東北大学元大学院生による研究活動上の不正行為(捏造、改ざん)の認定について

【基本情報】

番号

2022-15

不正行為の種別

捏造、改ざん

不正事案名

東北大学元大学院生による研究活動上の不正行為(捏造、改ざん)の認定について

不正事案の研究分野

生物学

調査委員会を設置した機関

東北大学

不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名

東北大学 生命科学研究科 元大学院生(同 学際科学フロンティア研究所 元客員研究員)、学際科学フロンティア研究所 元助教、生命科学研究科 准教授

不正行為と認定された研究が行われた機関

東北大学

不正行為と認定された研究が行われた研究期間

平成24年~平成26年
平成29年~令和2年

告発受理日

本調査の期間

令和3年7月6日~令和4年11月16日

不服申立てに対する再調査の期間

報告受理日

令和5年3月3日

不正行為が行われた経費名称

科学研究費助成事業

 

【不正事案の概要等】

◆不正事案の概要

1.告発内容及び調査結果の概要
 令和3年3月17日に、元助教の所属機関より、元助教が責任著者になっている論文中の図に切り貼りされた可能性が生じている旨の相談が元助教からあったとの連絡があった。審査委員会の結果を受けて調査委員会を設置した。本調査の結果、論文3編に捏造及び改ざん(特定不正行為)が行われたと認定した。
 
2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について
(1)調査委員会による調査体制
  6名(内部委員3名、外部委員3名)
 
(2)調査の方法等
 1)調査対象
  ア)調査対象者:東北大学 生命科学研究科 元大学院生(同 学際科学フロンティア研究所 元客員研究員)、学際科学フロンティア研究所 元助教、生命科学研究科 准教授
  イ)調査対象論文:3編(海外の学術誌:2015年、2021年、博士論文:2015年)
 2)調査方法
  ・研究ノート及び研究データ等の資料保全
  ・調査対象論文、研究ノート及び研究データ等の確認・分析
  ・調査対象者への事情聴取
  ・各著者の役割分担の確認
  ・取得資料及び聴取内容等の分析、事案の審議検討
 
(3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論
 (結論)
  1)認定した不正行為の種別
   捏造、改ざん
  2)「不正行為に関与した者」として認定した者
   東北大学 生命科学研究科 元大学院生(同 学際科学フロンティア研究所 元客員研究員)
  3)「不正行為に関与していないものの、不正行為のあった研究に係る論文等の責任を負う著者」として認定した者
   東北大学 学際科学フロンティア研究所 元助教、生命科学研究科 准教授
 
 (認定理由)
  〇捏造、改ざん
  調査対象論文3編全てにおいて、論文中の図の一部に切り貼りが行われており、そのうち1編について元大学院生は切り貼りしたことを認めており、その他2編については、データの分析結果及び元データが残されていなかったこと、博士論文については調査対象論文1編の成果が中心であり、当該論文で不正行為と認定した図と同様の図が使用されていることなどから、故意による捏造及び改ざんを認定した。
 
  〇不正行為に関与していないものの、不正行為のあった研究に係る論文等の責任を負う著者
  元助教は、論文1編について、当該論文の責任著者であること及び元大学院生とのコミュニケーション不足、データ管理体制に不十分な点があったため、不正行為に関与していないものの、不正行為のあった研究に係る論文等の責任を負う著者として認定した。
  准教授は、論文1編について、当該論文の責任著者であること及びデータ管理体制に不十分な点があったため、不正行為に関与していないものの、不正行為のあった研究に係る論文等の責任を負う著者として認定した。
 
3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
 科学研究費助成事業による研究成果であるが、不正行為を認定した論文の作成過程において、直接関係する経費の支出は認められなかった。

◆研究機関が行った措置

1.論文の取下げ
 准教授に対し、不正認定論文1編について取り下げを勧告した。
 なお、不正認定論文のうち、すでに元助教らによって、論文1編は取り下げ済みである。
 
2.被認定者に対する大学の対応(処分等)
 不正認定された博士論文については、大学の規程に基づき、博士の学位及び課程修了の取消しを決定した。

◆発生要因及び再発防止策

1.発生要因
 元大学院生は、論文1編について図は切り貼りにより作成されたものではあるが、示されている結果は何度もの反復実験により確認されているものと同じであると主張した。このことから、再現性のある結果を示すならばデータの使いまわしや切り貼りはある程度は許容されると考えていたものと推測された。その他の2編の論文についても同様の認識から不正行為を行ったと考えられる。元大学院生が所属していた生命科学研究科博士課程では、当時、研究倫理に関する講義は必修とされておらず元大学院生は受講していなかった。その後に、学際科学フロンティア研究所の研究員として勤務していた際に受講を推奨されていた研究倫理に関するオンライン教育も部分的にしか受講しておらず、研究不正に関する認識が不十分であったと考えられる。また、論文1編に関しては論文投稿時の共著者との実験データのチェックが不十分であったことも要因の一つである。
 元大学院生が在籍した研究室では、構成員の研究ノートやデータは保管することになっているが、元大学院の研究ノートは保管されておらず、データ読み取り装置からのデータ抜き取りについても本件が発覚するまで認識されていなかった。このことから、元助教及び准教授のデータ管理体制にも問題があった。大学で研究データ等の保存及び管理に関する指針が裁定されたのは平成28年3月29日であり、研究データ等の保存に関する意識が十分涵養されていなかった可能性がある。
 
2.再発防止策
 全学的にあらためて行動規範や関係規程、各種指針の遵守及び研究倫理教育の徹底、研修等による研究倫理教育の継続的な実施により再発防止の徹底を図る。
 各種会議等における注意喚起のほか、本事案の内容等を踏まえたセミナーを開催する。なお、セミナーについては毎年定期的に実施し、注意喚起・啓発を行う。
 また、本事案の発生部局である学際科学フロンティア研究所及び生命科学研究科に対し、 公正な研究活動推進のための研修等の実施において教職員及び学生への研究ノートの取扱い及び研究データの保存について全学及び研究科において定めている指針や申合せ等を周知するとともに、その管理の徹底を求めた。

 

◆配分機関が行った措置

 科学研究費助成事業について、捏造・改ざんと直接的に因果関係が認められる経費の支出はなかったため、返還を求めるものではないが、捏造・改ざんが認定された論文は科学研究費助成事業の成果として執筆された論文である。このため、資金配分機関である日本学術振興会において、資格制限の措置(元大学院生:令和5年度~令和10年度(6年間)、元助教:令和5年度(1年間)、准教授:令和5年度(1年間))を講じた。 

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究環境課

研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874
メールアドレス:jinken@mext.go.jp

(科学技術・学術政策局研究環境課研究公正推進室)