研究活動上の不正行為(改ざん)の認定について(2016-08)

【基本情報】

番号

2016-08

不正行為の種別

 改ざん

不正事案名

研究活動上の不正行為(改ざん)の認定について

不正事案の研究分野

工学

調査委員会を設置した機関

大学

不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名

学術研究員

不正行為と認定された研究が行われた機関

大学

不正行為と認定された研究が行われた研究期間

告発受理日

平成28年8月1日

本調査の期間

平成28年11月16日~平成29年1月31日

不服申立てに対する再調査の期間

なし

報告受理日

平成29年3月28日

不正行為が行われた経費名称

国際共同研究事業(国際化学研究協力事業)、科学研究費補助金※、
戦略的創造研究推進事業※
※:改ざんと直接的に因果関係が認められる経費の支出はなかった。

 

【不正事案の概要等】

 

◆不正事案の概要

  1. 告発内容及び調査結果の概要
     本件は、研究室内でのディスカッションにおいて、元学術研究員が同大学在職中に発表した2報の論文の生データを基に作成されたテキストファイルを注意深く吟味する中で、そのデータの不自然さに気づいたことに端を発し、不正の疑いがある旨の申立てがなされたことを受け、大学の適正な研究活動に関する規程に基づき、調査委員会を設置し、研究データの照合、申立者、被申立者及び関係者からの聞き取り調査等により事実関係の調査を行ったものである。
     調査の結果、研究活動における不正行為である「改ざん」が行われたものと認定した。

     【申立てのあった不正の態様及び不正行為であるとする理由】
     (1)不正の態様
        被申立者は論文データを捏造および改ざんした疑い。
     (2)研究活動における不正行為であるとする理由
        上記の不正行為を被申立者が認めていること。また、一部の不正行為については、測定した実験データを確認し、不正が行われたことを確認したこと。
     
  2. 審査の体制、調査方法、調査結果等について
    (1)調査委員会における調査体制
       4名(内部委員2名、外部委員2名)
    (2)調査の方法等
      1)調査対象
       ア)対象者:元学術研究員
       イ)対象論文:
         申立者から不正行為の疑いがあるとの指摘があった論文2報
      2)調査方法
        書面調査(申立書、対象論文、被申立者が作成した実験データ等)、被申立者、申立者及び関係者への聞き取り調査

    (3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論
      (結論)
      申立てのあった2報の論文において、大学の適正な研究活動に関する規程及び「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)で定義する研究活動における特定不正行為である「改ざん」が行われたものと認定した。

      (認定理由)
       1)被申立者への事前の聞き取り及び書面での聞き取り調査において、被申立者自身が不正を認めており、また、単独で行ったと述べていること。
       2)申立てのあった2報の論文におけるデータにおいて、生データを基に作成されたテキストファイル等を加工した事実が確認されたこと。
       3)申立てのあった2報の論文の撤回に被申立者が同意したこと。

        なお、責任著者については、以下の理由により、責任著者が通常の注意をもってしても不正に気付くのは困難であったと推定できる。
        仮に過失であったとしてもそれが著しいものと言うことはできない。
    ・研究に関するディスカッションは定期的に実施し、当該論文の原稿作成、改訂からアクセプトに至るまで論文の確認・検討作業を行っていたことから、研究室主宰者でもある責任著者は、教育・指導も十分に行っており、責任著者としての責任は果たしていたこと。
    ・被申立者により改ざんされたデータは、予想された理論値の範囲内であり不自然さはなかったこと。
    ・英国科学誌に2度のレフェリーレポートにより改訂稿を2回投稿しているが、そのいずれにおいても、レフェリーから不正箇所に疑問を呈されることはなかったこと。同様に、米国化学会誌にもレビュアーコメントが出され改訂稿の投稿を行っているが、その際にも不正箇所に疑問を呈されることはなかったこと。
     
  3. 認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
     「改ざん」を認定した論文は、日本学術振興会の国際共同研究事業(国際化学研究協力事業、平成25~28年度採択)による成果であり、交付決定額の49,135,000円のうち、不正行為と直接関係のある支出は197,733円である。

◆研究機関が行った措置

  1. 競争的資金等の執行停止等の措置
      申立てがあった時点においては、被申立者は既に退職しており、執行停止等の措置は講じていない。
     
  2. 論文の取下げ勧告等
       平成28年11月の調査委員会において、不正行為が行われたことに疑いがないことは明らかとの結論に至り、調査委員会終了後、調査継続中ではあるものの、速やかに当該2報の論文を撤回すること及び当該論文を既に引用している著者へその旨の連絡をするよう責任著者へ勧告を行った。

◆発生要因及び再発防止策

  1. 発生要因
      今回の不正行為については、下記の要因が挙げられる。
      1)研究で使用していた溶媒を用いた実験は非常に難しく、また、サンプルが不均一であるため、再現性を確認するためには長期間の研究期間を要すること。
      2)研究データが再現できない状況の中、論文の改訂稿の投稿締切日が迫り、無理をしてでもデータを出したいと考えていたこと。
      3)Postdoctoral Fellow等として研究を行った平成24年から平成27年まで全く論文を作成できず、このままでは、母国へ帰国したとしても、仕事を得られず家族を養えないと考えたこと。
      以上のこと等の心理的に追い詰められたことが、不正行為の発生要因と考えられる。
     
  2. 再発防止策
      今回の事案を受けて、再発防止に向けて、以下の対策を講じていく。
      1)元学術研究員が所属していた研究室における再発防止策
       ・論文作成時のディスカッションにおいては、生データを持参する。
       ・通常の研究におけるディスカッションにおいては、実験ノートを持参する。
        これらにより、複数名によるチェック体制づくりを行う。
      2)大学全体における再発防止策
      ・文書による再発防止の周知徹底、執行部レベルの会議及び教育研究評議会での注意喚起並びに講演会の開催による教職員への再度の意識付け等に継続的、定期的に取り組んでいく。
      ・特に責任著者は、論文採否に決定的に関わる実験事実等については、従前にも増して確認を徹底するよう取り組んでいく。

 

 

◆配分機関が行った措置

  国際共同研究事業(国際化学研究協力事業)について、改ざんと直接的に因果関係が認められる経費の支出は197,733円であったため、日本学術振興会は当該経費の返還を求め、既に返還されている。また、この論文は、国際共同研究事業(国際化学研究協力事業)及び科学研究費補助金の成果として作成された論文であり、日本学術振興会は当該研究者について、競争的資金への申請及び参加の資格制限の措置(平成29年度~平成31年度(3年間))を講じた。また、科学技術振興機構においては、被申立人が契約の対象外であったことから経費返還等の措置は講じない。なお、当該研究者については、全ての競争的資金について資格制限がかかることとなる。

 

お問合せ先

科学技術・学術政策局人材政策課

研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874

(科学技術・学術政策局人材政策課研究公正推進室)