「2003年春の関東地方の花粉飛散について」[第234号]

‐第234号‐
平成15年1月31日

平成14年度科学技術振興調整費
「花粉症克服に向けた総合研究」
スギ花粉暴露回避に関する研究班

 関東地方における2003年春のスギ花粉の飛散量は前年よりやや少なくなるものの過去の平均に比較すると1.2倍から1.5倍程度になる見込み。4年連続の大量飛散が予想されている。また、花粉の飛散の開始は平年並みかやや早く、関東南部では2月10日前後、北部では2月中旬になる見込みである。

 平成9年度から科学技術庁(現文部科学省)の振興調整費で始まった「花粉症克服に向けた総合研究」において、第3班は花粉の暴露回避に関する研究を行い、多くの成果を得た。その中で花粉の飛散量について従来より精度の高い予測手法を開発し、研究途中の平成10年春から関東における花粉の飛散量の予測について発表を行っている。従来の花粉飛散量予報は夏の気象条件のみからの予測であったが、本研究では花粉を放出するスギ林の雄花生産量の推定値を加えた予測式を開発した。表‐1には雄花生産(翌年の花粉飛散量と連動)に影響を与える2002年夏の東京における各種気象条件を示した。また、表‐2は過去5年間のスギ雄花の生産指数と翌年春の東京の花粉飛散量を示す。

最高気温 平均気温 降水量 平均湿度 日射量 日照時間
6月上旬 28.7 23.8 0.5 55 23 91.5
6月中旬 25.2 21.6 100.5 76 8.6 17.6
6月下旬 22.1 19.3 50.5 76 9.9 14.2
7月上旬 29.6 26.4 64.5 74 13.8 36.3
7月中旬 32.8 28.8 45.5 65 20.4 80.7
7月下旬 32.5 28.6 14 70 18.6 72.5
8月上旬 34.4 29.8 42 64 21 96.8
8月中旬 31.6 27.7 65.5 68 16.4 60.9
8月上旬 30.6 26.7 12.5 66 12.5 73.3
ミリ メガジュール毎平方メートル 時間

表‐1 2002年夏の気象条件(東京)

花粉数 雄花指数
1998 2110 1372
1999 673 159
2000 4806 2216
2001 3686 1600
2002 6460 1691
2003 1697

表‐2 スギ雄花の状況

※花粉数の単位は、花粉飛散シーズン中にダーラム型花粉採集器で採集される花粉数(ガラス板1平方センチメートルあたりに付着したもの)の積算値である。観測地は東京。

 2002年の夏は表‐1で見るように最高気温、平均気温ともに7月中旬から8月上旬にかけて高い状況が続いた。一方、降水量は前年よりも多い状態が続いた。降水量が多くなった一方で日射量、日照時間ともに例年よりも多くなっている。なお、気象条件が雄花生産量に影響する期間は7月中旬から8月である。花粉を放出するスギ雄花の生産量指数は1697でほぼ前年並みであった。これらのデータから予測される関東地方における2003年春のスギ花粉の飛散量は表‐3の通りである。

予測値 2002年
東京 3830~5110 6460
横浜 2800~3730 4876
船橋 2470~3300 4355
坂戸 7940~10600 10111
水戸 8020~10690 11583
宇都宮 5050~6730 11786
前橋 4240~5650 6280

表‐3 各地の予測花粉数

 また、花粉の飛散開始は1月の気温の経過によってその時期が決まる。2003年の1月は中旬以降気温の高い日が多くなっており、1月全体としてはほぼ平年並みの気温になる見込みである。また、昨年の11月が低温だったためにスギの花は早めに休眠に入っており、これは開花が早まる可能性を示している。このため、花粉の飛散開始は各地とも平年並みかやや早く、関東南部では2月10日前後、関東北部では2月中旬になる見込みである。

問合わせ先

【研究内容】 平成14年度科学技術振興調整費「花粉症克服に向けた総合研究」
 「スギ花粉暴露回避に関する研究班」班長
 財団法人 日本気象協会気象情報部専任主任技師 村山 貢司
 電話 03‐5958‐8188
【事務局】 文部科学省研究振興局ライフサイエンス課 担当者 斎藤 崇
 電話 03‐5253‐4105

お問合せ先

研究振興局ライフサイエンス課

(研究振興局ライフサイエンス課)

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