科学技術に係るモラルに関する調査[第223号]

(委託先:社団法人日本技術士会)

‐第223号‐
平成13年11月21日

1.調査の概要

 調本査は、科学技術振興調整費により平成12年度に実施されたものである。
 目的:科学技術が社会に与える影響の大きさや、技術者倫理がグローバルな共通認識となり、技術者倫理の徹底の必要性が唱えられてきたことを受けて、(1)モラル関連事故についての事例及び技術者倫理教育の現況(2)技術者継続教育体系の現況について把握し、我が国における技術者倫理教育を含む技術者教育体系を構築することを目的として行ったものである。

2.調査の内容

(1)モラル関連事故についての事例及び技術者倫理教育の現況

(ア)国内調査

  1. まず、我が国の事故事例等に関して文献調査を行い、技術者倫理が問題となる類型(「モラル要素」)を抽出。
  2. 我が国の大学における技術者倫理の教育目的、理工系の一般教養との関係、教育手段等について現状調査を実施。併せて、学協会における技術者倫理に関する問題意識や倫理規定等を調査。

(イ)海外調査

  1. 海外の大学における技術者倫理教育の実施状況を調査。
  2. 歴史ある技術者団体等における技術者倫理に関する問題意識、徹底状況を調査。

(2)技術者継続教育体系の現況

(ア)国内調査

  1. 継続教育への取り組みを調査。
  2. 企業内における研修等の企業内教育の実施状況を調査。

(イ)海外調査

  1. 海外の技術系学協会における継続教育への取り組みを調査。
  2. 大学における一般の技術者向け教育手段の内容等の調査。

3.調査の結果

(1)「モラル関連事故についての事例及び技術者倫理教育の現況」

 「モラル関連事故についての事例及び技術者倫理教育の現況」技術者倫理に影響を及ぼす要素として、「規範の遵守」や「守秘義務と技術者の権利」など27に及ぶ「モラル要素」を抽出し、現実に発生した事故との対応関係を整理することができた。海外における技術者倫理に関して、その問題意識や技術者倫理の構成要素に関する学問的成果を整理し、米国においては、1995年に工学教育の第三者認定を行うABET(工学技術教育認定委員会)により新しい認定基準の中に技術者の倫理責任を明確に示したこともあり、技術者倫理教育が定着しつつある現状が判明した。また、我が国の調査した団体において「倫理規程」(日本機械学会1999)や「倫理綱領」(電子情報通信学会1998)の制定や改訂(日本技術士会、土木学会)が進められている状況が判明した。
 次いで、大学における技術者倫理教育については、海外では「主観的アプローチ」「客観的アプローチ」等を導入したケースメソッド等による倫理教育が進められており、我が国では、大阪大学、金沢工業大学等の10大学において、積極的に倫理教育の導入が進められていることが判明した。今後は、技術者倫理教育に関する適切なテキスト、補助教材などが求められる。

(2)「技術者継続教育体系の現況」

 我が国においては、昨年改正された技術士法において資質向上の責務が明示されたことを受けて継続教育への関心が高まっており、いくつかの学協会においてはその実施に着手しているところである。今後は、海外に比して沿革も浅いことから、一層の定着・進展が必要であることが判明した。 

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