研究活動上の不正行為(捏造・改ざん)の認定について(2016-09)

【基本情報】

番号

2016-09

不正行為の種別

捏造、改ざん

不正事案名

研究活動上の不正行為(捏造・改ざん)の認定について

不正事案の研究分野

微生物学・腫瘍学

調査委員会を設置した機関

大学

不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名

教授、准教授、助教

不正行為と認定された研究が行われた機関

大学

不正行為と認定された研究が行われた研究期間

平成15年~平成22年

告発受理日

(ア)平成22年4月14日

(イ)平成22年9月21日

(ウ)平成23年4月26日

(エ)平成23年5月22日

本調査の期間

(ア)平成22年6月22日~平成22年8月4日

(イ)平成23年11月22日~平成24年1月24日

(ウ)平成23年4月26日~平成23年7月26日

(エ)平成23年6月8日~平成25年5月7日

不服申立てに対する再調査の期間

なし

報告受理日

平成29年2月27日
 

不正行為が行われた経費名称

科学研究費補助金、重点地域研究開発推進プログラム※、地域結集型共同研究事業※、地域イノベーション創出総合支援事業※

※捏造、改ざんと直接的に因果関係が認められる経費の支出はなかった

 

【不正事案の概要等】

 

◆不正事案の概要

  1. 告発内容及び調査結果の概要
     本件は、平成22年3月、アメリカの血液学雑誌である「BLOOD」の編集責任者より、教授らの研究グループが同誌に掲載した2編の原著論文について、同じデータの使い回しがあるのではとの指摘されたこと等を受け、教授が大学に着任した平成15年(2003年)から平成22年(2010年)までに発表した論文50編を対象に、書面調査及びヒアリングにより、教授に関する調査、教授が参画した研究グループの関係者への調査及び追加の通報に関する調査の計4回の調査を実施した。
     調査の結果、調査対象となった論文50編のうち、41編の論文について、研究活動の不正行為(捏造、改ざん)があったことを認定した。

    【申立者から申立てのあった不正の態様及び特定不正行為であるとする理由】
    (1)不正の態様
     平成22年3月、アメリカの血液学雑誌である「BLOOD」の編集責任者から、教授らの研究グループが同誌に掲載した2編の原著論文について、同じデータの使い回しがある偽造の疑い
     なお、(イ)調査対象論文のうち本学教員である准教授(当時、助教。以下、「准教授」という。)が筆頭著者である論文、助教(当時、特命助教。以下、「助教」という)が筆頭著者である論文について、研究グループの教授以外の者の不正への関与及び責任の度合い、(ウ)前学長(当時、教授。以下、「前学長」とする。)が共著者である論文が含まれていたこと、(エ)外部の者から研究活動の不正がある旨の申立てが文部科学省にあり、既に研究活動の不正行為が認定された論文以外の論文に対する不正の指摘を踏まえ、大学は調査対象論文を50編とした。

    (2)研究活動における特定不正行為であるとする理由
     本来、一緒に実施すべきコントロール実験を省略して、図版作成時に別の細胞株の画像や電気泳動の画像を頻繁に使い回ししたこと。また異なる細胞株の画像やコントロール実験の画像を比較すべき実験の画像へ転用していたこと。
     
  2. 本調査の体制、調査方法、調査結果について
    (1)調査委員会における調査体制
     (ア)8名(すべて学内有識者)
     (イ)8名(すべて学内有識者)
     (ウ)5名(すべて学外有識者)
     (エ)6名(すべて学内有識者)

    (2)調査の方法等
     1)調査対象
       ア)対象者:教授、准教授、助教
       イ)調査対象論文:平成15年(2003年)から平成22年(2010年)までに発表した論文50編

     2)調査方法
      申立者から指摘のあった論文について、画像の比較による調査とともに、同教授及び関係者への聞き取り調査、(ウ)については実験ノート及び実験データの比較による調査を行った。

    (3)本事案に対する本調査委員会の調査結果を踏まえた結論
     申立者から研究活動における不正行為の疑いがあると指摘があった同教授の論文のうち41編の論文((ア)の調査において38編、(イ)の調査において2編、(エ)の調査において1編)に関し、調査委員会による調査結果を踏まえた大学の結論は以下のとおりである。

    (結論)
     調査対象論文において、研究活動上の不正行為である「捏造・改ざん」が行われたものと認定した。

    (認定理由)
     1)公表済みの画像データと当該論文の画像を目視比較し、同一と認められること。画像データの重複使用や画像の左右反転等の操作を行った画像を目視比較し、同一と認められること。これらにより内部コントロールとして、省略した実験を実施したかのように装ったこと。
     2)教授等被告発者本人のヒアリングから転用をおおむね認めたこと。
     また、教授は全ての論文に関する責任著者であり、研究グループのリーダー及び研究指導教員であることから、関与の度合いは高く責任も重いと認定された。准教授については、発表当時に助教であり、自ら不正行為をしたものであり責任があると認定された。助教については、直前までは大学院生であり、教授から指導を受けていたことから、責任の度合いは低いと認定された。
     なお、(ウ)の調査の結果、当該論文の基となった研究は、約1/3が前学長の研究室で病理学的な視点から行われ、残りの約2/3は教授の研究室で分子生物学的なアプローチから行われているが、問題となるコントロール実験は、前学長の研究室においては実施されていないことが確認され、当該論文の研究不正部分への前学長の直接の関与はないと判断した。

    (不服申立ての概要、再調査結果)
     ・(ア)の調査に関して、処分審査結果(懲戒解雇)に対する異議申立てがなされたが、意見陳述及びヒアリングを行い、教育研究評議会で却下した。また、調査結果に対する不服申立ては却下した。
     ・(イ)の調査に関しての不服申立てはされなかった。
     ・(ウ)の調査に関して、調査報告書公表に対して異議申立てがあったが、教育研究評議会で却下。
     ・(エ)の調査に関して、調査委員会の設置に対して異議申立てがあったが、却下した。
     
  3. 認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
     科学研究費補助金6件から、研究活動の不正行為が認定された論文15編について、英文校閲費を含む論文投稿料等が支出されていた。それ以外の論文の作成過程において、当該補助金を含め、その他の経費においても、直接の因果関係が認められる経費の支出はなかった。

◆研究機関が行った措置

  1. 競争的資金等の執行停止等の措置
     研究不正が発覚した平成22年度に採択されていた科学研究費補助金について返還し、平成23年度科学研究費補助金については辞退した。
  2. 不正行為を認定した者に対する大学の対応(処分等)
     調査委員会による不正行為に関する調査報告書を受け、以下の懲戒処分を行った。
      教授 懲戒解雇(裁判上の和解により停職10月)
      准教授 停職3月
      助教 訓告
    これらの処分については、処分時に公表した。
  3. 論文の取下げ
       研究活動の不正行為が認定された論文について取下げの勧告を行った。
  4. その他
     懲戒処分以外に、大学では以下の対応を行った。
    ・授業並びに研究指導を担当の停止(平成24年12月)。
    ・人を対象とする臨床研究の実施計画の承認を保留(平成24年7月)
    ・公的研究費の応募申請を停止(平成27年11月)

◆発生要因及び再発防止策

(発生要因)
 本件は、教授の研究者としてのこうした誤った考え方及びそれに基づく同教授の指導による研究室の在り方により引き起こされた事態であり、調査において教授は次のような考え方を述べた。
 ・研究者の活動評価は論文発表件数でありインパクトファクターの高い著名な科学雑誌に論文が掲載されることがより重視される、多額の研究費を獲得できる研究が優れた研究とみなされる、研究成果の先陣争いや研究費を獲得し続けるためには研究成果(論文)を早く出す必要がある、との業績至上主義の考え
 ・教授の研究室で行った実験データ及び実験ノートは、知的財産として同研究室グループの共有であることから、実験データは研究室から発表される論文間で無断使用しても問題はないとの考え
 ・教授の研究室から発表される論文が科学雑誌に掲載されることは、大学院学生にとって学位授与が得られ、他の共著者にとっては論文数が増加することとなるので、それぞれにとってメリットがあることから、早く論文を投稿するためには、筆頭著者及び責任著者以外の共著者には投稿前に原稿を見せず、投稿することの承諾も必ずしも求めなくてもかまわないとの考え

 

(再発防止策)
 (1)規程の整備
   大学では本件を契機とし、平成23年2月に大学における研究活動上の不正行為の防止及び対応に関する規程を制定した。また、本事案に関し、教育研究評議会の下に委員会を設置し、検証を行い、それに基づき今後の不正防止対策について検討を行い、平成25年3月に「論文不正防止対策の提案」を取りまとめ、その提案を受け、平成25年10月に研究者倫理規範を制定した。
 (2)教育の実施
   平成23年度より、大学院において、研究者倫理に関する教育(科学者倫理特論等の講義)や副指導教員制度の導入、並びに学位審査の厳格化(外部審査委員の採用)に取り組んでいる。これらの取組により、研究活動及び研究指導に講座外の視線を導入することで研究活動の不正が生じづらい環境の整備を図っている。
平成27年度より、研究に係るすべての者を対象とした、オンライン教育による研究倫理教育及び研究費不正防止の受講を開始した。

 

 

◆配分機関が行った措置

  科学研究費補助金について、捏造、改ざんと直接的に因果関係が認められる経費の支出が1,316,650円あったため、返還を求めるものであり、また科学研究費補助金、重点地域研究開発推進プログラム、地域結集型共同研究事業、地域イノベーション創出総合支援事業として執筆された論文であることから、当該資金への申請及び参加資格の制限の対象となる。このため、資金配分機関である文部科学省及び日本学術振興会において、経費の返還を求めるとともに、文部科学省、日本学術振興会及び科学技術振興機構において、研究活動の不正行為が認定された3名に対して資格制限の措置(教授:平成29年度~平成35年度(7年間)、准教授:平成29年度~平成32年度(4年間)、助教:平成29年度~平成31年度(3年間))を講じた。

 

お問合せ先

科学技術・学術政策局人材政策課

研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874

(科学技術・学術政策局人材政策課研究公正推進室)