大阪大学元助教による不正行為(捏造・改ざん)の認定について

 【基本情報】

番号

2024-05

不正行為の種別

捏造・改ざん

不正事案名

大阪大学元助教による不正行為(捏造・改ざん)の認定について

不正事案の研究分野

細菌学

調査委員会を設置した機関

大阪大学

不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名

大阪大学微生物病研究所 元助教、教授

不正行為と認定された研究が行われた機関

大阪大学

不正行為と認定された研究が行われた研究期間

令和元年度~令和5年度

告発受理日

令和6年3月29日

本調査の期間

令和6年4月19日~令和6年11月7日

不服申立てに対する再調査の期間

報告受理日

令和7年2月4日

不正行為が行われた経費名称

科学研究費助成事業
基盤的経費(運営費交付金)

 

【不正事案の概要等】

◆不正事案の概要

1.告発内容及び調査結果の概要
 令和6年3月に告発があり、事案の内容が明示され、不正とする科学的な合理性のある理由が示されているため、告発を受理し、予備調査を経て調査委員会を設置した。
 本調査の結果、論文7編において捏造、改ざん(特定不正行為)が行われたと認定した。

2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について
(1)調査委員会による調査体制
  4名(内部委員2名、外部委員2名)
 
(2)調査の方法等
 1)調査対象
  ア)調査対象者:大阪大学 微生物病研究所 元助教
                          大阪大学 微生物病研究所 教授
                          大阪大学 元大学院生
                          大阪大学 微生物病研究所 特任助教(調査対象論文執筆当時は一般財団法人に所属)

  イ)調査対象論文:8編(日本の国際学術誌4編及び海外の学術誌4編:令和元年、令和2年、令和3年、令和4年、令和5年)
 2)調査方法
 告発者、調査対象者に対する書面質問・ヒアリングを行い、また、調査対象者等の実験ノートや実験データ、点検結果資料に基づき、データの精査(論文掲載図と実験ノート・生データの比較分析等)を行った。
  その後調査対象者に対する再ヒアリング等を行い、さらに、調査対象論文の共著者全員に対し、書面質問を行った。
 
(3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論
 (結論)
  1)認定した不正行為の種別
   捏造・改ざん
  2)「不正行為に関与した者」として認定した者
   大阪大学微生物病研究所 元助教
     3)「不正行為に関与していないものの、不正行為のあった研究に係る論文等の責任を負う著者」として認定した者
        大阪大学微生物病研究所 教授
 
 (認定理由)
  不正を認定した論文7編のうち論文5編について、実験に使用したとするものと異なるサンプルを用いて実験を行い、当該結果を流用する、あるいは、論文記載の実験を行わない等により、実態とは異なる画像データを作成していたことから、捏造を認定した。
     不正を認定した論文7編のうち論文4編について、異なる実験群のサンプルを入れ替え、あるいは、他の実験データを流用するなどの行為が認められたことから、捏造及び改ざんを認定した。
     不正を認定した論文7編のうち論文6編について、実験結果、あるいは条件が異なる複数の実験結果からデータを恣意的に採用し、あるいは、実際に得られたデータのn数を追加、データの数値そのものを操作する行為が認められたことから、改ざんを認定した。

3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
 不正行為を認定した論文について以下の支出があった。
・不正行為を認定した論文7編のうち3編について、科学研究費助成事業  1,075,479円(論文掲載費用、OA出版料等)
・基盤的経費(運営費交付金) 340,000 円(OA出版料及び英語論文校正料)

◆研究機関が行った措置

1.論文の取下げ等
 不正行為が認定された論文7編のうち、5編について、論文の取下げを勧告。また、不正内容が論文の主旨に影響しないと判断した論文2編については、少なくとも論文の訂正等を行うよう勧告。
 
2.被認定者に対する大学の対応(処分等)
 元助教及び教授に対し、就業規則等に基づく処分を検討中。

◆発生要因及び再発防止策

1.発生要因
 元助教が研究不正を行った要因は、第一には、本人の研究者としての資質や倫理観の欠如によるところが大きく、公正な研究に対する真摯性、誠実性を欠いていた。他方で、もし研究室において、生データや実験ノートを確認する機会を設けていれば、不正行為をより早期に発見し得たと認められ、研究室において、研究不正の発生に対する危機意識が不足しており、不正行為を未然に防ぐために、日常的に、生データや実験ノートを確認し、あるいは、論文の発表の際に、生データや実験ノートを確認するなどの体制が構築されていなかった。
 
2.再発防止策
 研究データを適切に管理・保存し、必要に応じて開示できるよう研究データの保存等のガイドラインを周知徹底する。また、研究者としての基本姿勢・研究倫理の向上を図るため、研究分野の特性に応じた内容にて研究倫理教育の受講を徹底する。さらに、研究室主宰者や責任著者による役割、管理・監督責任、データチェック体制整備の観点を研究倫理教育に盛り込み、部局を通じて体制の構築状況等を定期的に確認する。

 

◆配分機関が行った措置

特定不正行為(捏造、改ざん)が認定された論文は、科学研究費助成事業の成果として執筆された論文であり、かつ、捏造、改ざんと直接的に因果関係が認められる経費の支出があった。このため、資金配分機関である日本学術振興会において、経費の返還を求めるとともに、資格の制限措置(元助教10年間(令和7年度~16年度)、教授3年間(令和7年度~9年度)を講じた。

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究環境課

研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874
メールアドレス:jinken@mext.go.jp

(科学技術・学術政策局研究環境課研究公正推進室)