科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業連絡協議会 (第3回) 議事録

平成20年9月9日(火曜日)

【小林座長】
 おはようございます。時間になりましたので、ただいまから第3回の科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業連絡協議会を開催します。
 本日は、お忙しいところお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。
 本協議会というのは、本事業の実施機関同士のネットワークを強化して、また企画評価委員会及び文部科学省も参加してキャリアパス多様化のための情報交換、あるいは問題意識の共有を図るということを目的にこれまで実施してまいりました。
 また、この事業は事業に参加していない他機関にはなかなか理解されにくいということもありまして、他の機関の方たちにもぜひ知っていただきたいということを狙いとしております。
 本日、このロビーにも参加機関のポスターの展示をしております。ぜひそちらもごらんいただければと思っております。
 また、実施機関が12機関あるわけですが、8機関は今年が最後の3年目になります。4機関が2年目ということになります。2年目と3年目ではかなり大きい違いがあると思いますけれども、特にこれから2年目、3年目を迎えていく、平成19年度から開始した機関につきましては、本日の議論などを参考にぜひまたこれからもご検討いただきたいと思います。
 それでは、開会に先立ちまして、文部科学省科学技術・学術政策局の泉局長からごあいさつをいただきたいと思います。よろしくお願いします。

【泉科学技術・学術政策局長】
 皆様、おはようございます。ご紹介いただきました文部科学省の科学技術・学術政策局長の泉でございます。
 第3回の科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業連絡協議会ということで、開会に当たりまして一言ごあいさつを申し上げたいと思います。
 改めて、主催者といたしまして、本日は大変お忙しい中、企画評価委員会の先生方、それから12の実施機関をはじめ、傍聴席にも大変大勢の皆様にご参加をいただきまして、この事業のねらいとするテーマについての関心の高さを改めて実感しているところでございます。また、皆様の取り組み、ご熱意に対しまして改めて敬意と感謝を申し上げる次第でございます。
 申し上げるまでもないわけでございますけれども、科学技術と社会の関わりの深まり、あるいは多様化という中で、産業界あるいは行政機関等の社会の多様な場においてドクターの学位を持つ方々、ポストドクター等の非常に専門性の高い人材を活用するということの重要性が非常に高まってきているわけでございますけれども、一方、なかなかキャリアパスが先行き不透明であるというようなことから、この博士課程に学生が進学してこないというような状況があるわけでございまして、これは我が国の科学技術関係人材の質・量あわせた確保について非常に深刻な状況ではないかというような懸念もあるわけで、そういった中で、現在、5年目の3年目で真ん中の年になってございますけれども、第3期の科学技術基本計画の中に、こういった趣旨からの施策の必要性というものがうたわれまして、この「キャリアパス多様化促進事業」を平成18年度から開始して、現在3年目ということになっているわけでございます。
 先ほど小林座長からもお話ございましたけれども、この会議の趣旨というのは、まず、実施いただいております採択機関の皆様にそれぞれの取り組みをしっかりやっていただくのみならず、各機関の取り組みの情報というものを共有する。さらに、このことが採択されていない、事業を実施していない他の多くの機関にも波及するような先導的なモデルとなっていただきたいということであります。
 平成18年度採択の8機関は今年度が最後ということになるわけでございますけれども、これまでの成果、あるいはノウハウというものを十分にご活用いただきまして、この3年間の事業が終わった後も引き続き取り組みを進めていただけるようにお願いするとともに、その成果の普及というものにもご尽力いただけることを期待するものでございます。
 平成19年度に採択された4機関でございますけれども、この秋、11月には中間評価ということになります。この際には、うまくいった話だけでなく、問題点、あるいはうまくいかなかったこと等もしっかり洗い出していただいて、それを解決するための取り組みも展開していくといった形で、よりよい事業展開が図られるよう期待しているところでございます。
 繰り返しになりますけれども、この協議会はモデル事業の成果の普及、それから実施機関同士のネットワーク化、さらには企画評価委員会の委員の先生方と実施機関との意見交換、情報交換の場として設定しているものでございますので、ご出席の皆様におかれましては、忌憚のない率直なご意見交換をお願いできれば、この協議会も有意義なものとなると考えているところでございます。
 本日はどうぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。

【小林座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、議事に先立ちまして、事務局から本日の資料の確認をお願いいたします。

【高比良人材政策企画官】
 それでは、資料の確認をさせていただきます。
 まず、議事次第と委員名簿、座席表をご確認いただきたいと思います。
 封筒の中に資料の1といたしまして「平成18年度採択機関」という綴り、資料の2としまして「平成19年度採択機関」の事業成果等が綴られていると思います。
 そのほか、参考資料として、A3版の「科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業成果一覧」というものを参考資料としてお配りをしております。
 また、机上のみの配付となっておりますけれども、参考資料として、各機関より提出のございましたパンフレット等を置かせていただいております。
 なお、外にもあったと思いますけれども、午後にも筑波大学の主催でシンポジウムが開催されますが、さまざまなパンフレット、リーフレット等を各機関から用意していただいておりますので、ご自由にお取りいただければと思っております。以上でございます。

【小林座長】
 ありがとうございました。
 続きまして、本日の会議の進め方についてご説明をお願いいたします。

【高比良人材政策企画官】
 本日の進め方についてご説明いたします。
 本日は、本事業の各実施機関より説明資料に基づきまして、現在までの事業成果を中心にご報告をいただきます。また、平成18年度採択機関については、委託期間終了後の実施体制、それから取り組み内容についてもあわせてご報告をいただく予定にしております。
 時間ですけれども、平成18度採択機関は12分間程度、平成19年度採択機関は7分間程度でご報告をいただきます。平成18年度採択機関から報告終了後、25分間程度の意見交換、その後、平成19年度採択機関から報告終了後、20分程度の意見交換を行います。
 ご報告の際の進行についてですけれども、大変恐縮ですけれども、午後の予定の関係等もございますので、経過時間に応じて事務局よりベルを鳴らさせていただきます。それぞれ報告終了の2分前に1鈴、終了時に2鈴を鳴らすこととしておりますので、時間厳守でお願いをいたします。以上でございます。

【小林座長】
 ありがとうございました。
 今日は長丁場になりますが、よろしくお願いいたします。
 それでは、早速、各機関からの報告に入りたいと思いますが、まず、平成18年度、初年度からの採択機関から順にお願いをいたします。
 それでは、まず北海道大学、よろしくお願いします。

【北海道大学】
 それでは、北海道大学からお話いたします。資料の最初のほうです。
 北海道大学では、基礎科学領域の若手研究者を対象として、彼らが最も活躍する場があるだろうと考えられる産業界、そういうところへのキャリアパスを考えるに当たって、そこでの課題、やるべき施策、制度改革、そういうものを考えるためのモデル事業としてスタートしております。
 平成18年のスタートの段階で、まずはやるべき対象をはっきりさせるという意味もあって、理学研究院内に基礎科学上級スキル人材ステーション(S-CUBiC)というものをつくりまして、ともかくこういうプレゼンスをはっきりみんなに訴えていこうということからスタートしています。
 事業内容としては、就職だとか、それからそういうチャンネルを考える、企業の情報を得てくるというところ及びPDやDCの考えを見る上でのワンストップサービスという意味でJ-WiNDOW、それから登録制という形で、一般に広げないで、ともかく動きが知りたいという意味で登録制という形にして、双方向のメーリングシステムというものをC-NETという名前で立ち上げました。
 3つ目は、科学経営上級コース(ADVANCED COSA)という名前で、これ自体は、実際にサイエンスアドミニストレーションという、MOTだとか、そういうものを意識したわけではありませんで、基本的には意識改革というものをベースに、そのために何ができるかということでやっております。
 4つ目は、企業の人間、若手研究者が直接交流をする、そういうような交流の場を設定して前に進めようというので、赤い糸会というのをやっております。これらと同時に、PD、DCからの意識調査というものを大々的にやっています。
 本事業に関しては、学内の教員が8名、それから産総研・関西センターの関係者3名で構成される推進委員会、こういうものを中心にしていろいろなところで活動をしております。
 個別の事業についてお話しします。J-WiNDOWのほうですが、J-WiNDOWのほうは、基本的に、今お話ししたように、企業とのチャンネルを構築していく、要するにDC、PDに対しての就職口というのはまだ開いていませんでしたので、1件1件当たるという作業からスタートしています。また、広報としては、お手元に配付したかと思いますが、キャリアガイドというものをつくっておりまして、これは基本的には、DC、PDの目線でのガイドをつくろうということで、総長も私も一言も書かずに、ひたすら彼らが編集をして、彼らがどういう内容にするかというようなものをつくり上げております。
 それをもとに公表しているのですが、現在、ワンストップサービス等には95回程度いろいろな人が相談にくる。それから、就職のお世話だとか、相手のチャンネルを紹介するだとかということもやっております。
 次に、C-NETですが、これは登録制のことをやっております。現段階では、対象とするPDの25%、DCの20%がここに登録をしておるという状況です。ここでは、今までなかったDC、PD向けの就職情報というのも一括でそこに拾ってきたものを並べているという状態になっています。それによってホームページのアクセス数が年間で13万件、14万件近く、一月1万件以上のアクセス数が出ておりまして、これから見ても、企業、それから研究者にとっても非常に有効なものと考えております。
 3つ目が科学経営上級コース(ADVANCED COSA)。ここでは、まず博士号をとった人間で企業で研究所の所長クラスになっている人間、その人間を招きまして、彼らが2時間ぐらい話す。その後、1時間はフリーディスカッションという形で学生さんと自由に討議してもらう。最初はどのような討議になるか、シーンとするのかと思いましたが、1時間はもう十分に学生さんたちは、博士はどんな生きざまをしているのかというのに興味を持っていろいろな質疑をやっていただいております。これは大学院の理学院の共通講義としてスタートしております。だから、修士、ドクターに関しては2単位の単位になっております。平成20年度からは全学の大学院共通講義ということで、2単位ということで開催しました。それによって参加者数が2.5倍、当初1回当たり60名程度だったのですが、今回からは160名程度と非常に大きくなって、少しやり方も考えなきゃならないかなというようなことを考えております。
 また、学生さん、研究者のほうからのリクエストが多かったのは、研究所長の話もいいけれども、卒業して5年とか、出たばっかりの人間が一体どうやって自分たちのキャリアを考えたかということを知りたいという意味で、BASiC COSAというものを今、若手の講師を呼んでやっております。これは単位にはしないで、非常にフランクな形でやっているということです。
 4つ目が、赤い糸会。これは直接交流の場で、ただのマッチングの会に見えますが、そうではありませんで、ここでは企業が約20社程度、研究者が40名程度、全体で80名から100名になるのですが、いろいろな業種の企業が一堂に会して、またこちら側もいろいろな分野の学生が集まる。それが半日、午後1時から夜の8時ぐらいまで懇親会も含めてあるホテルの1室の中でずっと繰り広げる。これによって企業が、今のPDがどういう生きざまなのかというのを見ていただきたい。それから逆に、企業の研究は若手にとってはどういうふうに見えるのか、そういうのを見てほしということでやっております。これに関しては、非常に評価が高いのは確かです。ただし、後でもお話ししますが、問題点としては、今こういう会だとかに対して自発的に参加する人間というのはなかなか生まれてこないというのが、まだ今そういう状況にあります。要するに、2日間ラボをあけてここにやってくるということに関して、いろいろな意味での抵抗があるというのもたしかです。
 これに関して、こういう活動のプレゼンスをはっきり高めるということもあって、私どもでの活動としては、大学院の入学式でこの活動を紹介するということをやっております。これは非常に効果的でありました。
 もう一つ効果的なのは、教員の意識改革という意味では、今グローバルCOEというのが人材育成というキーワードで動いております。この中にキャリアパスというキーワードもありますので、グローバルCOEの拠点リーダーというのを集めまして、あなたたちはキャリアパスをどう考えているかという説明会を開くのが私のもう一つの効果的な方法でした。現段階では、GCOEの連絡協議会を今年から学内で立ち上げますので、その中でこのキャリアパスの照会をやって、グローバルCOEごとに担当者を決めて前に進めるということを考えております。
 また、こういうものをやりながら同時にアンケートをやったのですが、学内のアンケート、DC、PD向けのアンケートをやりますと、彼らが民間だとかいろいろなところで活躍するということに対して、そんなに強い抵抗を持っているというわけではないというふうにも感じられます。ただ、一方で、テニュアトラック事業というのも同時にやっておりまして、そこからの応募者に対して、このキャリアパスのことについてアンケートをとりました。海外でPDをやっている人間に対して、海外で産業界へのキャリアパスは考えられるかという質問をした場合、ほとんどが「ノー」という答えが返ってまいります。要するに、彼らは非常に自負心もありますし、彼らは第一線でやっているという。そういう意味では、彼らの頭の中にはアカデミアしか見えていない。
 そういう意味で考えますと、私たちが今考えているのは、意識改革はもっと早い時期からやる必要がある。大学院教育改革と連動しなきゃならないということを今考えておりまして、現段階では、このキャリアパスの事業というもののやり方だとか意識改革を含めて、今理学院の生命理学専攻という1つの専攻ですが、ここでの大学院の教育プログラム自体を変えようということをすすめております。
 委託期間終了後ですが、今この事業でやっているやり方というのは、教員が集まってやっているというのが現状です。一方で、学部から修士課程までのキャリア教育をやっているのが、実は北大の中では学務部という事務機関が中心となった組織です。この2つが合体する形で、教員だけでは永続的なシステムというのはつくれないし、事務職員だけでは教育改革というのはできない。そういう意味では、事務職員と教員が一体となる形での組織というものが必要ということを考えまして、女性研究者支援室も巻き込んだ形で、若手教員、学部からのキャリア教育も含めた人材育成戦略本部(仮称)という名前を、つくりたいということで、来年の春を目指して動いているというのが状況です。 以上です。

【小林座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして東北大学、お願いいたします。

【東北大学】
 それでは、東北大学からご報告いたします。
 お手元のほうの資料のパンフレットの中で、一番下のほうにこういったものがあるかと思います。これも開きながら聞いていただきたいと思います。
 なお、傍聴席の方は、このコピー版を外のほうのブースのほうにも何部かあります。あとで参考にしていただければ幸いです。
 私どもは、高度技術経営人財活用プランということでスタートしたわけであります。今回は、説明資料を1ページしか用意しておりませんが、ポスドクや博士課程修了者の就職難という事態が顕在化しているわけですけれども、その解決のためには、企業ニーズと博士人材教育とのミスマッチがあるということに着目しまして、社会ニーズ対応人財育成プログラムということで、「高付加価値博士人財育成」をねらった「高度技術経営塾」というものを開設したわけであります。
 このパンフレットのほうのコンセプトですけれども、19ページ、20ページにその基本コンセプトがありまして、博士は社会で絶対必要だというのを信念でやりましょうということになっていまして、19ページの上のほうにそのコンセプトの絵がかいてありますように、高度技術経営人財キャリアセンターという名称で、高度技術経営塾、それからあとで話をしますキャリアアップ相談室という2つの組織をつくってスタートしたということであります。
 高度技術経営塾は博士に付加価値をつけるということ、また、この付加価値をつけた学生及びポスドクを企業との出会いの場を設定して、就職あるいはアカデミックでもいいですけれども、そういったキャリアアップさせるというキャリアアップ相談室、この車の両輪でスタートしているわけであります。
 資料のほうに戻りますけれども、この育成された人材に対して、企業に就職するに当たっての不安の払拭とか自信をつけさせることでビジネス交流会とか企業見学会の実施するなどして、出会いの場を設営するという相談室、この2つをつくったということであります。
 事業開始以来、就職内定者数は、この3カ年の目標が55名ということで計画していたのですが、すでに67名になっていまして、さらに現時点で70名にふえております。うちポスドクが26名という形になっております。これは、この数字はキャリアセンターを通じて、ここで世話したものののみであります。これをさらに上乗せしたいということで、今努力している最中です。
 一方、塾については、20ページのほうにありますように、少数精鋭ということなので定員は30名で、毎週3時間、年間合計110時間余りの時間をかけてプロジェクトマネジメント、技術経営実践、人間理解・組織マネジメント、コミュニケーション、あるいは課題形成と問題解決というような付加価値を付与する「気付きを主とした、わかる、できる、うごける博士人財の育成」を目指しております。それらのことは、20ページの下のほうに書いてあります。
 現在は既に就職している学生、ポスドクが出てきているわけですけれども、その就職先企業の経営者や人事部長からは、即戦力として使えるので助かっている、従来の博士とは全く違うというように高い評価を得られております。また、当然のことながら、塾生自身も視野の拡大、人間理解、異分野連携融合、こういったものが非常に大切だということに気づきまして、自主性とか自発性の認識と発揮がなされまして、塾生自身の発案で「博士100人ネットワーク」というのが形成されました。これは、このパンフレットの資料の16、17ページに書いてあるのですが、「博士の100乗は無限大」もこの塾生の中から発案されまして、このキャッチフレーズで進んでおります。研究室に戻っても、プロジェクトマネジメントとか、そういったような考え方を研究に活用できるということ、また、コミュニケーションの教育を受けているということで、非常に先生との関係性、あるいは後輩との関係性などが、改善されてやりやすいということも言われております。したがって、アカデミックでも非常に役に立つものであるとの考えに立って、我々はどっちでもいいよという話はしています。
 ちなみに、塾生ですが、20年度は30名ですが、内ポスドクは1名でありまして、あとはドクターの1、2、3、特に1年生、2年生が非常に多いという現象があります。これは自ら気づいて、ここに入ったほうがよろしいということを自ら認識して入ってくるということであります。
 相談室ですが、12ページ、13ページあたりに書いてあるのですけれども、専門のスタッフが豊富な経験と人脈をベースにして、企業情報の収集や就職先開拓を行いまして、就職希望者に対しては自主性の醸成と尊重をベースに進めています。自主性の醸成と尊重というのは、アカデミックでもいいし、企業でもいいが自分はどこに就職したいかを自分で決めなさいということを言っております。それをベースにして、応募書類の作成とか、面接試験に対する適切なアドバイスなどを行っておりまして、内定者の中では、ポスドクが26名。特にポスドクの場合は任期ぎりぎりで就職できた者もおりまして、涙を流して感謝されたケースもあります。
 我々の特徴としては、外部のリクルーティングの機関の活用は一切せずに、すべて内部スタッフにより手づくりで進めているということが特徴的で、これは学生たちとの信頼関係というのが非常にできやすいのではないかと思っております。そのためか、身の上相談もくるというような状況になっております。
 それから、企業ですが、博士人材の獲得のために直接に、技術系の役員と採用担当者においでいただいて、我々のところに来られまして、目指す学生の面接をそこで済ませて、早々に内定するケースもあります。優秀な博士人材をプールしているということの認知度が高まってきたということが言えるのではないかと思います。
 それから、教員方ですが、意識も徐々にではありますけれども、変わってきております。教員が苦手としますキャリアパスの専門支援担当ができたということと、それから付加価値のある博士人財育成が大学のブランド力向上になるということ、優秀な修士学生が博士課程に進学するための要素につながるなどなど、本事業の中で高度技術経営塾を後期課程の正規カリキュラムに取り込みたいという部局も2つぐらい出てきているということであります。また、ここに塾に行きなさいと教員が勧めて参加している学生も多くなってきているということもあります。ただし、研究だけしていればいいので、そんなのはいらないという教員もたくさんいるということも間違いありません。
 いずれにしても、社会ニーズに対応した博士人材の育成に向けたコンセプトと、すぐれた講師陣の選定及び講師陣の熱意、こういったものが功を奏していくのではないかというふうに思っているところです。
 それから、本事業が今年度で終わるので、委託期間終了後の実施体制、取り組み内容なんですが、この報告書の1ページに、井上総長からも巻頭言をいただいていまして、これは非常に新しい試みであり、大学で欠けているものなのでぜひ継続してやりたいという意向を持っておられ、井上総長の指導で、ともかくこれを継続するということがトップダウンで決まりました。学内共同教育研究施設の1つであります国際高等研究教育機構という中に国際高等研究教育院というのが平成18年4月にできております。ここはCOEをベースにして卓越した研究グループに挑まれた研究者群、こういったものを中核として各研究科からの支援を受けまして設置したものですが、ここにありますように、融合領域分野の若手研究者養成を積極的に支援するためにできたものであります。特に横断的とか、複眼的とかを重要視したものなので、われわれの高度技術経営塾は「塾」というコンセプトがマッチしております。ただし、キャリアパス支援というところのルールがここにはまだないので、それについても取り込んで一緒にやるということで、関連する規定等を全部見直せという指示がありました。従来であれば、受け取る方向で検討してくださいという話になるかと思うのですけれども、これは違っていて、やるために規程等をつくれ、変えろというようなトップダウンで指示が下っております。当然のことながら、財源の確保も済んでおりますので、間違いなくこの方向でいくのではないかというふうに思っております。以上です。

【小林座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、次に理化学研究所、お願いいたします。

【理化学研究所】
 理化学研究所でございます。
 それでは、今回の科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業、この数年間の成果についてご報告をさせていただきます。
 まず最初に、多分皆様おわかりだとは思いますけれども、理化学研究所のキャリアパス促進事業というのは、ちょっと大学とは違ったスタンスで行っているということをお話ししたいと思います。それはどういうことかと申しますと、理研のキャリアサポートについては、任期制研究者が現在3,000人近くいるなかで、その研究者、技術者の任期が終了した後の出口を支援していくというようなことが、事業の中心になっております。
 そういうことで、私どもはここに資料をつけておりますが、どのようなことを目指していくかというと、3つのことを据えて取り組んでおります。1つめは、理研にいる任期制研究者、技術者の人たちの意識改革、あるいはPIの意識改革、それをまず行なって、自分自身が新しい道を選び、自己実現を図っていくことができるような人材を育成していくということです。
 2つめは、理研はご存じのとおり研究分野が幅広く、多様な分野で活躍している研究者、技術者が、専門的知識を備えて、かつ、いろいろな社会の多様なニーズに対応できる人材を育成していこうということです。
 3つめは、多様なキャリアパスの可能性を秘めた優秀な人材の社会的活用促進とパスの模索ということです。今後、任期制の研究者、そういう方たちがたくさん増えていくと思われますが、そういう人たちの出口について、理研が新しい出口開拓についても先鞭をつけていくために、新しい世界にチャレンジできるような人材を育てていこうということ。この3つを大きな柱にしてやってまいりました。
 では、具体的に今までどのようなことをやってきたかを簡単にご紹介をしたいと思います。まず最初に私どもは、六、七年前から、任期が終わった後の出口の問題について、いろいろな問題点があるということを認識して、この促進事業が始まる前にキャリアサポート室というものを設置して取り組んできました。今回キャリアパス多様化促進事業に採択されてから、この3年間の間に意識改革をはじめ、様々なことをやりました。これからはもっと方策を絞りながらやっていくことが大事だと思っています。
 その中で、まずはコンサルティング、就職相談という、これは最初の取っ掛かりとしては一番大事なことだと思っています。これは様々な人材紹介会社等と連携を図るとともに、企業出身の方、研究者出身の方、あるいは技術関係出身の方、そういう人たちを専門相談員として配置して、夜間相談や出張相談などもニーズに合わせて行いながら相談に応じています。これも最初は利用者は少なかったのですが、最近では利用者が増えてきているという状況です。
 それから、就職情報の集約及び提供ということで、「キャリア情報ルーム」というのを設置して、いろいろな情報を取得する環境を備えて利用者に提供しています。研究室ではこのような就職情報の取得とかそういうものはなかなかできませんので、研究室から離れてキャリアに関する情報が収集できるような環境を整えたということです。更には「求人情報管理システム」を構築して、今どういうところから理研に求人が来ているのかということが所内イントラネットを通じて見れるような環境づくりも行なっています。
 次にコンテンツの整備・作成ということで、主に意識啓発を目的としたものです。これは相談したいけれども、いま一つなかなか勇気が出ないというような方に対する意識誘発、それからもう一つは、理研にいろいろな人材がいそうだけれども、少し理研は敷居が高いなというような外部機関の人たちに、そういうことはありませんよということを啓発していくためのものです。幾つか今日ここにお配りしていますが、キャリアパス事例集、再就職活動のための応募書類の書き方、面接の仕方等、細かいところまで支援を行っております。大学において、学部の学生さんというのは、就職についてかなりトレーニングを受けてきているなという感じはするのですが、大学院を出た方、特にドクターコースを出た方については、そういうトレーニングというのはほとんど受けていないかなという、印象がありますので、理研に入ってきて任期が終わるような方については、そのような支援もしております。
 更には、キャリア開発セミナー及びジョブフェアの開催ということで、これは企業に在籍されている方、あるいは理研の研究者から企業に転身した若い方などに来ていただいてセミナーを行ったり、ジョブフェアということで、人材紹介会社と連携をしながら求人対象企業の方に来ていただいて、研究者、技術者といろいろ転職先についての相談、を行ったりということです。これも徐々に、徐々に利用者が増えているという状況です。
 それから、あとは能力開発支援制度の導入・実施ということで、これは、理研に来てただ研究一途ではなくて、もう少し幅広いスキルを身につけてほしいということや、さらに、研究者・技術者としてのスキルアップなどを目的に研究者のためのリサーチライティング、英語のプレゼンテーション、特許、プログラミング等のセミナーを行ってスキルアップを図ってきました。これも非常に好評で、年々定員をオーバーして、1回ではなくて2回、3回開くようなセミナーもあります。
 それから、キャリアサポート連絡会議ということで、理研と東大、産総研、JSTの4機関で、当初いろいろ意見交換をしながら、今後どう進めていくべきかというようなことを相談してきました。今後もこういう機会は続けていきたいと考えています。
 更に外部機関との連携構築ということで、企業の人事担当役員、人事担当部署を訪ねて、理研の人材の活用方策等について意見交換をしてきました。企業からは、理研の人たちはアカデミック志向で、企業志向の人が少ないのではないか。企業としての即戦力にはなかなかならないのではないかというような意見もありました。そうではない人もたくさんいますということで、理研の状況を話して、求人情報の提供をいただける際には、先に理研にこういう人材はいないかというように、優先的に話を持ってきてほしいというお願いをしているところです。
 また、総合的支援モデルの構築ということで、支援方針を入所期、育成期と段階的に分けて、いろいろなプログラムで育てていくということ。そして、実際に任期が終わる1年ぐらい前にどうしていくかという活動期といったようなステージに分けてやっていきたいと思っています。
 総括といたしましては、こうした取組を行なってきて、ようやく皆さんがキャリアについて考える意識に目覚めてきたかなと思っておりますので、これをさらに高め、理研の中で、あるいは日本の全体で大きなうねりをつくれるように継続的にやっていきたいと思っています。
 それから、今後の計画ですが、いろいろな芽をまいてきて、それがようやく少しずつ育ってきたと思っております。その芽を大切に、きちんと育てていきたいということ。PIの意識啓発が非常に重要だとわかりましたので、PIの研究マネジメントにおける部下のキャリアパス支援をPIの評価の1つとして、PIの意識啓発を図っていきたいと思っています。
 もう一つは、潜在層の開拓をしたいということです。相談したいけれどもできない。そういう潜在的な人たちが大勢いると思っています。そういう人たちの開拓に力を入れていきたいということ。そのためにはどうすればいいのかということをもう少し進めていきたいと思っています。中でも、先ほど申し上げたような外部において理研に対する求人の潜在的な希望を持っている企業等をどのように開拓していくかということをこれからの重点項目にしていきたいと思っていります。
 最後に異分野・異業者でのキャリアパスの開拓ということで、理研は現在、研究者からアドミニストレーターになる人が徐々に増えております。それはサイエンスコーディネーター的な人、それからサイエンスライター、サイエンスコミュニケーターという人たちです。そういう人たちをたくさんこれからもキャリアチェンジさせていきたいと思っています。
 そういうことで、任期制のキャリアパスモデルを構築し、研究者志望の若い人たちが減っているという現状を何とか改善していく一助に理研がなればという思いで取り組んでいきたいと思っています。どうもありがとうございました。

【小林座長】
 ありがとうございました。
 それでは、続きまして早稲田大学、お願いいたします。

【早稲田大学】
 早稲田大学、我々としては、ポスドク・キャリアセンターといたしまして4つのミッション、お手元の資料のパワーポイントにあります1ページ目の若手研究者の意識啓発、若手研究四股の能力開発等々、この4つのことを柱に行っております。
 その中で、私ども特に注意したかったのは、ポスドクのキャリアパスというのは、アカデミアに残ることは、否定はしない。しかしながら、それ以外のところで産業界や教育界、メディア界でも活躍できる能力を持っているという自信を持たせること。そして、それを通して研究指導者に対しても物事をきちっと主張できるような人材を育てたいという思いがございます。
 また、研究指導者の問題というものも明らかになりまして、昔から言われている徒弟制度のような形の今環境ではない、新しい研究環境、そして師弟関係というのが重要なのではないかということを我々は訴えております。
 例えば具体的に、教授会等で我々の取り組みを説明しつつ、飼い殺しはやめてほしい、洗脳はやめてほしい、そして若手研究者に対しては、呪縛や洗脳から早くフリーになって、自分のキャリアパスを自分で考えていくと。そして、自分でいろいろなセミナーや講座に出てコネクションをつくったり、そして自分の力を加えていく、武器を増やせというようなメッセージを流して、我々はいろいろなミッションに実現できるような行事、またはネットを展開してきております。
 特にポスドクには高い専門性を求めたり、それから一生懸命、もう夜に日を継いで研究することは当然のことながら求められていて、そのような能力を身につけるのは当たり前です。それに加えて幅広い視野を持ったり、またはコミュニケーション能力、自分が相手によって、オーディエンスによって難しい話も、学術的に非常に高度な話もできたと思えば、相手がそのレベルがない場合には、分かりやすく自分たちのやっていることを説明できるような能力、これは高い専門性と相反することではなくて、そういうものをいかに具体的に分かりやすく説明する能力が大事かと。それによってポスドクというのは、今誤ったマスコミやメディアによって流されているネガティブな部分を解消して、自らが変わっていってもらいたいというような思いでいろいろなことをやっております。詳細については西嶋からご報告させていただきます。

【早稲田大学】
 それでは、続いてご報告させていただきます。
 我々のところは9ページ以降書いてありますので、見ていただけますでしょうか。全体ですけれども、この事業を始めまして、じわじわと成果は上がっていると思うのですが、非常に問題点がいっぱい多い事業、もっともっとある意味では力を入れて、国としても、大学としても組織的・戦略的にやらなきゃいけない事業と考えております。現在も我々はまだ道半ば、ただ、じわじわと変化してきた初年度、2年度、今年3年目です。そういうふうに思っております。
 事業のところの目的は、その次のページ、10ページに書いてあります。我々は若手研究者の意識啓発、若手研究者の能力開発、産業界との交流促進・人材流動化、これを大学として組織的・戦略的にどう進められるか、このようなことで、若手研究者のキャリアパス多様化の環境整備、システム構築をしようと。それによって若手研究者のキャリアパス多様化を図ろうということを考えております。
 最初のところですけれども、この意思啓発は、研究者の方にヒアリング等をして少しずつは進んでいますけれども、これは基本的に、研究指導者、先生方が変わっていただかないとなかなか進みません。ここら辺が一番今問題点でして、これは大学として組織的にやるのも限界がありますし、むしろいろいろなほかのプロジェクト、例えばグローバルCOEとか、いろいろなプロジェクトがありますから、そういう中で、今でもグローバルCOEの中ではキャリアパスの話とかいろいろ入っておりますけれども、そういうところでもっと組織的とか戦略的にそこのところをやっていくことが必要なのかなと。そして今我々のターゲットは、若い先生方、例えば教授になられたばかりのような方たちには、ぜひ変わっていただきたい。
 それから、昨日話させていただきましたけれども、我々、研究指導者のアンケートをやっております。7割ぐらいの回答を得ていまして、その中から理解を示していただいている先生、必ずしも多くありません。3分の1ぐらいの先生だと思います。そういう方からまずいろいろな議論、ディスカッション、ご協力を求めてスタートしているというのが現状です。
 それから、若手研究者の能力開発ですけれども、これは非常に優秀な人、ポスドクの中でもピカピカ光っているように見えている方等に、自立を目指して、OJT的にいろいろな予算をとってみたらと。そういうケースですら、プレゼンとかライティング能力というのはまだまだ問題があると思っています。一般的に多くの方は相当変わっていかなくちゃいけない。これは日本と海外と一番違うところかと思います。これは、基本的には、あとで話しますけれども、ドクターをとるまでにもう少しいろいろな意味でスキルアップが必要だろうということで、我々は大学院の授業に後期からそういう授業を入れていこうというと。これは産業界に助けていただいて、一緒になってやろうということを考えております。
 それから、産業界の交流促進、これを一番大事にしているところでして、経団連にお願いしたり、または産業の財団、または産業界にお願いして、極力一緒にやらせていただいております。
 それから、人材流動化のところは、我々あまり得手ではありません。ですから、早稲田大学の場合は、いろいろなところにお願いして、例えばリクルートですと、3回行って2回断られて、3回目にちょっと一緒にやりましょうかと言っていただいています。だから、インテリジェンスとかDFF、それからエマージンテクノロジー、いろいろなところと一緒にやらせていただいています。ただ、全体として、これも2月とか、今年度7月やらせていただいていますけれども、随分参加する若手がふえています。これは成果が出てきているのかなと。以前はなかなか出てきてくれなかった、七、八十名とかですね。それから、そこに参加される企業も、我々、大企業が続々名乗りを上げていただいて、そういう点では若干うれしい悲鳴になっております。ただ、都心にある大学ですので、むしろ早稲田大学以外の方が半分以上参加されるイベントというのが非常に多い状況になっております。
 例えば昨年は、経団連と日本科学協会、産学協会、そういうところの大学の人たち、それから、理研、産総研と一緒にやらせていただきましたので、ことしは物理学会ともぜひやらせていただきたいと思っています。やはり大学1つでできる話ではありません。そういう点で、我々なるべく連携をさせていただきたいと思っておりまして、東北大学とはいろいろな意味で情報交換とか交流をさせていただいておりますし、産総研、理研ともかなり密に議論させていただいております。他の機関ともさせていただきますけれども、やはりまだまだ十分じゃないと思いますので、そこのところはこれからぜひよろしく。また、そういうふうな環境を文部科学省がつくっていただければ幸いです。
 それから、大学として組織的・全学的な対応というのは必要なですけれども、大学のヘッドクオーターのほうはかなり協力していただいているのですけれども、まだまだ不十分なところが多々あると思います。これは関連のプロジェクトです。例えばテニュアトラックとか女性研究者、グローバルCOE、それから、これからさせていただくイノベーション人材とかありますが、こういうのをなるべく一元的、総合的にやらせていただきたいというようなことを考えております。
 その次のところですけれども、余りにも問題点が、むしろこういう事業をさせていただいて問題点がいっぱい出てきたというのがある意味で本音の状況です。若手研究者なしには大学の研究というのはあり得ませんし、多分教育もないと思います。彼らが活躍できるというのは、マスから考えれば産業界しかない。産業界で活躍するための意識改革とか能力開発は、ご指摘のとおり、不十分な点は多々あると思います。ですから、今ターゲットが2つありまして、1つは、既にポスドクになっている方の流動化。もう一つは、これからポスドクになる方、むしろ大学院の教育、新しい能力開発をしてドクターをとってほしいと。それから、研究指導者の方も問題解決に向けたアクションをとられているかというと、残念ながらそういう状況にありません。それが非常に難しい状況でもあると思います。大学も極力組織的な、戦略的な取り組みを進めていますけれども、これもまだ十分とは言えないと思います。それから、今日文部科学省の方がたくさんいらっしゃいます、国の働きかけですね。先生の意識を変えるのはどうしたらいいのだとか、これ自体、ある意味ではそれほど大きな予算ではないと思いますし、非常に重要なわりには、我々は極めてラッキーですけれども、もっともっといろいろなところがあるわけで、そういうところとどう協力していくかという課題もあると思います。
 それから、若手研究者の関心不足、これもたしかにあると思います。
 今後の取り組みですけれども、学内では、さっき言いましたように、いろいろな組織がありますので、これをなるべく一元的に取り組んでいきたいということが次のところに書いてあります。大学当事者ですので、ネットワークを内外、国内では例えば科学協会とか他機関、それからむしろ海外ともつくる必要があると思います。
 それから、大学院の教育改革、これは避けられないと思います。
 それから、大学のニーズというのは教育と研究と社会貢献です。ここのところは非常に弱かったと思います。
 それから、最後に、我々は何を目指しているかということで、我々のポスドク・キャリアセンター、来年度以降も継続します。この中で新しくプロジェクトの博士キャリアセンター、これはイノベーション人材です。これと一体となって、またテニュアトラックと一体となって運営させていただきます。
 博士を持った人材が日本の産業界でイノベーションを担うしかないと思いますので、そういう人材をどうつくっていくかというようなことを我々は考えております。以上です。

【小林座長】
 どうもありがとうございました。
 続きまして、名古屋大学、お願いいたします。

【名古屋大学】
 名古屋大学でございます。
 いつも申し上げていることですが、名古屋大学のこのキャリアパス多様化促進事業の特徴というのは4点ございまして、まず、産学官連携推進本部という産業界に極めて近いところが実施主体になっていること。それから、ノンリサーチ分野への就職支援というのを重視していること。それから、名古屋大学にとどまらず、申請時には東海地域のほかの大学と連携をすると書いておりましたけれども、現在では全国から登録者を受け付けているということ。それから、個別の登録者に対するパーソナルケアを主として行っているという、その4つでございます。現在までの登録者の状況は、8月末で417名、名古屋大学が大体40%ぐらい、東海地域から10%ぐらい、残りは全国各地ないしは海外のポスドクでございます。それから、そのポジションを比較してみますと、ポスドクが約50%強、博士後期課程の在学者が40%弱であります。
 こうした博士学位の取得者に対する広報・周知活動ということですが、机上の配付資料に、クリアファイルに入れて配付してありますけれども、年1回ずつ、現在3部つくっております。最初が5,500、第2回目が5,000、第3回目の3,000つくりまして、せっせと配付をして、多分もう各500部ぐらいしか残っていない段階だろうと思います。
 それから、シンポジウムは、先ほど申しましたように、全国を対象にしているということで、筑波、京都、横浜、岡崎等を含めまして7回開催をしております。キャリアアップに関するセミナー等は8回開催をしております。
 我々がもう一つやっているのは、学会あるいは展示会での出展、あるいはシンポジウム開催ということでございまして、年七、八回行っております。これは今ですと、もうある程度知れてきたので、学会のほうから要請をされるということもございますし、我々が望んで、例えば分子生物学会とは最初からシンポジウム等を開催させていただいております。学会に行きますと、どんと登録者がふえるというのが現実でございます。
 学内の登録者、あるいは潜在的なポスドク、博士課程の院生への啓発といたしましては、1つは、生協の食堂にトレーがありますけれども、そこにキャリアパス支援室及び学部生の就職支援の学生総合支援室というのがあって、そこの2つのシールを張らせていただいております。これをやったことによって、学内からの登録者、特に博士の後期課程の院生の登録者がふえております。教員と大学院生の啓発ということですが、早稲田大学さんなどと同様に、まず各研究科の教授会での説明はきちんと行っておりますし、そうした中から、各大学院研究科の入学ガイダンスで、このキャリアパス事業の説明をしてくれという要請がきております。今年度から、多分三、四件あったと思いますけれども、やっております。これは教員のほうも、そういう就職支援のシステム難しいがきちんとあるのでドクターコースまでいっても大丈夫だよといって、ドクターコースへの進学を進めたいというのがあるので、ある意味、教員の啓発にもなると思っております。
 そのほか、学内の各プロジェクトとの連携ということで、北大さんも言われましたけれども、グローバルCOEとか先端融合イノベーションという大型プロジェクトが幾つも動いております。それぞれをやっておられる先生方とミーティングの機会をもっておりまして、そうしたところのポスドク、あるいは博士課程の後期院生にもこちらへ登録していただくということをしております。例えば化学系のグローバルCOE、生物系のグローバルCOEとは、例えば企業とのマッチングイベントであるとか、シンポジウム等を共催させていただいております。実は11月にも名古屋大学の東京フォーラムが「グローバルCOEと人材育成」というのをテーマにして行われますが、そこでもこのキャリアパス及び、後々ご説明しますけれども、これの後継事業と大学では位置づけておりますイノベーション創出若手人材育成、それの説明をさせていただく予定になっております。
 また、男女共同参画事業、これも振興調整費で名古屋大学は通っております。ただ、名古屋大学も女性のプロジェクトというのは、学内における女性研究者の環境改善というのがメインになっておりまして、実際にポスドク、あるいは任期付研究者の次の就職支援ということにまで手が及んでいないということがあって、こちらへ一緒にやってくれという話がきました。そして、昨年度から男女共同参画事業とのシンポジウム、あるいはワークライフバランスのセミナー等を実施しております。基本的に登録者への事業ということになりますと、基本的に個人面談です。面談が延べ565回、登録者417名の約70%に面談をしております。残りは北海道でありますとか、海外でありますとか、九州でありますとかということになると、なかなか会えない機会はあります。メールは大体月二、三百というところで、現在まで5,600回以上、メールでのやりとりをしているのは登録者の90%に及びます。さらに希望者には、産業界社会で働いているアドバイザー、現在70名ほどの方にお願いをしておりますけれども、その方と面談する機会をもっていただいております。いわば普通の就職活動のOB、OG訪問のような形で面談をしていただくということになっております。これが現在120回行われております。
 このほか、例えばホームページをつくっておりますが、ホームページへのアクセス数は平均月5,000回、ブログのほうが月1,500から600ぐらい、特にこういう求人があったけどというメールマガジンによる、そういった発信が週2回程度行われております。
 現在までの就職者は120名で、そのうちポスドクが80名でございます。分野は、アカデミックと企業の研究者を含めたリサーチ分野が60名、ノンリサーチの分野が60名でございます。
 このキャリアパス支援制度案が今年度で切れるということでございますが、名古屋大学は、先ほど申し上げましたように、科学技術振興調整費のイノベーション創出若手人材養成事業に採択されました。その採択を受けて、今年の7月に社会貢献人材育成本部というものを説立いたしました。これは、ここに書いてありますように、今まで学部生に対するキャリア支援と我々がやってきた博士をとっている人のキャリア支援、それを全部一体化する。さらに卒業生にも対象を広げていって、将来的には、大学の教育の成果物と言える卒業生のフォローアップ、ブラッシュアップを生涯にわたってやると、そういうシステムをつくるということを目的としております。
 その科学技術調整費のほうの、主に長期インターンシップとそのための研修プログラムの作成ということですけれども、それをやるのがビジネス人材育成センターで、そのほかキャリアパス支援室、学部生・修士学生を相手のカウンセリング及び就職支援をやっている学生総合支援室、それから男女共同参画室等を一緒にした形で社会貢献人材育成本部を設立いたしました。
 このキャリアパス支援も、先ほど申しましたように、科学技術振興調整費の取り組みというのは、1年15から20名程度の長期インターンシップというのがメインになっております。かなり人数が少ないので、それ以外の、例えばここの登録者だけ見てももっとたくさんいるわけで、彼らに対するカウンセリングが当然必要であるということで、その振興調整費の申請時から、これが終わった後は、その振興調整費の中の一部としてキャリアパスのカウンセリング機能を入れるということを明記してあります。そのため、来年度からはこのキャリアパス支援室の事業は科学技術振興調整費の一部として行うということになっております。
 さらに、最初の特徴で申し上げました産学官連携推進本部から外れるじゃないかということが言われると思いますけれども、実は産学官連携推進本部との連携はさらに強化されることになっております。私、産学官連携推進本部の人間ですけれども、それがビジネス人材育成センターのセンター長につくということになっております。
 さらに、ビジネス人材育成センターのほうでは、ほかの人材育成事業も手がけるということになっていて、例えば経済産業省さんの産学連携人材育成というようなものにも幾つかアプライをする予定になっております。
 さらに、学内で、今までは主に教育学部でやられていたキャリア形成論というのを全学及び大学院生にまで履修可能にして、我々が引き受けると、来年度からやるということに決まっております。これは名古屋大学全学同窓会の寄附による講義ということになっております。
 振興調整費も一応5年という期間がついております。終わった後、どうやって自立化するか。できれば、人材紹介業のように成功報酬をいただくことによって自立化したいというふうに考えております。何とかその道筋をこの間につくっていきたいと思っております。以上でございます。

【小林座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、次に大阪大学、お願いいたします。

【大阪大学】
 大阪大学です。
 資料は15ページと、それからお手元に配付しております大阪大学のイノベーションセンターの科学技術キャリア創生支援室のパンフレットをご用意していただきたいと思います。
 大阪大学のほうでは、若士人材のキャリアパス多様化をするためにいろいろな問題があるとは思うのですが、まず博士の付加価値を認めていただけるような活躍の場、そういったものがそもそも大体少ないのではないかというようなことで、産業界で。そういった場を創生していくという立場で活動をしなければいけないのではないかという基本的なスタンスでやっております。その創生する場というのをプロジェクトというような形で、これは大学と企業、大学と社会組織、そういった大学の境界面の場、そういったものを設定して、そこを足掛かりに博士人材の活躍する付加価値を高めるような場を設定できないかというようなことで、まずそういったモデルプロジェクトがつくれないかというようなことを主眼としてやっております。
 そういった意味で、活動の主体は、資料にございますように、モデルプロジェクトの構築というようなことです。それから、あと大阪大学でもう一つ力を入れておりますのは、ポスドク層の実態の調査ですが、それをもう一つ力を入れてやっておると。3番目として、意識啓発という意味でいろいろなイベントをやっているというようなことでございます。
 個別に補足したいと思うのですが、モデルプロジェクトの構築という面では、お手元の大阪大学のパンフレットの中の織り込みの冊子がございますけれども、それをごらんいただきたいと思います。モデルプロジェクトというのはどういったものを想定しているかというものですが、基本的には、産業界に何らかのニーズがあって、その問題を解決する人材が大学にいるというようなことを想定しながら、その人材として博士人材が意味を持っているというようなプロジェクトを設定して、その中で博士人材を育成する、あるいは企業側から見てその人材の付加価値を認識していただくという、そういうような場を設定しながらこの事業をやっていこうということで、そういったプロジェクトを幾つつくれるか、あるいはそういったプロジェクトの中に参加していただくポスドク層が何人できるかというようなことでやっております。
 ここの冊子にありますのは、プロジェクト1というのが、これはベンチーの企業がみずからの事業をするときのシーズを大学のほうに求めまして、ここに池内さんというポスドクの方が参画して、そういった経験を踏まえ、あるいはそういった成果を踏まえてベンチャーのほうに移行していこうというような動きをしているプロジェクトです。
 それから、2番目は、これは中小企業の新事業をするときに企業側からのプロジェクトを設定して、そこで、ここでは脇坂さんとういポスドクの方が参画して、そういう成果とみずからのキャリアアップ、あるいはみずからの出口をここで見つけていこうというようなアクティビティをするものです。
 このようなプロジェクトの2例を代表的にして、参画しているこのようなタイプのプロジェクトに参画している人たちが現在40名おられまして、その一覧が白紙のプロジェクト一覧というようなことに書いてあります。基本的には、博士の学生であった人たち、あるいはポスドクであった人たちが何らかの共同研究プロジェクトに参画して、そこでは特任助教というような形で、主体的な形で取り組んでいくというようなフレームをここでつくりまして、その出口としての共同研究先があるというようなモデルをつくっております。
 このようなモデルづくりを現在やりまして、この事業を始めた当初は非常に難しくて、なかなかこういったプロジェクトができなかったのですが、幸いなことに、大阪大学で特有の共同研究講座という、これは産業界からの資金のもとに共同研究をする枠組みができまして、そういうものがどんどんと学内にも立っていったということもありまして、その中で要求されるポスドク層、あるいは活躍するポスドク等々が出てきたというのが現状です。
 2番目の若手科学技術人材の動向調査のほうですが、これは毎年大阪大学のほうでは3番目のポスドクの実態調査、要するにどこの研究室にどういったポスドクがいるかという実態調査を全数やっておりまして、これはやってみるとわかるのですが、毎年毎年かなりの入りかわりをしております。したがって、毎年やらないと意味がないということで、こういう実態調査をやっております。
 そして2番目、そういった実態調査で引っ掛かってきた人たちに対するアンケート調査、意識調査、これも毎年、どういったキャリアプランを持っているか、共同研究に対してどういうような意識を持っているかというような調査をやっております。最近力を入れますのは、この中で個別のメンタリティといいますか、それぞれのポスドクのメンタリティをちゃんと見なければいけないということで、個別に1人ずつ、1時間から2時間ぐらいのヒアリングをかけて、それぞれの任期と、あるいは前職といいますか、どういったきっかけでドクターに入ってきたのか、どういうぐあいにしたいのかというようなヒアリングをスタッフでかけまして、詳細なデータベースをつくりつつあるというようなことで、これは現在105名のそういったデータが集まっているということで、これはことしが最終なんですが、ずっと続けていきたいというぐあいに考えております。
 第3番目の意識調査、キャリアデベロップメントに関するセミナー、イベントの開催なんですが、毎年理系キャリアセミナーということで、いろいろな著明な先生方にきていただいて意識改革を目指すというようなことでやっておりますが、これに関しても一定の成果が出ておりまして、かなり多くの方が参加しておられるのですが、ただ問題は、ポスドク層の参加がわりと少ないということがわかってきまして、もう少し個別に、興味のある小さな催しをしていこうということで、キャリアサロンということをことしから始めております。これは開催回数はもう5回になりますけれども、大体10人から20人ぐらいの小さな集まりを、ポスドクに限ってといいますか、中心にして参加してもらうというようなことをやっております。これもやった当初は数人しか集まりませんで、非常に苦労しているのですけれども、最近かなり集まってきました。最近やったのは、いろいろなことをやっているのですが、ライフプランということで、社会保険とかお金のことについてのキャリアプランいうものを、ファイシャンナルプランナーの方に講演していただいたんですが、そういうところで、50名以上の、これはかなり多くの方に参画していただいて、こういった活動というのはわりと浸透しつつあるなという感じがします。
 そういったことで、当初はかなりポスドク層の意識も低かったのですが、だんだんとこういった活動を通して変化の兆しが出てきているのではないかというぐあいに思っています。また、この後の懇親会とかいうようなことで、ポスドク層の横の広がりというものを醸成していく必要があるだろうというぐあいに思っていまして、そういった意味では、わりとリピーターがだんだんと出てきたということもありまして、その辺に期待したいというぐあいに考えております。
 期間後の実施体制のほうでございますけれども、実施体制のほうは、大阪大学のほうで20年度、科学技術振興調整費のイノベーション創出若手研究人材養成のほうに採択されましたので、そちらの事業のほうにこのプロジェクト活用型というコンセプトをより全学的な形で拡大していきたいというぐあいに思っております。そういった方向性で産業界への意識改革、あるいはポスドク層への意識改革、教員層への意識改革、そういったものを続けてやっていこうということになっております。
 その一環として、産学連携推進本部の中に、この7月からイノベーション人材育成部門というものが設立されまして、ここでよりこのコンセプトに基づいた人材育成というものを推進していこうということになっております。
 あと、キャリア事業の試算として、就職の関係のあっせん関係の仕事もありますから、そういったところはできるだけ従来の学生部のキャリア支援室等々と連携をしながら、そちらのほうに移していくというような方向でシステム化していきたいというぐあいに考えております。以上でございます。

【小林座長】
 ありがとうございました。
 次に、山口大学、お願いいたします。

【山口大学】
 山口大学でございます。
 山口大学は、この採択された中で唯一地方大学ということがございます。それがありますので、我々の取り組みといたしましては、地方大学のキャリアパスのモデル事業となり得るような活動は何かと、そういうことを考えながら活動を行うということ。さらには、そういう意味では対象者が少ないので、一人一人顔が見えるような事業を行うと、そういうコンセプトのもとにこれまで事業を行ってまいりました。
 お手元にパンフレットがございますが、それを参考にしていただければと思いますけれども、もともと私どもが考えましたプランは、ポスドク、若手助教、博士課程の学生、こういう人たちに企業の研究者、企業での研究能力、学校や公的機関での研究者としての質、さらには、学芸員等と書いてありますけれども、実際にはサイエンスを的確に伝えられるような能力、そういう資質を3つ考えまして、それらについて共通的なもの、個別的なものという形で事業を行ってまいりました。
 最初に、まずこの事業の初めに私どもに在籍する対象者のことを調べようということで、データベースをつくろうということを考えました。最初のアンケートでは、わりと大ざっぱなことを考えていましたが、推進委員会、参画機関、我々に協力していただける企業とか博物館等のご指摘を反映させ、アンケートは非常に個人個人の、例えば英語の能力とか、どういう機械が操作できるとか、どういう意識があるとか、そういうことまでかなり突っ込んだ形のアンケートを作成しました。あとで申します総合工学特別講義等の際とか、実際にキャリアプランナーが学生に対して面接調査を行いながらそのアンケートをとりました。そのアンケート調査に関しましては、我々がウェブを使って、企業の方がどういう人材がいるというようなことを見えるような形にしたキャリアパスマッチングシステム(CPMS)を作成しました。
 そのアンケート内容ですけれども、登録者に関しましては、山口大学の場合は、もちろん大学の教員をかなりの割合で要望しているわけですけれども、中にも企業の研究者を第1希望にしている者も3割程度はいたというような状況でございました。
 その次に、若手研究者の就職先というのはどういうものか、さらには、それではなくて、企業としてはどういうスキルを学生に求めているか、そういうことを調べる目的で、山口大学大学院の修了生が過去に就職の実績がございます企業にアンケートを、昨年、今年と実施いたしました。CPMSには今二百四、五十の企業が登録されております。企業向けのアンケートでは、企業の個々の内容というのは、当然のことですけれども、どういった分野の、研究者、技術者の分野ごとに必要とされるスキル等、先ほど申しましたけれども、英語だけではなく、専門に関するスキルなども含ませましたし、さらには、どういった分野の博士課程、ポスドク等、博士人材を求めているかについても聞きました。そうしたところ、アンケートした企業、さすがに5名以下という会社も中にはあるのですけれども、それ以上の会社には、博士人材がアプライした場合にとらないということはないことがわかりました。これは結局人物次第ということになるのですけれど。更に、例えば化学系の企業でございますと、化学系の博士人材だけが必要かということでもなくて、かなりいろいろな幅広い分野の、2種類、3種類程度の博士人材をかなり多くの企業が求めているということもわかってまいりました。こういうことを実際に、先ほどのCPMS(キャリアパスマッチングシステム)に乗せて対象者が見えるような形にしております。また、実際に対象者に面接する際には、そういったことも伝えております。
 CPMSウェブのシステムでやっているわけですけれども、先ほど申しました顔が見える活動とするために、若手研究者と実際に個人面談を行うということを行っております。先ほどから大分意識が変わってきたというふうな形がありますけれども、なかなか個人的に相談に来るということがありません。そのためキャリアプランナー自身が実際に学生に電話をかけて、押しかけのようなことで実際にやっております。そういうことをやれば、研究にのめり込んでいるとか、論文至上主義に陥って企業向けの自己アピールが貧弱等が浮き上がってくると共に対象者の意識改革も出てくるようになってまいりました。
 2点目は、意識改革と能力開発ということで、プロジェクトマネジメント能力の育成という形で、最初の年にセミナーを始めました。それ自身は企業における研究者の役割やおもしろさを内容とするキャリアパス多様化セミナーと、もう一つはTRIZ教育を組み合わせたものですけれども、これを最初、18年に実施しました。昨年度からはこれを総合工学特別講義という名前で実施しております。今年度は、先ほどから幾つかありましたけれども、大学の博士後期課程のオリエンテーションの場をこういった講義があるので、特に内部進学者ですね‐内部進学者というのはポスドクではなくて博士前期課程から進学した学生ですが‐そういったことの学生には受講するようにと呼びかけをしましたところ、ほとんどの学生が呼びかけに応じて講義をとっているという状況になっています。
 実際の問題として、ある意味、博士課程に入ったころからの教育を始めていかないと、もちろんキャリアパス自身は幅広くあるわけですけれども、いろいろあるということ自身をしっかり知った上で、さらには自分の能力をわきまえた上で、最終的に自分のキャリアをどうしていくかということを考え、さらには就職していくことが必要で、そのためにこういった事業が役に立つだろうというふうに考えております。
 もう一つは、博物館等の研修と高度理科人材育成に関することですが、これ自身は、当初、学芸員という、そういう道もあるかなということでやっておるわけですけれども、実際問題としては、これはなかなか難しいことがはっきりしました。ただ、そういう場に出席して何かいろいろな活動することによって社会とのつながり、さらには本人のコミュニケーション能力、サイエンスをどういうふうに、自分の専門性をどういうふうにわかりやすく使えるか、そういったほうの能力開発に非常に役に立つということがだんだんわかってまいりました。
 双方向人材流動型共同研究については、残念ながら対象者が少ないという部分がございまして、なかなか思ったようにうまくいっておりません。今年度は、博士後期課程にも今こういった形のものをやろうというふうな形で現在進めているところでございます。
 それと、あとシンポジウム等ですけれども、山口大学はなかなかそういう意味では、地方大学のキャリアパスモデルということ自身をつくりあぐねていたということもあるために、昨年、一昨年は行いませんでした。今年度は11月に「地方大学におけるキャリアパスの多様化」ということについてシンポジウムを開催することになっております。それにつきましては、地方大学のキャリアパス教育の目指すべき方向、それについてパネルディスカッションを行う予定ですし、企業の方の講演も予定しているところであります。
 また、12月には「化学系専攻学生のキャリアパス」ということについて、日本化学会中国四国支部と合同でシンポジウムを開催するということになっております。最終的に、これらのシンポジウム等におきまして、我々の成果を十分伝えていきたいというふうに考えております。
 最後に、委託機関終了後の実施体制・取り組み内容でございますけれども、これにつきましては、基本的には、このキャリアパスだけではなくて、若手研究者の支援を総合的に行うことにしております。即ちキャリアパス多様化に関する教育と人材育成とを連動することが必要であろうと考えておりまして、その意味で、全学の産学連携支援部門でございます産学公連携・イノベーション推進機構、今、私、そこの副機構長をしておりますけれども、そこにイノベーション人材育成支援室を10月中に設置して来年度以降に備えるということにしております。実際に今のキャリアパス開発センターの機能、総合工学特別講義、博物館等研修、CPMSを用いた就業支援等をこのイノベーション人材育成支援室というものに移し、大学院生の教育、学部の教育、これを行うような各部局に対して積極的な支援を行うということを考えております。これによりDC学生の長期インターンシップを推進することが可能となります。
 最後に1つ、今追跡調査を行っているのですけれども、留学生に関するケアが少し遅れていることを懸念しているのが現実でございます。以上です。

【小林座長】
 ありがとうございました。
 次に、九州大学、お願いいたします。

【九州大学】
 それでは、九州大学から説明させていただきます。
 九州大学では、「キャリア多様化・若手研究者活躍プラン-博士キャリアの社会浸透を目指して-」というプラン名で実施させていただいています。九州大学では、平成18年にこの事業に採択されたのを機に、学内にキャリア支援センターを設置しております。この設置により、学内の各部局、各企業との連携体制及び外部評価の仕組み等の構築を行いました。これをもってキャリアパスの多様化の支援拠点構築ということは18年度中になされております。
 九州大学に特徴的なのは、全学対応で、ある特定の部局だけを支援するというのではなくて、人文系まで含めた全部局対応の博士人材のキャリアパスの多様化を行っております。
 そのことに伴いまして、学内事務局の学務部キャリアサポート課と連携を密にしております。具体的には、週に一度ぐらい打ち合わせをして、各種問題の調整を図っています。
 まず、九州大学としましては、当初の提案書の中で3つの軸を掲げました。1つは、博士人材と企業等の交流・情報発信に関する取り組み、これは求人・求職システムの構築・運用ということになります。2つ目は、ポストドクターの能力開発の取り組み、これはマネジメント教育プログラム、インターンシップ等の実施になります。3つ目は、キャリアパス多様化に係る意識の醸成・環境整備、これは各種セミナーの実施になります。これで18年度中活動してまいりまして、博士人材の方、各部局の教員の方と、企業の方ともいろいろ話してまいりましたが、実態上、各部局、各博士人材の状況というのは様々だなということがこのときにわかりました。
 具体的にいいますと、ポスドク問題というのは博士人材が一様に困っているかというと、例えば工学系部局なんていうのはあまり困っていなくて、むしろ博士人材がいたらすぐ就職できるというふうなところもあったり、一方で、バイオ系とか基礎物理系というのは非常に困っている。人文系に至っては言うまでもないのですが、そういう状況がある中で、一律に事業をやっても仕方がないなということで、平成19年度から、その3つの軸をキャリア意識の形成段階に分けて、軸をもう一度組み直しております。
 1つは、0次段階としては、キャリア支援センターができましたということを皆さんに知らしめないといけないので、これを導入段階にしまして、第1次段階としては意識醸成、第2段階としては将来の仕事に対する理解、第3次段階としては就業体験、第4次段階としてはキャリア選択という段階に分けました。これによって、就職に困っていない工学系の部局の学生であれば、自分はもっと可能性があるんじゃないかということで、例えば第1段階に入ってきて、このセミナーだけ受けていろいろな知識を身につけるために利用される場合もありますし、バイオ系の人材は、こういうセミナーを受けている時間がないので、すぐに就職を世話してくれというようふうな第4次段階のキャリア選択から入る場合もあるということで、その組み直しによりかなり使われやすくなったかなと思っています。
 これに応じて、先ほどから出ています学内のグローバルCOEの先端融合で産学連携で人材育成するというカリキュラムが含まれています場合、その部局からは第3次段階のインターンシップを使いたいというふうな申し出も結構あります。特に、数学系とかバイオ系部局にはかなりご利用いただいているように思います。
 現在では、工学系は必要に応じて学生さんが来られますけれども、数学とか基礎物理系の学生、生命科学、人文系のところは学生だけではなくて、部局とキャリア支援センターが連動して動いているというふうな状態になっています。また、その中でキャリア支援センターの人材登録の仕組みが学内のさまざまなプロジェクトの人材供給源になってきているというふうなことも出てきております。
 現在、以上の活動によって、平成20年度8月現在で博士人材のエントリー数は全体で221名です。これは、我々はあえて支援する人を探すのではなくて、旗を掲げて支援してほしいという人が集まってきたのが221名で、就職したいという人が221名ということです。その中で博士をとりたいという求人数は651件寄せられております。現在までで、このエントリー提出者の中で就職決定者数は85名で、全エントリー数の23%が民間企業に就職しています。あえて申しますと、工学系とか就職できる人の数は含まれていませんので、ほんとうに困った人の就職の決定者が85名であったということで、キャリア支援センターがなかったら、多分この中でかなりの数の方が就職できなかったというのを、キャリア支援センターができたことによって就職ができたということになります。
 我々、いろいろな事業をやってきているのですが、先ほど平成19年度に軸を組み直ししたのを機に、キャリア支援センターを始めるときにどうしたらいいかなというのをやりながら18年度は迷いましたけれども、就職支援のセンターという位置づけが明確になりました。個々の学生の方は様々な要求がありますので、そのために間口の広い事業をやってきて、その中でニーズを捉えて個別カウンセリングを通じて就職に繋げているのが実態です。今からご説明します、17ページ、18ページに書いておりますが、その事業の一覧でございます。
 キャリアパスの多様化ガイダンスは、今九州大学はキャンパスが大きく5つぐらいに分かれておりますので、その5つのキャンパスの学生にガイダンスを4月、5月の間ぐらいに行っています。全体の参加者は230名で、まだまだ皆さん参加していただけるという状況にないですが、徐々に知名度は深まっております。そのほか、九大で博士をとって活躍されている方もおられますので、その方の状況を本にしたためて配って、意識醸成を図っております。
 啓発セミナーは、就職できていない分野、数学系とかバイオ系を重点を置いています。数学系のセミナーは、東京にある数学系のベンチャー企業の社長を十何人ぐらい連れてきまして、数学系の会社の学生と会わせて、直接就職セミナーをしました。バイオ系も同じようなことをやっております。そういうので延べ346名の参加がありました。
 マネジメント教育プログラムは、179名の参加がありました。これはむしろバイオ系とか数学系ではなくて、工学系の学生が、自分はもっと可能性があるのではないかと、もっと収入の多い道があるのではないかということで受講されている場合が多いです。
 シュタインバイス大学の交流は。国際交流を通じての意識醸成です。
 キャリアカウンセリングは、カウンセラーが対面で行ったカウンセリングが101名になります。非対面でのカウンセリング数が300回、これは数えていったら300で、メールなどでのやり取りを含めますとさらに多くなります。我々の事業を就職支援と打ち出していますので、2人のカウンセラーがついて、非常に親身になってカウンセリングを行っているのが実態でございます。
 そのほか、求人・求職のシステムの構築・運用ということで、先ほども申し上げた企業からの求人が651で、インターネット上で学生は見たいときにその情報を見れますし、その情報を見てカウンセラーを通じて就職の支援をしてもらいたいときは要請をしてくるというふうな状態になっております。
 本事業期間終了後の実施体制、取り組み内容は、九州大学の場合は既に全学体制ということで初めから取り組んでいますので、終了後もこのままの形で取り組みをできたらと思っています。ただ、先ほど申し上げました0次段階、第2次段階、第3次段階ということで、就職支援ということでカウンリングのところに重きを置いていますので、先ほど申し上げました第1次段階の意識醸成に関する事業は、各部局と連動して行いたいと思っています

【九州大学】
 教育担当副学長ですが、この事業と並行しまして、大学の教育の実質化ということで、修士ドクターを中心にキャリア支援も含めた大学の共通教育というのをやっております。これは学部開講でもありますし、他大学開放にもなっておりますが、このときの経験ですが、休日開講されますと大学院の学生たちは出てきやすくなります。そういう意味で、平日の研究の現場から引き離すということではなくて、土曜、日曜、夏休みというものを使いまして、そして彼らに負担をかけないように、隔週の午後で15時間の講義を開催するとかというような形で、彼らに対する情報発信というものを彼らの時間帯にあわせたような形でやりますと、学生たちが出てこないという状況はかなり改善できると思いますので、情報としてお知らせしておきます。

【九州大学】
 以上です。

【小林座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、これから平成18年採択機関、8機関の今までのご報告について意見交換に入りたいと思います。大体時間は25分程度を予定しております。
 それでは、どこからでも構いませんので、ご意見、ご質問等がありましたらお願いいたします。

【日本物理学会】
 いろいろなキャリアパスの話の中で、産業界が圧倒的多数だと思いますが、理研の場合、サイエンスコミュニケーター関係が何%かおられるという話と、それから山口大学では、そういうことをやってみたけれども、就職先としては無理で、むしろそれの意味は、学生たちにコミュニケーション能力とかプレゼン能力、そういうのをつけるために役に立っているという話があったのですけれども、このあたりの評価についてお聞きしたいと思います。

【小林座長】
 理化学研究所、お願いします。

【理化学研究所】
 理研でございますが、実際に研究者出身でサイエンスコミュニケーターの役割をしている人たちは、理研全体で、現在、各事業所広報部門ですけれども、約10人程おります。その人たちは、理研の研究者出身の人たちもおりますし、理系の大学院を出て、途中から理研に来た人もおります。
 それからもう一つ、現在、理研は北の丸の科学技術館については常設展示を行い、科学未来館とは包括協定を結び、科学技術の理解増進活動につとめています。そこにサイエンスコミュニケーターの育成など、いわゆる人材の育成というものも入れておりまして、未来館のサイエンスコミュニケーターが理研に来て最先端の研究を研修する。あるいは理研の研究者が向こうに行って説明をする、そういうことを取り組み始めつつあるところです。特に、北の丸の科学技術館については、5Fフロアは理研がプロデュースをして理研の研究者が実際に行って説明をやっています。こうしたことを徐々に増やしていきたいと思っています。
 もう一つ大事なのは、いわゆるサイエンスライターです。特に広報用の資料は研究者自身が書かなくても、ある程度たたき台は研究者ではない人が書けるという、そういう人材をぜひ理研としては10人ぐらいほしいと思っています。

【小林座長】
 ほかにいかがですか。

【山口大学】
 山口大学ですけれども、当初そういう形もあるだろうということでやっていたのですけれども、やはり探してみると学芸員としての募集が非常に少ない。これは実際の現実だろうと思います。
 あともう一つ、私ども学芸員の資格をとることは可能ですけれども、これがキャンパスが分かれておりまして、必ずしもそれがうまく、それは人文学部にあるのですけれども、なかなかそれがとりづらいという問題もございます。

【日本物理学会】
 わかりました。特殊事情しか無理だということが大体現状だということはわかりました。ありがとうございます。

【山口大学】
 ただ1つだけつけ加えますと、こういうことをやると相当意識が変わるのは事実で、それによって、これは理学系の学生が主ですけれども、そういう人たちがわりと早い時期に就職が決まったとか、そういう意味では副次的な効果が出ていると思います。

【小林座長】
 特殊事情といいますけれども、海外では結構例が多いですね。

【日本物理学会】
 日本に少ないという意味と、それから今言われたように、物理学会で見ていても、そういういろいろなイベントとか広報、ボランティアでもいいから活躍していた人は結構就職が決まっているという状況があるので、そういう効果はあるだろうということがわかりました。

【小林座長】
 それでは、別のことで構いませんので。

【京都大学】
 各大学さんで研究科別にキャリアパス支援事業に対してかなり関心がある、ないという温度差があると思うのですが、九州大学さんは、数学とか生命とか具体的におっしゃられたのですけれども、他の大学さんで、そういうことで特にここは高いとか低いとか、そういう特徴があったようでしたら聞かせてほしいなと思いました。

【小林座長】
 そうしたら、簡潔に順番に全部言っていただけますか。北大からトレンドを。

【北海道大学】
 北海道大学です。基本は、私ども基礎から始まったら、理、生命科学、バイオ系ですね。こちらは非常に関心が高いです。材料系は低いです。多分共通かもしれません。あと職業系、歯学部だとか先が見えているような、見えてないというようなゾーンがあって、あそこは手がつけられない。もっと手がつけられないのが文系ですね。というのが状況です。

【小林座長】
 東北大学、いかがですか。

【東北大学】
 そうですね。これまでの経過から見ると、一番積極的なのはやはり工学研究科、次に環境科学研究科の順でしょうか。最近では、農学研究科が関心を持つようになって来ました。その反対がバイオ系と文系で、特に文系は低く、かなり温度差があります。

【小林座長】
 理化学研究所は大学生がいないからいいですかね。理化学研究所を飛ばして早稲田大学、お願いします。

【早稲田大学】
 何をもって関心というか、ここの範疇も、就職だけに絞れば、ある意味、なかなかポジションが得られないとか、一番関心あるのですよ。本来考えるのだったら、すぐ売れるようなところ、こういう人たちも関心があるのですよね。もっとドクターにいってもらわなくちゃいけないと。これをどう対象に議論するかによって違うと思います。就職だけだったら、生物、物理系、ここら辺の方たちはかなり関心が高いと。それから逆に、本来、機械系とかITとかはすぐ売れてしまいます。だから、キャリアパス多様化ではそこも含まれると思いますので、それによって違うと思います。

【小林座長】
 名古屋大学、お願いします。

【名古屋大学】
 多分どこの大学でも同じだと思いますけれども、基本的に工学研究科というのは、留学生を除いてドクターにいく人はあまり多くない、あるいは企業から来ているという方が多いので、そういうニーズはわりに少ない。ただ、工学系であっても、例えば環境学研究科とか情報学研究科というのは名古屋大学にございますけれども、そこの中でもある意味、就職に困っているポスドクがいる研究室というのはかなりあります。それから、医学部では、基礎医学系と名古屋大学に保健学科というものがございますけれども、その2つではかなりのニーズがあります。基本的には、文系は、ドクターということを考えればあまりないのですけれども、現在、ロースクールで司法試験に落ちた人というのが結構いまして、彼らに対する支援が必要かどうかというのをロースクールの担当者から要請をされているという段階でございます。

【小林座長】
 大阪大学、いかがですか。

【大阪大学】
 大阪大学の取り組み、就職が中心ではないので考え方が違うかもしれないのですけれども、まず一般に就職という意味で言えば、今までおっしゃられたとおりです。ただ、実は研究科でまとまるというよりは、どの分野、どういう領域というのがきめ細かく差があるようです。我々はプロジェクトを進めていくのですけれども、プロジェクトを進めるというところでは、逆にいうと、今困っているけれども、新しい分野が開けてきそうだというところ、環境なんかそうですね、今少し動きが変わりつつあるので。ところが、企業側はいない、そういうような状況もあります。そういう意味でいうと、きめ細かく見ないと一概にということは言えないと思います。

【小林座長】
 山口大学、お願いします。

【山口大学】
 山口大学は、最初が理工学研究科の工学系ということで取りかかり始めましたので、工学系については情報も十分に行き渡っていますし、関心も高いと思います。昨年度から理学系と農学系をちゃんと置いてやっているのですけれども、理学系のほうは、そういう意味ではどんどん重要度が増してきていて関心度が上がっていると思います。ところが、不思議なことに、農学系は生物系の人が多いと思うのですけれども、レスポンスが非常に悪いという現実があります。

【小林座長】
 九州大学、お願いします。

【九州大学】
 先ほど山口大学のほうが言われたのは、生命系のほうは、学生さん自体は非常に不安感を持っていると思うのですけれども、なかなか行きづらいという状況が相まっているのではないかなと思います。先ほど状況については報告の中で述べさせていただきましたので、以上です。

【小林座長】
 せっかくですから、東京農工大学と京都大学もいかがですか、今までの感触では。

【東京農工大学】
 私のところは、18大学、農工大は工学系と農学系、それからあと17の大学はすべて農学系です。大学によって違いがあります。工学系は関心がかなりあります。それから、どういうふうに18大学で差があるかというと、少し距離的に東京から遠いところが関心が比較的高いようです。ただ、山口大学さんは、先ほどおっしゃったのですが、全く反応がないというか、ほとんどありません。すみません。以上です。

【小林座長】
 京都大学もいかがですか。

【京都大学】
 九州大学さんとほぼ状況は同じでして、シンポジウムであるとか研修会であるとか、あるいはマッチングシステムの登録、これら分野別の分布を見ますと、圧倒的に理学、農学の生命系、医学の生命系、いわゆるバイオ系の方の登録が6割強になっております。あとは各部局ほぼ均等に、ばらばらみたいな形ですので、後ほどご報告いたしますけれども、我々は、どちらかというと、こういうバイオ系の人材の支援がだんだん事業の中心にはなってきているという状況です。

【小林座長】
 今の点について、企画評価委員の先生方はいかがですか。

【有信委員】
 今の点でいうと、2通りに分かれているような気がするのです。関心ある、ないと先ほど説明があったけれども、どういう観点で関心がある、なしというかということが重用です。京都大学の言い方が一番多分正確だと思いますが、例えば具体的に登録しようとする意思があるかないかというようなことで分けるとしたときに、「バイオ系に関心がない」と言われた大学があり、片方で「バイオ系が登録という意味では関心がある」という大学がある。この辺がどう取り組むかということにつながる。実際に現状を見ると、多分バイオ系、ライフサイエンス系が、ポスドクの行き先が非常に限られているために手当が必要だろうという状況だと想像している。だから、ここのところをもう少し正確にとらえて手を打っていく必要があるのではないかという気がします。

【小林座長】
 機関によってはそこを理解されて、いろいろ工夫され始めたという感じがします。

【九州大学】
 バイオ系のところに問題が少しあります。特に生物を使った実験系のところになりますと、非常に忙しいというのがありまして、なかなか研究室を出ていけないような環境がございます。そういう意味で、関心はあるのだけれども、実際にセミナーとか講義とか、そういうものに出ていきづらい環境が生物実験系を持っているところにかなりあるということで、そういう状況を見て、やはり掘り起こしていかなければ、バイオ系の本当の需要というのは見えてこないだろうと思っております。

【東北大学】
 本学の補足をさせていただくと、2つありまして、1つは、学生が就職に困っているというか、そういう部分が1つと、もう一つは先生方の意識です。相関関係で、我々の実感を申し上げますと、産学連携とかいろいろな形で世の中と接触が少ない、純粋学問をやっているような分野の方で、わりと学生が就職に困っているようなところの先生ほど関心がない、その辺がギャップのような感じがいたします。従って、学生と先生方の感じが必ずしも同じではないのではないかと思われます。ですから、学生は困って、相談にどんどんきているのですが、一方では、先生方は、「そんなのは自分の仕事じゃない」というような感じがあり、どうアプローチするか非常に苦労してやっています。

【小林座長】
 ありがとうございました。

【日本物理学会】
 そういう言い方をされると、基礎系の物理なんか耳の痛いところもあります。逆にいいますと、生物系とかでプロジェクトが非常に過密に進んでいる、私はそういうところのポスドクを搾取型ポスドクと言っています。そういうところはほとんどポスドクに暇も与えないで、ともかく業績を上げることだけに使っている。そういう形の指導者のほうの意識といいますか、プロジェクト側の意識というのが1つのネックになっているのではないかと、そういうことも考えてやっていかないと就職の問題は解決しないだろうと。就職だけじゃなくて、人材を育成する立場に立ちますと、そういうところのポスドクは、いわゆる企業で企画力がないとかコミュニケーション能力がないとか、そういう種類の視野の狭い、自分のやっていることだけしかできないというポスドクを育てるということになるので、本来のポスドクの育成とは全然違う方向にいっていると思うのです。そういうところを考えていかないといけないのではないかと思います。

【宮田委員】
 今、物理学会のご指摘なさったことはすばらしい、そのとおりだと思うのですけれども、実は不幸な歴史が繰り返されているような気がします。工学系に関してはもともと産学連携が基盤にありまして、そういうようなことが行われてきたのですけれども、理学系というか、私が植物学に入ったときも就職なんかだれも考えていなかったのです。だから、その先生自体が代々経験がなく、それからバイオテクノロジーという産業が最近成り立ったという状況もあって、彼らはどうしていいか分からないのではないかと思っていて、今回皆さんのお話を聞いていて一番心配だったのは、ファカルティデベロップメントをもう少ししっかりやらないと、実は彼らも困っているのだと思う。だから、そういう意味では、理学系、生命科学系の方々が自分の業績を上げるための奴隷制度を構築しているという面もあるのですけれども、彼ら自身のイマジネーションの中に、今の産業の変化とか、あるいは自分たちが大学生をもっと社会に適応できるように教育しなければいけない、だけど、どうしていいかわからないという事情があるので、そこを少し考えるような新しい試みを皆さんにぜひしていただきたいと思っています。

【東北大学】
 只今のファカルティデベロップメントについて一言だけ。
 東北大学の農学研究科ですが、そこが1年に1回、教授、准教、助教まで全員約100名の先生を集めて研修をやっています。次のような依頼がきたのですが、「学生が研究室で先生に就職の相談をしたら、先生はどのようなアドバイスをし、指導したらいいか分からない。だから、キャリアアップ相談室から来て話をしてくれ」ということでした。作成した学生の承諾を得て、固有名詞を削除した上で履歴書の書き方、その他4点セット、その他いろいろな資料を全員に配りまして、説明をしました。終わってから研究科長が質問はありませんかと参加者に聞いたら、ある教授が、その現実の話を聞いて目からうろこが落ちたという発言が実はあったのですね。ですから、徐々にそういう気運が東北大学の中では出てきているのだなと感じたので、今の先生のお話を伺い所見を述べさせていただきました。

【北海道大学】
 そのファカルティデベロップメントの研究指導者がPDに接する接し方、その問題点というのはそのとおりだと思います。ただ、制度的な問題をどっかで考えなきゃならないと我々今考えているのが、PDと特任助教だとか、任期つきの助教、この違いは何かというと、ずっと突き詰めて、例えば「PDのデベロップメントもやりましょう」、「プログラムを考えましょう」ともしやったとして、最後に残るところは任期の期間です。助教の場合は我々のところでは5年、でも、裏表を考えたら10年というと、実質任期がないという状態に近いです。一方で、PDは5年、3年、下手したら2年。これにプログラムだ、何だといったときに、PDのことを考えたら確かにそういうのは必要だけれども、プロジェクト側のヘッドからいったら、2年しかない方に、もしくは5年で確保した方が途中2年で抜けられた後の2年をどうするのだとか、いろいろなことを考えたら、非常に制度的にすごい縛りなのです。PD側から考えたら、当然そういう権利があっていいはず。僕から言ったら、何であなたたちは労組をつくらないのだ、PDのと言いたくなるぐらいに。そうだけれども、それができない任期の短さというのがあって、それを大学として担保できないのか。要するに人件費バンクみたいな形で、プロジェクト側からいったら2年しかお金はないけれども、例えばあと3年分大学が貸し付けましょうとか、そうしたら5年の任期を常に持たせることができる。そうしたら、中で育成プログラムなり何なりいろいろな形がやれる、いろいろなことができるのですけれども、2年しかなければ、いくら頑張ったって、プロジェクトマネジャーもそれなりの立場もありますし、PD側にもその立場もありますし。だから、制度的な、構造的な問題というのを大学だけでできる部分もあるかもしれませんけれども、国としてもできる部分があれば、一緒にやれればというふうにも考えています。

【早稲田大学】
 今おっしゃったことで、もちろんそれで、皆さん大体分かっていらっしゃるようなことですが、例えばプロジェクトを2年、3年のポスドクをやっている人自身が、例えばこういうようなところに出るとか、いろいろセミナーに出て、自分がすごく研究も、一流の雑誌に出して、そういう人間がセミナーにも出てみたいと思ったときに、だめだとかというような縛りがあるわけですね。そのときに、あなたは私の後のキャリアパスを保証してくれるのですねというような交渉とか、そういうことをしっかりと言えないと、これはまずいと思うのですね。というのは、そういうことを言えないような環境に追い込んでいくわけです。我々はそういうことをあらかじめ教授たちの前で、あなた方、そういうことはやっていないですよねということを言ってあげることによって、ポスドクも言いやすくなる。また逆にいうと、研究指導者はそういうのをやるのがいいと思っていても、今度、やるとどんどんそっちのほうにいって研究をおろそかにしてしまうのではないかという、そういう猜疑心というか、信頼していないようなところがまだあるので、それはお互いにしっかりとキャリアパスのことも、ポスドクのことも、あなたのことはただ使い捨てにするようなことはしないからと。だけれども、全部のポジションをどっか用意するということは無理だから、こういうようなセミナーとかに行って展望を広めるようなことだとか、そういう言い方をしてくださいとか、具体的に教員に対して言わないと分からない。なぜいけないのかとか、なぜいいのか、何がいいのかということがよく分かっていない先生方が非常に多いような気がしました。

【小林座長】
 研究指導者といいますか、スーパーバイザーの話が出てきたのですが、このことはいろいろなところで実感されている話だと思います。残りの時間も少ないので、別の論点はいかがでしょうか。

【日本物理学会】
 少しお伺いしたのですが、今全体的を聞いた中で、各機関の中で、わりに女性研究者支援ということと結びついて、これはポスドクの中でも一番被害を受けているというか、一番下の苦しんでいる層だと思うのですけれども、そういうのをやっておられるのは、名古屋大学がそういう試みをやっておられるというのを聞いたのですけれども、ほかにありますでしょうか。

【北海道大学】
 北海道大学ですけれども、北海道大学も女性進出と。彼女たちがまず中心になって、キャリアガイドだとかサポートシステムのそういう本をつくるというところでいろいろ話をしていると、結局のところ、もとへ戻ると、若手が考えている話、問題点と全く同じです。先ほど特殊事情として産休の話であるとか、その間の業績であるとかという問題があるけれども、そのほかの部分の7割とか、その辺はほとんど同じセンスのものという部分がありますので、そこは一緒にやっております。

【九州大学】
 九州大学ですが、やはり同じように女性支援室があるのですが、学生のほうに聞いてみますと、女性支援室の先生たちは一生懸命頑張っておられるのだけれども、そのセミナーで聞いたときに、あそこまでやらなきゃいかんのかということで、かえって現場の女子学生が腰が引けるような頑張りのお話をされることもあるのですね。そういう意味では、女性が研究の中に入っていく、社会に入っていくときに、女性なりに仕事が継続できるような社会システムをつくっていかないと、今の女性支援というものが先細りになるのではないかという懸念を抱いております。私自身は現場の学生たちからいろいろな不平不満を聞いていまして、非常にいい話をしてくれるのだけれども、すんなりついていけそうにないわねというような意見もあるということでございます。

【産業技術総合研究所】
 産総研でも男女共同参画室で同様の取り組みを行っておりまして、女性研究者のモチベーションを高めるために、既に活躍されている女性研究者をお招きして、ロールモデルとしてお話していただくというようなことをやっております。あと、キャリアアドバイジングですとか、キャリアカウンセリングというようなこともやっております。以上です。

【早稲田大学】
 早稲田大学の女性支援のほうの男女共同参画室というのをつくって、そういうところとやっているのですけれども、例えばいろいろなシンポジウムとかセミナーを一緒にやるのですけれども、やり方すらなかなか、事務局をつくってやるというようなこともなかなかなれていなかったりとかする場合もあったりして、こちら側と一緒にやって我々がサポートする場合もあります。また逆にいうと、女性研究者特有のいろいろな悩みとか、そういうことを我々が知って、ポスドクの中でも特にまた非常に大変なところだなというのは、初めて一緒にやることによって知ったので、そういうことに関してもこれからサポートはしていきたいと思っております。

【小林座長】
 ありがとうございました。
 次に、別の論点で山野井先生、お願いします。

【山野井座長代理】
 1つ質問させていただきたいのですけれども、昨日のワークショップから参加させていただいて、本当に皆さん大学、あるいは公的研究機関の中でマジョリティーがないのですよね。正直言って、マイノリティーの中で非常に頑張っておられる。全体がそういうカルチャーになっていない中で、大変努力されているので非常に私は敬服しております。
 そこで、ここでは確かにそれぞれがどういう取り組みをしているか、意識改革の問題ですから非常に難しいのですね。しかも、若者だけじゃなくて、教員の皆さん含めて全体のそういったカルチャーの変化ということに挑戦しておられますので、そんな簡単にできることではないと私は理解していますけれども、少しずつ変わっていることは事実ですが、その中で、それぞれがやっておられることについて、この場に出席しておられる皆様方は理解されるわけです。肝心のポスドクの皆さんは、他のところではこういうことをやっているよということは、皆さんはそれぞれご自身の機関におられるポスドクの皆さんにPRしておられるのかどうかというなんです。例えば北海道大学さんでしたら、九州大学さんではこういうことをやっていますよ、山口大学さんはこうやっていますよというようなことを相互に、ここの場の共有からじゃなく、ポスドクの皆さんが横の連絡というのはおかしいですけれども、とれるような形で情報を流しておられるかどうかということを知りたいのです。それはなぜかというと、これはシビアな言い方になりますけれども、このプロジェクト自体は、実は大学間、あるいは研究機関の競争原理なのですね。どこが一番リードしていくかということは、結局それが1つのモデルになりますから、それぞれ情報交換の中でやっておられる中での、協調しながら競争なのですね。そういう意味からいうと、意識の改革というのは非常に定量化しにくいので、就職がこのように進んだというのは、1つのアウトプットとしてはわかりますけれども、非常に計量化しにくい問題ですね。ですから、そのときに、あの大学に行って聞いてみたいというような、別の大学なり機関の人が、そういうような人たちがふえてくれば、全体がレベルアップしていく可能性があるのではないかという意味で今お伺いしたいのですが、どういうふうに情報を流しておられるかを、皆さんに聞く必要はないのですけれども、何かご意見があったらお伺いしたい。

【小林座長】
 時間もありませんので、幾つかの大学に簡潔にお答えいただきたいと思います。要するに今回の事業の担当者として、他大学、他機関の様子を紹介しているかということと、おそらく裏側では、他機関からのアプローチがどれくらいあるかということとも関係ありますので、そのあたりで二、三の機関、いかがでしょうか。早稲田大学は典型的だと思いますので、ぜひ。

【早稲田大学】
 大学の中というのはみんなそれぞれのところがやられると思います。我々のところはたまたま都心にありますので、本来、若手がみずから考えるのです。幸いなことに、そういうことをやるグループがいま六、七十人つくられています。我々はそこを支援していると。ただ、残念なのは、中核メンバーが必ずしも早稲田の人でなくて、東大とか東北大の人が中心、もちろん早稲田も入っていますけれども。若い人たちがやるのをサポートしているのが我々の今、そこだけ新しいところかなと思います。

【小林座長】
 名古屋大学はいかがですか。

【名古屋大学】
 我々、学会へよく行って、そこで出展、あるいはシンポジウム等をやりますと、そこの学会に参加しているポスドク、ドクターの院生が来ます。そのときに、例えば大阪のあたりだったら、大阪大学でこういうことをやっていると、この間は植物生理が北海道であったので、北大の方も来ておられたので、北大でこういうことをやっているという説明はします。ただ、現実には、他の機関所属の方が名古屋大学に登録しているケースもあります。あとは、他の機関との連携的なことに関しては、例えばこういう求人があるけれども、うちにはいないからというようなケースは回したり、また回ってきたこともあるということです。その程度です。

【小林座長】
 九州大学、お願いします。

【九州大学】
 これはお尋ねの趣旨とは違うのですけれども、1つの方法ですが、私自身ブログを書いておりまして、それで全国にこういう情報を発信しております。他大学のドクターたちからメールがきまして、それの個別相談に応じるような形での情報交換はやっております。どこか大学1つでブログを書いておられるということがありましたけれども、そういう方法は有効かと思います。

【小林座長】
 もう時間がないので一たんここで切ろうと思います。実は私は各大学の事情を詳しく聞いて回ったのですが、多くの大学では、今回の事業の性格でもあるのですが、他機関からのコンタクトが非常に多いのですね。それについては大体皆さん協力して紹介し合うということを実はやっておらます。ただ、組織的にというよりは、むしろコンタクトがあったときに個別対応でやっているというのが現状かなという気がします。
 それでは、時間がオーバーしてしまいましたけれども、どうもありがとうございました。
 次に、平成19年度採択の機関の報告に移らせていただきたいと思います。
 それでは、まず産業技術総合研究所、お願いします。

【産業技術総合研究所】
 産業技術総合研究所の取り組みを紹介させていただきます。資料変わりまして、資料2の1ページから3ページまででございますが、2ページ、3ページは通路のポスターでの展示内容と同じでございますので、主に1ページ目の資料を使って紹介させていただきたいと思います。
 産業技術総合研究所でございますが、採択12機関の中で唯一経済省系列の機関でございまして、産業技術人材を育成し、輩出するということはやぶさかではございませんで、そこに私たちの特徴があるかなと思っております。
 さまざまな情報を発信するためのウェブサイトをDR’Sイノベーションと名付けた背景には、産業界でイノベーションを担っていただく形で活躍する人材をという気持ちが1点。あとはドクターの方、若手博士の方の意識そのものにイノベーションをもたらしたい、この2つの意味合いを込めましてDR’Sイノベーションというふうに名付けております。
 各地イベント情報、企業求人情報、社会動向情報などを掲載いたしまして、現在一月で1万7,000件を超えるアクセスを得るに至っております。大変重要な情報交換のツールになりつつあります。
 この中で登録することができるのですけれども、メールマガジンを発行しておりまして、現在登録者数500名を超えております。1月に創刊後、現在までに11号発行しておりまして、ポスドク経験者で企業で活躍されている方、あるいはこういったポスドクの方の就職支援に携わっている方からさまざまなメッセージ、叱咤激励のメッセージをいただいて、これまで回を重ねてきております。
 2008年の1月21日には、我々の取り組みをどうとらえるかというところでシンポジウムを開催いたしました。「今、求められる研究者像と人材育成」と銘打ちまして、産学官を代表する有識者の方にお集まりいただきましてさまざまな議論をさせていだたきました。243名が参加する比較的大きなシンポジウムになりまして、中心的な話題としましては、地球規模での例えばさまざまな環境問題、エネルギー問題、食糧問題等ありますけれども、こういった社会活動の持続的発展を脅かすような問題が山積しているわけで、それを引き起こしている原因の1つが科学技術であるということができます。したがって、この問題そのものはやはり科学技術で解決せざるを得ないと。従来の技術ではなく、やはりそこにはイノベーションが必要でありまして、そのイノベーションをもたらすのは、やはり高度な研究開発能力を持つポスドク以外にないと。したがいまして、イノベーション、これの推進エンジン役を担う、そういう貴重な産業技術人材として育成して、産業界に輩出していきたいというのが私どもの取り組みの重要なポイントの1つでございます。
 あとは、産業技術総合研究所の本拠地がつくばにございます。つくばには他に多くのさまざまな公的な研究機関、大学、民間の研究所もございます。そういった機関と連携、協力しながら、つくば地区全体で将来的な受け皿を検討するというようなこともこの事業の重要な課題の1つでございます。
 個別の中身でいいますと、スキルアップセミナーというのをかなりの回数重ねておりまして、R&Iスキルアップセミナー、リサーチ&イノベーションスキルアップセミナーと称しておるのですけれども、基礎的なところからかなりアドバンスなところまでやっておりまして、例えば基礎的なところですと、英文テクニカル・ライティング的なところ、それから非常に高度なところになりますと、イノベーション人材を標榜するからには、やはりその技術講習的なこともやらなければいけないということがありまして、産総研内部のナノテクノロジー研究部門と連携した微細加工・ナノ計測の技術講習会というのを実施しております。これは講演会と講習会と、そのあとの1年程度の装置の無償利用、この3つをセットにした新しいタイプの企画でありまして、既に2回行っております。講演会では融合分野で活躍されている方のお話をいただき、具体的には、例えば電子顕微鏡ですとか、走査型顕微鏡ですとか、その他各種ナノ計測装置、こういったものの使い方の講習を受けていただいて、実際にそれをご自身の研究に役立ててもらう。そういった座学と実学と、さらに実践、この3つのステップを踏まえてイノベーション人材としてスキルアップしていただくという企画もやっておりまして、こちらは大変好評であります。今回やったものにつきましては、所外からかなり多数の方に参加していただいております。
 マッチングイベントのほうですけれども、こちらのほうは、民間の人材紹介系の企業とタイアップして行っております。こちらは、民間活力をやはり利用する。うちの場合ですと民業圧迫にならないように、既にそういったところでノウハウをお持ちのところがあれば、そこと協力してやっていくということで、こちらでも随分成果が出てきているかなと思っております。
 つくば地区での取り組みで、今後事業終了後にどのように役割を分担しながらやっていくかというようなこともそろそろ考えなければいけないのですけれども、例えば筑波大学さんでは、大学院共通科目で非常に重要ないろいろな講座がございまして、我々が既にやっているようなセミナーの内容をかなりカバーすることができます。ですから、将来的にはそういったところに相互乗り入れするような形でできないものか。うちの場合には、比較的職員の数が多いものですから、内部での研修制度というのは比較的充実しております。筑波の比較的小さな独法機関ですと、なかなか内部で研修制度を充実させることができなくて、例えばうちでやっているような産業技術人材育成研修に他の独法の方に受けていただく、ポスドクの方に受けていただく、こういったようなことも将来的に検討していきたいと考えております。
 就職関係のマッチングに関しましては、ぜひ民間活力を利用するような形で今後も続けていきたいと思っております。つくば全体でいろいろな機関の協力を仰ぎながらこの事業、来年度で終了でございますが、続けていきたいと考えております。以上です。

【小林座長】
 ありがとうございました。
 次に、日本物理学会、お願いいたします。

【日本物理学会】
 日本物理学会より報告いたします。資料の4ページをごらんください。
 私ども、実施計画名の中に「キャリアパス開発全国展開」という単語を含んでおります。学会という立場から、全国ということをキーワードにして、全国を対象としたいろいろな活動、調査であるとか意識改革というものに取り組んでおります。それから、物理学会会員は約1万8,000人おります。それから退会した人も含めると4万件ぐらいのデータがあります。そういったものを生かして、対象としてはシニア層、指導者層から若手のポスドク、学生層まで含めたものを対象とした活動を行っています。その中でも主に力を入れているのは、全国での広い相手を対象とした調査及び意識改革です。これは学会という立場から、年に2回全国大会がございますので、そういう場を生かしてそこに集まってくる研究者、あるいは大学の先生の方々に意識改革をしてもらいたいということをやっております。
 それから、もう一つ学会としての特徴といたしましては、学術の発展ということも学会としては考えますので、物理プロパーに限らず領域を拡大することによって新しいキャリアパスの開発につながらないかということも検討しております。
 以下、個々に説明させていただきます。4ページの数字の1)、2)、3)、4)というのがこれまでやってきた経過で、それぞれご説明させていただきます。
 1)番が調査に関するものです。1つは、物理学会会員を中心としまして、物理学会会員全員にメールでお知らせを流すことによって、これまでの研究者のキャリア支援、つまり自分が、例えば今ポスドクの人だったら何年くらいやっているとか、過去にポスドクの経験があった人ならどういう経験をしてきたかということに関して、ウェブを用いてアンケート調査を行いました。回答数は会員の約1割、1,700ぐらいが回答してくれました。それに対する報告は既に出しております。
 それから、先ほど言いました物理学会の会員情報データベースからいろいろ個人情報にかからない程度にチョイスいたしまして、実際に物理学会会員がどういうところで活躍しているのかということも調査いたしました。
 それから、海外との比較、あるいは国内でのいろいろな機関の比較ということで、メジャーな機関に対してウェブとかを用いまして、アカデミックな場で、大体どういうポスドクの数だとか、どういう教職員の数が普通なのかということを調査するということもやっております。これらは全般的な調査ですが、個々を対象とした個別面談も行っています。皆様方と違ってキャリアのマッチングをするというよりは、個人個人に面談してそのポスドクの状況を聞くというようなことです。そうすることによって、紙やウェブでは答えにくいことまで調べさせていただくということを、数は少ないですけれども、やっております。以上が調査です。
 2)番は、シンポジウムやイベントを通じた研修会であるとか意識改革です。開設記念式典は別といたしまして、まず先ほど言いました年次大会、全国大会での事業説明、この事業の意義であるとかということを会員に知ってもらうということは毎回やっております。それ以外にも、もちろん産業界との事情説明であるとかマッチングイベントというものは、1つは連携機関であります神戸大で、関西の企業を中心にした企業とポスドクとのマッチングイベントというものを行いました。それから、春にも同じようなことを学会の場で、インフォーマルミーティングの場で行いました。
 それから、先ほど言いました領域拡大ということに関しましては、二つの大きな柱がありまして、1つは医学物理、放射線を用いた医学治療というものに物理が非常に必要なるという面から、そういう面で何か貢献できないかということで、医学物理学会と協力していろいろなイベントをやっております。その中で1つ、医学物理士というのが欧米では普及していますが、日本ではまだまだ数少なくて、これから必要になると思われる資格があるのですけれども、これについての説明会であるだとか、あるいはそれに関する大病院であるとか、放射線医学総合研究所の見学会ということを通じて、放射線をどうやって医学に使っているかということをポスドクの方たちに見てもらうということをやっております。
 それから、教育に関しましては、最近、理科離れということが初等中等教育で問題になっておりますので、そういうことに関して、学会としても、あるいは我々が、博士人材が何か貢献できる道はないだろうかということで、現場の先生を招いて、現場の声を聞いて、何が必要なのか、どういうことが問題なのかなどを聞いて、ポスドクに対してそれをジジョウしてもらう。あるいはポスドクの人たちに理科教材というものをつくってもらって、それを発表してもらうというふうな機会を設けております。
 それから、次の3)番は全国的な広報です。物理学会誌というのがございます。毎月発行しております。それが1万8,000の会員に配られますので、それにほぼ毎月ポスドクに関する記事を掲載して啓蒙活動に努めております。
 それから、年会とか、学会の場所においてパンフレットであるとかを配って啓発しております。
 最後の4)番目はデータベースの構築です。いろいろな人材だけではなく、こういう情報がありますよだとかというふうな、先ほど言いました各機関さんがいろいろなことをやっていることを、こういう機会を用いて、できれば全国的な組織であることを生かして広報したいと思ってやっておりますけれども、まだちょっとそこは必ずしもスムーズにいっておりませんけれども、少なくとも博士人材の求人情報をこの9月、10月から始める予定です。以上です。

【小林座長】
 ありがとうございました。
 それでは、次に東京農工大学、お願いいたします。

【東京農工大学】
 東京農工大学の説明をさせていただきます。
 5ページをお開けください。1年間の間に5ページから6ページの上判断までの時期を行いました。そして、個々の事業については6ページ以降に説明しております。
 まず、この事業は、全国6連大を構成する18大学が対象になりますので、そこへどのように情報を流すかというのが非常に重要になっておりましたので、全国連合農学研究科協議会というものがありますので、そこで「こういう事業をやりますのでよろしくね」、「各大学へ流してくださいよ」というような説明、周知をしました。それから、特任教授を中心として、各大学へ訪問して、それぞれの研究科会議で説明をして浸透を図っております。サービスの構築したシステムとしては、18大学間の双方向のサービスをしないといけないということなので、農工大の情報処理センターでは人的、それから能力的に少し無理だということでレンタルサーバーでシステムを構築しました。このシステムは、キャリアパスのマッチング、それからメンタリング、研究会の案内申し込み、セミナーの案内申し込み等ができるようになっております。
 次のページにいきまして、幅広い就職先を確保するためには、いろいろなルートで登録企業を増やしていかないといけないということで、1)の直接訪問営業型、それから学内情報活用課だ、それから効率追求型と、こういうふうに区分けして現在登録機関を増やしている最中ですが、残念ながら、それほど数が増えておりません。
 一方、この登録情報を欲しがっている学生は、5ページの最後に書いてありますが、立ち上げて、まだしばらくしかたっていないのですが、161名、全国から情報を欲しがっている方が登録しているという状況にあります。
 それから、博士人材の意識改革、あるいはキャリアパス支援というものにはメンタリングが非常に重要になります。6ページの4のメンター制度ですが、各連携大学にメンターを、推薦をお願いして、58名登録していただいておりますが、昨年度の最後に行いました評価委員会では、大学の先生にメンターを頼んでいてはだめであるという厳しい評価をいただきましたので、そこから急遽方針を切りかえたというか、拡大して、卒業生、いずれにしても18大学外のそうそうたる方々に現在メンターをお願いするという状況で、現在10名ほどが登録されております。そして、このメンターの気持ちですが、ポスターにも書いておきましたように「気づかせてそっと背を押す」と、こういうコンセプトでメンターをしていきましょうということでやっております。
 それから、各事業の詳細ですが、本センター事業をうまく進めるためには、スタッフが少ないもので、しかも18大学と全国にそういうサポートするべき大学がありますので、プロジェクトアシスタントというものの制度を立ち上げました。これは各連合の研究科にご推薦をお願いするということで、上がってきた博士、学生等をプロジェクトアシスタントに登録しているのですが、それ以外に非常によかったのは、各研究科の教務係の窓口の担当者にどの人を推薦していただけませんかという形でお願いしました。そういう方々が現在59名で、この事業のいろいろサポート、普及啓発を図ってもらっているということになります。
 それから、次のページ、7ページにいきまして、大きく分けて幾つかのトレーニング、プログラムを立ち上げたのですが、1つは、7ページの上の2.にありますように、プロジェクトアシスタント研修会です。全国からたくさん集まってもらったのですが、ここでは毎日新聞の記者グループが理系白書ということをまとめられました。これは取材を通じてなんですが、ここにいろいろヒントがあるのではないかという形でお願いしました。
 それから、もう一つは、日本MITエンタープライズ・フォーラムの元理事長の綾尾さんという形にメンタリング、「メンターとメンティの関係」という形でプロジェクトアシスタントの中身をプロジェクトアシスタントにいろいろ教えていただきました。
 それから、7ページの下のほうにいきまして、キャリア設計セミナーです。これは席上配付物、ここにそのポスターを入れておりますが、NHKのチーフプロデューサー、「プロフェッショナル-仕事の流儀-」の総責任者ですが、この方を呼んできまして、講演をしていただきました。そして、そこで得られたことは、プロフェッショナルの共通点として、世界に飛び込むときには理由はなかった、大きな挫折を味わっていた、根拠のない自信を持っていた、必死さが技術や経験を凌駕する等のコメントをいただきまして、非常にいい勉強になったと思います。
 それから、次のページにいきまして、席上配付のポスターがあるのですが、真ん中あたりの1ですが、メンターセミナーです。これは先ほどのメンターセミナーより20日前にやったものですが、ここでは同じような講演とワークショップをやりました。事前にメンターには通知せずに、プロジェクトアシスタントにメンティなっていただきまして、突然そこにメンタリングの実施をしてもらいました。その成果を発表してもらったということになります。
 それから、民間企業等への人材PR活動ですが、その8ページの(3)の1)になりますが、イノベーション・ジャパンというのが東京国際フォーラムで大きなイベントが行われております。何万人と来られるのですが、これは野村證券がやっているのですが、それをサポートするという形で、ここで人材のPR等のトレーニングをさせました。80枚の名刺を持たせて、交換しなさいよといった、そういうことでトレーニングを行ったということになります。
 それから、次のページ、9ページにいきまして、社会との交流教育プログラムでは、我々農・工の人間ですので、金融経済方面に非常に疎いということで、これも野村證券さんの協力でそういうリテラシーをやっていただきました。
 最後の10ページになりますが、今まで感じたことは、求人機関が少ないので、それをどうやって増やしていくかということと、それから、無関心な博士、人材に啓蒙と自己啓発をこれからどうやっていくかというのが課題として残っております。以上です。

【小林座長】
 ありがとうございました。
 それでは、最後ですが、京都大学、お願いいたします。

【京都大学】
 京都大学の報告をいたします。
 京都大学は、キャリアサポートセンターという、そもそも全大学生の就職活動を支援する組織の中でやっております。その辺が他の機関と少し構想が違うところかと思います。もともとの学部生並びに大学院生を対象にして就職セミナーとか就職ガイダンスなどをやっておりまして、私どもの既存の行事で、大体延べで1万7,000人ぐらいの学生が参加してきております。数は少ないのですが、その中にポスドクさんであるとか、博士の学生も参加しておりまして、個別の就職相談にもきているという経緯がございました。
 この事業に取り組ませていただいて、個々の部分をもっと強化しようじゃないかと、ポスドクさん並びに博士の就職の支援並びに相談体制をきっちりつくろうと、これがまず事業目標ということで設定をさせていただきました。
 具体的にやっておりますことは、まず、今までは受け身で博士並びにポスドクさんの情報はいただいておりまして、数少ないながらも求人情報というのはあったのですが、これを積極的にいただきにいこうということで、企業回り、専門の特定職員というものを配置いたしまして、求人開拓を行っております。約1年この活動を行いまして、現在約120件ぐらいの求人票をいただけるようになりました。先ほど少しご報告させていただいたとおり、工学部の人材に対しては、非常に求人意欲は活発です。ところが、このシンポジウムであるとか、マッチングシステムであるとか、就職相談であるとか、これに訪れる学生というのはほとんど工学の人材がおりませんので、先ほど言いましたバイオ系が中心になると。したがいまして、この約120件ぐらいは就職に困っているという人材に対する案件を約120件もらっています。京都の地盤の企業であるとか、あるいは紹介会社であるとか、そういうところを通じてアプローチをいただくものの、ほぼ99%が工学系の求人案件ということで、これはとりあえずいただくのですが、あまり役には立っていないというのが現状でございます。
 マッチングシステムを構築いたしまして、このリアルで集めてくる情報以外に回りきれない企業さんも多いですし、実際に就職相談とか進路相談に来られない人材も多いということで、ウェブ上でこの両者がそれぞれお見合いできるというシステムをつくらせていただきました。現在、企業さんのほうの登録が約100社、それから研究者のほうの登録が約60名ございます。まだ稼働して間がないというところではあるのですが、徐々に、徐々にPR効果が出てきております。ポスドクさんなんかも、海外からの問い合わせなんかもきておりますし、このマッチングシステムを見て、京大でこういう取り組みをやっているのだということをわかっていただいた企業さんからの連絡もいただいたりとか、いろいろ効果は出てきておるかと思います。
 これらの人材をきちっとカウンセリングしていくということで、1名カウンセラーを配置いたしまして、個別の相談に対応しております。相談拠点も、今まで私ども、キャリアサポートセンターというのは吉田キャンパスというところにしかなかったのですが、この事業にあわせまして、宇治と桂、これは大学院生並びに研究者の方がたくさんいるところですが、そちらのほうにも相談室を開設いたしまして対応できるようにいたしました。現在のところ、総数で約140名の人材とのカウンセリングに対応しております。
 結果としまして、平成19年度、このカウンセリングに対応した中から就職者ということですので、もちろんこちらが追いかけきれていない部分、それと博士課程の学生なんかは大半就職しておりますので、これしか就職できていないというわけではないのですが、カウンセリングに対応した中からでは、平成19年度が19名、平成20年度は、ここには間に合わなかったのですが、11名就職をしております。ポスドクさんは平成19年度が4名、本年度が4名で、残りは博士課程の学生並びに既卒生ということになっております。
 下に平成19年度の就職先を書いてあるのですが、民間企業以外にも大学の教員になった方もいらっしゃいまして、まさに我々の本質的なねらいといいますか、就職のあっせんだではなくして、きっちりキャリアを考えていきましょうということに人材側がきちっとこたえてくれているという結果が出ておるかと思います。この就職相談とか進路相談に来る方に対して、採用されるためのスキルとか、将来を設計するためのキャリアに対する考え方、こういったものをきちっと考えてもらうということで、シンポジウム並びに研修会を開いております。
 平成19年度はこちらにございますように、シンポジウムが約90名、合計7回の研修会に約130名参加しております。昨年度は、研修会はコミュニケーションレベルだとかビジネススキルを中心にやらせていただいたのですが、参加した人材のほうから、もっとこういうもの以外にも、実際にポスドクを経験して企業さんで活躍しているという人の話をもっと聞きたいという声が非常に高かったので、本年度はシンポジウム並びに企業交流会、それぞれポスドクを経験して今現在研究者として企業で頑張っていますとか、あるいはノンリサーチの部分で頑張っていますという方のお話を中心に2回ともさせていただきました。5月は名古屋大学さんと共同でシンポジウムをやりまして、その後、6月に企業のポスドク経験で頑張っているという方7名に来ていただきまして、人材側と懇親会をもってもらうと。こういう形で、いろいろ研究室で孤立しがちな人材が、仲間がいるのだと。実際に成功モデルもいるという、そういう情報を習得していただいて、それがまた研究室の中でどんどん広まっていって、最終的には先生方の意識も変わっていただければという、少し地道な形かもしれませんが、やっておりまして、実際に研究科によりましてはかなり影響が出てきておりまして、研究科の中でキャリア支援室をつくるということで相談をいただいたりとか、研究科の中でキャリアガイダンスをやっていこうということで、キャリアセンターと連携してやっていきたいというお話をいただいたりということで、まだ本当徐々に、徐々にという動きではありますけれども、京都大学も徐々に変わってきているなと。学部、大学院、博士課程、ポスドクさんと、各階層に応じたキャリアの支援ができるという体制を目指して頑張っております。以上です。

【小林座長】
 ありがとうございました。
 それでは、以上4機関につきまして、残り大体15分くらいかもしれませんけれども、意見交換をしたいと思いますが、どなたからでもいかがでしょうか。

【東京農工大学】
 この事業をやっている途中で就職を探している学生等から質問が出たのですが、それは、マッチングサイトに登録されている求人機関の内容といいますか、信用度といいますか、そういうものをどういうふうに担保されるのですかということを聞かれたのですね。私のところもそういう何か基準をつくらなくてはいかんかなと今考えているんですが、もしそういうところで何か、求人機関を紹介するかしないかという判断みたいなものをつくっておられるところがありましたら、お教えいただきたいなと思います。

【小林座長】
 19年度の機関も含めて、何らかの対応をされているところがありましたらお願いします。

【東北大学】
 ひとつの方法としては、「人材紹介をやっている会社の方ととことん話し合ってみること」だと思います。我々の場合は、研究開発・生産技術・人事・教育・営業等、40年近く実際に企業で仕事をしながら、人の採用・育成にも携わってきました。そういう経験を基に、何社か人材紹介企業の方にもお会いしましたが、残念ながら、中にはかなりいい加減なものもあるようです。来訪されて、話してみると、企業の実態を充分分かっているようなことを言われるのですが、40~50分間も話を聞いてからポイントを質問しますと、肝心なことに殆ど答えられないといったケースもかなりあります。
 ですから、先ほどから伺っていて思うのですが、一番大事なのは、「企業へ人材を紹介」と言っていますけれども、「企業は一体どういう人を求めているのか。企業は今までの大学院教育では足りないと言っているわけですから、どういうファクターが不足していると感じているのか、或いは+αとして何を求めているか」等を、どれだけ的確に人材紹介企業が把握しているか、をチェックすることが重要なのではないかと思います。そうでないと誤解を生みかねません。
 例えばこんな一例がありました。「企業の実際はこうである」と、盛んに大企業の内情について知っていると話された。それで「今説明された企業というのは、どのぐらいの規模でどういう業種の企業なのか、また直接接触されているのは、採用担当者なのか、採用課長なのか、権限を持った人事部長なのか、経営者なのか」と、突っ込んで質問してみました。
 回答を得るのに時間がかかりましたが、結果として分かったことは、研究開発に力を入れている大手企業ではなく、100人~300人程度の中堅企業。また、直接接触しているのは、採用の権限を持ったトップマネジメントや人事部長ではなくて、20台後半から30前後の若手採用担当者ということが判明しました。こういった一部若手の意見を「企業ではこういう意見を言っている」と、企業全体としてそういう意見であるかのように大学に来て説明している。また、採用に明るくない先生方はそれを鵜呑みにされている場合も多い。だから、研究マネジメントに携わってきた研究・開発部門の所長とか部長、或いは人事部長等、採否を決める権限を持った意思決定のできる人達の本音がどれだけ入っているかということになると、疑問なところもあるわけです。従って、直接そういう方と充分面談され、突っ込んだ確認をしてみることが必要なのではないかと思います。

【小林座長】
 他に何か工夫されている事例はありますか。

【早稲田大学】
 我々のほうは、企業とのマッチングを、先ほど言いましたように、人材派遣の会社と一緒にいろいろとやらせていただいていまして、このとき必ず、研究開発の責任者、それから人事の責任者に来ていただいて、若手と会っていただくと。それからもう一つは、我々センターの中でもやっているのですけれども、これはもうある意味で絞らせていただきまして、ここだったら大丈夫だというところ以外は中に載せておりません。

【東京農工大学】
 どのように絞っておられるかというのが知りたいのです。

【早稲田大学】
 そこは、それなりの責任者が来てきちっと説明すると。ですから、単に人事担当者の人が来ても、我々は責任を持てないと。

【北海道大学】
 基本的にメジャーどころというのは大体想像できますし、話してもいいんですけれども、多分言われるのは、わけのわからないところですよね。ぱっと見て……。ベンチャーならベンチャーできちっと情報を公開した上で、同列に並べるのではなくて、中身も含めて聞いた上で、それも一緒に並べるならそれはそれでいいのかと思います。ただ、もう一声分らないのですけれども、人材系、派遣系で、パーマネントで採用するのですが、その後派遣しますという研究職の派遣系というのがありまして、それは私どもでは載せないという立場でお断りしたという経緯はあります。採用形態の後まで含めて、ベンチャーはベンチャーでも命かけてやるのだというんですけれども、それは全然問題なくて、ただ、それも含めた情報を公開すれば、私たちはそのようにしています。
 【山口大学】
 山口大学ですけれども、大体面接というのは、会社に行って、きっちり話せるところはそういう形で載せています。ただ、基本的には、先ほども申しましたけれども、これまで採用実績のある会社、そういうところであれば問題ないであろうという形でアンケートを出しています。

【小林座長】
 新しいところの開拓も多分重要だと思うのですが、そういう観点では何かないでしょうか。なかなか難しいですかね。

【宮田委員】
 違う質問していいですか。まだこちらの方々、打つ手があって間に合うのでいろいろ伺いたいと思いますけれども、大学で企業とタイアップとすると、こっちは押しつけたいし、こっちはいいのをとりたいという立場が違っちゃいますよね。そうではない組織を皆さん活用しているかどうかというのを知りたいのです。1つは同窓会だと思うのです。先ほど名古屋大学にはそういった寄附講座もつくられていましたけれども、いわゆる同窓会だと、同じ平面の中でかなりフラットな、しかも一種のネポチズムだと思いますけれども、この大学を救おうという企業人の協力が得られるだろうと思うので、そこら辺を考えていらっしゃる方がいらっしゃるか。
 それから、物理学会に関しては、まさにそれが体験できる組織だから、物理学会の大学の先生だけが理論就職学をやっても意味がないと思うので、いわゆる物理学会の中の企業の人たちとどういう協力体制をとっているのかというのを伺いたいと思います。

【小林座長】
 前半は、多分、同窓会を使っている機関は結構多いと思いますので、これはもう挙手でいきましょう。同窓会を何らかの形で組み込んで活用しているという機関、大学だけかもしれませんけれども、ちょっと手を挙げていただけますか。3ですね。そんな感じだと思います。
 あとは物理学会、いかがですか。

【日本物理学会】
 物理学会は、賛助会員として企業が約100弱ほどあります。こういった活動及び、先ほど言った求人の広告をくださいというものは、まず賛助会員を中心としてよびかけて、そこからあとは個人個人のつてで情報を得ることになります。1つのやり方としては、求人だけではないのですけれども、物理学会がどこかの会社とかと共同に何かやる場合は、だれか理事の推薦がいるという形にしております。去年神戸大で行った21世紀をつくる博士というイベントでは、企業と若手の対決の場といいますか、お互いに本音を出し合う場、これをつくって、それで実際にはどういう人材が欲しいかという話を聞き、若手のほうはどういう希望を持っているかということをぶつけ合って、その中で幾社かは、ポスドクというのは僕らの思っていたイメージと違っていたと、もう少しコミュニケーション能力がないと、そういう方だと思っていたらしいのですね。それが随分変わって、その後企業のほうが、実際には物理学会はあっせんしておりませんので、会わすお見合いの場をつくっただけですので。その後、企業の見学をして何人かが就職を決めております。そういう形で、緩い形で、いかにどういう人材が欲しいかという形の場をつくっていくというのが物理学会の役割かなと思っているのが1点と、もう一つは、そういう場から若手のネットワークというのができました。若手が実際に自分たちでいろいろな研究をしたり、企業だけではなくて、その後教育分野への活躍をやろうということで研究会をやっておりますが、その中で情報がずっと、お互いに交換する中で、企業に決まった人もいると。そういうような状況が出てきていることをお伝えしておきたいと思います。

【小林座長】
 ありがとうございました。

【小林座長】
 ありがとうございました。

【理化学研究所】
 理研は大学の皆さんとは違うかもしれません。理研は、キャリアサポート室で求人情報の掲示はやりますけれども、企業との共同研究、連携研究等を活用して、逆に企業のほうから、ぜひ欲しいという、企業からハンティングされる、そういう人材を育てていくということが重要だと思っています。実際にそういう企業との連携研究の中から、連携研究終了後にその企業へ移るという若手の研究者が既に何人か出ています。大学でも多くの共同研究があると思いますので、それを活用するという手段もあると思います。

【小林座長】
 少しつけ加えさせていただきますと、今回の参加機関は、多くが実は産学連携のチャンネルをかなり使って開拓をしているのが特色で、ある意味でその最右翼が阪大だと思うのですが。

【大阪大学】
 現実に本音ベースの共同研究になるかどうかが分かれ目ですね。例えば我々が成功例と思っているのは、実際に企業の事業ときちっとマッチしたような共同研究ができる場合。お見合い系の共同研究ですと、なかなかそのルートで人はいかないのですね。真剣な話し合いがあります。例えば、共同研究のところにポスドクがいるからといって採用するかどうかわかりませんとはっきり企業は言うのですね。ただ、実際にプロジェクトが進行していって事業価値が出てきたら、当然その分野では働く人になるだろうと、そういう推測もしている。さらにそこを通じて逆にもっと見ていきたい、企業としてはいろいろな人たちを見たいのだと、そういう意欲はあるというようなことがあります。個別のものでマッチングできるという話と、しかも、そういう制度があることで企業はアクセスしやすくなっている、これは非常に重要なことだと我々は思っています。

【小林座長】
 時間も迫ってきたのですが。

【東北大学】
 最後に1つ。このプロジェクトを始めてから僅か2年半ですが、実際に本気で博士学生たちとぶつかって教育を実施してみますと、専門は非常に高度なものを持っているが幅がないと言われてきた博士達が、演習や体験学習等も含め長時間の一貫した人間力育成の教育をやっていくことにより、考え方や態度・行動の面で相当変わることが分かってきたということです。 勿論、人によって伸び方の程度に差がありますが、短時間ではムリでも、1年とか長期間かけて本気でやっていくと相当変わり得るということだと思います。ですから「博士はだめだ」と決め付けるのではなく、これまでやってこなかったことを地道に実施すれば、もともと優れた素質・能力をもっているのだから、相当変われる素地を持っているということだと思います。
 問題は、そういうことを承知して、これからの大学院教育の中に、これらをどれだけ取り入れていくのか、大学が本気で考えなければならないのではないかと思います。
 もう一つは、企業から見た場合に、今後企業の国際競争や技術競争がますます激しくなってきますから、これまで以上に優秀な人材が欲しいわけです。その場合優秀というのは高度専門知識だけでなく、高度専門知識+アルファの能力を持った人だと言われています。ですから、大学の先生が持っている優れたところ(高度専門知識)と、企業人又はOBが持っている良い点(実践的スキル+人間力等)をドッキングして、新たな教育方法を創り出していけないかということです。産学連携についても、知的財産権等の他に、こういう人材育成の面においても、もっと活用できるのではないでしょうか。
 例えば企業への就職といった場合にも、専門に優れた大学の先生方を、企業の実情を知り尽くした企業OBがサポートすることによって、誤解や戸惑いも少なく出来、スムーズな人材紹介にも繋げることができるのではないかと、そんなふうに考えます。
 そういう意味で、今回のプロジェクト活動は、まだまだ足りないところは多くあるかもしれませんが、大きな改革への確実な道筋になっているのではないかと、思います。

【大阪大学】
 少し話は違うのですけれども、このキャリアパス多様化事業ということで、就職のところに注力されているところが多いと思うのですけれども、キャリアパス多様化といったときに、主体というのは若い人たちだと思うのですね。成功例が幾つか出てきているようですが、我々真剣に思っているのは、彼らが主体的にネットワークなんかつくって活動し始めるということがうまくいっている例があれば、それを学びたい。そういう形で何かエンカレッジしたり、何かうまく導入することでそういうことが起きるのだろうか、そこが今非常に関心があるのですけれども、もしご意見いただけたらと思います。

【小林座長】
 多分、一番進んでいるのは東北大学と物理学会ですかね。いかがでしょうか。

【東北大学】
 年間に及ぶ塾活動から派生して、年度毎に塾生間の自主的ネットワークができており、各自必要に応じ、専門を超えて分からないところを聞き合ったり、研究に行き詰った時相互にヒントを貰ったりする仕組みができています。
 また、私どもは毎年1回ずつ学生を卒塾させていますが、今1期、2期、3期という、横だけではなく、それを結んだ縦の関係もできつつあります。
 例えば今回ですと、3期生の合宿研修に1期生や2期生の代表がアシスタント(兼オブザーバー)として参加する、あるいは1期、2期、3期が一緒のオープン講座を受講し、グループ討議で一緒になって議論する等も、実施しています。ですから、3期生だから30名だけの教育をやっているのではなくて、時には期を超えた多くの塾生たちが参加するイベントも行われています。そして、2期生が中心となって創り上げた博士課程後期の院生やポスドク、更には助教等が一体となった活動が、塾生からの提案で出来た「博士の100乗=無限大(∞)」という旗印の下に動き出しています。ただ、まだ途中でございますので、只今成功を祈りながら見守っているところです。

【小林座長】
 確か早稲田大学もあるので、物理学会と早稲田大学、短く紹介してください。

【日本物理学会】
 物理学会は、イベントの中から若手が自ら組織してつくったネットワークが今できておりまして、メーリングリストができて、どんどん増えていっています。特徴は、若い人だけではなくて、他の常勤の方もどんどん入っていってアドバイスをすると。それと、ただの集まりではなくて、研究会を1カ月に一度ほど自主的にやっております。そういう形で、関西が中心で広がっておりますが、参加者の中には東京からわざわざ1カ月に一度来ていて、旅費がないので困ったりしているという事情もあります。そういう形で広がっているという、こういう自主的な組織をいかにして、いわばポスドク自身が、我々が与えるのではなくて、自ら積極的にアプローチしていくという、そういうことが我々のねらいではないかと思っております。

【小林座長】
 早稲田大学、お願いします。

【早稲田大学】
 学内でいろいろと若い人に自分でやりなさいと言っていたのですけれども、いろいろなイベントで、昨年の今ごろから、むしろ若い人たちが自分でいろいろなことに動き出したと。先ほど言ったように、60名ぐらい動かれている。我々はそれをバックアップしている。残念ながら中核は早稲田の方じゃない、早稲田も入っているのですけれども。そういうところをできるだけうまい形で、ただ問題は、そこに対して我々がどれだけ積極的に支援できるか。予算面では限度があるので、そこがネックです。そこの発起人になった方は、自分がそういう立場にいて、就職した人間なんだけれども、自分がそういうネットワークをつくるということに何か志みたいなものを出してくださっているということは非常に重要で、そういうところは大事にサポートしてあげたいと思っています。

【小林座長】
 時間になりましたので、まだご意見等おありだと思いますけれども、このあたりで意見交換を終わらせていただきたいと思います。
 この後、13時半から、この連絡協議会とは別の形ですが、実施機関が協力してシンポジウムとパネル展示をします。そこでもまた意見交換ができます。傍聴席の方たちも、もし質問等、ご意見等ありましたらば、意見交換をしていただければと思います。
 それでは、最後に事務局のほうから連絡事項等をお願いいたします。

【高比良人材政策企画官】
 本日は長時間にわたりましてお疲れさまでした。

また最後に固いことを申しますけれども、平成18年度採択機関の皆様におかれましては、何度も申しますけれども、今年度が最終年度でございます。申請時のお約束でもございますので、支援終了後も引き続き継続的に独自でこの取り組みを進めていただきたいと思っております。また、ぜひ地域とかブロック等における成果普及についてもご努力をいただきたいと思っております。事業終了後には、企画評価委員会における事後評価がございますので、詳細はまた決まり次第連絡をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 なお、平成19年度採択機関の皆様におかれましては、多分今月の中旬ぐらいからいろいろ書類等のお願いをいたしますけれども、11月にかけて中間評価に係る対応をお願いする予定でございますので、またこれも詳細を追ってご連絡をいたしますので、よろしくお願いをいたします。
 事務局からは以上でございます。

【小林座長】
 どうもありがとうございました。
 これにて連絡協議会を終わりにいたします。どうもありがとうございました。

‐了‐

お問合せ先

科学技術・学術政策局基盤政策課

(科学技術・学術政策局基盤政策課)

-- 登録:平成21年以前 --