「科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業」第4回連絡協議会議事録

 

平成21年7月29日(水曜日)

【小林座長】  本日は多数の皆様にご参集いただきまして、どうもありがとうございます。今年で第4回になりますが、ただいまから科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業の連絡協議会を開催させていただきたいと存じます。
  この事業では、従来も大学、企業、あるいは学協会、NPO等が、人材と企業の交流をする、情報発信を進める、ガイダンス等を実施する、あるいは派遣型の研修をする等、いろいろな形でポスドク、ドクター等の若手研究者のキャリア選択に対する支援を組織的に進めてまいりました。この連絡協議会は、この事業に参加する実施機関が集まってネットワークを構築すると同時に、前方に企画評価委員会の委員もいますし、後方には文部科学省の関係者がいますが、実施機関とそういった皆さんとの情報交換、さらに問題の共有をするということを目的に開催しております。
  また、傍聴席には多数の方が本日来ていらっしゃいますが、実施機関だけではなくて、幅広く日本中の関連機関にこういった情報を広めて、また問題を共有していきたいということで開催してきているわけです。今年は4年目ということになります。実は、4年目ということは、逆に言いますと、最初に実施していた8機関はもう事業が終了したということです。そういう、節目のタイミングになりますが、そういったことも踏まえて今年は協議を進めてまいりたいと思っております。
  それでは、開催に先立ちまして、文部科学省の科学技術・学術政策局長の泉局長からごあいさつをいただきたいと思います。

【泉科学技術・学術政策局長】  文部科学省の科学技術・学術政策局長の泉でございます。ただいま座長の小林先生からお話がございましたように、この科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業でございますけれども、平成18年度からスタートいたしまして、3年間の支援ということで、最初に8機関、平成19年度スタートが4機関ということで、12機関にご参加いただいてここまでやってきているところでございます。
  ご案内のとおり、この科学技術関係人材、特に博士学位取得者がいろいろな場で活躍できるようにしていくという問題については、毎年1万6,000人ぐらいそういった方々が出てきて、その中で就職するという人数が6割ぐらいという状況になっているということで、本事業について、まさに社会のさまざまな場でそういった人材が活躍できるような方向を目指していく、そのための取り組みをいろいろと開拓していくということで始めたわけでございます。
  実は、ご案内かと思いますけれども、現在の科学技術基本計画は平成18年度から始まりまして5年間、22年度、来年度が最終年度になるわけでございますけれども、既にそれに向けまして、私ども文部科学省におきましても次期科学技術基本計画に向けた重要施策ということについての検討を科学技術・学術審議会のもとで始めたところでございます。本席にいらっしゃる機関の代表、あるいは評価委員の先生方にも、この基本計画特別委員会の委員でお入りいただいている先生もいらっしゃいますが、あわせて並行的に同じく科学技術・学術審議会にございます人材委員会という場におきましても、この基本計画特別委員会への論議にも資するように、この人材、特に博士学位取得者が多様な場で活躍できるようにという観点から、方策について検討を進めているところでございます。
  今申し上げました基本計画特別委員会におきまして、3回ほど開催しまして、人材というような個別の論点についての議論のところまではまだ行っておりませんけれども、総論的な問題意識をそれぞれの委員の先生方のお立場からお披瀝いただいている中でも、まさにこれからのイノベーション、あるいは知識基盤社会に向けた取り組みという中で、広い視野を持った博士課程レベルの人材がさまざまな場で活躍できる必要があると。そのためには、大学、産業界、国も含めて、それぞれいろいろな取り組みをしていく必要があるという問題意識が非常に強く、総論の議論の過程でも問題提起されているところでございます。やはり、今度の科学技術基本計画に向けても、この問題はかなり大きな論点になるというように認識しているところでございます。
  そういった意味で、この事業で得られたいろいろなモデルや、経験など、そういうものがよりこの博士人材が多様な場で活躍できるような社会になっていくために、1つの非常に大きな手がかりをもたらしてくれるものであるというように期待しているわけでございます。そういう意味で、毎年こういった形で連絡協議会もさせていただいているということでございます。
  今回も、これは毎年お願いしているところでございますけれども、関係機関の皆様におかれましては、それぞれの機関での情報を共有していただくということとともに、採択されていない機関のモデルになるような取り組みというものをぜひ引き続きお願いしたいと思いますし、支援が終わりました8機関につきましては、3年間の成果、ノウハウを生かしながら、引き続きそれぞれのところでお取り組みを続けていただくようにお願い申し上げたいと思っております。
  繰り返しになりますけれども、本連絡協議会はそういう意味で、このモデル的な事業の成果の普及、あるいは実施機関同士のネットワーク化ということを通じて情報交換を図り、さらに情報の共有を深めるということでございますので、ぜひ忌憚のないご意見、あるいは我々役所に対するいろいろな取り組みについてのご注文、ご意見といったことについても忌憚なくおっしゃっていただければと思います。また、私どもも、そういったここでのご議論等も踏まえながら、次期科学技術基本計画に向けた議論、あるいは来年度等の施策に向けた予算要求等に向けた検討に反映させていきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
  長くなりましたけれども、よろしくお願いいたします。

【小林座長】  どうもありがとうございました。
  それでは、次に事務局から資料の確認をお願いいたします。

【星野人材政策企画官】  それでは、資料の確認をさせていただきます。封筒の上に議事次第、委員名簿、座席票の3点があろうかと存じます。また、封筒の中に、今日の連絡協議会の資料の一式があろうかと思います。
  資料1といたしまして、委託事業終了機関の終了一式、ホチキスでとめたものです。資料2といたしまして、現在実施している委託事業実施機関の関連資料、ホチキスどめのもの。それから、参考資料といたしましてA3を二つ折りにしたものがございます。そのほか、委託事業の実施機関等の報告書につきまして、机上にそれぞれございます。欠落等、ございませんでしょうか。

【小林座長】  よろしいでしょうか。もし資料等の過不足がありましたら、事務局のほうにお知らせください。
  それでは、本日の進め方について、まずご説明をお願いします。

【星野人材政策企画官】  はい。それでは、本日の進め方につきましてご説明申し上げます。本日は、本事業の各機関からの説明資料に基づきまして、委託事業の終了機関からは、終了後の実施体制、取り組み内容、それから、現在実施中の委託事業の実施機関へのアドバイスなどにつきましてご説明をいただくとともに、現在委託事業を行っている実施機関からは、その後、現在の取り組み状況についてご報告をいただくという予定になっております。
  それから、時間の配分でございますけれども、既に終了している機関につきましては8分間でご説明をいただくとともに、現在実施中の機関につきましては15分間でご報告をいただくということで考えてございます。この終了機関と実施機関とを通してご報告をいただいて、その後に報告の終了後、45分程度、意見交換の時間をとらせていただければと存じます。
  極めて時間がタイトになってございますので、報告の進行において、事務局からベルを鳴らして合図をさせていただきたいと思っております。報告終了の2分前に1鈴、終了前に2鈴鳴らすということといたしますので、時間内でご説明を終えていただきますように、各説明者の方々におかれましてはよろしくご協力のほうをお願い申し上げます。

【小林座長】  ありがとうございました。それでは、これから始めますが、本日は長丁場になりますが一気に進めたいと思いますので、各機関、時間厳守の上よろしくお願いいたします。
  それでは、まず委託事業が終了している機関のほうからスタートします。まず北海道大学、お願いいたします。

【北海道大学】  それでは、北海道大学からお話しします。北海道大学は事業期間においては基礎科学系、そういう人材を一番活躍すべき領域は企業だというターゲットを決めて、そちらに行くに当たって何が問題であって、情報はどういう情報になっているのかということをはっきりさせたいというところで、事業期間をやりました。
  実際のところ中を見たら、結局は活躍すべき人間が活躍していないという状況ということが分かってきた。あとは、これ自体が、こういう事業でやっている限りはボトムアップであって、個別に上に上げていくという話で、それでは全学展開は進まないだろうというので、本事業期間終了後は、運営組織として人材育成本部というのを今年の4月に立ち上げました。そこでは、キャリアパスという柱と女性支援という、この2つの柱を持つ形で進めております。
  進めるに当たっては、大学の第2期の中期目標、中期計画の中に人材育成という柱を立てまして、その中にキャリアパス、女性支援、それから、若手育成という意味でテニュアトラックという、この3つのキーワードを中期計画の中に乗せまして、この中期計画期間中の執行する実行計画の推進を請け負うものだというのが人材育成本部だという位置づけで進めております。
  大学の経費として、ともかくお金を出させないと何も話が進まないので、特任教員を2名と事務補助員を4名、それから本来の事務職員を専任で2名つけるという形で、それにあとは学内教員の8名という協力教員をつけて、全体で現在これの展開をやっております。
  キャリアパスに関しましては、全学展開をやっていく。今まで理学、理系というのが中心だったので、それを農、工、いろいろなところに展開していく。次が、トップダウンで何ができるか。今までのボトムアップではなくて、トップダウンで何ができるか。それから、あとは全学で科学技術振興調整費も、G-COEもそうですけれども、進んでいる人材育成プログラムを連動させようとしています。それぞれの最終的な全学展開というものを、この人材育成本部で効果を上げる形が何なのかというのを探しながらすすめていこうということをしております。
  キャリアパス自体に関してですが、それについてはこの資料の1ページ目に少し並べていますが、今まで実施していましたJ-windowというデータベース、PD、DC向けの就職サイトや、双方向の会員制のネット、全学教育、大学院共通教育としてのキャリアパス教育を実施していく、それから、赤い糸会で企業の人間との交流会を進めていくと、こういうものでやっております。
  さらにもう一歩を進めたところには何を考えているかといいますと、大学院教育への連動というものをさらに進めたいと考えております。例えば、1つの専攻の中のDCのカリキュラムの中でカリキュラム化をしていく。もう一つは、PDシステム、要するにPDを採用するのが、自由に採用できないような形。逆に言うと、出た後まで責任持たせるような形のシステム化というのができないかというのがトップダウン型でやれることではないかというので、今検討しているという状態です。

【小林座長】  どうもありがとうございました。議論は後でまとめて行いますので、次に東北大学、お願いいたします。

【東北大学】  はい。東北大学からご報告させていただきます。東北の方は、お手元に、カラフルで七夕チックなパンフレットがあるかと思いますけれども、「高度技術経営人財キャリアセンター」ということで、キャリアパス多様化事業をやってきていました。私は副センター長をやっておりました高橋と申します。よろしくお願いします。
  お手元の資料ですけれども、この3年間で確認できたことと、終了後の実施体制を述べたいと思います。まず3年間で確認できたことの中で、(1)番、ポスドクや博士課程の学生にはキャリアパスに関する情報がほとんど入っていない。研究に没頭するという環境にいるわけで、本人達は情報収集の暇もノウハウもない。まして、PDについては支援体制もないということが当初から分かりました。
  2番目ですが、DCの就職は指導教員へお任せ、もしくはDC自分自身が開拓しなければならない。どこの大学にも学部や修士学生の対象となるキャリア支援部署というのがありますが、東北大学にもキャリア支援センターというのがあります。それと、各部局の就職担当教員というのがいますが、ほとんど相互連携はなしとなっています。しかも、この先生方や職員は多分に受け身的であって、企業に積極的に出向いて開拓や売り込みをするまでには至っていない。
  3番目が、DC、PDはマネジメントや人間力養成について勉強する機会がない。その機会を提供すれば、ほとんど吸収して修得可能である。これらの実務応用力や人間力というのは産業界、アカデミア界双方で要求されているものである。
  4番が、教員がDCを自分自身の研究補助者的な扱いをしているということ、これは当然雇用形態からそうですが、それを教育と考えていて、雇用していないのに、そう考えている先生方が結構いる。しかも、それを教育と考えているということであって、マネジメント力なんていうのは要らないと考えている教員が沢山いるということです。
  5番目が、PD、DCはキャリアパスで非常に悩み、困っているということで、大学としては組織的支援が必要であるということが認識されたということであります。
  大きな2番目の、本事業終了後の実施体制ですが、本年度は、総長が非常に認識が深いものですから、総長裁量経費を措置してやるということになりました。ただし、イノベ若手のプログラムに採択された場合にはさらに発展・展開する形でやろうということにしていましたが、幸いに採択いただいたものですから、吸収合体する形でやっていこうということで、下に5つほどあげてあります。
  全学的組織として、高度イノベーション博士人財育成センターというものを設置する。これは7月1日付でできました。以前は研究担当理事がやっていたのですが、所管としては、教育・学生支援というのがこの役割なので、教育担当理事に変更しました。所管の事務組織も、その中心を当時は研究協力部だったのですが、教育・学生支援部に変更して、事業終了後も、本来の仕事であるということに位置づけることにしました。
  3番目が、人間力・実務応用力というのは産業界から要請されるので、「高度技術経営塾」をそのまま発展・継続するということにしました。特に工学研究科ではドクターは全員これを必須するというコースをつくり、今マスターの方から立ち上げました。
  4番目が、キャリア支援室というのを設置して、既存組織のキャリア支援センター(学部・修士学生が対象)と連携して、ワンストップサービスできるようにやろうということを確認し進めています。
  5番目は、本事業を円滑的・効果的に進めるためには教員の理解と協力が必須なので、主要部局、特に理系は各部局から1名ずつ、企画運営委員会を設置してそれに、教授・准教授に参加してもらって、インターンシップなど、実施体制を含めて協力と検討していただくことにして、つい最近、先週第1回の委員会をやったということであります。
  アドバイスを申し述べると言うとおこがましいのですが、本事業は、産業界のニーズに対応した博士人材の輩出ということが大事であり、単なるポスドク対策といったものではありません。ですから、産業界のニーズに対応した人材育成のあり方とキャリアパス支援体制にメスを入れる施策ということで認識すべきです。したがって、産業界のニーズにこたえられる博士人材を育成すること、すなわち、大学は品質保証をして学生を出すということが大事だと思います。そのためには人間力だとか、実務応用力の養成は不可欠であるので、詰め込み方式ではなくて、本人たちの気づきを主体とした博士人材の教育を推進する必要があるということで、私どもは人財のザイはわざわざ財産の「財」にしてあるというのがそこであります。
  2番目ですが、これについては就職活動が含めまれますので、支援室長が、交代して説明いたします。

【東北大学】  キャリアアップ相談室をしております後藤でございます。2番目は、アドバイスというと僣越でございますけれども、参考になればと思いますので、申し上げます。待ちの姿勢から転換し、ニーズの把握とベストマッチングの実現ということですが、この待ちの姿勢というのは学内、学外とも包含した意味合いを含めております。学内的には各教授、研究室の理解、学外的には企業へのアプローチ、売り込み、こういうことも含めております。
  1行目に書いてございますが、これまでは、先生方が企業に出向いてお願いすることはほとんどないということでございます。むしろ皆無に近いということです。特にキャリアパス支援部署の人間が企業訪問をほとんどしていないということであります。したがって、下から2行目に飛びますが、本学ではDCやPDと直接面談するキャリア支援担当教員が、直接企業を訪問して、情報交換することによりベストマッチングが可能となり、さらに、大学側の対応がよければ企業との信頼関係が構築されることになります。
  ここに書いていないのですが、参考になればということで5つ申し上げます。まず1つ目は、学内での学生の募集方法についてです。掲示板に掲示しているだけでは、まず集まってきません。したがって、スタッフ全員で、全研究室のメールボックスにチラシを投函しています。これは毎回実施してきております。定期的な催しは必ずこのパターンをとっていまして、足で稼ぐ泥臭い仕事をやってまいりました。
  2つ目は、そこで集まった学生の面談ですが、これは予約制にしています。すぐ来てやるというわけにいきませんので、予約制にして、1人1時間から2時間かけてじっくり話をしているというのが2つ目でございます。
  3つ目は、その学生の就職希望先としてどこがいいのかなどいろいろございますので、そのために企業への売り込みを私と、今報告した高橋副センター長と2人で平成19年、20年と回りまして、現在までに138社の人事の人たちと名刺交換を終えております。または何度か訪問して人脈形成をしておりますので、就職の方もそのせいかある程度うまくいっているつもりです。
  それから、売り込みをして学生を送り出す場合ですが、ただ送り出したのでは、博士学生、ポスドクといえども企業の面接の経験があまりないということがあります。したがって、実は希望者に対して2人で面接トレーニングを必ずやっております。 最後ですが、内定した人を集めて社会へ出ていくに当っての意識づけを目的に内定者セミナーを計画していますが、これは来年の2月17日、全員集めてやっていこうという流れでやっています。以上でございます。

【小林座長】  ありがとうございます。それでは、次に理化学研究所、お願いいたします。

【理化学研究所】  理化学研究所の人事担当の役員をしおります古屋でございます。よろしくお願いいたします。私どもは、ちょうど3年間の事業を終了したということで、新しいフェーズに入っておりますが、これまでの3年間というのは、理研にとってこの事業は非常にありがたい事業でございました。
  理研は20年ほど前、1986年から任期制の研究者の制度を始めまして、大学とは少し違うかもしれませんが、プロジェクト研究という形で、ポスドクをはじめとした任期制の研究者の方を雇用して一定期間プロジェクトに参加していただく、そういう形でプロジェクト研究を進め、プロジェクトが終了すると、その研究者の方々が転出していくという制度をずっと持っております。特にミレニアムプロジェクトで多くのライフサイエンス系のプロジェクト研究を進めている中で、今現在でも2,300人ほどの任期制の研究者がおります。
  もともとのパーマネントの研究者というのが400人ぐらいでございますので、かなりの部分が私どもの任期制の研究者ということになります。ここはポスドクという中でも、若い人からシニアまでおりまして、いわゆる今の任期制研究者のキャリアパスの問題の中核になっているのかと思います。そういう意味で、これまで多くの任期制の研究者を抱えていながら、転出や、あっせんなどという意味であまり力を尽くしておりませんでした。
  平成16、17年ぐらいから、これは駄目というところで真剣に考え始めたところに、文部科学省でこの委託事業が始まりました。ちょうどこの委託事業が始まる前にキャリアサポート室というのを発足させまして、我々として考え始めてきたところでありましたので、極めてタイムリーなところでございました。
  理化学研究所は大学ではございませんので、就職に対するノウハウというのは全くゼロであります。今一人前といいますか、ある程度核になっている研究者がそのままいい仕事をして転出していく、いわば本人任せ、あるいはその研究プロジェクトのリーダーによっていたところが多かったわけでありますが、それをある形にしようということで、まさしくこのキャリアパス多様化促進事業というのを使わせていただいたということであります。
  そういうわけで、暗中模索の中でスタートいたしまして、まずはコンサルティングをやっていこうということで、先ほどのキャリアサポート室に専門の相談員を雇用し、あるいは事務系の職員を中心として相談ということを常にやれるような体制をつくっていたということ。それから、求人情報の集約ですとか、企業との連携という形の中で、ジョブフェアや、人材紹介会社のお世話になって、企業へ出すことも考えていました。アカデミックへ出たいという方が非常に多い中で、企業へ出るというマインドをつくることは大変なことでございます。
  なかなかアカデミックなポジションも、各大学さん、おられますけれども、今厳しい状況の中で考えていくと、企業へ出ることもどうかというマインドをつくることも大事だろうということで、人材紹介会社、あるいは企業さんとの連携のもとのいろいろなセミナーとか、ジョブフェアをやってまいりました。
  また、一方で、能力資源開発という形で、それこそ履歴書の書き方から面接の受け方までという、基本的なレベルから、自分の能力を生かすにはどうしたらいいかというところまで含めた総合的なセミナーをやってきたというところでございます。
  そんな3年間の中で、私どもは個人の自発的意思を尊重したキャリア支援、無理にどこかへ行けと言ったってなかなか難しい話ですので、そこをどういうふうにやっていくかというのは、やはり個々の意思を尊重していくということを考えて、多様なキャリアパスというのを進めてきた次第であります。
  お手元の資料にありますように、今年度から委託事業を終了いたしましたので、理事長裁量経費、特に先ほど言いました私どものプロジェクト研究というのが多くございますので、やはり理事長も任期制の研究者をどうやって転出していただくのか、本人の希望に沿った格好で出られるのかということは、常に気持ちの上で非常に重要視しておりますので、今理事長裁量経費の中で新しい実施体制をつくっていこうということで、資料にございますように研究系人材育成委員会をこれから本格的に立ち上げて、もっと総合的にやっていこうと思います。
  これまではキャリア支援という、相談を中心にしてやっておりましたけれども、もう少し人材育成に力を転じていこうということで、理研に来た時期、その人が育っていく時期、転身を考えていく時期ということをしっかりと植えつけて、今後のステージに応じた検討をしていこうと考えております。やはり研究系の人材の資質向上、もちろん、一人前の研究者をどう資質向上するのだといういろいろな意見はあるのですが、これは、例えばリーダーシップを持つような研究者に育てていく、マネジメントができる。ただ単に自分の専門分野だけがよくなっていくだけではなくて、そういう格好でマネジメントの分野とか、あるいは技術であれば、ある一定の技術だけではなくて、その技術を広げていくというような形で、その人たちの人材としての資質を高めていく方策を考えていこうと考えております。
  とりわけ次世代リーダー候補というのも大事な問題でありますので、今後それを軸にやっていこうと思っております。
  最後に、その他ということで、アドバイスというのは、1つ申し上げたいのは、形式的な何かを大量生産する工場のようなキャリアパスではなくて、個の尊重ということを私どもは十分に考えていきたい。きめ細かさが大事であろうと思います。やはり人は人、個人の考え方というのは大きいですので。まして、理研のようなところは、先ほど言いましたようにかなりシニアな方までいますので、その辺を考えたやり方をしていく。
  それから、常日ごろニーズ調査とその結果をフィードバックさせてアンケートのような形で、それぞれのイベントを進めていこうと考えております。
  最後に、3番目にありますように、プロジェクトに参加したときから、キャリア意識を持っていただこうと思っております。昨年の例でいきますと、相談に来た人たちの年齢がぐっと下がって、若いときから、やはりこういうところに相談に行って、自分の将来を考えようという人たちが多くなったことも事実でございます。
  こういう格好で今後我々のキャリアサポートというのをやっていこうと思っています。お手元に2冊資料を配らせていただきました。青い表紙で「その先の自分へ」という階段を上った絵がございますが、理研のほうでつくりました転身活動マニュアル、いわゆるこの3年間の集大成に近いものでございます。もう一つ、緑の表紙で「Best Way2」、これは1もあるのですが、これまで理研から育っていった人たちの実例を挙げて、いわゆるサクセスストーリーのような形を示して研究者に配付しております。以上でございます。

【小林座長】  ありがとうございました。それでは、次に早稲田大学、お願いします。

【早稲田大学】  早稲田大学ポスドク・キャリアセンターの副センター長を務めております朝日でございます。我々のポスドク・キャリアセンターは、現在イノベ若手のほうで設立されました博士キャリアセンターと密接な連携をとりながら、それぞれの得意とするところでポスドクの支援を行っております。
  我々のセンターとしましては、3本の大きな柱を立てております。意識改革、能力開発、そして産業界との連携、交流促進という、この3本柱でございます。意識改革というのは、まず教員の意識改革、そして、ポスドク自身の意識改革であります。また、能力開発というのは、ポスドクはそれぞれの高い専門能力を持つということは言を待ちませんが、それだけではなく、いわゆるコミュニケーション能力や、マネジメント能力、そのような能力を付与させるということを、2つ目の柱として置いております。
  また、3つ目といたしましても、意識改革、また能力をいくらつけても、その先のキャリアパスの受け入れ先が開拓されなければ、これはただの気休めにしかなりません。そこで、産業界と何度もコミュニケーションをとりながら、どういう人材が求められているのか、そして、きれいごとだけではなくて、本当に人事の方々がきちっとポスドクを採ってくれるようなシステムをつくってくれるのかということも含めて、かなり突っ込んだ話し合いを持つような活動をしております。
  例えば意識改革におきましては、教授会のような教員が多く集まる機会を活用して、博士育成ともにポスドクの育成の重要性を述べ、そして、それらに対して支援するということを説明するようなことを教員に対して実施しております。教員の意識改革というのを進めるのは非常に困難でございまして、これが一番我々としてはハードルが高いものとなっております。
  また、ポスドク自身の意識改革でございますけれども、これは我々が、例えば面接、アンケート等を行って分かったことですが、本人たちは、例えば、面接などを行った後、面接をしたその人たちが本当に自分たちのことを真剣に考えてくれて支援をしてくれるのかとの思いで、様子を伺いつつ、対応しているところがあります。したがいまして、ただ面接をしたり、アンケートをとったりしただけでは、かえって逆効果になります。
  我々は利用されただけではないかという思いになってしまって、かえって殻に閉じこもってしまいます。したがいまして、我々は個々の相談というものを非常に重要視しておりまして、セミナーや講習会など、またはマッチングの会などを設けて、広くそのような機会を与えることもやっておりますが、それとは別に個々の相談に乗るということを博士キャリアセンターとともに実施しております。
  また、能力開発のほうですけれども、これは意識改革と少し関係しておりますが、当初、マネジメント講座とか、スキルアップセミナーを開いていても、まず参加することすらしないという風潮がございました。この状況を乗り越えるためには、我々はきちっとしたセミナー、講習会、例えば大学院の講義などとして位置づけて、いいかげんにやっていないのだということをアピールすることで、何とか前に進めてまいりました。
  そうしますと、今回この4月より博士キャリアセンターと協力して、大学院の博士にも講義に参加して単位を取得できるというシステム、そして、その講義の中にポスドクも参加できるというシステムを導入しました。その講義の内容もポスドクやドクターが出ても、何だ、こんなものだったら我々知っているよと言われないような、目からうろこが落ちるような講義を展開することに留意して実施していましたところ、参加者からは非常に好評でありました。
  要するに、ただ講義をやったり、セミナーをやったり、講習会をやってつじつま合わせをするのではなくて、高度な人材には、自分たちがそういうものに利用されているのではないかとの疑念を払拭した形のものを提供していかなくてはいけないということが分かりました。
  また、産業界との連携ですが、例えば我々シンポジウム等で産業界の方々にも出席いただきまして、非常に貴重なコメントやエールを送っていただいております。ただ、そこを突き詰めてパネルディスカッション等でお話をしていくと、実際の研究開発の担当の方々などは、ぜひポスドクや博士の優秀な方々を採りたいということは口をそろえておっしゃってくださいます。
  しかしながら、そのような企業の中でも人事担当の方がそれを理解しているかというとそうとは言えず、まだまだ産業界のほうでも努力が足りていないのではないかと、私どもは感じております。我々は、このような現状を産業界に対して非難するのではなく、真剣に産業界と連携していきたいので、人事部の方々とも協力して進めていきたいと思っております。
  早稲田大学としましては、お配りしましたお手元の12ページ目に図で、簡単なポンチ絵で示しましたが、人材育成というキーワードで、例えばグローバルCOE、女性研究者支援総合研究所、およびテニュアトラックまたはノンテニュアトラックのアカデミア人材の育成機関である高等研究所などの多岐の人材育成機関をすべてを俯瞰できるような部署をつくることを、大学当局に話を持ちかけて、何とか実現したいと思っております。
  次に西嶋先生のほうからよろしくお願いします。

【早稲田大学】  早稲田大学の西嶋です。時間がありませんので、手短に補足説明させていただきます。最初の9ページ目までのところは朝日のほうから説明があったと思いますので、今後の課題(アドバイス)を説明させていただきます。
  簡単に説明させていただきまと、1(大学として)より組織的・戦略的取り組み、2(若手研究人材の多面的な能力開発)、3(産業界との連携強化)というのは当然で、ほかの大学でも説明があったと思います。今必要だと思っておりますのは、4「若手研究者支援のネットワークとコンソーシアム構築」です。それぞれの機関が努力するのは必要ですが、やはり国としての努力、先ほど泉局長も触れていただきましたが、そのようなことがぜひ必要だろうと思います。それから、我々がやったことをうまく第4期の科学技術基本計画に反映していただきたいと考えます。おそらく5「グローバリゼーション」というのは今回のキーワードの1つになると思いますけれども、グローバリゼーションの話を始めるときには、少なくとも国内のネットワークがなくてはいけないなというのを強く認識しております。
  あと、ここに参加していない機関も数多くありますので、そのようなところをどうフォローできるのかというのも気になるところです。
  今後、やるべき課題は2つあり、基本的には大学院の教育を変え新しい博士を養成すること、もう一つは、今いるポスドクの方にどのような支援をしていくか。その場合、能力のある方を自立できるようにすること、女性研究者支援を強化することが必要です。それから、ある程度年齢がたった方、先ほど理研からもお話がありましたけれども、こういう方に関してもそれぞれの機関が責任持って何らかの対応をすることが必要だと思っております。

【小林座長】  ありがとうございました。次は、名古屋大学、お願いいたします。

【名古屋大学】  名古屋大学の武田でございます。名古屋大学はこの3年間のキャリアパス多様化促進事業を行ってきたわけですが、名古屋大学の取り組みの特徴というのは、いつも申し上げていることですが、4つあります。
  1つは、これを最初に始めたのが産学連携推進本部という、産学連携の担当部局でありました。それで、各部局に偏らない、いわば産業界と直接つき合っているところがやっていたということです。2番目に、研究開発だけではなくて、それ以外の専門知識を生かせる多様なノンリサーチの分野に重点を置いたというところです。それから、名古屋大学、あるいは連携している東海地域の大学に限定しない、全国から登録者を受け付けて支援をしたということです。最後に、これは今までも出てきましたが、個別の指導、支援というのを重視する。特に個人の希望を優先して、希望に合った支援をしていくと、この4つが特徴でありました。
  方法としては、皆さんと同じで、やはり個別面談を主体に行っております。ただ、学内の、例えばほかのプロジェクトとの連携ということでは、振興調整費による女性研究者支援のプロジェクト、その他のプロジェクトとも就職支援という形で連携させていただいております。
  また、各種のG-COEのポスドクに対しても、こちらの説明をして、終わった後の行き先の支援というのを行っております。学内の教員に対する意識改革ということに関しては、このG-COEと、あるいは教授会での説明に加えて、大学院生、これはマスターが大半ですが、マスターが入ってきたときの入学ガイダンスにおいて、各研究科、あるいは各専攻でガイダンスを行いますが、そこに行って説明をさせていただいております。
  受け入れる研究科、あるいは専攻としては、こうやって就職支援まできちんとやっているのだよということがわかれば、マスターからドクターへの進学者が少しでも増えるのではないかという意向があると聞いてはおりますが、こういうことをやることによって教員の意識はかなり変わってきた。少なくとも、表立って反対する人は今は全くいないという状況になっております。これをいわば学部学生からの一貫したものにしたいと考えておりまして、本年度から大学の学部2年生、全学の教養の講義、キャリア形成論というのを我々が引き受けて実施をしております。
  こういう経過をたどって、3年間の結果として、登録者がトータルで569名、就職者が169名でした。この就職者のうちの半分がほぼノンリサーチの分野でございます。それから、就職者の内訳を見てみますと、30歳以下、いわばドクターのコースを終わって、せいぜいポスドク1回という方が大体50%、31歳から36歳ぐらいが30%、37歳以上、最高齢は47歳までおりますけれども、それがほぼ20%という状況です。
  就職決定した場合、ほとんどの場合が登録から1年以内に就職が決定したというのが70%、2年以内というのが残りの30%ということになっております。こういうことを考えますと、本人がアカデミックでなくてほかの業界に行きたいという、自分のキャリアデザインをきちんと決断するということができれば、これをしてもらうのが個別面談の最も大きな目的になっていて、人によっては5回、6回と個別面談を繰り返しているわけですけれども、その決断さえできると、今経済状況が違うのでわかりませんけれども、少なくとも今までは1年以内にかなりの部分で就職が可能になった。これはそれほど年齢によっていないということがわかります。
  昨年度に終了いたしまして、今年度からほかのところも言われましたけれども、科学技術振興調整費(振興調整費)のイノベ若手に名古屋大学は昨年度から委託されております。そのときに全学組織としてビジネス人材育成センターというのを立ち上げて、それを含めて男女共同参画室及び学部学生のカウンセリングをやっている学生総合相談センターを含めた形で、社会貢献人材育成本部というものを昨年度立ち上げております。
  キャリアパス支援室も昨年度はここに一応所属していたわけですが、振興調整費の取り組みの中でも最初の個別面談のステップとしてこういう支援は必要であるということを申し上げて、振興調整費のプロジェクトに今年度から含めております。そういう意味では続いております。
  ただ、例えば東北大学さんと少し違うのは、これの担当の社会貢献人材育成本部長というのは、最初の流れからいって産学連携担当理事が本部長であります。事務組織も社会連携課という、産学連携、社会貢献を扱っているところが事務を担当しているということになっております。
  また、ビジネス人材育成センターとしては、こうした博士学位取得者、あるいは在籍博士後期の大学院生に関する就職支援だけではなくて、いわゆる産学連携人材育成といいますか、産業界と一緒になってやる社会人の研修ですとか、そういったものも実施をしております。今年度、2件ほど競争的資金に採択されておりまして、例えば航空機開発のための技術者研修等もこれから実施していくつもりであります。
  こういったものと、例えば博士を取った人間が産業界に行きたいというのがうまくマッチしてくれば、そういったコースを受けていただくということもあると思いますし、また、もっと間接的にはなりますが、こういったことをやることによって産業界へポスドク、あるいは博士の取得者を、こういうコースを取ってくれたのだから、採ってくれと言うことができるのではないかと期待しております。
  アドバイスも、今まで申し上げましたけれども、特にポスドクに関して年齢制限などをあまりつけないでいただきたい。先ほど理研の方も言われましたけれども、結構シニアの方で無職になっているケースというのが現実にございます。そういうところの支援というのをきちんとやっていただければと思っております。以上でございます。

【小林座長】  ありがとうございました。それでは、次に大阪大学、お願いいたします。

【大阪大学】  大阪大学です。資料に基づいてご説明したいと思います。大阪大学は当初より、博士人材の就職あっせんというようなことではなくて、もう少し社会と大学とのインターフェース領域で何かプロジェクトをつくって、そこで一度働いていただくと、そして社会に出ていっていただくというようなプロジェクト活用型というコンセプトを当初よりとっておりまして、それの実践をしてまいりました。
  基本的には産学連携の枠組みとして共同研究等々を構築して、そこで自律的に働きたいということを考える人たちをできるだけサポートして、そして産業界に出ていっていただく。産業界だけではないのですけれども。そういったいろいろなパスを考えようということでやっておりました。
  当初かなり苦戦していたのですけれども、この一、二年、産業界のいろいろな人たちとのコミュニケーションを図ることによって、かなり産業界の方々の理解も、部分的ではありますけれども得られつつあるという感触を持っております。基本的には大阪大学としては、この事業として、科学技術キャリア創生支援室というところが、これは先端科学イノベーションセンターの中にあるのですけれども、そういった共同研究の枠組みをうまく活用しながら人材育成をすると。キャリアパスをつくっていくというような働きをしておりまして、その中で自立的なポスドク、あるいは博士人材を集めてキャリアサロンみたいなことをやって、対外的な方々とコミュニケーションを図ると。あるいは、ポスドクの間のコミュニケーションを図るというような活動を地道にしてまいりました。
  今年度からは、昨年度からですけれども、大阪大学もイノベ若手のほうに採択されまして、これも基本的にはキャリアパス多様化事業で考えていたコンセプトにかなりベクトルは合っているということですので、こういったイノベ若手のプロジェクトと協働しながら体制づくりをしております。キャリアパスのときはボトムアップ的な体制づくりだったのですが、もう少し全学的に昨年度から体制をつくっております。
  全学組織としては、若手研究人材養成検討会議というのを総長の下に理事クラスの方々で構成して、若手研究者の育成等々を検討してもらうという組織を立ち上げておりますし、G-COE等々の人材育成関係のリーダーの先生方にお集まりいただいて、若手研究人材養成ラウンドテーブルといったものも設置しております。
  組織的には、部局長による若手研究人材養成委員会というのも設置しておりまして、実施、いろいろな協力要請等々、こういったところを介して情報伝達等をやっていけるようにしております。
  具体的な実施組織は、3のキャリアパス多様化支援組織とありますけれども、今イノベ若手のほうで立ち上がりました産学連携推進本部の中にイノベーション人材育成部門というのが昨年7月に設立されまして、これがプロジェクト活用型、いわゆる共同研究等々をうまく活用して、インターンシップ、そういったものを活用しながらキャリアパス開拓をしていくというようなミッションを担っておりますので、これと連携しながらやっていくという体制にしております。
  従来の先端科学イノベーションセンターのキャリア創生支援室は残りまして、今までのいろいろなメーリングリスト等々、蓄積してきた情報チャンネルをうまく活用しながら、学生部のキャリア支援室、これは学部生、あるいはマスターコースの学生さんのサポートが主ですけれども、そういうところと連携しながらやっていく体制を徐々につくりつつあります。
  2枚目ですが、3年間やりまして、かなり苦労しておりました。これは知見の一部ですけれども、ご披露しますと、現状の状況の困難さというのをかなり痛切に感じました。要するにポスドクの所在そのものが、大阪大学はかなり大きな組織ですので、研究室レベルまでおりないと実際に分からないという状況がかなりありまして、ポスドクの人材への情報伝達というところで非常に苦労したと。
  そういった意味で、初めの1年目は研究室に全部人を派遣して全数調査するということをやりましたけれども、ただ、これもかなりの労力が要りまして、2年目、3年目、できなかったです。そういった意味で全部局の協力を前提とした全学的な体制というもので、こういった実態の把握能力というものを高めていかないと情報は立地できないかなというぐあいに思っております。
  それに付随してアンケート等々もやっておりますけれども、やはり捕捉率は少なくて、200名ぐらいの人材に対してしかアンケートは答えてもらえないということがありまして、こういったところももう少し変えさせる必要があると。
  また、流動性は非常に高いということで、1年ごとに人はかなりかわっております。ですから、1年前のデータがあまり信用ならないということで、これも非常に苦労しております。
  2番目は非常に大事なことですけれども、人材の付加価値の共有とマッチングといいますか、博士の付加価値を認めてもらう企業さんとうまくリンクして、そこで仕事をやっていただくということが非常に大事だと思っておりまして、大阪大学ではこういった企業さんを選別して、そこに働きたい方に行っていただくという立場でやっております。
  あと、専門分野ごとの状況差みたいなものは今までよく言われておりますけれども、情報系、工学系は結構、そんなにポスドク問題はありませんと。理工系、ライフサイエンス系、あるいは生物系は非常に問題だということで、この辺のスタンスの違いをうまく活用した支援が必要です。
  教員の意識改革は今まで言われたとおりで、大阪大学も非常に先進的な考え方をされる先生と、それから聞いてもらえない先生もございまして、我々としてはそういった先進的な考えをお持ちである教員層をできるだけ囲い込んで、こういった支援策、あるいはその問題点の把握を共有化していくというような活動をしております。
  最後は、これも一番問題ですけれども、博士人材の意識改革ということで、やはり生のままでは非常に意識は低いといいますか、そういったところがございます。ただ、プロジェクト活用型等々で、プロジェクトをやりますと、非常に意識が変わってきます。そういった意味でポテンシャルは非常に高いということが確認できまして、気づきとか、そういったことがまず大事で、本人がやる気になればかなりの能力を発揮するというようなケースが結構ございますので、こういう仕掛けをどうやってつくっていくかということが、これからの課題と思っております。以上でございます。

【小林座長】  ありがとうございました。それでは、次に山口大学、お願いいたします。

【山口大学】  山口大学です。濱田と申します。ここへ書いてあることは終了後の実施体制ということで今年度のことを中心に書いてありますが、前3年間もほぼ同じような内容であります。今年度から、この事業が終わりましたものですから、それに控えて平成20年11月にイノベーション推進機構という機構内にイノベーション人材支援室というものを設けました。今年の4月1日からそこが活動している次第であります。そこにはキャリアプランナー2人と、事務補佐員がドクターやポスドクのお世話をしているということであります。
  今までの3年間で特に重点を置きましたのは、企業等の研究と大学の研究の双方向の考え方、それから、人材流動ということを考えてまいりました。これにつきましては後で反省点の中にございますので、後に回します。
  そういう中の第1点がビジネススキル講座というものであります。これは、東北大学からも出ていたのではないかと思いますが、企業の方や大学、もちろん学内の方、いろいろな形で1回1回それぞれ独立した講演をしていただくということであります。特にここにあります第7回、第8回はTRIZを中心としたイノベーション関連講義というものがあります。ご存じのように、TRIZというのは発明的問題解決法という内容でありますが、その内容については2回連続して講義することになっております。これはたまたま山口大学にこれに関してよく研究されている方がおりますので、その先生にお願いしております。
  次に、キャリアマッチングシステムというものをつくっておりまして、学生の希望、企業のどういう人材が欲しいかという希望、それをデータベースに登録しておりまして、それぞれがどういう企業へ行ってみたいとか、そういう話になります。あるいは、外部からも、直接私を通しまして学生にコンタクトしたいというような話がございますが、まだ本格的に起動するには至っていないと感じております。おいおいやっていけるものと思います。
  どういうふうに企業が考えているか、自分はどう考えているか、3年前データをとりますと、学生の大半は学校、大学や高専その他のところに就職したいという人が相当数おりました。現在は企業の研究所に行ってみたいというほうが、それらをかなりしのいでおります。
  それから、これは昨年までは博物館に行きまして、細かい博物館内のそれぞれのことについて説明員をしていただこうということでやっております。今年、4番にありますが、防府市青少年科学館というところを予定しておりましたが、実は山口県内博物館と山口大学の連携協議会というものができまして、そこでどういうふうにするかを決定しておりまして、今年度、まだ今からのところであります。
  5番目の博士後期課程学生に対する長期インターンシップと、これを予定しておりまして、3年間といいますか、特に過去、ずっと前からこのインターンシップは博士課程の単位にするということでやっております。今年からは、これは学外研修という形で単位になっていたのですが、今後は長期インターンシップということで、単位にすることになっております。
  ただ、これも後で反省点が出てまいります。次のページの反省点に移らせていただきます。アドバイスとありますが、これはまさに反省と言うほうがよろしいかと思います。インターンシップをやるのはいいけれども、どちらも知的財産を持っておりますので、学校のほうの知的財産が欲しいという形でインターンに来てくれと。逆に、企業のほうも、自分のところの知的財産を取られてもいけないというような痛しかゆしのところがありまして、なかなかその専門外のところの要望がございます。
  ほかに、ここへ4点ありますが、例えば私どものところでは、任期つきの助教というものがありまして、特にそういう方は企業から来ておられますので、そういうところの点におきましては教育効果が大きいものと思っております。
  一番肝心なのは、私も個人面談をやっていますが、学生そのものがキャリアをどういうふうにつけていって、どうするのだという気持ちが薄いと思います。これは、小林座長をはじめとして皆さんにお願いでありますが、こういうものを1大学で企業に就職をお願いするとか、博士課程だから待遇をよくしてくれと私は痛切に思うのですが、なかなか1大学とかいうことになりますと、思うようにいきません。
  それから、国大協でも頑張っていただきたいと、その点は思っているのですが、私は海外で博士を取りましたが、そのころ初任給というのは学部の2倍が博士課程の修了者であったと。そういうような形があれば、優秀な方がもっと博士課程に進んでいただけると、痛切にそういうふうに思いますので、ぜひ皆さん、よろしくお願いいたします。以上を持って終わります。

【小林座長】  どうもありがとうございました。それでは、次に九州大学、お願いいたします。

【九州大学】  それでは、九州大学の説明をさせていただきます。九州大学では、「キャリア多様化・若手研究者活躍プラン」ということで、平成18年度から実施させていただきました。その中で私がキャリア支援センターの副センター長として業務を担当してまいりました。
  九州大学は、18年度当初から、理系、文系すべての部局に対してポスドク等の博士人材をこのプログラムの対象としてまいりました。3年間で就職の決定者がプログラム参加者の中から118名出たということで、この実績・機能が学内で評価され、今年度は大学独自の予算でキャリア支援センターを継続しています。
  体制につきましても、コーディネーター1名、カウンセラー2名、事務スタッフ2名ということで、委託期間中とほぼ同じ体制で事業を進めています。なお将来的には、平成20年度から文部科学省科学技術振興調整費により開始した「イノベーション創出若手研究人材養成事業(以下「イノベ若手」という。)」と一体化してキャリア支援・就職支援を行っていく構想を持っております。
  今年度の業務状況をご説明いたします。概ね委託期間中の考え方に沿って業務を進めております。具体的に申しますと、博士人材といいましても、人文系と理系がおり、理系の中でもバイオ系や工学系、様々ですので、それぞれ様々な状況の者がいる中で、19年度から第0次段階(導入)から、第1次段階(意識醸成)、第2次段階(将来の仕事に対する理解)、第3次段階(就業体験)、第4次段階(キャリア選択)という形で事業を組みかえまして、各段階どこからでも支援を受けれるようにしており、21年度もこの考え方で進めています。
  その中でも、特に力を入れておりますのは、1番から8番までございますが、「ポストドクターの実態調査」ということで、総計ではなくて個々の研究室のポスドク等の博士人材がどういう状態にあるかというのを、部局と協働して調査することです。
  3番の「各部局との協議・対話」は、私ども3年間業務を実施しまして、状況的に厳しく困難なところは基礎系、生命系、人文系ですので、この関連部局と密に連携していくことが重要であると考え、定期的な協議・対話の場を設けて連動していくことにしています。特に博士人材の状況の情報共有や、FD、SDの共同実施等、これらも含めて協議・対話を考えています。
  5番の「カウンセリング及びキャリア設計支援の実施」は、多くの博士人材は精神面でも就職環境面でも厳しい状況にありますので、委託期間と同様に強化して行っていくということにしています。
  5番と連動するのですが、ある程度カウンセリング、キャリア設計した後、求人・求職コーディネートも力を入れるということになっています。委託期間中はイベント等で、人材育成も行っていたのですが、これについては部局と連動して、主として部局のほうで行っていただくという方向で進めております。先程も述べましたが、学内では、イノベ若手は博士人材の人材育成、キャリア支援センターは就職支援という位置付けで、人的資源を集約して分担して行っているのが九州大学の状況です。
  九州大学では、今まで全学対象でやってきて、全学対象は変わらないのですが、特に就職が弱い分野(生命系、基礎系、人文系)、例えばその部局の就職委員会等に参加して、博士人材の個々の状況に関する情報の共有とか、FD、SDの実施ということを今年度から既に始めております。
  そのほか、先程から申しておりますとおり、イノベ若手のセンターとは連動してやっておりますし、これまで連携してきた知的財産本部、健康科学センターとも同様です。なぜ、健康科学センターかというのは、個々にカウンセリングしていますと、精神的にかなり悩んでいる学生等がおり、その場合は、健康科学センターのカウンセラーと連携し、学内の各種センターを活用しながら総合的に博士人材のケアをしているというのが実態です。
    最後に、僣越ですが、19年度の採択機関へのアドバイスです。私ども、4つ書かせていただきました。1つ目は、博士人材及び部局等への積極的なアプローチです。この事業を18年度に始めた際には各部局から、「折角教員が博士を使って研究を進めているのに、そういう就職をちらつかせるようなことをしていただいたら非常に困る」いう内容の強い反発・非難など、逆風的な感触が殆どでした。しかしながら、本事業を進め、実績・成果を出していく中で、段々意識の変化を感じるようになりました。実際当初否定的な意見であった部局が、過去3年間のキャリア支援センターの活動成果等により、最近ではセンターの活動に対して肯定的になっています。
  2つ目は、個々にカウンセリングしていますと、一部の博士人材は精神的に問題を抱えている者もおりますし、バイオ系とか人文系に関しては環境的に就職が悪いという厳しい現実もありますので、カウンセリング、求人・求職コーディネートを強化すべきだと思います。
  3つ目は、求人・求職コーディネートについては、キャリア支援センターだけではなかなか難しいので、産業界と太いパイプを持っている産学連携部署等との連携が重要だと思います。
  最後に、博士人材及び部局等への就職成功例の周知ですが、各部局毎の身近な就職成功例を示して、その気にさせてあげるのが大事かなと思います。以上です。

【小林座長】  ありがとうございました。それでは、ここから資料2のほう、現在も事業を実施している機関のほうになります。
  それでは、まず産業技術総合研究所、お願いいたします。

【産業技術総合研究所】  産業技術総合研究所能力開発部門人材開発企画室の加藤でございます。よろしくお願いいたします。
  まずは、先行して実施されました8機関の関係者の方々の貴重なアドバイスをちょうだいできまして、大変ありがたく思っております。私どもで実施しております事業でございますが、実施計画名にもございますように、2点大きな特徴がございます。1つは、筑波研究学園都市全体への横展開、地域展開ということでございます。もう一つが、産業技術人材、あるいはイノベーション人材とも呼んでいますが、そういった形で産業界に輩出すると、この2点が非常に大きなテーマであると思って取り組んでございます。
  そのためにも、まず大事なのがつくば地区における連携体制の構築であるというところから始めまして、連携協力機関、4機関、私どものところと、メーンのパートナーとしましては筑波大学さん、それから民間からWDB株式会社、財団法人未来工学研究所さんにもご協力をいただいております。その他、つくば地区にはいろいろな研究機関、大学等ございまして、これまでにも11機関ほど会のほうに参加していただきまして、延べ15機関が連携しながら進めてきているという事業でございます。
  初年度でございますが、平成19年度になりますが、まず現状把握が重要であるというところから、この連携機関会議等を通じまして実態把握というのを進めました。それで分かったことは、先ほど他の機関のほうからもお話があったかと思うのですけれども、非常に多様な雇用形態があって、多様なポストがあって、実態把握すら困難だということが非常によく分かってまいりました。
  そんな中でも、つくば地区にはおよそ2,000名程度の任期つきの研究員がいるということが分かりました。これは日本全国1万6,000としますと、8分の1ぐらいがつくば地区にいるということでございますので、そういった意味では、つくば地区でこのモデル事業を成功させるというのは非常に重要かと思います。そういったことを試すと言ってはあれですけれども、実施するには最適の地なのではないかと思っている次第です。
  平成20年度ですけれども、こういった調査を引き続き行っておりまして、幾つかいろいろな具体的なセミナーを実施する中で、その成功例についてのフォローアップは重要だろうということで、1例を挙げさせていただきますと、技術習得支援というのをやってございます。これは、座学だけではなく、実際に装置を使った技術講習ですとか、さらには、1年間無償で装置利用ができるというような実践の場も与えるという形でやっているのですが、こういったところで非常に成果を出された方が何名かいらっしゃいまして、そういったハイパフォーマーの方の追跡調査をする中で、そういった方が所属するグループへの波及効果というのも非常に大きいということが分かってまいりました。今年度の実施においては、そういったグループでの指導者、育成者も巻き込む形でぜひ行いたいといったことを計画しております。既に始まっているのですけれども。
  あと、昨年度の特徴的な取り組みとしましては、筑波大学さんのほうで大学院共通科目というのをやってございます。こちらのほうで任期つきの若手研究員に勉強してもらったらいいような講座がいろいろございまして、そこにぜひつくば地区のいろいろな機関に所属するポスドクの方に参加してもらえないかということで調整を進めてまいりました。昨年度、試行的にサイエンスコミュニケーションの関係で8名程度参加していただいて、非常によかったということもございまして、このキャリアパス事業にこれまで参加していただいた方に、この共通科目の中でどんな科目を受けてみたいかといったようなアンケート調査などを実施しまして、例えば実践英語ですとか、知財ですとか、研究倫理、こういったところにニーズが高いというところを把握したりもしてございます。
  こういったような調査関係をやって実態を把握しつつ、具体的には育成とか産業界への送り出しといったような取り組みも進めてまいりまして、その辺についても触れたいと思います。若手研究人材育成の担当者向けのプログラムというのも開発するということを課題に挙げてございまして、これはOJTベースでやることが大変重要だということで、そういったプログラム検討委員会を2009年の2月から月1回ペースで進めております。
  最終的な成果物としまして、これは全くの仮題ではございますが、「初めて博士を部下に持った人が読む冊子」といったものをつくって、有効に活用していただきたいなと思っております。そういったポスドク育成のための参考書、できれば、いずれはバイブル的なものとして使っていただけるようなものを出していけないかなと思っております。
  あと、これは指導者、育成者の意識啓発には大変重要な取り組みになりますが、シンポジウムもこれまでに2回開催してございます。2008年1月には「今、求められる研究者像と人材育成」ということでシンポジウムを行っております。また、2008年12月には「サービスイノベーション人材:科学技術関係人材の新たなフロンティア」ということで、シンポジウムをしています。後者のシンポジウムでございますが、これは専門にこだわらずに広くサービス分野、第3次、第4次産業といったようなところにポスドクの方に目を向けてもらって進出する、そこで活躍する可能性があるのだということを理解してもらいたいというシンポジウムでございました。
  それから、これは若手研究者そのものに対する育成のためのセミナーでございますが、専門スキルアップセミナー、技術習得支援、筑波大学大学院共通科目への参加、こういったようなことをトータルで取り組みまして、これまで延べ34回開催いたしまして、延べ人数ですが、516名となっております。
  こういった中でも、やはり活躍されている方、その後成果を出されている方はいらっしゃいまして、2つほど例を出させていただきます。国際学会のほうで最優秀ポスター発表賞というのを受賞された方は、うちで企画した「異分野・異業種へのプレゼンテーション/コミュニケーション」というのに参加していただいた方ですが、それが理由でこの賞を取れたかどうかというのは定かではないですけれども、そういった方が出てきたというのは大変うれしいなと思っております。
  あと、先ほどもちょっと申しましたが、産総研のナノプロセシング施設というのを使った技術習得支援におきましても、参加者の中からJSPS特別研究員というのを獲得された方がいらっしゃいます。
  そういうことで、そういった成果というのをフォローアップで確認することは、私どもがこういったことを実施するモチベーションを高めるという意味でも、ほかのポスドクの方に与える影響というのも非常に大きいことだなと思いまして、そういった成功例というのは、今後できるだけつぶさに拾っていきたいと、確認していきたいなと思っております。
  産業界への人材輩出のプログラムのほうですけれども、こちらもいろいろなセミナーですとかマッチングイベント、キャリアアドバジングなどをやってございますが、これまでに34回開催いたしまして、延べ818名が参加しております。気になる出口のほうとしては、平成19年度には11名が、平成20年度には29名が大手メーカーやベンチャー企業等に就職が内定しております。ということで徐々に数も増えてきているということで、より一層頑張っていきたいなと思っております。
  その他、異分野・異業種交流会というカテゴリーでは、テクノロジー・ショーケースでの取り組みですとか、新しい試みとしまして博士ネットワーク・ミーティング@つくばといったようなものもやってございます。
  次でございますが、任期つき若手研究者を産業界に効率的かつ継続的に輩出するスキームの確立。大変難しい課題ではございますが、やはり意識を変えるというのが大変重要かなと思っております。したがいまして、自己分析ですとか、キャリアデザインに関するセミナーというのをこれまでにも何度かやっております。
  あと、異分野・異業種交流というのも重要なキーワードであるかなと思います。
  先ほども何度かご指摘されていることもあるかと思いますが、基本的な就職スキルというのを身につけていただくというのも大変重要で、履歴書の書き方ですとか、場合によってはマナー的なところまでやらなければいけない場合というのもあろうかと思っております。
  一番出口に近い重要なところではマッチングの場の提供ですけれども、こちらは実は昨年度中間評価を受けた後に、こちらのほうでも見直しをいたしまして、一層の充実を図っております。その1つが、これは中に連携千社の会という取り組みに行っているところがあるのですが、企業の方に幅広く登録していただいておりますが、そこと連携してマッチングの場を設定するような形で、今回研究分野別にそういったマッチングを図るというイベントをやったりいたしました。
  あと、人材エージェント会社の方にも専門のカウンセラーの方に来ていただいて、マンツーマンで出張面談をしていただくという取り組みも何度もやってまいりまして、そこではかなり成果が上がってきているかなと思っております。
  委託期間終了後の実施体制・取り組み内容でございますが、これは筑波研究学園都市交流協議会という非常に重要なプラットフォームがございまして、略して筑協と呼んでおりますが、ここにうちの機能を移していけないかということで調整をしてまいりまして、お手元の資料にもございますような新しい委員会が立ち上がっております。人材支援委員会というものができまして、その中の若手人材支援タスクフォース、ここに私どものやっております事業の中の連携機関会議の機能を落とし込んでいくということが前回の会議からできておりまして、今後はこの筑波研究学園都市交流協議会の中でこの事業をどうしていくか、どう展開していくかという議論がなされるような形になってきております。
  そういった意味では、産総研が主体となって取り組んではいるのですが、徐々にこのつくば地区全体への展開が図られているということになろうかと思っております。
  あと、ほかにもパートナーとなり得る、あるいはスポンサーとなり得る可能性のあるところとしまして、関東経済産業局、こんなところでもポスドクの方、高度なイノベーション人材をどう活用していくかということでいろいろとお話しいただいているようなこともございまして、そういったところとも積極的に意見交換しながら、できるだけいい形で来年度以降も続けていければと思っております。
  最後に、この産総研で行っておりますキャリアパス事業で蓄積したノウハウというのを、私ども事務局としてどうしていったらいいかというのを最近よく考えるのですけれども、その外に出していく部分というのは、先ほど申しました筑協というのを通じてつくば地区への展開というのは図れるだろうと。ただ、考え方だけではだめで、実際実施体制がどこまで構築できるかというのは非常に難しいかなと思っております。それは、単純に体制の問題だけではなくて、維持するだけの最低限の予算をどう確保するのか、捻出するのかといったような課題も抱えておりまして、既に関係機関のほうからそういった意見もいただいております。したがいまして、そこはちょっと努力しなければいけない部分ではあるのですが、そこ次第で来年度以降の事業の規模なども決まってくるかなと思っております。
  中に向けては、これは既に波及効果がございまして、内部のパーマネントスタッフの研修事業も担当しておりますが、そこに若手の研究向けの「産業技術人材育成研修」という1泊2日の規模ですけれども、ここにある程度完成版とまでは言えないかもしれないのですけれども、こういう中身でバランスよく研修をしてやればよろしいのではないかというのが大体でき上がってまいりました。ただ、ポスドクの方には時間的に難しく、1泊2日で来てくださいとはなかなか言えず、一方で、週末ごとに2時間ぐらいずつやってもらうというのもなかなか難しいという問題があります。そういった実施の蓄積を通じて研修はどうあるべきかというのは、かなりノウハウとして蓄積できてきたかなと思っております。
  ほかのセクションでも、うちでやった企画と同じようなものを中で、ほかのパーマネントスタッフに研修の機会、セミナーとして与えたりということもできてきたこともありまして、そういった波及効果は非常に高いと思っています。
  また、今のところ、当所独自の取り組みという形ではあるのですが、対象者は正直重なっております、産総研イノベーションスクールというのがあるのですけれども、こちらとのリンケージというのも強めるということで、担当者レベルでどうしていこうかという協議を進めているところでございます。そちらも内部的には、おそらく来年度以降はある程度一本化するような形でまとまっていけるかなと思っておりまして、うちで蓄積したノウハウというのをぜひそちらでも有効に活用していきたいと思っています。

 以上でございます。

【小林座長】  ありがとうございました。それでは、次に日本物理学会、お願いいたします。

【日本物理学会】  日本物理学会より栗本が報告させていただきます。我々のところは日本物理学会という、学会という特殊な立場にあります。ですので、大学、研究所さんらとは違って、組織としてはわりとルーズなバウンドの形態です。例えば人材、マンパワーにいたしましても、事務局の方を除いては会長から理事、それから各地協力してこられる委員の方皆さんがボランタリーで、善意の協力者ですので、いきなり強力な命令をどこかから出すということもできない。その分、皆さんいわば善意で協力してくれるわけですから、無理強いということはなくて、皆さん協力してくれる方は非常に熱心にしてくれます。
  一方、また資金という面でも弱いところは否めない。なんですけれども、日本物理学会、日本という言葉がありますので、全国レベルの活動ができるというのは1つの強みです。それから、物理学会という看板は有効になる立場がある。約1万8,000人の会員がいますので、その方々に対して何か有効なアプローチかできないかという観点から、我々はそこの資料にありますように、5つの方針に基づいて今まで活動を行ってきました。
  最初は、我々は物理学会ですので、ターゲットは一応物理系の博士人材ということにしております。その方々の活躍の場の調査。これはまず全国的ということを生かしまして、主に会員をターゲットとした調査。それから、学会の全国大会という場において、例えば、企業との交流会を開いたりすることによって、物理系人材にあちこちで活躍してもらうチャンスを広げるということを考えております。
  2番目は、アカデミックだけではなく、いろいろ多方面で柔軟に活躍できるように若手及び若手を育てる指導者層の意識改革ということを普及させたいと。それが2と3。
  4番目として、これも全国大会、あるいは学会誌等を通して広くこの活動で得られた知見を提供して、参考にしていただきたいということがありました。
  5番目、ここは主なキャリアパスのターゲットは企業というのは当然ですけれども、それ以外に例えば理科教育の推進、あるいは知的財産、特許関連、科学行政、そういった多方面に物理系人材がもっと活躍できないかということを、学会でそういうことを研究して、もしいいアイデアがあればそれを公開したいという活動を柱としました。
  それぞれについて説明させていただきます。詳細は参考資料の大きな紙にありますので、そちらを参考にしていただくとして、幾つか特徴あるところをご紹介したいと思います。まず、調査に関しまして、これは昨年度も報告いたしましたけれども、物理学会を対象とした全国的なキャリア支援に関するアンケートというものを行いました。約1,700の回答が得られました。
  今年度はこれに加えまして、今度は指導者層である教授、准教授という、直接ポスドクやドクターの学生を指導する立場にある方々を対象として、このポスドク問題、キャリアパスということに対してどういうことまで把握しているか、どういう意識を持っているかということの意識調査を、同様のWebアンケートで行いました。
  回答数は約600弱で、これは我々の予想よりは多くて、こういう問題に関心を持ってくれる方々がこれだけいるということは、我々の活動に対して大いに力づけてくれました。これの中身は今現在解析中で、近いうちに物理学会誌、もしくは物理学会の全国大会等の場で発表したいと思いますけれども、非常に今ラフな段階でも興味深い結果が得られております。
  個別面談ということも行っております。本来我々はこういう個々の対応というのは、先ほど言いました学会という立場から不得手とするところですが、このキャリアパス事業で専任に働いてくださる方が非常に積極的に協力していただきまして、全国北から南まで行って、それぞれの大学、あるいは研究所で個々の方々に1人につき短くて十数分、これはあくまで調査ということですけれども、長いときで30分から1時間ほど、まず面談調査をして、その上で希望があれば我々が持っているいろいろな情報を提供してきました。
  例えばこういうことに関しては、我々は直接就職斡旋活動はできませんので、こういう手段があるとか、そういうノウハウ、情報を提供するということをいたしました。それが現在170名を超えようとしております。
  2番目、3番目の、育成と意識改革に関しましては、全国大会が年に2回ほどありますので、その場を利用しまして、そこでシンポジウムとか、あるいはインフォーマルミーティングにおいて、企業との交流会であるだとか、我々の活動の報告会というようなことを行いました。
  それ以外にも、物理学会誌という会員に毎月配付している会誌にこの「ポスドクシリーズ」というキャリアパスに関係する記事をほぼ定期的に連載しております。今現在記事数が20を超えて、2ヶ月に1回、もしくは3ヶ月に2回ぐらいのペースで掲載しています。これは、ポスドクに関するいろいろな状況の調査の結果、あるいは実際にポスドクを経験して企業等に就職して成功された方の例の紹介、あるいは企業からの声の紹介、そういった形で情報を提供しております。
  個々のドクターやポスドク向けの育成及び意識改革といたしましては、今年特徴的だったのは、今聞いた段階では他の機関の方々も行われているようですけれども、東京大学と協力いたしまして、物理系の大学院生及びポスドク向けのキャリア事業というものを実施いたしました。これは6月の土曜日の午後3回行いまして、参加人数が物理系と限ったにもかかわらず1回目が70人ほど、そのうち半分ぐらいはもちろん東大の学生さんで、残り半分、これは一般の方も聴講可といたしましたので、外部からの方が来られました。
  そこで来られた方に短いアンケートをとりましたけれども、やはり最後まで40人ほど残ってくれた方は非常に熱心というか、意欲が高い方々がいるということがわかりました。この事業で培ったノウハウみたいなものも、やはりまとめて全国的に発信して、例えばここに来られているような機関の方々はここの場で知ることはできるのですけれども、地方の方や、なかなかこういうところに来られない方々にも、Web、学会誌を通じて、こういうやり方が1つありますよということを提供したいと考えております。
  先ほど申しました指導者層向けのアンケートには意図的に意地悪い質問をして、こういうことをあなたは考えていますかと、考えていなかったら、言外にだめじゃないですかということを匂わすような質問をして、意識改革を促すような意味も含めました。
  4番に関しては情報の発信です。これは何回も、ウェブサーバー、皆さんがやっているのと同じようなことをやっています。学会員の多くの方々がメールアドレスを登録していただいていますので、そういうメーリングリストが学会にございます。我々がやるようなイベントの告知はそのメーリングリストを通じて流しました。さらに、イベントに参加してくれた方々の中で、こういう情報をぜひくださいという方が登録してくれた数が500を超えまして、そういう方々向けにもまたもっと緻密な情報を流しております。このメーリングリストは学会関係の情報だけでなく、例えば他の団体、機関さんから、こういう情報を流してくれという依頼があれば、それは原則として要望におこたえするようにいろいろな情報を流すようにしております。
  最後の企業関係以外の方面での活躍の可能性です。いろいろな可能性があるのですけれども、これまで我々は主に教育方面、特に我々物理学会ということで理科教育の将来ということに対しても危惧を抱いております。そういう方面に例えば博士を持った人材が何か寄与できないかということを検討して、もしいい方法があれば、こういう方法があるのではないかということを公開するようにしています。
  一例といたしましては、我々が提供したことではありませんけれども、幾つかの県で博士を持った方々を教員免許がなくても教員に採用するというケースが、少数でありますが、あります。そういった例を1つの例として会員の皆さん等に紹介しております。
  もう一つの方向といたしましては、医学物理、特にこれは放射線治療に関する分野です。放射線の治療、特にがんに対する治療は欧米では非常に盛んですけれども、日本ではまだそれほど普及していない。こちらの方面には物理学の知識というのが非常に重要になりますので、医学方面でも物理の資質を持った人材に入ってきてもらいたいというアプローチがありました。それに協力する形で、我々と医学物理学会とで協力してイベントを行いました。いろいろな研究所の見学であるとか、医学関係の研究所の見学、病院の見学とかにもポスドクに声をかけて参加していただきました。それをきっかけとして、医学物理関係へ何人かのポスドクの方が実際に進まれています。
  以上が大まかなこれまでの活動です。今後の活動といたしましては、来年の3月で文科省からの委託事業としての活動は終了いたしますけれども、物理学会のキャリア支援センターという仕組みは残します。ただし、先ほども言いましたように、資金的に我々は実は苦しい場面があるので、今のように専任の方々をずっと置いておくことはできません。これまでの3年間で培ったノウハウで、お金や、あまり人手をかけなくてもできるようなこと、あとは学会らしい、学会でのノウハウも、先ほど言った全国的な調査であるとか、学会誌とか全国大会を通じての啓発活動みたいなことを中心に活動を続けていく予定です。
  それだけでは力が足りないというところがありますので、他の団体、特にここに来られている幾つかの団体の方々とコンソーシアムをつくって、協力するところは協力していこうという話が進められています。その準備の検討会にも加わって、我々は何ができるかということを検討しております。そのコンソーシアム以外にも、物理学会と個々の団体、企業など我々は今までいろいろやってきた中で接触のあったところで、お互い協力可能なところというのを今幾つか当たっております。そういったところと協力して活動を進めようとしています。例えば、個々の面談はその専門のところに任せたり、あるいは、ポスドクに対するインターンシップみたいなものに関しては、企業やJSTさんみたいなところと協力して何かできないかということを検討して、活動を継続していこうということにしております。以上です。

【小林座長】  ありがとうございました。次に、東京農工大学、お願いします。

【東京農工大学】  資料は7ページになります。キャリアパス支援センター長の服部のほうから説明させていただきます。
  まず、我々のほうの事業ですが、全国に6つの「連合農学研究科」というのがございます。それぞれの連合農学研究科は別表の、これは11ページになりますが、そういう大学の主として農学部の博士課程で構成されているということが本事業の特徴になります。したがいまして、これらの18大学の連携をうまくつくるということを、まず始めました。
  そこには、11ページにありますような学生数、あるいは社会人学生、留学生、これはそれぞれの数ですが、そういう方々がおられるということになりました。これらの方々を対象として、このキャリアパス支援をやっていくということが本事業の特徴になっております。これが求職側のネットワーク化ということになります。
  次には、その方々にどのように情報を伝えて、あるいはマッチングを進めていくかということです。山口大学さんのサイト等を参考にさせてもらってマッチングシステムを立ち上げました。これは2年目、昨年度に本格的に動き始めたのですが、後ほど言いますけれども、キャリアパスコーディネーターが企業さん等の人事の担当者にPRに行き、登録してくださいよと、どんな学生さん、人材が欲しいですかということを言っている途中で、おたくのシステムは使いにくいというような、いろいろご批判をいただきました。
  昨年の本評価委員会でも、東京農工大学のサイトは何も見えないと。登録した人は見えるけれども、中身が見えないということもありましたので、今年度、急遽フェーズ3としてシステムを改造しました。その改造したシステムは、次の13ページから15ページに登録メニューだけを出しておりますが、こういうものに変えました。
  具体的にどういうことかと言いますと、博士人材というのはマスターとか学部人材と違いまして、非常に特化した人材を求めているということになりますので、一般的に欲しいよと言うだけではだめで、どこにどんな人がいるかというのが求人側から見えるようにしたいと。それには、求職側に新たにこういう登録をしてくださいよというお願いをして、もちろん開示する、開示しないとか、その意識は希望を聞いて、プライバシーポリシーにも配慮して、そういう新たなものをつくり上げました。
  つくり上げたのは先月でしたか、まだ立ち上がったばかりでして、現在、登録した学生が二百八十数名いるのですが、その中で13ページをごらんください。13ページの上から3分の1あたりの赤い星がついている一番下のところですが、スカウト機能というのがあります。ここでいろいろな情報を登録して、キャリアパス支援センターからの情報は欲しいけれども、あなた自身がスカウトされる意思があるかどうかというのを聞く、こういうシステムにしました。
  ここで例は、スカウトを許可するとなっておりますけれども、これを許可しますと、登録されている求人側の企業さんが必要なキーワードで検索して、この大学にこういう人がいるというのがわかるというシステムを立ち上げました。現在スカウトしていいよというのが90名に上っております。ということは、それ以外の学生はまだ直していないか、スカウトされたくないというか、あまり原因はわかりませんけれども、そういう状況にある。これがもう少ししますと、企業さんのほうに検索をお願いしますというお願いのメールを出しますと、次年度の求人期間が始まりますので、それまでにこのシステムを活用してもらうという段取りでおります。
  それから、学生がこれだけいるということになって、今度は学生から見て、どれだけの就職先があるのと、ここが貧弱ですとぐあいが悪いので、3番目に行きますが、求人側の機関登録をやっております。6月現在で73機関しかない。最初の申請では100機関を目指しているのですが、このマル1からマル4に分けて、大きくどういうアタックをするかという区分けをして、キャリアパスコーディネーター等が中心になって現在1つずつ、どういう意識があるのかということをチェックしながら登録をお願いしているという形できております。
  以上が求職側、求人側、それを結ぶネットワークマッチングサイトのシステムの概要になります。
  次に、4番からの説明に行きます。ほかの先輩方の採択機関にもありましたように、意識改革をしないといけないということが言われておりますし、我々もそう考えております。その1つのやり方としてメンター制度というのを設けて、これは当初は教員がメンターになって、しかも指導教員以外の教員も選べるという形でメンターというのを提案して立ち上げたのですが、昨年度の中間評価でそんな「たこつぼの先生」にメンターを頼んでもだめですよという厳しい指摘を受けましたので、それ以降、急遽この人ならいいだろうというような方も、具体的に言いますと、現在17名になりますが、企業等の方々にもメンターに入ってもらっております。
  ただ、このメンターの制度ですが、実は学生側から見ると、ウェブサイト上では見えるのですが、人柄が見えないのです。そうしますと、相談しにくい、顔が見えないということが出てきております。これは、特に最近の学生は指導教員にさえもどこへ就職したいかという依頼をしないという世相にありますので、このあたりがどうもメンター制度がうまく動かないところにもあらわれているようです。我々、キャリアパスコーディネーターがおられるのですが、どちらかというとそのコーディネーターは顔が見えておりますので、そこに相談に来られて話が進んでいるという傾向が強いように思います。
  5番目ですが、プロジェクトアシスタント制度です。このアシスタント制度、18大学も研究機関がありますので、わずか一、二名のスタッフでこのキャリアパス支援センター事業を末端まで周知して、宣伝して、こんなのがあるので使ってくださいよというのはなかなか難しいです。もちろんいろいろな機会を利用してPRしたり、パンフレットを配ったりはしているのですが、それだけではうまくいきませんので、博士人材の中から推薦していただいた者をプロジェクトアシスタントとして任命して、研修を行って、キャリアパス支援センターの事業はこういうものですよと、しっかり自大学へ帰って、いろいろ刺激して、活用させてくださいよというPRの人材としてお願いしてあるわけです。そのおかげで、一部の大学では、研修会をやったりということを自主的に動きが出ております。
  次の8ページに行きますが、プロジェクトアシスタントとしては、48名の博士課程に在学している学生を任命しております。この方々には、いろいろな我々のイベント等のお手伝いを願っているということになります。日本人の登録者の学生数でいいますと、約4分の1の方々がこのプロジェクトアシスタントになっているということになります。
  そのような制度を利用してキャリアパス支援の実施、いろいろなタイプのガイダンスや、セミナー等の実施をやってきました。それが8ページの6番のところからの一覧表になります。資料の4機関の一覧表がありましたが、その中には、一部都合で(1)の前半13番ぐらいまでが欠けているようですが、内容はこういうことです。
  特にその8ページの新たなこととして、(3)の民間企業に対する人材PR活動というのを前年度、それから今年度始めております。これは、一部上場企業を対象に登録願っているのですが、非上場の企業でもロータリークラブだとか、経営者何とかというような集まりがありますので、そこへキャリアパスコーディネーターが出かけていって、こういう人材をよろしくねという宣伝をしていると、そういう活動を始めていることになります。
  9ページ、次のページへ行きまして、社会との交流教育プログラム、これは本事業の1つの特徴だと思いますが、我々農学系、工学系の博士人材に、世の中、金融経済で動いているのですよという形で、こういうことも知っておいて、企業に対する見方を変えてもらって、そして、そちらのほうにも就職していってほしいなということでやっております。これにつきましては、特に有価証券報告書、こういうものをきちっと見て、その企業をみずからが判断して、行きたいか、行きたくないかを決めてくださいよといったような指導等もやっております。
  7番になりますが、意識調査の実施です。他の機関さんもそうですが、我々いろいろなことをやっておりましても、それが果たしてどういうふうにとらえられているかというのは、これはアンケートをすることによって初めてわかってきます。そのアンケート調査の実施のところの2段落目ですが、分ってきたこととしては、修了後の進路としては、どなたも了解されていることですが、やはり研究者を志望している、これは間違いございません。
  ただし、だんだんやっていきますと、公務員や民間の大企業、企業の研究所等へも就職していいよというような答えが出てきております。ところが、実際に具体的に聞いていきますと、就職活動をする時間がない、就職したいと思う企業がないというような答えが返ってくるのです。ですから、企業等の研究所に勤めたいと答えながら、そういう企業がないということで、ここでミスマッチというか、矛盾ができているということです。これにつきましては、我々の求人登録機関がそういうものに合っていないのかということも一部あるように思います。それから、本音と建前があるということにもなるかと思います。
  次のページに行きまして、インターンシップですが、これは昨年度インターンシップでご指摘いただきましたので、これからはほかの大学さんにもありますが、我々のところも「アグロイノベーション高度人材養成センター」というのができておりますので、若手研究人材養成、そちらへつなげていってインターンシップを実質化していきたいと思います。
  それから、就職の支援状況ですが、これは先ほど言いましたように、繰り返しになりますが、マッチングサイトをようやく実態の上がるように変えましたので、これから今年度末ぐらいまでの間にどれだけ効果があるかということになります。
  最後になりますが、委託期間終了後の実施体制です。これは先ほど少し述べましたが、アグロイノベーション高度人材養成センターへ可能なものは全部移すということになります。ただ、これには資金のかかるもの、かからないもの、いろいろあります。それから、スタッフもいることですので、そのあたりは今経営者協議会等で議論していただいているところであります。
  ただ、6連合の研究科の会議で今年度で終わりますよと申し上げたら、そんなこと言わないでもっとやってくれということを言われましたので、これはむげにはやめられないなということで、できる限り農工大の自助努力でこの18大学のネットワークの学生、博士人材支援をやっていきたいと考えております。以上です。

【小林座長】  ありがとうございました。それでは、最後になりますが、京都大学、お願いいたします。

【京都大学】  京都大学キャリアサポートセンター、鱸と申します。よろしくお願いいたします。私どもの取り組みとしましては、他の機関さんと大体同じような形になるかと思うのですけれども、大きく言いまして4つのパーツに分かれております。
  まず第1が求人開拓、2番目がカウンセリング、3つ目にトレーニング、4つ目がマッチングと、この各パーツをきっちりやっていくということが、この事業での方針になっております。17ページにまとめさせていただきましたので、これに沿ってご説明をさせていただきます。
  まず求人開拓ですが、キャリアサポートセンターの中に企業さんを訪問するスタッフを1名専属で配置いたしまして、全国を回るという形をやっております。平成21年6月の段階で約170社の企業様を回らせていただきました。初年度は、とりあえずポスドクを採ってくれるところ、どこかないかということでほんとうに試行錯誤しながら回っていたんですが、相談に来る博士、ポスドクの分野がバイオ系が多いということで、平成20年度ぐらいから主にバイオ系の企業さんを中心に回るということに主眼を置いておりました。
  ところが、バイオでも、例えば製薬の大手さんであるとか、化学系の総合メーカーであるとか、博士、ポスドク、採ってはいただいているのですけれども、そんなに大量に採っていただけるわけでもないし、また、研究室の従来のルートで採用をしていただいているということもあって、我々が開拓して求人をいただいてくるような企業様でもないということもわかってまいりましたので、主に平成20年度からはバイオベンチャーであるとか、中堅どころの企業であるとか、京都大学とあまりおつき合いがないという企業を中心に回らせていただいております。
  現在ではこういうバイオ系の企業、並びに高度知的人材を活用したいと、業界にかかわらずITを含めましていい人材を積極的に採りたいという企業様の開拓ということにも力を入れております。
  こういった集めてきた求人状況を、カウンセリングという形で人材と相談しながら受けに行ってもらうと。このカウンセリング業務、ここが一番大事になってくるのですけれども、このカウンセリングに関しましては平成20年度で約260名対応しております。このうち約210名が博士の学生で、50名がポスドクという形になります。
  分野のほうも、先ほど言いましたように約6割がバイオ系の方になります。残り4割の方もほんとうにさまざまな分野で、中には人文系が約2割入っているという状況です。最終的には、就職先としてこの17ページに書かせていただいているようなところに採用していただいているのですけれども、これは平成19年度が16名で、平成20年度、33名と書いております。実はうちの学生の特徴でもあるのですが、なかなか報告に来てくれないという方も非常に多くて、この二百何十名対応して、特に博士の学生というのはほとんどちゃんと就職ができているのですが、私どものほうに報告してくれていないものもかなり含まれておりますので、とりあえず情報をもらった学生でこの数という形でございます。
  もちろん、この求人情報があって、実際に受けに行ってもらったら決まるという生やさしい状況でないのは各機関さんと同じでございます。そのために、3つ目のパーツのトレーニングというものに力を入れております。これも2年間、ほんとうにいろいろな試行錯誤をしてやってまいりまして、お手元のほうにこの白の表紙の「博士後期課程学生・ポストドクターのためのキャリア支援。KUCP」というパンフレットを置かせていただいていますが、この見開きのところに本年度のキャリアパス対応化支援行事の予定というものを入れさせていただいております。
  具体的には、どんなことをやっているかというのは、ここにまとめさせていただいておりますが、大まかに言いますと、意識形成系のプログラムと就職活動の支援プログラム、この2つに分かれます。シンポジウムとか就職セミナーという形で博士とかポスドクの皆さんが各界で活躍できると、また、してほしいという呼びかけをする者がこの意識形成系に入りまして、昨年度、名古屋大学さんとか、日本物理学会さんと共同でやったようなものもございます。
  就職活動の支援、これも皆さんと全く同じですけれども、とはいえ、受けに行くと落ちると。大体30倍から60倍ぐらいの倍率になっていると思いますので、これをうまくアジャストするために面接のトレーニングも必要ですし、応募書類の書き方というものもきっちり教えていかなければならないということもございます。こういうプログラムも複数回用意させていただいております。
  当初はこういう専門的な能力をそのまま採用していただけるということを目指してやっていたのですけれども、現在ではこういうトレーニングプログラムを、人材が本来持っている専門能力プラス転用可能な能力、スキル、これをどう自覚してもらうかということをもっと考えてもらいたいということもプログラムの中にかなり盛り込んでおります。専門分野でそのまま研究職、開発職につきたいという方が、その夢が実現できればいいのですけれども、競争倍率も高いですので、必ずしも研究職につける方ばかりでもないので、そういう場合にどういう力が自分に可能性があるかということを開発してもらう、そういうことも考えてもらいたいと思っております。
  先ほどのカウンセリング、トレーニングをして、最終的にマッチングをしていくと、そのために企業さんに来てもらって合同の説明会をやったりとか、私どものほうで企業さんとこの人材を結びつけていくという作業をやったりということをしております。
  ちなみに、こういうプログラムのほうに参加してくれている人数ですけれども、シンポジウムは初年度約90名、平成20年度は、先ほど言いました名古屋大学さんと共催、日本物理学会さんと共催しまして、約130名参加するようになっております。研修会は初年度が130名、平成20年度に178名の参加がございました。企業との交流会、マッチングイベントのほうに初年度は39名だったのですが、昨年度は79名。やはり初年度に比べまして、平成20年度、昨年度はかなりこういうプログラムの人気も学内で広まってきまして、参加する数も非常に増えてきております。
  特に初年度はポスドク自体の参加というのが少なかったのですけれども、昨年度からはポスドクの参加も非常に増えてまいりまして、それなりに学内での認知度が高まってきているかなと思っております。
  一方で、評価のときにも、あるいはヒアリングのときにも京都大学は常々ご指摘をいただくところですが、教員の参加がないのではないかということをいつも言われておりまして、全くそのとおりです。そこが大幅に進展したということは決してないのです。ただ、私どもの活動ももちろんあるのですが、この事業自体が非常に学内で認知されてきているということ、それから世間様でいろいろポスドク、大変だねという話が、先生方ももちろんですけれども、博士の学生、修士の学生、あるいは学部の学生というあたりにもかなり知れ渡ってきているということから、3年前の状況に比べると、かなり先生方、学生の意識が変わってきていると思います。
  今専攻の中でこういうキャリアの支援をやっていこうというプログラム、やり方は専攻によって皆さんさまざまですけれども、こういうプログラムを採用される専攻が非常に増えてきております。私ども、そのプログラムの中に参加させていただいて、この事業の案内をしたりとか、あるいはキャリアセンターから講演をさせてもらったりということを非常に数多く行うようになってきておりました。
  ですので、専攻の中ででも将来の進路設計、必ずしも博士に来たから先生になるというだけでなくて、いろいろな生き方があるのだよということを専攻の中でも学生に直接し始めているということで、大分3年前の状況に比べるといろいろ変わってきているのではないかと思います。一方でそういう動きが出てきていると。
  それと、これも私どもが直接やっている事業ではないのですが、こういうポスドクに小学校、中学校に行って、サイエンスコミュニケーターとして授業のお手伝いをしてもらうということを本年度から始めております。これを教育推進部というところが担当しているのですけれども、たしか総長の裁量経費ということで特別の予算を割きまして、ポスドクの支援、並びにキャリアの設計に役立てていこうという動きも出てきております。
  ですので、実際に博士課程の学生も従来のように必ずしも大学の先生になりたいというだけではなくて、いろいろな多様なあり方があるのだなということは、大分意識として持ち始めているということは間違いないと思っておりますので、事業の成果としては大分いろいろな形で出てきているのではないかなと思っております。
  ただ、肝心なポスドクの変化というものはなかなか難しいところがございまして、これは多分各機関さん、皆さんそうだと思うのですけれども、本当に困らないと来てくれない。呼びかけはそれなりにしているつもりですが、なかなか。一方では大学のポストが欲しいという方が多いことと、実際に今の研究活動そのものに非常に満足してしまっているという方が、私はちょっと多いような気がしまして、次のステップのことを考えましょうねと言っても、キャリアセンターに訪れてくれる方が総体的には少ないような気がいたします。
  今後の活動についてなんですけれども、これは委託が終わりました後ですけれども、私ども、キャリアサポートセンターというのは、ご存じのとおりで、従来からある全大学生に対する支援組織として形成されておりますので、組織そのものは継続的に残ります。先ほど申し上げたように求人開拓からマッチングまで、これは日常的に学部学生、大学院学生に対して行っている日常業務でございますので、そのままの枠組みで来年以降も続けていくと。
  肝心の今までいただいていた経費に相当する部分というのをどれだけ大学が負担できるか、外部資金を今後どうやって生かしていく、これが1つのテーマだと思っております。スタッフの配置に関しては大学の予算でやっていくという方向性が確認できておりますので、とりあえず人の手当ては何とかつきそうだと。あとは事業実施経費をどれだけ外部資金を生かしながらやっていくかということを、今考えているというところです。
  先ほど言いました求人開拓からマッチングまでの中で、今後専攻、研究室、あるいはCOEをはじめとしたプロジェクトの中で、ちゃんとしたキャリアプログラムをやっていただくと。ちょっと移転させていかなければならない部分が大分あると思いますので、これを今先生方とお話し合いを始めているというところでございます。以上です。

【小林座長】  どうもありがとうございました。以上で、12機関からのご報告をいただきました。
  れから意見交換に入りますが、残り時間が大体40分から45分ぐらいかなと思っています。3段階に分けて議論したいと思います。最初に、こちら側にいる企画評価委員会のメンバーとのディスカッションを中心にして、その次に、このラウンドテーブルのあたり、さらに、最後に、後ろのほうに来ていらっしゃる参加者も含めての幅広いディスカッションというふうに広げていきたいと思います。
  そういうわけで、最初は、まずこちらの委員の先生中心にいかがでしょうか。どのようなところからでも構いません。

【鳥居委員】  農工大の、スカウトをしてほしいかどうかという、極めて具体的なデータベースなのでこれはかなりコストパフォーマンスがよくなるような気がしたのです。それで、今回の各機関のお話を伺っていまして、調査だとか、啓蒙だとか、広報だとか、それはどこでも一生懸命おやりになっているわけで、非常に微妙なところでの違いが出てきているかも分からないのですけれども、単なる1例かもわかりませんけれども、農工大のようなやり方に対して、後ほどで結構ですけれども、いいところは他の機関でもぜひやってみたいなと思われるところが増えるといいのではないかなという印象が1つです。
  それから、もう一つ、今日、これだけのメンバーというのは非常に珍しい、ある意味で産学連携の非常に高い意識をお持ちの先生方、あるいは研究者の方々がお集まりの場だと思うのです。いろいろな調査をお伺いしておりましても、学生の中には保守的だとか、日本人、日本の社会独特の流動性が見られないなという印象を持ってしまうのです。これは、ポスドクなり、ドクターの学生なりの責任ではなくて、先生方自身が昔からよく言われているように、日本では流動性がないとか、純潔主義だとか、学生さんの囲い込みだとか、非常に狭い発想で、ひょっとしたら日本の国が動いてきたのではないかと思います。
  今日も12機関がありまして、名立たる大学ばかりですので、ぜひそういう意味でも流動性というものを学生に押しつける前に、先生方自身、よく意識改革云々とおっしゃいますけれども、そんな抽象的なことでなくて、具体的にそれが必要だよと。ひょっとして、今日ここでご説明していただいている先生の中には、異なる組織を1つ、2つ経験なさっている方々もいらっしゃるのではないかなと思うのです。だから、そういう先生方の経験談なり何かがこういう場を通してお互いにシェアできるような、そういうことで、私たちは、では、こんなことでやってみたいなといういいところを、皆さん方がこういう場を通して次の一歩を見つけられないかなと期待します。
  今日は非常にいい印象を受けさせていただいたのですが、やはりまだもう一歩だなという印象も持ちましたので、ぜひご検討をいただければと思いました。以上です。

【山野井座長代理】  農工大のPD、簡易登録メニューですか、これと京都大学の人材データベース、それは同じなのかどうか。いずれにしましても、ドクターコースについては、これは京大のデータを見ても一目瞭然ですが、非常にたくさん就職が進んでいますけれども、PDは理系、あるいは生命系だからということだけではなくて、トータルとして非常に少ないですね。
  そうしますと、私は産業界の立場ですけれども、ドクターコースの人については、大学の先生に聞けばどういう人かすぐ分かるわけです。ところが、PDになりますと、これは出て、動いておられますから、PDの中に本当に企業に対して希望があるのかどうかとか、特にどういう特徴を持っておられるのか。あるいは、農工大さんのおっしゃったような、スカウトを希望されているかどうかということも含めて、このデータベースが非常に弱いのです。企業がもっと知らなければいけないという意欲の問題も1つはあるのですけれども、そういう意味でのプラットフォームの弱さが、このPDの問題には1つあるので、ぜひ京大、あるいは農工大のおっしゃったような形のデータベースの共有化の流れを広げていただきたいなというのが、1点です。
  もう一点、気になった問題で、質問ですけれども、早稲田大学のほうで、教員の皆さんに相談に行っても、利用されているのではないかという意味がよくわかりませんけれども、要するにこれだけ一生懸命やっていますよという形を外面的には何回かやれば見えるのですけれども、本当に真剣に、親身になって自分たちの将来を考えてくれるのかという意味での、私は不信感のあるイメージがしたのですけれども。
  それと、農工大のほうのメンター制度、これはすばらしい制度だと思いますが、どんな人柄なのか不安であるという若者の意識、この2つが、こういった問題について教員の皆さんに対して何か不信感というか、不安感のようなものの1つの底流になると困るということがあって──信頼関係がないとできませんので、この辺、どういうふうにお考えになられるか。やはりほかの機関でもそういうことがあるのかどうか、もしありましたら、教えていただきたいと思います。

【小林座長】  今の点について、早稲田大学、いかがですか。

【早稲田大学】  今おっしゃっていただいたような形で、まず、こちらが親身になっているということと、例えば面接をして、ただ聞くだけではなくて、その後キャリアパスの本当に具体的な形で紹介をしたり、または、もし問題になっているのだったら、その先生にかけ合っていろいろ話をするというところまで踏み込んでいかないと、ただ何が問題になっていますかとか、将来どういうところに行きたいですかとか、あなたはこういうことをやったほうがいいですねとかいうぐらいでは、向こうが、ああ、どうせそんなことだったらというようになってしまうときがあるのです。
  ですから、こちら側も真剣に、本当に話を聞いて、ちゃんとキャリアパス、後でどうなった、どうなった、大丈夫かというぐらいまで話を聞いてあげないと、どうせまた聞くだけで終わるのだろうとか、我々、少しセミナーとかに出て力をつけるようにしろと言われて、出てみたけれども、その後何もしてくれなかったということではだめだという意味で、我々はそうならないようにと。特に外部資金で雇用されていて、ポスドクの中でも2回目、3回目ぐらいになってくるポスドクになってきますと、そのような意識を持っている方が非常に多いです。
  ですから、そういう方には特に手厚くそういうふうにしないと、ただ何か時間をとっただけになってしまったとか、そのようなことになってしまうことがあったということでございます。我々の場合、特にスーパーCOE、グローバルCOE、それから大型資金で雇用されたポスドク、非常に多くおりました。スーパーCOEはこの3月は30人ポスドクがいましたけれども、パーマネントの職についた割合はまだ高くはないですけれども、それでもかなり多様な就職に行った方が多いのではないかと思っております。

【東京農工大学】  農工大のほうですけれども、先ほどのメンター、これ、一生懸命宣伝してやっているのに実態として動かないということで、原因はわかりませんけれども、おそらく人が見えていない。要するに、自分の人生を本当はいろいろな人に相談してアドバイスが欲しいのですが、だれに相談していいかわからない。名前と肩書は分かりますけれども、それではだめだということで、やはり顔の見える形で、メンタリングを我々は具体的にやったこともあるのですが、そのときはよかったのですけれども、それ以降は動いていませんので、多分そこだろうということで、それを今年度どういうふうにして解決していったらいいかということを考えていかないといけないと認識しております。
  それから、先ほどのマッチングサイトは、これは私がアルゴリズムというか、概要を考えたのですが、学部からマスター、ドクターまで、論文のテーマまで全部書かせて、ここにサイトで公開されますという赤い字で書いてあるところは、全部検索できるようにしたのです。そうしますと、直接そこでキーワードだけである程度、ひょっとした企業から見ていい人材が見つからないかなという提案ですね。

【山野井座長代理】  これは大変結構な話だと思います。申し上げたかったのは、教員の方全員というわけではなくて、こういう問題に対して非常に熱心に問題意識をお持ちになって一生懸命やっておられる方と、何とかそういう方向に進んでみようかなと思っている若者たちとの間の信頼関係がなかったら、これは一発でこの話はつぶれてしまうのです。ですから、そこを、今の話を聞きますとちょっと安心しましたけれども、そういうことが気になったものですから、ぜひそういうことのないようにお願いしたいなと。印象としての感想です。

【東京農工大学】  まさしく、そこの信頼が一番大事だと思います。

【小林座長】  事業そのものの信頼をポスドクから得られるかということと関係するかと思いますけれども。

【小杉委員】  私がとても気になりましたのが、健康センターとの連携がどうしても必要な人が出てきているというお話があったと思うのです。多分将来の不安とか、そういうことがかなり大きくなってという人がほかの大学でもいらっしゃるのでしょうか。実際に精神衛生のもっと専門家との連携が必要だということは実感していらっしゃるようなところがあったら、教えていただきたいと思います。

【小林座長】  いかがでしょうか。

【京都大学】  うちの場合は、ポスドクさんに関してはそういう事例はないのですけれども、博士の学生から学部の学生、年間1,200人ぐらい学部の学生で来ますので、そのうちの何人かちょっと危ないなというような学生がおります。そういう学生は、うちもカウンセリングセンターというのがありますので、そちらのほうに先生方と連絡して行ってもらったりということがあります。
  それは、就職がうまくいかなくて精神的におかしくなっているという方もいれば、ほかのことが原因で就職活動もうまくいかなくて、就職活動もうまくいかないので、うちに来たけれども、どうも原因はほかにありそうだという方とか、いろいろな方がいらっしゃいます。 

【東北大学】  ちょっといいですか。東北大の後藤です。今の関連の話ですけれども、確かに私どももそういう学生がいます。1つの例を挙げますと、1人の学生は1時間半ぐらいの面談に20回ぐらい来ています。結論から言いますと、ものの見事に就職できたということですけれども。問題は、今おっしゃったように、その学生の個人的な問題、もちろん家庭的なものも含めた、そういうものもありますが、一番多いのは研究室内での人間関係で、これが最も多いです。
  その中で、一番多いのは研究課題に対しての上司、先生、教授とのトラブル的なものです。これに該当するのが2人いまして、実は残念ながら学位取得を断念して、それで就職していったという結果になりました。1人は既に就職していっていますが、1人は内々定をとったのですが、まだちょっといろいろ話を聞いてほしいと言って現在来ています。これは、私自身も精神的にずっとフォローしていって、そして4月1日に見事に社会人になれるようにやっていきたいと思っています。こういう事例がございましたので、参考までに。

【小杉委員】  ありがとうございました。

【小林座長】  それでは、ほかに委員の先生から。

【今成委員】  京大の資料の中に理系、生命系のポスドクが多くて、しかも、なかなかはけないという話は、京大だけではなくて、ほかの大学でも一般的な話かと思うのですけれども。これに対して、特に、たしか北大もそうだったと思うのだけれども、こういうふうにしたほうがいいとか、そういうお話がございますでしょうかというのが1つ。
  それから、ポスドク問題、ここにいらっしゃる12機関の方々は、いわばプログラム経費が出て、3年間ぐらい行われて、あと、お聞きしていると、自前でやるとおっしゃっているところが多いから、それはそれでいいのですけれども、12機関以外の多数の機関はこれを全くやっていなくて、やってみてわかったけれども、意識が低かったとかいうご発言もございますので、やっていないところはどうなっているのかなと。恐ろしいことだなと思いまして。
  文科省がこのプログラムを考えて、火をつけたわけだけれども、その火は資金がなくなるとともに鎮火しちゃうのかなというおそれを抱くものですから、何かご意見があったら、2つ、お願いします。

【京都大学】  生命系に関しては、やはり非常に学生も、研究者の数も多いわりに、まだ産業界自体がもうけになっていない分野だと思うのです。ですので、アカデミーにいっぱい人材がいるわりには、出口としての、受け入れ先としての産業界の体制がまだ全然できていない。ですので、私ども、こうやって百何十社回らせていただいて、バイオ系というと、結局バイオベンチャーになるのです。
  そういうところだと、求人はもちろんしていただけるのですけれども、先ほど言いましたように年間に1人採るか採らないか。そこに全国のバイオの研究者が受けに行くので、最低でも50倍とか60倍の競争率になるという感じです。それで大変だなというのが初年度の問題だったのですけれども、やはり実際、先ほど言いましたように、京都大学の生命研などでは先生方もそこはよくわかっていらっしゃいますし、肝心の博士課程の学生のほうも実は3年前と大分変わってきたというのはそこなんですけれども、本人たちもそこはよく分かっています。
  知らないで生命研に来たというのもいることはいるのですけれども、少数派になってきていまして、現実にもう厳しいというのは分かっていると。3年前あたりだと、生命研を出て、民間というと製薬メーカーさんだとか、味の素さんだとか、そんなことばかり言っていたのですけれども、わりとこの間名古屋大さんと一緒に生命研の中で講義させてもらって、学生と話をしていると、必ずしもそういう一元的な考え方をしていない。わりと多様に自分の能力を生かしたいと。だから、外資系の企業に行きたいという者もいれば、本当にいろいろな進路先として考えている学生が増えてきていると思います。
  また、先生方もそういうことをサポートするために、先ほど言いましたように、キャリアは非常に多様に皆さん可能性があるよと。生命研だから必ずしも生命に関する研究者にならなきゃならないと考えないでねと、そういうことをきちっとやっていらっしゃるなと思います。
  ですので、今生命関係の学部とか、研究科とか、大学院、非常に新設で増えている大学さん、多いと思いますし、学生の人気もものすごくあるので、高校の受験生、集まりやすい分野だと思いますが、まだ産業界はそこが熟成していないので、将来、みんなはもっと自分の持っている力をいろいろなところで生かすようにしましょうねと、そういうのは授業の中できっちり教えていただくような仕組みというのは必要かなと思いますし、学生たち本人はわりとそういう力を持っていると、私どもは思います。

【小林座長】  時間があまりないので、他の大学はどうかというのは、多分後ろの方たちも含めて議論すればいいと思うので、後でやりたいと思います。
  次に、伊藤先生。

【伊藤委員】  それでは時間がないようですので、簡単に。1つには、この取り組みの成果という視点でお話を伺って、皆さん大変よく頑張っておられるなと思いました。例えば1つの例で、北海道大学がそもそも最初に理学部からスタートしたというのが、私は非常に印象が強かったのですけれども、それが現在、人材育成本部という全学的な組織を設立するに至ったということは大変大きな成果ではないかと思いました。
  他の大学のケースなどをお伺いしましても、今後の取り組みということで、実施体制については次第に全学的な組織ができる方向に向かっているようです。実施機関を構成する先生方の意識の問題というのは、最初に早稲田大学さんがおっしゃっているように、スタート時点では大きな問題がどこでもあったのだと思うのですが、それがだんだんと良い方向に向かい、本事業の意義が出てきているというとらえ方を、私はしました。
  その点で、例えば今日お話いただいた前半の8大学のほうでも全学的な組織をつくるのに非常に苦慮しているというところもあるのかどうか、私は十分には把握し切れませんでした。多くの大学は既につくる方向に行っているようではありますけれども、その辺で大分苦労しておられるところがあるのであれば、ちょっとお伺いしたいということです。
  もう一点ですが、これは京都大学の具体的なお話なんですが、最後にありましたキャリアカウンセリング実施者の就職状況というのは、具体的に企業の名前がたくさん出ているわけですけれども、これは、このキャリアカウンセリングの成果としてこういう企業への就職が決まった、あるいは内定したと、そういう理解でよろしいのでしょうか。
  あるいは、これは、例えば指導教官が介在してというのは言い方は悪いかもしれませんけれども、指導教官のほうの話で結果的にはこういう就職が決まったということで、その間にキャリアカウンセリングが間に介在していたのかいなかったのか、ということです。
  それから、もう一つ、ここでアカデミアと企業とが具体的な就職先の中に両方たくさん出てくるのですが、おおよその概数として、全体的に見たときに、アカデミアと、企業と、どんな割合になっているのかということも、分かれば教えていただきたい。それだけです。

【小林座長】  そうしたら、最初に、特に最初の8機関ですけれども、全学的、全機関的な取り組みとして、うまく転換できていないところはありますか。一応、大体大丈夫そうですか。大丈夫そうですね。
  じゃ、京都大学、事実関係だけ簡潔にお願いいたします。

【京都大学】  こちらに書かせていただいているのは、すべてうちのほうで手塩にかけた人材たちの報告ですので、ちゃんとカウンセリングをして、実際に面接の練習もして、応募書類の書き方とか、そこまでやった人たちです。先ほど言いましたように、そこまでやっても、ちゃんと報告をくれない方がいっぱいいるので、ここに書き切れていない者もいるということです。

【小林座長】  アカデミックの割合はどうですか。

【京都大学】  アカデミックの割合というのはそんなに多くないです。本当にここに書いたとおりで、大半が企業さんにということを前提にして我々はやっておりますので。ただ、その中でたまたまアカデミーのほうに応募したら受かりましたというのが、これだけです。

【小林座長】  わかりました。それでは、時間もないので、委員の先生を含めてラウンドテーブルでこの座席についている方たちの間でご意見等がありましたらどうぞ。

【東京農工大学】  今の最後の質問に関連するのですけれども、アカデミアにカウンセリングをして成功されたというときのカウンセリングの中身を聞かせてほしいなと思いまして。

【京都大学】  実は全く一緒です、実際に企業に受けに行くときと。ここで何大学か行っている人たちの、これが助かりましたというのは、結局面接の練習の仕方だったり、論文の説明の仕方だったり、自分の研究内容をちゃんと相手に伝えるとかですね。

【東京農工大学】  ただ、そうしたら、例えば山梨大学(助教)とありますけれども、そこを見つけるのはだれが見つけるのですか。

【京都大学】  それは自分で。アカデミアに関してはそうです。

【東京農工大学】  自分で。そうすると、インタビューのノウハウを教えてもらったということですか。

【京都大学】  そういうことです。

【東京農工大学】  分かりました。

【産業技術総合研究所】  産総研はつくば地区への地域展開ということを言っていまして、来年度以降、予算もなくなるところでどうしたらいいかということで、非常に悩んでいるところです。そもそもつくば地区で連携をとって地域展開する意義というのは、大きな機関以外はこういった育成事業というのは単独で持てないのです。
  例えば、100名とか200名規模の研究系の独法というのは、中で研修をかけたりとか、そういうことは全くできないのです。そういった意味では、うちは5,000人規模、理研さんも相当規模だと思いますが、そういったところは独自で、総合大学ももちろん持てると思うのですけれども、小さな機関を束ねてやっていかないと、トータルには全然問題が解決しないというところがあって、うちはそういった観点もあって地域連携を図らなければいけないという志は持っているのですけれども、正直、先立つもの、お金がないとなかなか動けないということです。
  人はある程度、委員として出してくれて議論は進むのですけれども、では、コンソーシアムでもつくってお金をそれぞれ持ち出すかと言った途端に、なかなか進まなくなります。一方で、文科省のほうでは500万の持参金をつけてポスドクを送り出すというのをやっていますけれども、一人分の500万円をもらえれば、正直この事業をつくば地区で維持できるのではないかと私は思っています。そういったような調整をぜひ図っていただけないかと希望しております。
  先ほども、データベースをいろいろなところでやっているのを、調整されて融合させてはどうかと、これは非常にうちでもデータベースはどうしたらいいかなと悩んでいるところで、インターネットを使えば全国規模で展開できるような、そういった部分はどこか1機関が担うとか、調整とか予算的な部分について少し検討していただきたいなというのがあります。
  あと、地域展開の関係では、産総研で、ナノテクの分野ですけれどもいろいろやっていまして、ちょっとコメントがありますので、お願いしたいと思います。

【産業技術総合研究所】  産総研の秋永でございます。先ほど委員の先生からいただいたバイオのポスドクの方々への支援ということですけれども、弊所で行わせていただいておりますのは、あえてバイオの方々にエレクトロニクス系とか、そういった技術を強制的に習得していただくということをやっております。そうすると、非常に視野が広がった方々が出てくるという効果が少しずつ見え始めております。
  例えば、本日も農業食品産業技術総合研究機構の当方への受講者の方々が、エレクトロニクス系の企業のところに私どもを介してアクセスをするとか、そういうことができておりまして、そういった試みも続けていくといいのではないかなと弊所では思っているのです。もし、そういった類似の試みをされている機関、もしくは先輩の機関の方々がお持ちでしたら、情報共有させていただければなというふうに思っている次第でございます。いかがでしょうか。

【小林座長】  類似の試み、あるいは、それに関連するような試みありますか。

【大阪大学】  大阪大学で、事業として取り組んでいるのではなくて、教員の中にこの話をずっと広げていく中で出てきた話は、工学系のところは、いろいろな、例えば電子技術だとか、そういうものをオープンにするということで、バイオ系の人たちがもう少し広がっていくということはあり得るという話が、教員の側から出てきているのです。
  私たち大阪大学は、あっせんとかそういうことはやらないで、どうやって大学の中で博士を教育するかということでやっています。そうすると、皆さん、そういう意味では参画していただいていて、異分野の人が異分野を教えるということをやろうとしています。
  もう一つ、加えて言わせていただくと、結局、今就職のお話をされているのですけれども、最終的にどこで自分の活躍分野を見つけていくかということです。博士という人材を考えたときには、必ずしも就職あっせんではなくて、新しい領域を開く人たちだという見方をしないと、企業側とも話ができないのです。だから、とにかく博士は取っていますよというふうにして、企業に行くと言ったり、それから、確かにポストはあるわけですけれども、そういうところはものすごい倍率です。
  ただ、新しい事業展開をしようというときに人材が欲しいというのがあります。例えば、具体的な例でいうと、あるプリンターのメーカーがバイオ分野に参入すると、そのときに必要だという形があるのです。だから、お互いにミックスした領域で、新しいものを探しているところのマッチングをやるというのを、意識的に追求するのが重要だと思います。

【北海道大学】  今の話ですけれども、私たちのところでは、バイオというのも端から端があります。分類学の端っこのバイオから、中間のもうちょっとナノバイオロジーまで入るところです。ゾーンによっては、完全に電機メーカーも、精密メーカーも、欲しがっているのです。ただ、教育研究者側がその目がないだけの話であってという、そういう意味で、そこを新たなテクニックを入れなくても、彼らは歩んでいけると我々は感じています。
  もう一点、ちょっとずれますけれども、先ほどのお金の話ですけれども、確かにお金というのは必要ですが、お金を出させて初めて次のステージという感じがするのです。外金でやっている分にはだれも文句を言わないのです。それが、学内のどこかからお金をふんだくった段階で、一気に議論百戦するのです。そこから始まるような気がしています。
  キャリアパスの事業自体が、次のステージというのはこのステージではないかなと思っていて、先ほど、次のこの事業が終わった後も、皆さん、もう大体手当てができているというのは、多分もう戦われた後なのかなと思います。そういう意味だったら、確かに文科省だとか、いろいろなところから500万でいい。確かに500万あれば、それとマッチングする格好で、どこかからお金を出してくる。そんな格好のものだったら、前に進みやすいのかなと、そんな気がしたのです。

【産業技術総合研究所】  ちょっと補足だけさせていただきますと、産総研のイノベーションスクールは補正予算とかを使ったりしていますが、一応内部予算でやっていまして、地域展開していくつくば地区全体に、では、うちがボランタリーでどこまでできるかといったら、正直できないのです。やっぱりイコールパートナーシップでやっていくしかないので、そうした場合にはお金をどう出し合うかというのは非常に大きな問題です。そういう視点です。

【小林座長】  多分この事業の次の段階で、広げるときにどうするかという話ですね。そういう理解でよろしいですね。

【早稲田大学】  北大からお話がありましたけれども、それぞれの機関がある意味では生き残りをかけて博士人材のキャリアパス多様化を進めるのは当然だと思うのです。一方で、それぞれの機関では対応できないような課題が人材育成に関してもあると思います。そこら辺は、さきほどの地域、つくばが全部集まるとか、またはオールジャパンで何か考えようとか、若手研究人材支援のプラットフォーム構築がぜひ必要です。そういうところは何とか国、文科省からフォローしていただけたらということを期待しております。

【北海道大学】  うまく切り分けたほうがいい気がします。

【理化学研究所】  産総研とか理研はお金があるから独自でできるのではないかというお話もありましたけれども、理研にとってもなけなしの金で頑張っているというのが事実です。というのは、切実に2,300名からのポスドクというか、任期制の研究者がいるわけで、この人たちをどうやって今後、毎年300人ぐらいのターム、人の入れかえがあるわけですから、この辺をやっていくためには、やはり先ほどの講座とか──先ほどの金融論も含めまして、いろいろな講座などが連携してやれれば効率的だと思うのです。
  拝見していますと、1回の講座にせいぜい20人、30人出てくるのはもったいない。少なくとも全国展開の中で、首都圏は多いのでしょうけれども、そういうところに100人、200人が来て効率的に動くような気がするのです、まず教えるだけの座学であれば。
  そうじゃない、さっきのナノテクにしろ、何にしろ、技術的なものであっても、ニーズがあれば講座は広がるはずですから、そこはもっとうまくこの協議会みたいなものが連携してやれないかという気がします。やはり自分のところでやるだけは無理です。それは、正直3年やってみてつくづく思っています。

【小林座長】  それでは、まだいろいろな議論があるかと思いますが、一度全部、後のほうにお座りの方たちまで含めてフリーディスカッションでやりたいと思います。先ほども、他の機関ではどうなのだというような話もありましたが、そんなことも含めて、ぜひ後のほうにお座りの方からもご意見、あるいは自分のところの活動の紹介等をいただければと思います。いかがでしょう。

【傍聴者】  私自身がライフサイエンスのほうの担当で、ユニットでやっているのですが、今のお話で、生命系、生物系、ライフサイエンス系のエリアというのは、国家戦略としても重要エリアだと言われていて、我々もここには投資すべきだといっていろいろなアカデミアのところにお金を入れているのに、中核を担うべきドクターコースとか、特にポスドクの人が行き場がなくて困っていると。これは国家戦略としてすごい無駄をしているというか、空回りをしている。
  ですから、今日は文科省傘下の会議ですが、皆さんは日本のどこかの矛盾のところに触れられているわけで、文科省だけではなくて、特に今日、どなたかおっしゃっていましたが、そういう人は本来ベンチャーに行くべきです。
  ところが、マネーの原理だと、ベンチャーというのは、今特に日本はベンチャーが育つ環境にないので、エンジェルになるべきは文科省であったり、枠を超えて経産省だったり、内閣府だったり、そういうところがもっとベンチャーを育てるというところまで突っ込まないと、この問題は皆さんがどんなに努力しても、何かおかしいと思いませんか。僕は、そういうふうに今の議論を聞いて思いました。だから、これはもうちょっと政策を広く考えて、ポスドク問題というのはここだけで解決できるのかと私は思っています。

【小林座長】  ありがとうございました。では、今のことについて、まず、先生。

【早稲田大学】  今、バイオの話がありましたけれども、これについては非常に大事分野であることは皆よく分かっています。この問題は極めて構造的な問題で、今のまま行けば、おそらくそういう若手を育てるのをやめるか、または、今いる人だって他分野に行くしかないと思います。
  先ほどご指摘があったとおりバイオ分野には優秀な人はいっぱいいらっしゃるわけです。国としてどうしても本当に必要だったら、もう少しこの後どうフォローするかが必要です。全く同じ現象が世界中で起こって、アメリカもNIHが一番パニックになっていますね。我々がどうできる問題ではなくて、国としてどう考えるかという問題かと思います。

【大阪大学】  我々がどうできるかという視点で、ちょっと私はお話ししたいのです。結局大学でも、いわゆる産学連携の部門というのが実際どの程度機能しているかということと関係していると思うのです。本当に、例えば大阪大学の例で言うと、外部資金の1割しか共同研究費はないのです。その共同研究費も、実際に人を雇用できるような共同研究費ではなくて、100万、300万とか、そのぐらいの話です。
  そうすると、実際にその企業とのインターフェースゾーンで活躍する人たちを外へ向けて広げていくということができないのです。ここがもし強化されると、新しいゾーンが開けるというのが1点。それから、おっしゃるとおりベンチャーです。大学発ベンチャーは、やっぱりうまくいっていない。そこをどう変えていくかということで、そういうところに若い人たちは入っていきたいという意識はあるのです。一定はあるけれども、ものすごく不安ですね。
  だから、そういう意味で言うと、本腰入れてその部分に対処するかどうかということが、次のステージとしてはあるのではないかと私は思います。

【名古屋大学】  名古屋大学ですけれども、私の感じでは、確かにバイオ、ライフサイエンス系のポスドクの求人というのはあります。あるけれども、需給バランスからいくと、わりに少ない。ある意味、先ほど名古屋大学の例を挙げましたけれども、きちんと自分のキャリアデザインとして決断してくれると、バイオ系でも就職できます。それよりも、もっと本当の基礎をやっている方のほうが、多分、就職が難しくなっているという現状があると思います。
  それで、ベンチャーに関しては、うちはベンチャーや中小企業をわりに重視して、そういうところにお願いをしています。ただ、政策的な問題に関して言わせていただければ、ポスドク及びベンチャー等を日本国内に限定して考えることをやめるべきであるというふうに、私は思っています。アカデミアに行くにせよ、ベンチャーをやるにせよ、あるいは企業に行って国際関係で働くにせよ、今だったらバイオ燃料とか、そういうのがたくさんあります。海外へ行ったほうがチャンスは大きいということを、ポスドクの方々に対して繰り返し申しております。以上です。

【小林座長】  はい、ありがとうございました。それでは、後のほうの傍聴の方で、自分の大学はこういうふうに取り組みつつあるとか、あるいは、他大学から見て、このキャリアパスの事業はこう見えているというようなことを言ってくださる方がいると非常にうれしいのですが。どなたかいませんかね。

【日本物理学会】  1ついいですか。それでは、私は富山大学の人間なので、物理学会と関係なく、富山大学として言うことにすると、このような、理研もみんな大きな大学ばかりなんです。日本の地方大学で集まって、今ドクターなるようなところが連合をつくって、こういう問題に対処しようという動きがあります。ただ、富山大学も入っているはずだけれども、私のところにはほとんど聞こえてこない。この活動を通じて初めて知ったぐらいです。
  だから、一部では多分動いているところもあるのでしょうね、連合で。ただ、それがすべての教員に対してちゃんと情報が伝わっているかというと、それはうまくいっていないのではないかという気はします。
  それから、もう一つ、地方大学はやはりドクターといっても数は少ないのです。そうすると、問題がそれほど大きく見えてこないというのがあります。むしろ、それよりマスターとか学部生の就職のほうが今の不況で心配だと言ってしまって、そこまでなかなか手が回っていないというのが、地方とか弱小の大学の状況ではないかという感じがします。

【小林座長】  はい。

【宮田委員】  皆さんの話を聞いてきて、ご努力はよく分かるのですけれども、どうも何か就職問題にきゅうきゅうとしているあまり、事の本質を見失っている感じがするのです。今日お話を受けて本当によかったのは、1つ、東北大だと思いますけれども、マスターのカリキュラムで必須になったことは朗報です。
  つまり、大学院で何をやるか。今回の最大の問題は、大学院教育がだめだったからじゃないですか。きちっと自分でものを考えて、プロトコールをかけて、研究室のチームをマネジメントできる人たちをつくらなかったために、今皆さんが面接の手取り足取りなんかをしなきゃいけない。こんなところにむだな国税をかけると見えちゃうわけです。
  去年、国税のむだ遣いのナンバー1のプロジェクトでしたから、この事業が。ですから、そういう意味では、本来の大学とか、あるいは、ここに来ている産総研とか理研が、一体ポスドクの就職活動以外に、そこにいたところの人たちの付加価値をどう上げられるかということを、もっと私は聞きたかった。そこまで行く間のところで、皆さん、苦労しているのがすごくよく分かりました。ですから、そういう意味では、本質的な活動をして、この機関の中の機能であるというふうにきちっと評価をされて、内部資金が回るというようなところまで持っていかなきゃいけない。

  そのためにはどうしたらいいかというと、とても皮肉な話ですけれども、実際の企業のニーズを知らなきゃいけないのです。これは、実は皆さんが今ご苦労なさっている就職あっせんということによって、初めて自分たちの育ててきた人材、あるいは自分たちのところにいるポスドクの価値というものが突きつけられて、皆さんが苦労するということになっていると思うのですけれども。そこが第1点だと思います。
  ですから、先ほども、最後に最終評価をどうするかというのを午前中やっていたのですけれども、この点を私は一番気にしています。というのは、最終的に持続可能というのは、皆さんの就職あっせん能力を高めることも重要ですけれども、そうではなくて、そこからフィードバックして、本当に社会を変えてくれるような人材を大学院の博士課程でどうつくるか。そのために、現在の教員も含めて意識改革、教育のシステムをどう変えるかです。
  先ほどおっしゃったけれども、これは国家レベルだと。確かにそうですけれども、では、大学の先生が、生命科学のイノベーションが起こって、アメリカでは軍事技術の予算がこんなに減って、その分生命科学になったということは、ポストもそれだけ変わったということです。
  大学の中で、それでは生命科学のポストというのはどれだけ増えたのか。一部の工学部の中にもそういう生命科学のところが出ていますけれども、これだけ大きな変化に対応して、アカデミックなポストの再分配が行われているかというと、行われていないじゃないですか。
  だから、そういう意味で、大学そのもののポストのアロケーションのことも含めて、社会とのコミュニケーションを通じて、皆さんがこのままじゃまずいというような考え方を持っていただくというのが、私の本当の希望です。カリキュラムからシステムの変更というものが出てくるということを期待したいと思っています。

【早稲田大学】  この多様化プログラムと同時に動いているというか、イノベ若手のプログラムもあります。今おっしゃられたようなことは、多分採択されている大学は非常に努力してやっている、大学院改革まで踏み込んでやっているものと思います。私どものほうも、大学院の講義の今言われたようなご指摘のところはもう考えてやっております。ただ、その成果が出るのが今すぐには出ないものだと思っています。
  これは、我々が今一生懸命議論していることが、今ご指摘のことの思いがある人間は本当にやっています。ただ、問題になるのは、今現在いる人たちです。ですから、今現在いる人たちをどうするかというのは、これは就職の世話をしてあげなかったら取り残されます。
  ですから、大学院改革をやっているのは今やっています。やっているところはやっていると思います。しかも、それがイノベ若手のような予算がついて、そこで1回システムとしてつくって、大学院の講義にきちっと入れて、そういうことをやることで恒久的なものになると思います。
  ただし、例えば今30後半ぐらいで何度かポスドクをやっている人とか、今言われたようなこういう経済状況の中で、ちょっと前だったらよかったのが、今ちょうどタイミングが悪くなってしまってできなくなったような人は置いておいていいのかというと、そうではなくて、まさにこのプログラムで何とかしてあげられたらなという思いがあって。ですから、その両面をやらなくてはいけないのではないかなと思っております。

【宮田委員】  全くそのとおりです。イノベ若手の主査をやっていますから、そのとおりですけれども、ただ、それは、長い期間を見ると今の問題であって、このプログラムは今の問題の解決のためのびほう策をつくることが主ではないということだけはお願いします。皆さんがそこでご苦労なさっていることは理解しますけれども、ぜひ未来の一歩というような形でお考えをまとめていただいて、道に迷わないようにしてください。
  つまり、何人就職したぞというところで満足させないようにしてください。本当に、皆さんのところに預けられたポスドクの人たちが幸せになって、国が栄えるようなイノベーションが起こるということが重要だと思っています。ご苦労は本当によく分かっています。
  先ほども言いましたけれども、皮肉ですが、そのご苦労が実は大学とか研究機関の外部からの評価になるので、よくそこから学んでいただきたいと思っています。

【小林座長】  どうもありがとうございました。多分この事業に参加した機関に関して言うと、かなりその点は皆さん自覚されて、しかも、いろいろな形で自己資金を使ってでも大学院のカリキュラムの中に取り込むとか、いろいろなことをもうされているのはよく存じ上げています。多分、問題はこの後、いかにそれをより浸透させていくか。さらには、今回参加した以外の機関に浸透させていくかということではないかという、そういう次のステージに来ているのかなという気がいたします。
  時間もなくて、本当はもっともっといろいろ議論したいところですが、この辺で意見交換を終わらせていただきたいと思います。
  それでは、最後に、今ちょうど資金の面とか、いろいろな注文がつきましたので、文科省で泉局長がよろしいですか、ごあいさつをいただければと思いますが。

【泉科学技術・学術政策局長】  今日は大変お忙しいところ、長時間にわたりまして、12の機関からそれぞれの取り組みについて、終わったところについては、その後もどうしているかということも含めてお話しいただいたわけでございます。3年間、まず、この事業に取り組んでいただいたことについて、改めて厚く御礼を申し上げたいと思います。
  議論の中で、最後に小林座長もおっしゃられましたように、これからどういうふうに展開していくかということ、特に、ここでいわば先行事例となっていただいたような取り組みをさらにどう展開していくかということについても、ネットワークの形成とか、あるいはつくばのように研究機関や大学が集積しているところでは、まずそういったところで連携、協働してやっていくようなことが出てきまして。
  やはり、この協議会のようなところがコアになってそういったネットワーク的な広がりをつくりながら、取り組みをあちこちに浸透させていくことが必要ではないかと、まず当面考えられる有効な方策ではないかと思いまして、それにも資金が必要だということであれば、またそういったことについてどういった支援ができるかということは、役所としても検討していかなければいけないと感じました。
  それから、この後継事業と言うと語弊があるかもしれませんけれども、よりねらいを具体的な取り組み、先ほど主査もお務めいただいております宮田委員からお話がありましたけれども、イノベーション創出若手人材育成事業、これについて20年度から始めておりまして、21年度も新しく新規採択しましたけれども、やはり、この事業を5年間の支援でございますので、引き続き、科学技術振興調整費の中ですけれども、したがって競争的資金ということになるわけですけれども、拡充を上手にしていかなければいけないということも感じたところでございます。
  なお、まさにキャリアパス多様化というような中で、海外ということも先ほどご議論の中でございましたけれども、このイノベ若手事業というのは、国内外のさまざまな場でということがうたわれております。それぞれ採択されたところは、ミッションステートメントを出されて、そういったところに、それぞれの大学なり、機関なりのお考えで、具体的な取り組みを持っておられると思いますけれども、今後、少しそういったところの具体的な取り組み状況。まだ2年目、実際には、おそらく昨年採択されたところも、本格的に始まったのは多分今年に入ってからではないかと推測するわけでございますけれども。そういったイノベーション創出若手人材育成事業、これの展開状況というものも引き続きフォローして、それもこれからの広がりの中で浸透、普及といったことを図っていく必要があると感じました。
  それから、これはご議論を拝聴していて、感想めいた話ですけれども、この話は、ここには大学で言えば大きな総合大学、地方の大学、それから農工大のようないわば単科大学、それから、大学の形態でいえば公立もあり、私立もある。それから、大学だけではなくて独法の研究機関もおられるということで、さまざまな12機関は、かなり機関の性格なり設置形態は違うところがお集まりになっているということで、それぞれの機関の特性に応じた取り組みというのも、政策的には考えなければいけないと感じました。
  それから、もう一つ、キャリアパス多様化といった場合に、やはり物事の分け方が2つか3つくらいあって、まず、アカデミアとノンアカデミア、リサーチとノンリサーチ、これが4つに分かれるわけです。それから、さらに機関のほうの取り組みでいうと、大学です。高等教育機関と、独法の普通の研究機関。普通のと言うと言葉が悪いですけれども、研究機関との間でも、やはりこの問題に対する取り組みの仕方なり何なりというのは、かなり違った部分があるのではないかと。そういうことを意識しながら、これからの政策形成も図っていかなければいけないと感じました。ということを、これは感想になりますけれども、申し上げておきたいと思います。
  そういうことで、冒頭申し上げましたように、これから大きくは第4期科学技術基本計画に向けて科学技術人材というのは、1つ、大きなイシューになることは間違いないです。その中でも、博士課程の博士人材を生かしていく、あるいは、そのために大学院教育などをどういうふうに変えていくか、どういう方向に持って行く必要があるのかということが議論の焦点になると思います。今日いただいたお話も、ご議論いただいたお話も、そういった議論の中にも反映していかなければいけないということも感じました。
  引き続き、文部科学省でも、この事業の、あるいは、この協議会でご議論いただいているような趣旨をより達成できるように、引き続き努力してまいりたいと思いますので、また、ここにいらっしゃる皆さんにはいろいろとご指導、ご協力を賜ればということを最後に申し上げまして、僣越ですけれども、終わりの言葉とさせていただきます。どうもありがとうございました。

【小林座長】  どうもありがとうございました。政策への反映、あるいは、場合によっては資金的なことも考えなければいけないという言葉をいただきましたが、逆に、これは、この企画評価委員、もしくは実施機関、実施終了機関も含めて、我々が今度はその成果を大学セクターのより広い範囲に広げていく責任が生じたということです。政策的には文科省でやっていただくとしても、現場へ広げることについては、我々にもいろいろ責任があるのだろうと思います。
  本日は非常に長い時間になりましたけれども、本当にありがとうございました。科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業の、第4回の連絡協議会をこれで終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。

── 了 ──

 

 

 

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(科学技術・学術政策局 基盤政策課 基礎人材係)

-- 登録:平成22年02月 --