研究活動上の不正行為(盗用)の認定について
【基本情報】
番号
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2018-05
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不正行為の種別
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盗用
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不正事案名
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研究活動上の不正行為(盗用)の認定について
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不正事案の研究分野
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スポーツ・健康科学
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調査委員会を設置した機関
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大学
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不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名
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准教授
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不正行為と認定された研究が行われた機関
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大学
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不正行為と認定された研究が行われた研究期間
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平成28年4月1日~平成29年3月31日
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告発受理日
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平成29年11月18日
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本調査の期間
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平成30年3月6日~平成30年8月31日
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不服申立てに対する再調査の期間
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-
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報告受理日
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平成30年11月8日
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不正行為が行われた経費名称
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該当なし
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【不正事案の概要等】
◆不正事案の概要
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1.告発内容及び調査結果の概要
本件は、准教授が平成28年度共同研究費(学内の競争的研究費制度)の成果として発表・報告した内容について、盗用若しくは不適切なオーサーシップの疑いがあるとの匿名の申立てがあったものである。この申立てを受け、研究活動の不正行為防止等に関する規程に基づき、予備調査を経て調査委員会を設置し、告発対象の研究発表・報告と引用されたとする論文について照合し比較するとともに、関係者への聞き取り調査及び書面調査により事実確認を行った。
調査の結果、研究活動における特定不正行為である「盗用」が行われたものと認定した。
2.本調査の体制、調査方法、調査結果について
(1)調査委員会による調査体制
5名(内部委員2名、外部委員3名)
(2)調査の方法等
1)調査対象
ア)対象研究者:准教授
イ)対象研究活動:平成29年に発表、配布された研究成果報告及び研究報告書
2)調査方法
調査委員会において、事前に行った予備調査結果の精査及び当該研究発表・報告内容と修士論文を比較検証した。
また、調査で収集した資料に基づく書面調査及び同准教授及び関係者へのヒアリング等を実施した。
(3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論
1)結論
当該研究発表・報告において、研究活動上の不正行為である「盗用」が行われたものと認定した。なお、共同研究者については、不正行為への関与は認められなかった。
2)認定理由
当該研究発表・報告は、元指導学生の許諾を得ることなく、元指導学生の未公刊の修士論文の文章及びデータの一部を引用し、執筆、公表したものである。同准教授は、研究報告内容の主要部分に関わる文章及びデータを記述・掲載する際に、元指導学生の修士論文の文章及びデータの一部を典拠とする旨の引用について適切に明示することなく、自らの調査によるものであるかのように記述している。研究報告書の文章及びデータが、修士論文並びに抄録の一部とほぼ同一であり、同一のデータから別々に作成された文章とは判断できない。同准教授が研究の構想や論文の執筆過程で学生の指導等に多分に関与していたとしても、修士論文として執筆されたもののプライオリティは執筆した学生のものである。以上のことから、調査委員会は不正行為「盗用」に該当すると認定した。
3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
学内での研究成果発表及び報告であり、「盗用」に直接関連する経費の支出はない。
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◆研究機関が行った措置
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1.競争的資金等の執行停止等の措置
競争的資金等の因果関係が認められる経費の支出がなかったことから、執行停止等の措置は講じていない。
2.調査対象者に対する大学の対応(処分等)
当該不正行為に関する調査委員会の結論を踏まえ、賞罰規程に基づき処分等の審査を行い、他の懲戒事由と併せて戒告処分とした。また、発表・報告内容の取下げ及び研究業績の訂正、平成30年度に申請していた科研費(分担者)について辞退するよう勧告した。
3.研究発表・報告の取下げ
同准教授は前記の処分及び勧告を受け、当該研究発表・報告を取り下げることを申し出た。今後、学内で配布済みの平成28年度共同研究報告書より当該研究報告について削除する旨を通知する予定である。
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◆発生要因及び再発防止策
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1.発生要因
大学では、平成28年度に関連規程(研究活動の不正行為防止等に関する規程等)を整備しており、同准教授が当該事案に関わる研究を行っていた当時も、研究倫理e-learning(CITI-Japan)の受講を必須とし、また、公的研究費に関する誓約書の提出も義務付ける等、各研究者の研究倫理の向上に努めていた。しかし、同准教授においては、学生の卒業論文や修士論文の指導において、研究の在り方や論文作成の手続等に関して模範を示す立場にありながら、研究倫理に関する認識の不足、学内のルールや研究活動に関わる基本的ルール等への理解不足が原因となり、今回の不正事案の発生へとつながったと考えられる。同准教授は盗用の意図はなかったと説明しているものの、行われた行為が盗用に当たることは、客観的にみて否定できない。
2.再発防止策
大学では文部科学省の「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」を踏まえ、研究倫理の向上及び不正行為の防止に資するための学内体制を構築してきた。今後は、今回の事案を厳粛に受け止め、事例に基づく実践的な研究倫理教育を実施するなど、不正行為防止への取り組みを更に強化していく予定である。また、平成30年度後期からは、コンプライアンス研修及び研究倫理研修の受講を全教員に義務化し、これらへの欠席者には収録した映像を受講させ、更にこれを未受講の者に対しては個人研究費の配分を停止若しくは一定の制限を講ずるなどの措置の実施を検討している。
また、大学院生に対しては、入学時に研究倫理教育を行い、研究倫理e-learning(CITI-Japan又は日本学術振興会eL CoRE)の受講確認も行ってきたが、今回の事案を踏まえ、リーフレットの作成・配布を検討している。
同准教授に対しては、日本学術振興会研究倫理eラーニングコースの受講及び修了証の提出、今後の研究室運営に関する改善策と研究不正防止に関するレポート提出を指示した。
今後は、教職員及び大学院生に対してより一層充実した研究倫理教育を行い、不正行為の再発防止を徹底する。
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◆配分機関が行った措置
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資金配分機関である文部科学省において、当該研究者に対して、資格制限の措置(平成31年度~平成34年度(4年間))を講じた。
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科学技術・学術政策局研究環境課
研究公正推進室
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