(事後評価)
(実施期間:平成17~19年度)
代表機関:デジタルハリウッド株式会社(代表者:三淵 啓自)
参画機関:株式会社NTTデータ、株式会社フジヤマ
次世代デジタルシネマ標準として提唱されている4Kデジタル800万画素の超高精細度フォーマットにCG映像を対応させることができるよう、1.大規模シミュレーションを必要とするデジタル画像制作ツールの研究開発、2.フォトリアリスティックなCGを分散コンピューティングで実現するレンダリングソフトウェアに関する研究開発、3.インターネット映像配信における多言語化に関する研究と実証実験、以上の3つについて我が国の先進的情報環境を高度に利用し、世界に類例のない次世代CG映像制作環境構築を行うことを目指した。
次世代の高画素ディスプレィ対応のコンテンツを実現したことは、新規の取組の観点では評価できる。しかしながら、本研究の課題がどこにあって、どのように解決されたかが明確にされていない。さらには、既存技術を組み合わせる場合に発生するどのような問題を、どのように解決したかが評価できるようにまとめられていない。また、技術的新規性、制作したツールの有効性などが明確に示されておらず、試行の結果、最初の予測と何が同じで、何が異なったかも示されていない。研究成果がコンテンツ産業のボトルネックになっている課題解決にどのように活かされるかを明確にすることが求められる。
<総合評価:C>
映像制作を行う点については目標を達成しているが、4Kシネマの作成における課題を解決したかどうかという点では疑問が残る。使いやすいソフトウェアツールを開発する点においては、ある程度の成果を上げていると考えられるが、開発した手法で何がどの程度改善されたのかが明確になっていない。また、分散レンダリングは興味深い試みであるものの、研究開発技術における新規性については疑問が残る。一方、インターネット動画配信における多言語化に関する研究は評価できる。
4Kデジタル800万画素の超高精細度コンテンツを作成できたことは、情報発信には意味がある。しかしながら、他の手法でも今回の作品は実現できるとすれば、その意味は薄くなる。現状に較べて、コストと期間をどれくらい下げられるか、また、開発手法が他にどのように適用出来るかなどを示す必要がある。国内外を含めて査読付き原著論文発表が殆どなく、学術的発表は極めて不十分である。
サブテーマ三本柱の目標設定は良好と思われるが、国外における類似研究や製品と比較した場合に研究計画の新規性が弱い。全体的に開発の要素が多く、研究部分についてもう少し体制を割くべきであった感が否めない。単に映像を作成したという観点では妥当であるが、実現コストを含めた手法の評価・普及のための分析と解決策の立案という観点では、計算機ハードウェア、構造化ソフトウェア、ネットワークシステム研究・設計者との協力が必要であったと判断される。
制作したツール群をデジタルハリウッド大学で教育に利用している点は評価できる。しかしながら、実用面で既存のツールを上回るものができるかわからない。また、分散レンダリングについても、参加者のインセンティブに関する仕組みが入っていない。分散レンダリングへの参加が続かないと、低コストを実現する可能性が低いと考えられる。そうなると今後の競争力、発展性に疑問が残る。今後どのように発展させるか、実際の検証や使用、商用への転用などがどの程度になるか、明確にすることが求められる。
総合評価 | 目標達成度 | 情報発信 | 研究計画・ 実施体制 | 実施期間終了時に おける取り組みの 継続性・発展性 |
C | c | c | c | c |
科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当)
-- 登録:平成21年以前 --