生物遺伝資源などの知的基盤整備に関する調査 1)生物遺伝資源導入促進のための国際環境に関する調査[第211号]

(委託先:株式会社三菱総合研究所)

‐第211号‐
平成12年10月12日

調査の概要

 本調査は、科学技術振興調整費により、平成10年度から平成11年度にかけて実施したものであり、今回は平成11年度の調査結果について報告するものである。

目的

 植物におけるFAOのような多国間で議論できる場のない微生物を中心として、先進国における遺伝資源へのアクセス状況について基礎情報を整理するとともに遺伝資源をめぐる諸課題(利益配分義務等)への先進国のジーンバンク等の対応状況を調査することを目的に実施した。

調査結果

1.欧米先進国等の遺伝資源アクセスを取り巻く状況

1)植物遺伝資源を取り巻く状況

 FAOの「国際的申し合わせ」にあるように、欧米諸国では遺伝資源への自由なアクセスが基本的姿勢である。

食物・農産物

 多くの国が批准した生物多様性条約への適合の観点から、FAOの申し合わせの改正交渉が中心となっている。FAOとの合意に基づき、CGIARが独自のMTA、MAAを使用しており、今後の取組の参考になるものと考えられる。
 しかしながら、欧州においては、既にMTAやMAAを用意しているのはCGNなど数機関のみであり、わずかにECP/GRによるMTAの統一化の動きがあるにすぎない。
 また、米国では、欧州等との協力の動きはなく、独自の政策のもとに対応している。

その他の植物

 まとまった取組としては、植物園の「共通政策ガイドライン」作成の動きが代表的である。

2)微生物遺伝資源を取り巻く状況

 EUの予算により、国際機関のOECD、IUCN(国際自然保護連合)等や、先進国(イギリス、ベルギー等の機関)、途上国(コスタリカ、ブラジル等の機関)が関与して行われているMOSAICCプロジェクト(現在継続中)が大きなポイントとなる。同プロジェクトには、1999年2月以降ドイツ、オランダ等の機関も検討に加わっている
 一方、米国では、国際的な統一化の動きとは異なり各機関が個別のMTA、MAA等に関する取り決めに基づき、遺伝資源のアクセスを行っている。

2.遺伝資源へのアクセスと利益配分に関する事例調査

 遺伝資源アクセスに関する契約は、(1)遺伝資源収集の同意に関する契約、(2)共同研究開発に関する契約、(3)利益配分に関する契約の3種類に分類される。
 同意に至る交渉が難航することがある利益配分の契約内容については、遺伝資源を使用できるライセンスに対するロイヤリティ費用・算出方法、サンプル毎の料金、研究信託基金や環境保全基金への配分、研究用前払金等、事例毎に多種多様な形態を取っている。

今後の課題

  • 1)生物遺伝資源全般を網羅した配慮の必要性
  • 2)金銭的利益配分に関する国内外での検討の積極的な推進
  • 3)国内の生物遺伝資源アクセスと利益配分の適用事例調査が必要

  • CGIAR:国際農業研究協議グループ
  • MTA:遺伝資源移転契約
  • MAA:遺伝資源獲得契約
  • ECP/GR :The European Cooprative Programme for Crop Genetic Resources Networks
  • CGN:Center for Genetic Resources
  • MOSAICC:Micro‐organisms sustainable use and access regulation international code of conduct
     微生物の持続可能な利用とアクセス規制の国際的行動規範

お問合せ先

農林水産省農林水産技術会議事務局連絡調整課

大川
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(農林水産省農林水産技術会議事務局連絡調整課)

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