術会議決定、平成4年1月24日最終修正)に基づき、以下によるものとするが、この際、科学技術基本法(平成7年11月15日法律第130号)の精神に則り、また、科学技術基本計画(平成8年7月2日閣議決定)、各種の研究開発基本計画の的確な推進を図るとの観点から、適切かつ機動的な運用に努めるものとする。
上記に基づき、平成10年度科学技術振興調整費により実施する課題については別紙のとおりとすることが適当である。これらの具体的運用に当たっては、本調整費を積極的かつ効率的・効果的に活用する。この際、研究の進捗状況、研究を取り巻く環境等を十分に考慮し、機動的かつ弾力的な運用に努めるものとする。
なお、平成9年8月に「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱的指針」が策定されたことを踏まえ、新規課題の選定に当たっての事前評価及び総合研究、生活・社会基盤研究(生活者ニーズ対応研究)、国際共同研究総合推進制度(多国間型国際共同研究)、中核的研究拠点(COE)育成対象機関等の中間評価を的確に実施してきたところであるが、これらについては評価の結果を踏まえ、効果的かつ効率的な研究開発の推進を図る。また、昨年度研究を終了した総合研究等の課題については事後評価を十分に行うものとする。
特定の生命現象に関し、中核機関のオーガナイズの下、産学官、関係省庁の研究機関を有機的に連携させ、当該生命現象の分子レベルの理解とそれに基づく応用のための研究を推進。
学際的な最重要研究分野に関するシーズ創成を強力に推進すべく、異分野の研究機関が組織間の壁を越えて、統括責任者の下、一体となった体制で研究を推進。
実施課題は別添4のとおり
1)生活者ニーズ対応研究
2)地域先導研究
年度途中に発生した緊急事態(緊急の受託研究を含む。)等へ機動的に対応。
この他、現時点で設定されていない課題については、今後、適宜、政策委員会において審議の上設定していく。
科学技術政策局調整課
-- 登録:平成21年以前 --