研究活動上の不正行為(盗用)の認定について

【基本情報】

番号

2018-02

不正行為の種別

盗用、不適切なオーサーシップ

不正事案名

研究活動上の不正行為(盗用)の認定について

不正事案の研究分野

教育学

調査委員会を設置した機関

大学

不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名

教授、公立学校教員

不正行為と認定された研究が行われた機関

大学

不正行為と認定された研究が行われた研究期間

告発受理日

平成29年7月25日

本調査の期間

平成29年9月12日~平成30年5月15日

不服申立てに対する再調査の期間

報告受理日

平成30年6月14日

不正行為が行われた経費名称

該当なし

 

 

【不正事案の概要等】

◆不正事案の概要

1.告発内容及び調査結果の概要
 大学の学部研究紀要に掲載された論文について、学外から、「他者の著作物を引用したことは注釈により明示されているが、自分の理論であるかのように記載しており、学術論文としての体裁、著作権の適切な取扱いに問題があるのではないか」との通報があった。この通報を受け、研究公正委員会による予備調査を行った結果、本調査を実施することとし、研究不正調査委員会を設置した。調査対象者の過去10年分の論文を含め28編の論文について調査を行ったところ、以下のとおり、通報のあった1編の論文について、特定不正行為(盗用)を認定した。
 

2.本調査の体制、調査方法、調査結果、特定不正行為と認定した理由
(1)研究不正調査委員会による調査体制
  延べ10名(うち外部委員5名)


(2)調査の方法等
 1)調査対象
  ア)対象研究者:大学 A教授
            公立学校 B教員
  イ)対象論文:通報対象論文及び過去10年間に調査対象者が発表した論文 計28報
            (同教授が平成23年3月から平成29年3月に発表した論文)

 2)調査方法
  通報対象論文につき、調査対象者及び当時の論文誌の編集責任者等、関係者も含め、研究不正調査委員会によるヒアリングを実施し、事実関係等を確認した。
  また、調査対象者の過去10年分の論文についても、参考文献との類似性のチェックを行った。参考文献のないものについては、インターネット上のWebページやネット上に公開されている文書ファイルとの比較を行い、不正な剽窃(ひょうせつ)盗用が行われていないかを確認することを目的に、市販の剽窃(ひょうせつ)チェックソフトを使用し類似率を調べ、疑義が生じた論文についてはヒアリングを行った。

(3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論
 通報の対象となった論文1編において、特定不正行為である盗用が行われたものと認定した。

 (認定理由)
  B教員は対象論文において他者の著作物を引用する際、原文をそのまま記載し、注釈方法も不適切であった。よって、他の参考文献を当該文献著者の了解又は適切な表示なく流用したものとして、盗用と認定した。
  A教授は当該論文に関して文言の校正、全体の構成の指導を行うことを役割としていたため、盗用を直接行った訳ではないが、共同執筆者として教育実践に関わる指導を行う立場であり、当該論文の筆頭著者となっていることからも、当該論文の内容について責任を負うものとして認定した。

 (特定不正行為以外で調査から明らかになった不適切な行為)
  A教授により、結果として論文著作者が適切に公表されない不適切なオーサーシップ(具体的には、ギフトオーサーシップ)が行われた。
 

3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
 「盗用」を認定した論文の執筆過程において、直接の因果関係が認められる経費の支出はなかった。

◆研究機関が行った措置

A教授から、調査期間中に当該論文の投稿を取り下げたい旨の依頼があったことを受け、該当論文を削除した。

調査報告を踏まえ、職員懲戒等規程に基づき、A教授に対して人事処分を行った。
※本事案は懲戒処分に該当しない処分内容であり、懲戒規則における公表基準に該当しないことを踏まえ、処分内容は非表示。


なお、B教員の処分については、その所属機関において別途検討予定。

◆発生要因及び再発防止策

【発生要因】

・B教員が論文執筆に関して十分な知識を持っていなかったこと。

・A教授が未熟な研究者に対して注意を怠り、筆頭著者及び責任執筆者として引用等の基本的な部分のチェックを怠ったこと。

・論文を実際に執筆したのはB教員であったが、紀要の投稿規定上、学外の研究者は筆頭著者になれなかったこと。

・投稿原稿の閲読を学部内教員で行うという学部研究紀要の特性から、当該論文と同一研究分野の研究者が査読に当たれなかったこと。
 

【再発防止策】

・引用等論文の基本的な部分の適切なチェックが行われるよう、大学の教職員、学生その他大学において研究活動に従事する全ての者に対し、研究倫理教育の受講を徹底させることとした。

・更に研究を実質的に行い本来筆頭著者となるべき執筆者がいたにもかかわらず、当該学部紀要の投稿規定上筆頭著者にはなれず、結果として不適切なオーサーシップが発生したことから、当該学部において投稿規定の改正を行った他、研究者倫理に関するファカルティ・ディベロップメント研修を実施することとした。

・当該論文掲載誌の発行元においては、投稿に必要な提出資料に、「研究倫理教育を受講しているか」、「示したデータに間違いがないか」、「引用の表記に漏れはないか」の確認欄を設けるとともに、原稿に記載したデータ、本文等は筆頭著者がすべて確認し、データの改ざん及び第三者の著作権侵害はしていない旨の誓約を筆頭著者から徴収するなど、今後、学術論文を掲載する紀要等の投稿規定・査読規定等を精査し、研究不正の防止に向けた仕組みを適切に整えていくこととした。

・必要に応じ民間の剽窃(ひょうせつ)チェックソフト等を利用するなど査読体制の厳格化に向けた仕組みを適切に整えていくこととした。

 

◆配分機関が行った措置

 本件は競争的資金による経費の支出がなく、かつ平成27年度より前に不正が行われた事案であることから、研究機関及び研究者に対する競争的資金の返還並びに研究者に対する競争的資金への申請及び参加資格の制限を行わない。

 

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究環境課

研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874
メールアドレス:jinken@mext.go.jp

(科学技術・学術政策局研究環境課研究公正推進室)