生命倫理に関わる諸問題に関する研究開発動向及び社会的合意形成に関する調査 2)ヒトゲノムの研究開発動向及び取扱いに関する調査、生命倫理問題に対する社会的合意形成の手法及びインフォームド・コンセントの在り方に関する調査[第203号]

(委託先:三井情報開発株式会社)

‐第203号‐
平成12年7月13日

調査の概要

 本調査は、科学技術振興調整費により、平成11年度から平成12年度にかけて実施しているものであり、今回は平成11年度の調査結果について報告するものである。

目的

 最近の生命科学研究開発の進展により、生命科学と人間社会との接点において新たに生じた人の尊厳や倫理、個人の遺伝情報の保護等の問題が拡大しつつあり、今後、これらの問題に対して、自然科学、人文科学の両方の観点から十分な検討を加え、適切な対応をしていく必要があることから、国内外の研究開発動向、生命倫理問題に対する社会的合意形成の手法等について調査し、科学技術会議の生命倫理委員会等における政策審議に資するため、ヒトゲノムの取扱いに関する検討及び、生命倫理に対する社会的合意形成の手法に関する検討を実施した。

調査結果

(1)ヒトゲノムの研究開発動向及び取扱いに関する調査

 ヒトゲノム研究、特に個人の遺伝情報の取扱いにおいて、近い将来どのような病気になりやすいかといったリスクがわかることにより、保険加入、雇用等の差別が生じるといった問題、また遺伝情報は本人だけでなく、家族のリスクもわかってしまうといった問題がある。以下の11名の有識者からなる調査検討委員会にて準備作業を行ったヒトゲノム研究の基本的倫理規範たる「ヒトゲノム研究に関する基本原則(案)」は、生命倫理委員会、ヒトゲノム研究小委員会に提案され審議が行われた。

(委員長) 位田 隆一 京都大学大学院法学研究科教授
(委員) 油谷 浩幸 東京大学先端科学技術研究センター助教授
大山 真未 科学技術庁科学技術政策研究所第2調査研究グループ上席研究官
高乗 仁 藤沢薬品工業研究本部部長研究員
玉井 真理子 信州大学医療技術短期大学部助教授
戸田 達史 東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター助教授
(現:大阪大学大学院医学系研究科バイオメディカル教育研究センター教授)
丸山 英二 神戸大学法学部教授
水沢 博 国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部第三室室長
森川 功 早稲田大学人間総合研究センター客員研究員(国際医療福祉大学非常勤講師)
森崎 隆幸 国立循環器センター研究所バイオサイエンス部部長
山内 正剛 放射線医学総合研究所第2研究グループ主任研究官

(2)生命倫理に対する社会的合意形成の手法及びインフォームド・コンセントのあり方に関する調査

 生命倫理に対する社会的合意形成のためには、国民各層に対する情報提供、学校教育における生物学と生命科学に関わる基礎教育が重要である。そして、国民が生命科学に関する議論・意見表明を行うために、一般市民が評価パネルを形成する方法(コンセンサス会議等)と評価パネルを様々な当事者・利害関係者、一般市民を含んで形成する方法(ワークショップ等)がある。国民の声を反映する政策立案過程・体制の確立・政策手法として、定性的手法(ワークショップ、コンセンサス会議等)、定量的な手法(アンケート調査等)の組み合わせによって、国民各層及び関係団体の意見(パブリックコメント)を繰り返し把握する機会を織り込むことが望ましいと言える。

今後の課題

 ヒトゲノム研究の成果を用いた診断、予防、治療等の応用面においてもさまざまな課題がある。ヒトゲノム研究の応用段階での問題点を整理、分析し、その対応の検討を行う必要がある。また、社会的合意形成手法に関しては、具体的な課題をテーマに各種手法(コンセンサス会議、ワークショップ等)の試みを行い、我が国に適した生命倫理問題に対する社会的合意形成手法の検討を行う必要がある。

お問合せ先

科学技術庁研究開発局ライフサイエンス課

小郷 克幸
電話番号:03‐3581‐5271(内線422)

(科学技術庁研究開発局ライフサイエンス課)

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