研究活動上の不正行為(盗用)の認定について

【基本情報】

番号

2018-01

不正行為の種別

盗用、二重投稿

不正事案名

研究活動上の不正行為(盗用)について

不正事案の研究分野

経営学

調査委員会を設置した機関

大学

不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名

教授

不正行為と認定された研究が行われた機関

大学

不正行為と認定された研究が行われた研究期間

告発受理日

平成29年9月14日

本調査の期間

平成29年11月21日~平成30年1月23日

不服申立てに対する再調査の期間

報告受理日

平成30年3月9日

不正行為が行われた経費名称

該当なし

 

 

【不正事案の概要等】

◆不正事案の概要

1.告発内容及び調査結果の概要
 本件は、教授(当時)が平成23年~平成29年に「経営論集」(大学紀要)に発表した7論文について、他者の論文等からの盗用と二重投稿(不適切な引用)の疑いがある旨の大学教員からの大学窓口への告発を受け、研究倫理委員会規程に基づき、調査委員会を設置し、調査委員会において、指摘があった同教授の論文と盗用されたとする論文及び二重投稿(不適切な引用)とされた同教授の論文について照合し、対照表を作成するとともに、同教授への事情聴取を行ったものである。
 調査の結果、研究活動における特定不正行為である「盗用」が行われたものと認定した(特定不正行為ではないが、「二重投稿」(不適切な引用)が行われたことも認定した)。

 

 【告発者から告発のあった不正の態様及び不正行為であるとする理由】
(1)不正の態様
 同教授が他者の論文を適切な引用なく流用した疑い。
(2)研究活動における特定不正行為とする理由
 同教授が発表した7論文に、他者の論文等とほぼ同一の文章が、引用のルールにのっとっていない、引用文と本文の区別がない形式で記載されていること。

 

2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について
(1)調査委員会における調査体制
  4名(内部委員2名、外部委員2名)


(2)調査の方法
 1)調査対象
  ア)対象者:教授 (当時)
  イ)対象論文:告発者から不正行為の疑いがあるとの指摘があった7論文
    (同教授が平成23年3月から平成29年3月に発表した論文)
 

 2)調査方法
  告発において指摘のあった論文と盗用されたとする論文及び二重投稿(不適切な引用)とされた同教授の論文について照合し、調査委員会において照合表を作成し精査するとともに、同教授及び告発者から事情聴取を行った。
 

(3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論
 告発者から研究活動における不正行為の疑いがあると指摘があった、同教授が発表した7論文に関し、調査委員会による調査結果を踏まえた大学の結論は以下のとおり。

 (結論)
  告発のあった論文の101箇所について、対照表による精査及び同教授の弁明を総合的に検証し、82箇所を研究倫理委員会規程で定義する研究活動における特定不正行為である「盗用」が行われたものと認定し、19箇所を研究倫理委員会規程で定義する研究活動における不正行為である「二重投稿(不適切な引用)」が行われたものと認定した。

 (認定理由)
  告発のあった論文の82箇所において、他者の論文等とほぼ同一の文章が、引用のルールにのっとっておらず、引用文と本文の区別なく記載されていること。また19箇所において、自身の論文とほぼ同一の文章が、引用のルールにのっとっておらず、引用文と本文の区別なく記載されていること。同教授は事情聴取において「論文作成時に参考文献名や出典を記載しなかったことは確かであり、形式も含めて校正に細心の注意を払わなかったと認識している。また、研究者としての倫理に関する認識が欠けていたことを深く反省している」旨を述べた。

 

3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
 大学の学内研究費や学部一般研究費により実施された研究活動であるが、特定不正行為(盗用)及び不正行為(二重投稿)と認定された論文の作成過程において直接的に関係する支出は認められなかった。

◆研究機関が行った措置

1.競争的資金等の執行停止等の措置
 競争的資金等の因果関係が認められる経費の支出はなかったことから、執行停止等の措置は講じていない。

 

2.被告発者に対する大学の対応(処分等)
 同教授は平成30年3月31日に依願退職したため、学内規程に基づき処分の対象とはしない。

 

3.論文の取下げ
 学部紀要の発行責任者である学部長に対し、当該論文の取下げの勧告を行った。

◆発生要因及び再発防止策

【発生要因】

 大学では、平成19年2月23日に研究倫理委員会規程、平成20年4月1日に行動規範、平成27年4月1日には、研究倫理規程を制定している。これらの規程等に基づき、不正行為の申立窓口や調査体制の整備、調査の手順等を確立する他、CITI Japanのe-ラーニングやコンプライアンス研修を実施し、研究者に受講を義務づけ、研究者倫理の向上や不正行為防止対策に努めてきた。
 同教授も平成27年11月にCITI Japanのe-ラーニングプログラムの「責任ある研究行為(ダイジェスト)」を修了している。それにも関わらず、修了後である平成28年3月と平成29年3月に、盗用等が行われた論文が発表されている。このことから、本件は、同教授の研究者倫理の欠如により引き起こされたと言える。
 また、当該学部紀要については、投稿論文と他の論文等の類似性のチェックがなされていなかった。

 

【再発防止策】

 大学では、研究に関する最高管理責任者(学長)、統括管理責任者(研究担当副学長)、全ての研究倫理教育責任者(学部長・研究科長・研究所長等の部局責任者)に以下の研究倫理教育の継続を命じる。

・教職員に対し、CITI Japanのe-ラーニングの定期的な受講を徹底させる。

・CITI Japanのe-ラーニングを受講済みの教職員に対しても、定期的に、研究倫理に関する研修会等を開催し、研究者倫理の向上及び不正行為防止を周知徹底する。

・新任教員に対しては、新任教員ガイダンス等において、研究者倫理の向上及び不正行為防止を周知徹底する。
 また、学術論文の紀要の編集に際して以下を命じる。

・部局においては、学術論文を掲載する紀要等の投稿規程・チェック体制等を精査し、同様の研究不正が防止できる仕組みを適切に整える。

・学術論文の投稿の際には、投稿者あるいは部局が、投稿論文と他の論文等の類似性をチェックするソフトを事前に使用する。

 

◆配分機関が行った措置

 資金配分機関である文部科学省において、当該研究者に対して、資格制限の措置(平成30年度~平成34年度(5年間))を講じた。

 

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究環境課

研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874
メールアドレス:jinken@mext.go.jp

(科学技術・学術政策局研究環境課研究公正推進室)