日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員による不正行為(盗用)の認定について

【基本情報】

番号

2024-02

不正行為の種別

盗用

不正事案名

日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員による不正行為(盗用)の認定について

不正事案の研究分野

政治学

調査委員会を設置した機関

日本貿易振興機構アジア経済研究所

不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名

日本貿易振興機構アジア経済研究所地域研究センター 研究員

不正行為と認定された研究が行われた機関

日本貿易振興機構アジア経済研究所

不正行為と認定された研究が行われた研究期間

令和2年度~令和5年度

告発受理日

令和6年4月19日

本調査の期間

令和6年7月22日~令和6年10月8日

不服申立てに対する再調査の期間

報告受理日

令和6年12月5日

不正行為が行われた経費名称

科学研究費助成事業

 

【不正事案の概要等】

◆不正事案の概要

1.告発内容及び調査結果の概要
  令和6年2月に剽窃の疑いがある旨の指摘が寄せられ、指摘内容の事実関係を確認の上、対応責任者である研究企画部担当理事が職権で告発することを決定し、予備調査を経て調査委員会を設置した。本調査の結果、論文1編において盗用(特定不正行為)が行われたと認定した。
 
2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について
(1)調査委員会による調査体制
  6名(内部委員3名、外部委員3名)
 
(2)調査の方法等
 1)調査対象
  ア)調査対象者:日本貿易振興機構アジア経済研究所地域研究センター 研究員
  イ)調査対象論文:2編(国内の書籍:2024年)
 2)調査方法
  調査対象論文等について、告発内容・予備調査結果の確認を行った後、先行研究と調査対象論文との比較分析を行った。さらに、調査対象者及び歴史を扱う研究者からの聞き取り調査を実施し 、研究不正の有無について調査を行った。
 
(3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論
 (結論)
  1)認定した不正行為の種別
   盗用
  2)「不正行為に関与した者」として認定した者
   日本貿易振興機構アジア経済研究所地域研究センター 研究員

 (認定理由)
  調査対象論文1編について、引用元の先行研究と比較分析した結果、先行研究の内容を数多く流用していることは明らかであった。また、当該研究分野において間接引用の形式をとる場合には、元の論文を適切にパラフレーズ(言い換え)する必要があるが、当該調査対象論文では必ずしもそれが行われていないことが確認された。故意性があったとまでは認められないが、不適切な間接引用の数は多く、修正する機会があったにも拘わらず、それを行わなかったという点で、調査対象者が基本的な注意義務を「著しく怠った」ことによる盗用を認定した。
 
3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
 科学研究費助成事業による研究成果であるが、不正行為を認定した論文の作成過程において、直接関係する経費の支出は認められなかった。

◆研究機関が行った措置

1.論文の修正
 不正行為が行われた研究課題の代表者と論文が所収された書籍の編者に状況を伝え、両者から、今後当該書籍が重版された場合には問題のある個所を修正するよう調査対象者に求めた旨の回答を得た。
 
2.被認定者に対する大学の対応(処分等)
 研究員に対し、就業規則に基づく処分を予定。

3.競争的研究費等の執行停止等の措置
 研究員が実施中の科学研究費助成事業による研究課題の執行を停止した。
 

◆発生要因及び再発防止策

1.発生要因
 調査対象者は、研究倫理教育の受講等を通じて、十分な言い換えや書き換えがなされていない間接引用が盗用とみなされる可能性があると認識していたが、調査対象論文を執筆する上で当然に必要な時間管理ができず、引用の適切性の確認も不徹底な状態で提出してしまうなど、研究倫理の遵守にかかる意識が希薄で、研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠った 。また、調査対象者は、論文執筆時に大枠の構成を考えた後、先行研究から一言一句抜き出す形でメモを作成し、それを基に執筆する手法を取っており、この手法自体が不正を発生させるリスクを高めるものであった。
 
2.再発防止策
 研究所ではこれまでも様々な機会を捉えて研究者を対象とした研究倫理教育や啓発活動を実施してきたが、今回の事例を受け、今後は、受講状況の管理が可能でかつ研究不正の防止に関する内容が充実したe-learningを新たに取り入れ、研究者の受講を義務付けるとともに、研究不正の防止に焦点を当てた勉強会を開催するなど、教育・研修内容の充実化を図る。

 

◆配分機関が行った措置

特定不正行為(捏造)が認定された論文は、科学研究費助成事業の成果として執筆された論文であり、かつ、捏造と直接的に因果関係が認められる経費の支出があった。このため、資金配分機関である日本学術振興会において、経費の返還を求めるとともに、資格の制限措置(3年間(令和7年度~9年度))を講じた。

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究環境課

研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874
メールアドレス:jinken@mext.go.jp

(科学技術・学術政策局研究環境課研究公正推進室)