研究活動上の不正行為(盗用)の認定について(2016-06)

【基本情報】

番号

2016-06

不正行為の種別

盗用 

不正事案名

研究活動上の不正行為(盗用)の認定について

不正事案の研究分野

言語学

調査委員会を設置した機関

大学

不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名

特命教授(当時)

不正行為と認定された研究が行われた機関

大学

不正行為と認定された研究が行われた研究期間

告発受理日

平成28年5月13日

本調査の期間

平成28年8月19日~平成28年9月27日

不服申立てに対する再調査の期間

なし

報告受理日

平成29年2月17日

不正行為が行われた経費名称

該当なし

 

【不正事案の概要等】

 

◆不正事案の概要

  1. 告発内容及び調査結果の概要
       本件は、特命教授(当時)が同大学在職中の平成27年に発表した論文(以下「調査対象論文」という。)について、元指導学生の修士論文を適切な引用なく流用しているとの指摘を受け、予備調査の後、調査委員会を設置し、修士論文との比較、関係者への聞き取り調査等により事実関係の調査を行ったものである。調査の結果、研究活動における不正行為である盗用が行われたものと認定した。

    【申立者から申立てのあった不正の態様及び特定不正行為であるとする理由】
    (1)不正の態様
        同教授が元指導学生の修士論文を適切な引用表示なく流用した疑い。
    (2)研究活動における特定不正行為であるとする理由
      同教授が発表した論文の本文及びデータにおいて、元指導学生の修士論文を典拠とする旨の明示がなく、未公刊の修士論文を本人の了解を得ることなく典拠として執筆していること。

     
  2. 本調査の体制、調査方法、調査結果等について     
    (1)調査委員会における調査体制
       5名(内部委員2名、外部委員3名)

    (2)調査の方法等
      1)調査対象
          ア)対象者:特命教授(当時)
          イ)対象論文:不正行為の疑いがあると指摘のあった論文1報
      2)調査方法
       申立者から指摘のあった論文及び引用されたとする修士論文について、比較による書面調査とともに、同教授及び引用論文の著者(元指導学生)への聞き取り調査を行った。

    (3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論
        申立者から研究活動における不正行為の疑いがあると指摘があった同教授の論文に関し、調査委員会による調査結果を踏まえた大学の結論は以下のとおりである。

    (結論)
        調査対象論文において、大学の「研究活動上の不正行為の防止及び対応に関する規程」で定義する研究活動上の不正行為である「盗用」が行われたものと認定した。

    (認定理由)
      (1)調査対象論文は、元指導学生の許諾を得ることなく、元指導学生の未公刊の修士論文の文章及びデータを引用し、執筆、公表したものであること。
      (2)調査対象論文は、元指導学生の修士論文を参考文献に記載しているものの、論文の主要部分に関わる本文及びデータにおいて、当該修士論文の文章及びデータを典拠とする旨の引用の明示がなく、同教授自らの調査によるかのように記述していること。

     
  3. 認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
      特定不正行為(盗用)と認定された論文の作成過程において、直接因果関係が認められる経費の支出はなかった。
     

◆研究機関が行った措置

  1. 競争的資金等の執行停止等の措置
       競争的資金等の因果関係が認められる経費の支出はなかったことから、執行停止等の措置は講じていない。
     
  2. 被申立者に対する大学の対応(処分等)
       同教授は平成28年9月30日に依願退職したため、学内規程に基づき処分の対象とはしない。
     
  3. 論文の取下げ
       不正行為が認定された論文について、同教授の申し出により既に取り下げられていることを確認した。
     

◆発生要因及び再発防止策

  1. 発生要因
       本件は、同教授個人の引用ルールや研究倫理の基本に関する認識不足、学問研究の基盤である正確さや厳密さに対する認識の欠如により引き起こされた事態であると言える。大学では「研究活動上の不正行為の防止及び対応に関する規程」を平成27年4月1日から施行し、学内ホームページ上に規程を掲載のうえ会議において所属教員に周知しているものの、同教授が論文を発表した当時は規程制定前であり不正防止の体制が十分に整備されていなかった。
     
  2. 再発防止策
       大学では「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(平成26年8月26日文部科学大臣決定)を踏まえ、研究倫理の向上及び不正行為の防止に関し学内体制を構築してきた。平成27年度には学内研究者全員に研究倫理教材「科学の健全な発展のために」を配布し、毎年、学内研究者全員の受講を前提とした研究倫理に関する研修会を実施することとしている。今回の事案を受け、今後はより具体的な事例も取り入れた研修会を開催し、あらためて研究者倫理の向上及び不正行為防止について周知徹底していく。当日の研修会に出席できなかった者に対しても、後日収録した映像で受講させることとし、研究倫理教育責任者が受講者を統括管理責任者(副学長)に報告することで全学の受講状況を把握する。
       また、学内において同様の事案が発生しないよう、本件を含めた具体事例を交えて研究倫理を考えるワークショップを開催するとともに、全教員がワークショップの内容を共有できるよう報告書を学内公開するなど、全学的に規範意識の向上に向けた取組を推進する。
     

 

 

◆配分機関が行った措置

  本件は競争的資金による経費の支出がなく、かつ平成27年に不正が行われた事案であることから、研究機関及び研究者に対する競争的資金の返還並びに研究者に対する競争的資金への申請及び参加資格の制限は行わない。

 

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究環境課

研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874
メールアドレス:jinken@mext.go.jp

(科学技術・学術政策局研究環境課研究公正推進室)