平成11年8月26日
科学技術会議政策委員会
科学技術振興調整費は、科学技術会議の基本方針に沿って、各省庁、大学、民間等の研究能力を結集して基礎研究等を総合的に推進するとともに、科学技術の総合的な振興にあたり、必要かつ重要な研究業務に係る総合的な調整を行うための経費である。
このことに鑑み、平成12年度における新規課題の提案及び選定にあたっては、「平成12年度科学技術振興に関する重点指針(平成11年6月24日)」(以下、「重点指針」という)を踏まえることとする。なお、情報科学技術については、科学技術会議第25号答申を踏まえた重点領域に配慮する。
課題の提案及び選定にあたっては、重点指針に示された「平成12年度に取り組むべき重点事項」を踏まえた重点公募領域に特に配慮する。また、重点指針に示された「国家的・社会的ニーズを踏まえた科学技術政策課題」についても配慮する。
研究目標については、提案者は研究の意義、目標の実現性、想定される成果及び波及効果を念頭においた明確かつ分かりやすい設定に十分配慮するとともに、出来るだけ定量的かつ具体的な設定に配慮する。
研究体制については、課題の効果的かつ効率的な遂行を図るため、研究代表者のリーダーシップの下、必要かつ十分な研究者の参加を得つつ、最適な体制を構築することが重要である。その際に、不必要な機関等の参画による形式的な産学官連携や複数省庁連携は求めない。
研究期間及び研究費については、画一的なものとせず、研究内容、研究体制、研究規模等に応じた適切なものとする。
若手研究者の積極的登用や活躍の機会の増大に配慮する。
なお、人文・社会・自然科学にわたる幅広い分野の総合的推進に配慮するとともに、民間からの課題提案について十分な配慮を行う。
平成12年度科学技術振興に関する重点指針 (平成12年度に取り組むべき重点事項) |
平成12年度科学技術振興調整費重点公募領域 | 公募対象となる分野 | |
1. ライフサイエンスの研究 | ‐ | ‐ | 開 放 的 融 合 研 究 |
ゲノムを中心としたライフサイエンスの基礎的 分野の研究及び新しい技術の開発 |
ゲノム科学委員会が設定する重要研究開発課題 (別添1) | ゲノムフロンティア開拓研究 | |
生体機能の遺伝子レベルでの解明と、その制御・利用に関する基盤研究・技術開発(ゲノム科学委員会が設定する重要研究開発領域を除く) | 総合研究 | ||
脳研究 | 脳科学委員会が設定する研究開発推進についての重点指針に該当する課題(別添2) | 目標達成型脳科学研究 | |
発生・分化・再生研究 (特にティッシュ・エンジニアリング) |
ティッシュ・エンジニアリング | 総合研究 | |
植物・動物の発生・分化に関する基盤研究・技術開発 | |||
2. 情報科学技術の研究開発 | ‐ | ‐ | |
社会のニーズを明確に指向した基礎・基盤の強化、ネットワーク時代に対応した円滑な情報流通の実現 | 情報科学技術委員会が設定する重点領域に該当する課題(別添3) | 情報科学技術 | |
3. 地球・環境科学技術の研究開発 | ‐ | ‐ | |
大気・海洋・生物等の各圏域を統合した地球変動の解明や予測 | 大気・海洋・生物等の各圏域のモデルの統合化及び統合的な視点からみた各圏域のモデルの開発 | 総合研究 | |
環境と調和した循環型経済社会の構築に資する技術の研究開発 | 環境負荷削減に大きく貢献し得る画期的な物質・材料及びプロセスの研究開発 | ||
製品や業種を横断する、総合的な環境負荷の把握及びその改善に資する評価技術および設計技術の開発 |
開放的融合研究については、「平成12年度科学技術振興に関する重点指針」における 「国家的・社会的ニーズを踏まえた科学技術政策課題」を踏まえつつ、単独の研究機関だけでは遂行が困難な学際的な研究課題について、国立試験研究機関を含 む複数の研究機関が組織の壁を取り払って、人材面、資金面、設備面等で融合し、国内外の優秀な研究者を結集させた研究グループを形成し、一体となった体制 で推進する研究の提案及び選定に配慮することとする。 |
知的基盤整備については、「平成12年度科学技術振興に関する重点指針」における「国家的・社会的ニーズを踏まえた科学技術政策課題」を踏まえつつ、知的基盤小委員会が設定する重点領域に配慮することとする。(別添4) |
生活者ニーズ対応研究については、「平成12年度科学技術振興に関する重点指針」における「国家的・社会的ニーズを踏まえた科学技術政策 課題」を踏まえ、「良好な自然・生活環境の維持・創出、地域環境問題や食料問題への対応に必要な科学技術」及び「活力ある高齢化社会の形成を支援する科学 技術」に配慮することとする。 |
地域先導研究については、「平成12年度科学技術振興に関する重点指針」における「国家的・社会的を踏まえた科学技術政策課題」を踏まえつつ、地方自治体が地域住民の生活の質の向上、地域産業の活性化等に特に資すると認める研究の提案及び選定に配慮することとする。 |
その他、「平成12年度科学技術振興に関する重点指針」に該当する重要な研究課題については、総合研究、開放的融合研究、及び地域先導研究(地域の活性化に資する研究課題)における提案及び選定に配慮することとする。 |
平成10年6月11日
ライフサイエンス部会
ゲノム科学委員会
ゲノム科学は、「ゲノム科学に関する研究開発についての長期的考え方」に示されているように、ゲノム構造解析の側面とゲノム機能解析の側面、更には、それらの解析情報からゲノムに存在する原理を発見し、演繹的に機能を予測するゲノム情報科学の側面を併せ持つ全く新しい多面的な科学であり、その成果は、少子高齢化社会を迎える我が国の医療問題への対応、地球的規模での対応が求められている食料問題や環境問題の解決、新産業の基盤形成等を通じて、人類の幸福の増進のために重大な意義を有するものである。
上記長期的考え方においては、ゲノムに関する研究開発として、大規模塩基配列解析、cDNA の体系的解析等の体系的・組織的な対応が必要な基盤的な研究開発、研究者の優れた個性的な発想を支援育成することが必要な特定の遺伝子やタンパク質の機能等に関する個別的な研究開発、の他、各種ゲノム関連技術の開発が挙げられているが、今後、それらの研究開発を、それぞれの特色を踏まえて、的確な方法により推進していく必要がある。
科学技術振興調整費ゲノムフロンティア開拓研究推進制度では、上記長期的考え方に示された戦略的に取り組むべき重要研究開発課題のうち、基盤的な研究開発(中核的な拠点化が必要なほど大規模な取り組みを必要とせず、課題ごとに、産学官及び関係省庁間の連携と協力とを図りつつ実施すべきものに限る。)、及び、産学官及び関係省庁間の連携と協力による対応が適切な各種ゲノム関連技術の開発を対象とすることを基本方針とし、具体的には、以下を対象とする。
平成11年8月4日
ライフサイエンス部会
脳科学委員会
脳科学研究は、科学的のみならず、社会的、経済的にも大きな意義を有していることから、我が国として特に推進すべき重要課題であり、産学官の多くの研究開発機関や幅広い分野の研究者を含めて我が国の持てる総力を結集して取り組むことが必要である。
また、研究の推進に当たっては、我が国における研究開発の進展状況を分析し、最近の著しい国際的な研究の進捗状況も踏まえつつ、重点化を図り、効果的に推進することが必要である。
このような観点に基づき、平成12年度における、我が国の脳に関する研究開発を推進するための基本的な方向を示す指針は以下のとおりとする。
1.「脳に関する研究開発についての長期的な考え方」(平成9年5月28日脳科学委員会決定)(以下、「長期的な考え方」と言う。)を着実に実施する観点から、引き続き、研究拠点の整備、人材の養成・確保等の研究開発の推進方策の充実を図るとともに、自由発想型基礎研究及び戦略目標タイムテーブルに基づく目標達成型研究開発を相補いつつ推進することが必要である。
なお、研究開発の推進に当たっては、学際的な協力関係の進展を促すとともに、広い視野を持った研究者の育成に努める必要がある。
2.これまでの我が国における脳科学研究への取り組みに関し、その現状と今後の方向性について評価を行った結果は、別添資料のとおりである。
平成12年度においては、戦略目標を着実に達成するという観点から、引き続き、現在進められている研究開発全般を充実・強化すべきであるが、その際、個々の研究開発課題に対する各研究開発機関等における評価結果を踏まえるとともに、別添資料において示された各戦略目標達成のための今後の研究開発の方向性に沿って、研究開発を進めていくことが必要であるが、その際には研究機関同士の連携・協力を促進することが重要である。
3.平成12年度の科学技術振興調整費目標達成型脳科学研究推進制度においては、上記2.の評価結果を踏まえ、戦略目標の達成時期が今後の5年間とされている研究開発(「長期的な考え方」において5年後及び10年後の期間の戦略目標に該当する研究開発)のうち、別添資料に示された各戦略目標ごとの今後の方向性を踏まえたものを対象とすることとする。
4.脳科学委員会においては、本年度、「長期的な考え方」に関し評価を行い、その結果に基づき、「長期的な考え方」及び本指針を見直す。
領域 | 戦略目標分野 | 5年後 | 10年後 | 15年後 | 20年後 | |
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脳を知る | 脳の働きの解明 |
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領域 | 戦略目標分野 | 5年後 | 10年後 | 15年後 | 20年後 | |
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脳を守る | 脳の病気の克服 |
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領域 | 戦略目標分野 | 5年後 | 10年後 | 15年後 | 20年後 | |
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脳を創る | 脳型コンピュータの開発 |
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(統合)
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情報科学技術については、科学技術会議第25号答申「未来を拓く情報科学技術の戦略的な推進方策の在り方について」(平成11年6月)を踏まえ、情報科学技術先導プログラムを実施するため科学技術会議情報科学技術委員会が設定した重点領域に留意することとし、これに該当する課題の提案を推奨するとともに、選定に当たっても重点化を図ることとする。また、研究体制については、情報科学技術のユーザ側と研究の側とが一体となった体制で取り組むことを推奨する。
(情報科学技術委員会で設定された重点領域:平成11年7月16日決定)
以下は、重点技術項目を抜粋したもの。
上記重点領域に係る詳細な内容等については、当該文書本文をご覧下さい。
平成11年8月25日
科学技術会議政策委員会
知的基盤整備小委員会
我が国における研究開発を積極的に推進するためには、解決すべき課題の増大、研究対象の複雑化・高度化等に伴い、研究者の研究開発活動を安定的・効果的に支える標準、試験評価方法、研究用材料及び先端的な試験装置等の知的基盤を総合的に整備することが極めて重要となってきている。
現在、知的基盤整備のための措置が産学等を巻き込んで各省庁で行われるようになってきたが、我が国全体の研究基盤整備という観点では、まだ十分とはいえない状況である。
そのため、平成12年度の知的基盤整備の実施については、「平成12年度科学技術振興に関する重点指針」における「国家的・社会的ニーズを踏まえた科学技術政策課題」を踏まえつつ、本制度による積極的に知的基盤の整備に資する研究開発を推進することにより、我が国の知的基盤の整備を加速し、もって我が国の研究開発環境の向上を図るために本小委員会が設定した重点領域に留意することとし、これに該当する課題の提案に配慮するとともに、選定に当たっても重点化を図ることとする。また、知的基盤の整備を総合的かつ効果的に推進するに当たっては、各省庁の試験研究機関が連携を図り大学、民間研究機関等の協力を得て一体的に実施する研究体制で取り組むこととする。
平成12年度の知的基盤整備の重点領域は、以下のとおり。
提案及び選定に配慮する課題は、我が国の21世紀を先導する科学技術の発展に寄与する知的基盤の整備を目指し、国家プロジェクトとして科学技術にブレーク・スルーをもたらすような分野横断的、体系的な研究開発、あるいは我が国が得意とする先端材料、材料加工技術等の基盤技術または我が国として取り組む必要性が高いが、基盤整備が遅れている技術分野の強化・高度化に資する研究開発とする。
平成11年6月24日
科学技術会議政策委員会
我が国が、厳しい国際競争や急速に進む社会の高齢化等に直面する中で、様々な国家的・社会的な課題を克服していくために、科学技術の果たす役割はますます重要なものとなっている。
政府においては、平成8年に科学技術基本計画を策定し、科学技術の振興に努めてきたが、現在、政策委員会は基本計画のフォローアップを進めており、先般、「科学技術基本計画のフォローアップについて(中間取りまとめ)」として、結果の整理を行った。平成12年度は5カ年にわたる計画の最終年度に当たることから、基本計画に掲げられた目標の達成に向け、諸施策の展開に努めていくことが必要である。
以上のような状況から、平成12年度の科学技術振興に関する重点指針の決定に当たっては、各省庁が重要と考えている国家的・社会的ニーズの調査結果を踏まえつつ、科学技術が対応すべき当面の政策課題を政策委員会において整理した。さらに、これら政策課題及び科学技術基本計画のフォローアップにおいて重要と考えられた課題に基づいて、平成12年度の重点事項の取りまとめを行った。
世界的にみて水準の高い先導的・創造的な基礎研究を推進し、人類の文化と知的体系の構築に重要な役割を果たすことによって、「知的存在感のある国」となることを目指す。
このためには、基礎研究が何よりも重要であり、基本的に研究者の創意による研究を発展させる必要がある。
主な科学技術政策課題は次のとおり。
新産業の創出等により、厳しい経済の状況を打開し、雇用の確保を図るため、萌芽的基礎研究や応用分野の研究開発の推進に努める。
主な科学技術政策課題は次のとおり。
人文・社会・自然科学にわたる幅広い分野の統合的推進に配慮しつつ、国民生活の安全性と快適性を保障する社会の形成に寄与する研究開発を推進する。
主な科学技術政策課題は次のとおり。
1で述べた国家的・社会的ニーズを踏まえた政策課題は、いずれも中長期的に努力を傾注すべき重要な課題である。このような政策課題を念頭に置き、我が国が置かれている状況や世界の科学技術の進歩を勘案すると、平成12年度の科学技術の振興に当たっては、特に以下の事項を重点的かつ緊急に推進することが必要である。なお、これらの事項は
1の(1)から(3)のいずれにも関わるものである。
4.産学官の連携と技術移転の推進(情報交流の推進も含む)
また、これら4つの事項に取り組むに当たっては、基礎研究の推進に配慮するとともに、国際社会に対する貢献及び世界をリードする研究開発の実施に留意することが必要である。
「科学技術基本計画のフォローアップについて(中間取りまとめ)」(平成11年4月22日政策委員会決定)において指摘された世界水準の科学技術を目指した環境作り等の事項について今後推進していく必要があり、平成12年度には、特に以下の事項に取り組むことが必要である。
(a)世界との競争をより一層明確に意識し、研究の質的向上を目指した環境整備を推進すること。特に、
(b)世界水準の研究を達成するための評価システムづくりと評価結果の資源配分等への反映に努めること。その際、機関や研究の性格を十分に考慮すること。
その他、中間取りまとめで指摘された科学技術に関する国民の理解の増進に努めることが重要である。
ライフサイエンスと情報科学とが融合する領域の研究。ゲノム情報だけでなく遺伝子から蛋白の構造の構造や機能までを含めた生物情報を広く活用することを目的とした生物データ全体を取り扱う総合的な科学。
遺伝子、細胞資源の収集、標準化、保存、研究者の研究機関等への供給等の業務を行うため、これらの資源の保存を行っている施設若しくはその機関。
食品には栄養源となるという1次機能、おいしいという2次機能に加え、体を 調節するという3次機能があると言われており、この3次機能を活用した食品の 総称を言う。特定健康用食品とも言う。
細胞を人為的に分化・成長させて、人工的に臓器或いは組織を作り出す技術。人工皮膚や軟骨、骨、靱帯等が既に開発されている。「ティッシュ」は「組織」の意。
科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当)
-- 登録:平成21年以前 --