4.フレキシブル・ユビキタス端末の実現

(事後評価)

(実施期間:平成17~19年度)

代表機関:京都大学(代表者:年光 昭夫)
共同研究機関:
ローム株式会社、株式会社三菱化学科学技術研究センター、株式会社日立製作所、 パイオニア株式会社、日本電信電話株式会社

課題の概要

 有機系エレクトロニクス材料による1.発光トランジスタを構成する有機化合物および新規デバイス構造の開発2.高効率有機太陽電池の開発3.高密度3次元光記録材料の設計と合成4.フレキシブル、透明、低熱膨張係数材料の開発および耐湿性、耐熱性向上のための化学修飾、大量生産可能で低コストの繊維材料の探索および生産方法の確立によるデバイス化、以上4つの要素技術開発を進め、さらにそれらの技術統合を図り、薄くて軽いフレキシブル・ユビキタス端末を実現することを目的とした。

(1)総合評価(所期の計画と同等の取組が行われている)

 5社の参画による全有機エレクトロニクスデバイスに特化した共同研究の推進という新しいモデルを提案し、研究実施において大学と企業間の交流により、材料開発、デバイス開発など役割分担を明確化し本研究を次段階に進展させる素地が形成された点が評価できる。将来技術の基礎研究段階から多くの企業を参画させた点は大きな意義がある。ただ、各要素技術の到達点、さらには端末の実現が未完であることには若干不満が残る。達成された各要素技術は、信頼性を高めるとともに、それぞれの要素技術にふさわしい事業化の形態を考えることが望まれる。

<総合評価:B>

(2)個別評価

1.目標達成度

 4つの要素技術については共に所期の目標を概ね達成している。サブテーマが多く、目標を達成したもの、不十分であるものが混在しているが、総合的には目標をクリアしていると判断された。フレキシブル・ユビキタス端末への統合という目標設定は、一般的に分かり易くかつ大変興味深いものである。しかしながら、融合、統合技術の集大成である端末についてはCGによるデモ的なイメージは理解できるものの、ターゲットとして当初掲げられた実際に動作するフレキシブル・ユビキタス端末は実現していない。最終的に試作品が完成していないため、さらに説得力のある小型化・一体化への技術的なシナリオを示すことが求められる。

2.研究成果

 個々の成果に関して、達成度にはバラつきが見られるが、一部では高いレベルの成果が見受けられる。フレキシブル透明基板については、植物という持続型資源でこれを実現したことは高く評価できる。所定の目標達成に加えて、量産化にある程度の方向性が見えており、事業化を見据えたものとなっている。発光トランジスタは難易度の高い技術ではあるが、一つの提案としての役割を果たした。OLETの優位性は現在のOLEDと比較しても不明であり、リーディング技術になるかどうかは不明であるが、一つの挑戦としての意義がある。高効率光記録材料の開発は、これまでの材料を凌駕していると考えられるものの、光記録メモリについては既存技術と比較した場合インパクトが弱い。有機薄膜太陽電池は目標を下回っており、フレキシブル・ユビキタス端末に向けた電源の開発か、一般的な用途も含む高効率な太陽電池の開発かによって方向性も異なるので、開発指針を明確にすべきである。

3.研究計画・実施体制

 5企業の垂直連携を組織化した研究体制を構築したことは非常に意義が大きい。産学共同体制でチャレンジングなテーマに取り組むシステムが機能したこと、複数の企業を束ねた研究推進委員会の設置により目標の共有、要素技術の最適化、融合を効率良く進めたことは高く評価できる。多岐のテーマにわたったプロジェクトであるにもかかわらず、積極的かつ効果的に連携されたことが各成果に繋がっており、成功事例と言うことができる。

(3)評価結果 

総合評価目標達成度研究成果研究計画・実施体制
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お問合せ先

科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当)

(科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当))

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