理数学生応援プロジェクト(平成21年度採択大学)中間評価について

  理数学生応援プロジェクトでは、専門家や有識者により、事業の進捗状況や成果等を確認し、適切な助言や改善点の指摘を行うことで、事業の効果的な実施を図り、その目的が十分達成できるよう事業実施大学の体制・運営の適正を図ることを目的として、事業開始2年目である大学を対象に、中間評価を行うこととしています。
  この度、平成21年度に採択された10大学を対象として、理数学生応援プロジェクト企画評価委員会において中間評価を行い、以下のとおり評価結果を取りまとめました。

 1.中間評価方法

  理数学生応援プロジェクト企画評価委員会において、中間評価対象大学(平成21年度採択10大学)から提出のあった中間評価資料による書面評価及び面接を実施し、以下の4区分における評価(絶対評価)を行いました。

 [評価の区分]

A 優れた成果が期待できる取組であり、計画通り推進すべき
B 一定の成果が期待できる取組であり、中間評価の所見に留意し計画を推進すべき
C 十分な成果が期待できない取組であり、計画の工夫や改善が必要
D 現状のままでは十分な成果が得られない取組であり、計画の大幅な見直し、又は終了が必要

2.中間評価結果

 中間評価の結果は下表のとおり。

 

大学数

総数

10

A評価

5

B評価

4

C評価

1

D評価

0

 

中間評価結果詳細

実施大学

評価

企画評価委員会からの所見

総評

 各大学の取組は、一部改善が望まれる部分があるものの、概ね着実に進行しているものと判断される。

筑波大学

A

  • 全体として計画の実施状況が良好であり、大変評価できる内容の取組である。
  • 研究者キャリア実体験プログラムは、「予算獲得」→「研究」→「発表」という重要な行動パターンを学ぶことができる非常に特徴的かつ実践的で、1つのモデルとなりうるものである。広く他大学等へ公開していくことを期待する。
  • 個人研究のみならず、グループ研究におけるリーダーとなる学生を育成する取組も期待される。
  • 専用の居室(研究交流室)の設置や担当者(専任教員、専任事務補佐員)の配置などに、大学が意欲的に取り組もうとする点が評価できる。これらの一層の実効的な活用が期待される。
  • プログラムへの参加学生数が少ないので、今後改善に向けた工夫と努力を望みたい。
  • 委託期間終了後の取組継続のため、企業との連携を進めていくことが期待される。

群馬大学

B

  • 育てたい学生像に段階的に近づけるため、意欲的な取組を進めていることは評価できる。
  • 平成21年度、22年度と継続して参加している学生が多いことも評価できる。
  • 現在までのところ、シンポジウムなどのイベント的なプログラムが中心であり、そのこと自体は学生の意欲喚起という部分では効果があると思われるが、学生に対して、より積極的な活動の機会を与える工夫が必要である。
  • 特に、より高度な内容を求めるリーダー的素養を持った学生にとっては、プログラムの内容にやや物足りなさを感じてしまう可能性があるので、それらの学生に対する適切な発表や指導の機会の充実等が望まれる。
  • 本プロジェクトの趣旨に沿った、新たな入試制度を導入したことは評価できる。高校等との連携、更なる広報の充実などの工夫が望まれる。

お茶の水女子大学

C

  • 多様な取組が実施されており、その意欲は評価できる。
  • 一方で、学部全体のカリキュラム改革である複数プログラム選択履修制のシステム開発など、理学部の学生全体を対象とした取組に重点が置かれてきており、これまでのところ、全体として見て、必ずしも「理数学生応援プロジェクト」の趣旨に沿わない点がある。「理数学生応援プロジェクト」の一環として取組を進める上では、意欲ある理数学生に特化した取組の強化を求める。
  • 複数プログラム選択履修制や、パイロットプログラム・特設授業群の履修などの総体を通じて、育成しようとする人材像が不明確であり、また、プログラム全体を通した、はっきりとした芯が見えにくいため、狙いを明確にされたい。
  • プレ卒業研究の対応を、より充実させるべきである。
  • 本プログラムの効果を大学としてどのように検証・分析するかという観点が弱いため、考察の充実が望まれる。

山梨大学

A

  • 地域の資源を十分に活用するとともに、プログラムに多数の教員が参加するなど全学的に取り組んでおり、熱意・意欲を感じる。高く評価できる取組である。
  • プロジェクトの全体像、それぞれの事業ともに狙いやプランが明瞭であることも評価できる。
  • マイハウスプランは、学科横断的な幅広い専門知識、経験を得ることができる取組として評価できる。
  • 共創学習支援室を全学生に開放し、ボトムアップ式支援が成功している点は興味深い。
  • 他大学への成果の普及も期待される。
  • 今後、それぞれのプランが学生の実力向上にどのように貢献したか、評価方法を検討していくことが望まれる。

信州大学

B

  • 概ね計画に沿って実施されており、地域性を活かした取組となっている点は評価できる。
  • サイエンスラウンジなどに、プログラムを経験した能動的意欲がある学生をメンターとして配置し、後輩に対して指導助言する仕組みは、ロールモデルとなる可能性がある取組である。
  • 1年次から段階的・継続的に学生を育てる観点から、途中からのプログラム参加については一定のルールも必要と考えられる。
  • 特に、数理・自然情報科学科の学生の参加が少ない。問題点を把握の上、改善に向けた対策を講じることが望まれる。
  • 実際に本プログラムに参加した学生の満足感は高いことから、プログラム参加学生の協力を得ながら、未参加学生に対してPRや周知を図っていくことなども有効と考えられる。
  • 委託期間終了後の継続性に懸念があるため、長期にわたって継続できるように取組・計画を進めることが望まれる。

静岡大学

A

  • 全体として計画性があり、実施状況も良く、優れた取組であると評価できる。
  • 特に、意欲ある学生に向けて様々なプログラムが用意されている。
  • 早期短期研究室配属プログラムは、低年次の学生が研究に対する興味・関心を高めることができる優れた取組である。ただし、採択課題の中に物理関係のテーマが見られないので、低年次の物理系の学生に対しても興味を喚起する工夫が望まれる。
  • フリーサイエンスルームの設置も効果的な試みであり、今後学生が有効に利用できるような工夫が期待される。
  • 本プログラムを経験した学生の学力、専門的能力がどのように推移しているかを、できる限り客観的に評価し、分析することが望まれる。
  • 長期的な継続性を維持できるように努めていくことが期待される。

名古屋工業大学

B

  • 当初計画は着実に実施されており、また、これまでの取組により出てきた課題を改善しようとする意欲がある点は評価できる。
  • 特別講義・特別ゼミ・自主研究活動は、評価できる取組である。
  • 参加学生がやや少数にとどまっている。学生に対して、より本プログラムをアピールする取組が望まれる。
  • 特に、学年途中で本プログラムへの参加を中止した学生の意見の中には、「もっと専門科目に関連した講義かと思ったのに、そうではなかった」というものが見られるところであり、モチベーションの高い学生に対し、1・2年次からの取組を更に充実していくことが期待される。
  • セラミックス関連分野を中心としたTIDAプログラムの専門性に期待するとともに、他大学へのモデル推進が期待される。
  • 高大連携の取組の更なる充実が期待される。

豊橋技術科学大学

A

  • 高専卒業生を主な対象とした、極めて特色のあるプロジェクトとして、目的や趣旨が明確であり、短い期間で成果も上がっており、高く評価できる取組である。
  • 同じ学生が、当初は「見習い」として、進級後はメンターとして、立場や役割を変えながら学習する「らせん型キャリアディベロップメントプログラム」は、優れた取組として評価できる。
  • 学生のプロジェクトへの関与度の評価について、CMS(コンテンツ管理システム)への書き込み等を活用し独特の方法を用いている。他の大学へのモデルとなることを期待したい。
  • 来年度から始まる2年生対象のプロジェクトの推進にも期待する。
  • プログラムの完成度は高いが、全般的に本プロジェクトとそれ以外の取組(次世代ロボット創出プロジェクト)との境界が不明瞭であるため、切り分け・差違を明確にし、「理数学生応援プロジェクト」の趣旨に沿って実施することが望まれる。

広島大学

A

  • 全体として申請された計画はよく実行され、地域とよく結びついており、高く評価できる取組である。
  • 科学オリンピックにおける成果を取り入れたAO入試を導入するなど、科学オリンピックを先導している点に、大学としての熱意を感じる。
  • 1年次より、モチベーションの高い学生に対しては、更に主体的に取り組めるプログラムが用意されることが期待される。
  • オープンエンドな学びを推進する上で、学習観についての尺度の確立や、教員間の意識の共有が望まれる。
  • 数学科の学生の受講者数が少ないので、数学科の学生の参加を促すことができるような、魅力あるプログラム構築が期待される。

熊本大学

B

  • 計画全体がよく練られ、わかり易く、大学のシステムとしての継続性も期待できる計画である。特に、本プログラムを、JABEE認定と齟齬をきたさないように編成したことについては評価できる。
  • 試行的な段階にとどまり、本格的にプログラムが実施されていない状況であり、進捗度は他大学と比べると非常に遅れている。来年度以降積極的な取組を求める。
  • より優秀で意欲的な学生が入学を希望するような体制の構築が望まれる。
  • 委託期間終了後を見据え、企業との連携を模索していることは評価できる。

 

 理数学生応援プロジェクト企画評価委員会委員

(座長) 坂口 謙吾

東京理科大学理工学部応用生物科学科教授

 

今井   勝

明治大学農学部農学科教授

 

植田 利久

慶應義塾大学理工学部機械工学科教授

 

大澤   寛 

木更津工業高等専門学校電気電子工学科教授

 

田口 哲男

高崎経済大学事務局高等学校課長

 

立川 仁典

横浜市立大学大学院生命ナノシステム科学研究科教授

 

中村 健蔵

東京大学数物連携宇宙研究機構特任教授

 

森田 康夫

東北大学教養教育院総長特命教授

 

渡邉 賢一

一般社団法人元気ジャパン代表理事

 

お問合せ先

科学技術・学術政策局基盤政策課

(科学技術・学術政策局基盤政策課)

-- 登録:平成23年02月 --