研究活動上の不正行為(盗用・改ざん)の認定について(2015-08)
【基本情報】
番号
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2015-08
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不正行為の種別
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盗用・改ざん
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不正事案名
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研究活動上の不正行為(盗用・改ざん)の認定について
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不正事案の研究分野
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臨床看護学
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調査委員会を設置した機関
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大学
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不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名
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教授
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不正行為と認定された研究が行われた機関
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大学
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不正行為と認定された研究が行われた研究期間
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平成24年12月20日(論文投稿日)
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告発受理日
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平成27年6月10日
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本調査の期間
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平成27年8月7日~平成27年12月10日
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不服申立てに対する再調査の期間
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なし
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報告受理日
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平成28年3月4日
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不正行為が行われた経費名称
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なし
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【不正事案の概要等】
◆不正事案の概要
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盗用・改ざんに当たる調査対象論文の作成過程において、直接の因果関係がある経費の支出はなかった。
- 告発内容及び調査結果の概要
本件は、教員の原著論文の内容が教え子の大学院修士課程修了生の修士論文に酷似しており、盗用・改ざんに当たるのではないかとの申立て(匿名希望)があったことを受け、大学の研究活動不正行為本調査委員会(以下「本調査委員会」という。)において、関係資料の収集・精査及び関係者への聞き取り調査を行ったものである。
調査の結果、研究活動における不正行為である「盗用」及び「改ざん」が行われたものと認定した。
【申立者から申立てのあった不正の態様及び特定不正行為であるとする理由】
(1)不正の態様
被申立者が、大学院修士課程修了生の修士論文から盗用するとともに、調査期間に示されている年月を改ざんした疑い。
(2)研究活動における特定不正行為であるとする理由
1)盗用
・被申立者が単著で学会誌へ投稿した原著論文の論述や数値データが大学院修士課程修了生の修士論文のものとほぼ同一であること。
2)改ざん
・修士論文作成者が収集した調査データの期間と当該論文の調査期間に示されている年月が食い違っており、調査期間の年月を変更していること。
- 本調査の体制、調査方法、調査結果について
(1)調査委員会における調査体制
6名(内部委員3名、外部委員3名)
(2)調査の方法等
1)調査対象
ア)調査対象研究者
教授
イ)調査対象論文
申立者から不正行為(盗用・改ざん)の疑いがあると指摘のあった学会誌掲載の原著論文
2)調査方法
申立てにより指摘のあった調査対象論文とその論文の基になったとされる修士論文について書面調査(比較検証)を行うとともに、修士論文作成者に対する聞き取り調査(意見聴取)、被申立者に対する文書による照会、及び被申立者に対する聞き取り調査(意見聴取)などを実施。
(3)本事案に対する本調査委員会の調査結果を踏まえた結論
申立てにより研究活動における不正行為(盗用・改ざん)の疑いがあると指摘があった調査対象論文に関し、本調査委員会が実施した調査結果を踏まえた結論は以下のとおりである。
(結論)
調査対象論文において、大学における研究活動の不正行為への対応に関する規程に定める不正行為の「盗用」(他の研究者のアイデア,分析・解析方法,データ,研究結果,論文又は用語を当該研究者の了解若しくは適切な表示なく流用すること)、及び「改ざん」(研究資料・機器・過程を変更する操作を行い,データ,研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること)が行われたものと認定した。
(認定理由)
「盗用」について、次の3点があげられる。
1)被申立者が平成24年12月20日に単著で学会誌へ投稿した原著論文(調査対象論文)とその論文の基になったとされる修士論文を比較検証した結果、調査対象論文の論述や数値データが修士論文のものとほぼ同一(約95%)であり、修士論文から31箇所373行、及び被申立者に提出された修士論文草稿から2箇所3行にわたって流用されている。
2)被申立者は、単著の原著論文とした理由について、「修士論文作成者と連絡が取れなかったため、共同研究者としての立場で判断し、単著で投稿した」と説明しているが、被申立者及び修士論文作成者からの意見聴取の結果、修士論文作成者が修士論文作成に当たって一人でデータの収集や解析を行ったと認められ、論文作成に必要な情報の共有はできていなかった。当該研究に実質的な関与がないにも関わらず、単著の原著論文として投稿している。
3)被申立者は、修士論文作成者に連絡が取れなかったと説明しているが、被申立者及び修士論文作成者からの意見聴取の結果、修士論文作成者への連絡及び承諾を得る努力をしたとは認められず、修士論文を安易に無断使用している。
「改ざん」については、次の点があげられる。
1)調査対象論文は、修士論文作成者が収集した調査データをそのまま用いて作成されたにも関わらず、当該論文の調査期間に示されている年月と実際のデータ収集期間が食い違っており、被申立者への意見聴取の結果、この調査期間に実際にデータ収集が行われた事実はなく、調査期間の年月を真正でないものに変更している。
その他、重大な懸念事項として以下の不適切な行為が認められた。
1)調査対象論文と修士論文は研究協力施設から収集した同じデータを解析した結果から導き出されたものであり、二つの論文に示されている結論もほぼ同じである。しかし、調査対象論文と修士論文に記載されている統計解析図には顕著な相違がみられる。被申立者への意見聴取の結果、調査対象論文の統計解析図は、修士論文の最も重要となる回帰分析の結果を本文中から削除し、相関関係の解析結果に基づいた図が作成され、本来の重回帰分析の結果を踏まえた結論との間に齟齬(そご)が生じたものと認められた。図が不適切に変更されたことは、科学論文として非常に問題である。
2)被申立者の本件行為は、修士論文作成者の努力に敬意を払うことなく、研究成果を公表する上でのオーサーシップ・ルールを無視し、かつ、研究成果公表の公益性を理由として教え子の論文を盗用し自らの原著として発表している。被申立者の本件行為は、研究倫理規範を逸脱する不適切なものであっただけでなく、大学院生の研究指導に当たる教育者として、信義にもとる倫理違反があったものと認められた。
- 認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
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◆研究機関が行った措置
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- 競争的資金等の執行停止等の措置
競争的資金等因果関係が認められる経費の支出はなかったことから、執行停止等の措置は講じていない。
- 被申立者に対する大学の対応(処分等)
本調査委員会及び研究行動規範委員会の不正行為に関する調査報告書を受け、教職員就業規則及び教職員懲戒規程に基づき審査を行い、懲戒処分とした。
- 論文の取下げ
盗用・改ざんと認定された調査対象論文については、社会へ与える影響を考慮し、被申立者へ取下げを勧告し、被申立者はそれを受けて、関係学会に対し「撤回」と「削除」を申し出た。
なお、関係学会は、平成28年1月27日付けで対象論文を「取消処分」にした。
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◆発生要因及び再発防止策
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大学では、本事案が起きる前から研究活動の不正行為に対する対応方針を定めて取組を行ってきたが、被申立者は、指導教員でありながら指導学生の著作権に関する認識を欠いていたばかりでなく、研究活動の不正行為に関する学内規程を、研究活動上の基本的なルールを理解していたとは言えず、コンプライアンス意識が低かったと言うほかない。
本件を受けて、平成27年度から、修士論文を大学院生の希望により、機関リポジトリにおいて全文公開や第三者への文献複写も可能とし、広く社会に向け研究論文として公開することとしている。
また、「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(平成26年8月26日文部科学大臣決定)を踏まえ、研究活動の不正行為を防止するための全学的な統括組織を構築し、研究不正防止計画を策定して、着実に対応を進めており、平成27年度は、従前から実施している定期的な研究倫理教育研修会に加えて、研究者全員に研究倫理教材「科学の健全な発展のために」の通読を義務化し、併せて通読レポートの提出を課した。今後、本教材の通読レポート(1.通読しての評価、2.所属の専攻にとっての過不足または改定案、3.オリジナルな研究倫理教材・教育として必要なこと)から得られた意見や要望を不正防止計画に反映させ、研究倫理教育の更なる充実と改善を図ることとしている。
今後、教職員及び学生等に対して研究倫理教育を更に徹底し、不正行為の再発防止に取り組む。
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◆配分機関が行った措置
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本件は競争的資金による経費の支出がなく、かつ、平成24年に不正が行われた事案であることから、研究機関及び研究者に対する競争的資金の返還並びに研究者に対する競争的資金への申請及び参加資格の制限を行わない。
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科学技術・学術政策局研究環境課
研究公正推進室
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