11.ナノミセル型siRNA送達システムの開発

(事後評価)

(実施期間:平成17~19年度)

代表機関:東京大学(代表者:片岡 一則)
共同研究機関:株式会社ジーンケア研究所

課題の概要

 東京大学において創出されたナノミセル型薬物送達キャリアと株式会社ジーンケア研究所が見出した画期的制ガン効果を示すsiRNA(small interference RNA)を組み合わせる事により、最小限の副作用でガンの標的治療を達成する「siRNA送達システム」を開発し、3年後の臨床応用の実現を目指した。

(1)総合評価(所期の計画と同等の取組が行われている)

 本課題は産学連携のプロジェクトとして、大学および共同研究企業の両者の役割が明確であり、目標に向かって一定の成果を上げている。研究成果としてsiRNAの配列最適化、キャリア高分子の化学構造、分子修飾および混合比等の検討の結果、最適構造を有するsiRNA内包ナノミセル型薬物送達キャリアの開発の見通しが立ったものと評価された。しかしながら、当初の目標である臨床応用の検証には至らず、目標設定および計画に難があったものと考える。今後、大手製薬企業等との連携を図り、臨床応用への発展を期待する。
 以上のことから所期の計画と同等の取組が行われていると判断された。

<総合評価:B>

(2)個別評価

1.目標達成度

 siRNA伝送システムの開発において検討された個々の研究要素については重要な知見が積み上げられ、問題点とその解決法も明確に示されており、基礎的研究課題への解決戦略に問題はないと思われる。新しい知見も多く得られており、研究としての達成度は評価できる。しかしながら、当初目標である臨床試験に向けた詳細な毒性・薬理・薬物動態試験の実施には至らず、期間に比べて目標が高すぎたとの印象であり、特に臨床試験の期間内開始は達成困難な目標であったと思われる。
 目標達成度は所期の目標をやや下回っていると判断された。

2.研究成果

 siRNAの遺伝子ノックダウン効果とナノミセルの高分子構造の検討、RecQL1を標的とするsiRNAの最適配列の検討、22/26癌細胞株での増殖抑制の確認、siRNAの毒性評価と血中での10時間以上の滞留能の確認等、要素技術の着実な進捗・進展が認められる。臨床応用に向けた取組の不十分さはあるものの、ナノミセルを用いたsiRNA伝送システムの学術基盤が形成されたものと評価できる。また、関連の特許出願、論文発表等も十分なされており、所期の計画と同等の成果が得られていると判断された。

3.研究計画・実施体制

 研究成果については良好な結果が得られている。これは研究の役割分担体制が明確であり、産学の効率的な連携がなされていたためと評価できる。一方、3年間で臨床応用への道筋をつけることを目的としたが、困難な課題であることは当初より予想されており、臨床試験に向けたパートナーを計画当初から加えておく等、早期実用化に向けた計画の対応が必要であった。今後、臨床応用に向け大手製薬企業等と新規連携を図り、疾患ターゲットの選定、臨床試験開始等に向けて、さらなる連携体制の構築・発展が期待される。

(3)評価結果 

総合評価目標達成度研究成果研究計画・実施体制
Bcbb

お問合せ先

科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当)

(科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当))

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