【基本情報】
番号 |
2021-14 |
不正行為の種別 |
盗用 |
不正事案名 |
研究活動上の不正行為(盗用)の認定について |
||
不正事案の研究分野 |
史学 |
調査委員会を設置した機関 |
B大学 |
不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名 |
A大学 名誉教授、B大学 元講師 |
||
不正行為と認定された研究が行われた機関 |
A大学 |
不正行為と認定された研究が行われた研究期間 |
平成23年度、平成28年度 |
告発受理日 |
令和2年8月7日 |
本調査の期間 |
令和2年10月12日~令和3年6月23日 |
不服申立てに対する再調査の期間 |
- |
報告受理日 |
令和3年12月2日 |
不正行為が行われた経費名称 |
科学研究費助成事業 |
【不正事案の概要等】
◆不正事案の 概要 |
1.告発内容及び調査結果の概要 B大学 元講師を著者とし、A大学 名誉教授を編者とする出版物にて公表された論文について、盗用の疑いがある旨の告発があった。予備調査を行った結果、本調査を行うこととし、B大学において調査委員会を設置した(A大学は調査協力)。調査の結果、論文1編について盗用(特定不正行為)が行われたと認定した。 2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について (1)調査委員会による調査体制 7名(内部委員3名、外部委員4名) (2)調査の方法等 1)調査対象 ア)調査対象者:A大学 名誉教授、B大学 元講師 イ)調査対象論文:1編(国内の学術書籍:2017年) 2)調査方法 B大学研究活動不正行為防止規程に基づき調査担当者において関係資料の収集・精査、関係者等への事情聴取を⾏い、調査担当者において作成した調査資料をもとに調査委員会にて事実関係の認定及び不正⾏為の該当について審議し、決定した。 (3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論 (結論) 1)認定した不正行為の種別 盗用 2)「不正行為に関与した者」として認定した者 A大学 名誉教授、B大学 元講師 (認定理由) A大学 名誉教授は、他の研究者から閲覧および閲覧のための写真撮影を許可されて預かった当該研究者所有で未公表(当時)の史料3点を、当該研究者の了解なく調査対象論文において使用するようB大学 元講師を主導するとともに、当該研究者への確認は事後承諾で良いとの判断を行い、本件書籍を発刊した。 B大学 元講師は、調査対象論文において、書籍の編者であり調査対象者である上記A大学 名誉教授の主導のもと、史料3点を所有者の了解なく流用し、公開した。 (不服申立て手続) 上記A大学 名誉教授及びB大学 元講師に調査結果を通知したところ、上記2名から不服申立てがなされた。当該不服申立ての根拠・理由は、先の調査結果を覆すに足りる合理的なものであるとは言えず、再調査は行わない決定がなされた。 3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について 不正行為を認定した論文について、以下の支出があった。 ・平成28年度科学研究費助成事業研究成果公開促進費『学術図書』 3,000千円 また、以下の事業に関しても不正行為を認定した論文との科学的・学術的関連性が認められたが、直接関係する経費の支出は認められなかった。 ・平成23年度科学研究費助成事業基盤研究(A) |
◆研究機関が行った措置 |
1.論文の取下げ B大学 元講師に対し、不正認定された論文は今後自らの研究業績に記載しないことを勧告した。また、A大学 名誉教授及びB大学 元講師に対し、出版元と取りうる周知の方法(ホームページでの公表、献本先への通知等)を協議し対応すること、及び本件史料3点を含む史料群の写真データを保有している場合は消去することを勧告した。 2.被認定者に対する大学の対応(処分等) 名誉教授に対し、A大学において、就業規則等を準用し、 戒告(相当)の処分を行った。 元講師に対し、B大学において厳重注意を行った。 |
◆発生要因及び再発防止策 |
1.発生要因 A大学 名誉教授及びB大学 元講師は、当時所属していたA大学において、教員及び研究員に対する研究倫理教育については、必須とされているeラーニングプログラムを受講済であった。加えて、A大学 名誉教授及びB大学 文学部 元講師ともに、他の研究者の所有する未公開史料を論文に掲載する際には、事前に所有者の承諾を得ることが当該分野における通例であることを認識していた。これらから、不正行為に対する基本的知識や理解を持っていたものと推察される。 それにもかかわらず、事前承諾を行わずに掲載に至るまでのそれぞれの判断の経過には、元指導教員と元大学院生という関係性が影響したことが窺える。 A大学 名誉教授及びB大学 元講師は、本来であればそれぞれ自立した研究者であるにもかかわらず、元指導教員と元大学院生の関係が必要以上に残っていたことが、研究倫理に対する認識を弱め、適切な判断を妨げた大きな要因であると考えられる。 2.再発防止策 本事案が発生したA大学に対しては、B大学より本調査結果を通知し、引き続き研究者に対する研究倫理教育を徹底するとともに、本件事案を踏まえた取り組みの検討・実施を要請した。 また、B大学においても、大学院キャリアパス推進室と研究倫理室で協同して実施している大学院生向けの研究倫理教育、研究者を対象に実施する定期的な研究倫理教育等を通じ、理解を深めていくことに大学全体として取り組む。 |
◆配分機関が行った措置 |
特定不正行為(盗用)が認定された論文は、科学研究費助成事業の成果として執筆された論文であり、かつ、科学研究費助成事業において盗用と直接的に因果関係が認められる経費の支出があった。このため、資金配分機関である日本学術振興会において、資格制限の措置(名誉教授:令和6年度~令和8年度(3年間)、元講師:令和6年度~令和8年度(3年間))を講じるとともに、経費の返還を求めた。 |
研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874
メールアドレス:jinken@mext.go.jp