【基本情報】
番号 |
2022-14 |
不正行為の種別 |
捏造、改ざん |
不正事案名 |
岡山大学教授による研究活動上の不正行為(捏造、改ざん)の認定について |
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不正事案の研究分野 |
医学 |
調査委員会を設置した機関 |
1:岡山大学 |
不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名 |
岡山大学 学術研究院医歯薬学域 教授(国立循環器病研究センター 研究所循環動態制御部 元室長) |
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不正行為と認定された研究が行われた機関 |
1:岡山大学 |
不正行為と認定された研究が行われた研究期間 |
平成26年~平成30年 |
告発受理日 |
1:令和2年9月23日 |
本調査の期間 |
1:令和3年2月15日~令和5年1月31日 2:令和3年2月16日~令和5年1月31日 |
不服申立てに対する再調査の期間 |
- |
報告受理日 |
1:令和5年3月31日 |
不正行為が行われた経費名称 |
科学研究費助成事業、革新的先端研究開発支援事業 |
【不正事案の概要等】
◆不正事案の概要 |
1.告発内容及び調査結果の概要 1 岡山大学 学術研究院医歯薬学域教授が筆頭著者兼責任著者の論文1編について、不正行為の疑いがある旨の告発があった。予備調査を行った結果、本調査を行うこととし、調査委員会を設置した。本調査の結果、論文1編について捏造(特定不正行為)が行われたと認定した。 2 国立循環器病研究センター 岡山大学教授が国立循環器病研究センター在籍時に筆頭著者兼責任著者として発表した論文2編を含む論文3編について、不正行為の疑いがある旨の告発があった。予備調査を行った結果、論文2編について本調査を行うこととし、調査委員会を設置した。本調査の結果、岡山大学と同一の論文1編について捏造及び改ざん(特定不正行為)が行われたと認定した。 2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について (1)調査委員会による調査体制 1 岡山大学 7名(内部委員3名、外部委員4名) 2 国立循環器病研究センター 令和3年9月30日まで 6名(内部委員3名、外部委員3名) 令和3年10月1日以降 5名(内部委員2名、外部委員3名) (2)調査の方法等 1)調査対象 ア)調査対象者 1 岡山大学 岡山大学 学術研究院医歯薬学域 教授、その他共著者・関係者11名 2 国立循環器病研究センター 国立循環器病研究センター 研究所循環動態制御部 元室長(現 岡山大学 学術研究院医歯薬学域 教授)、その他共著者・関係者14名 イ)調査対象論文 1 岡山大学 1編(海外の学術誌:2019年) 2 国立循環器病研究センター 2編(海外の学術誌:2010年、2019年(岡山大学と同一論文)) 2)調査方法(岡山大学・国立循環器病研究センター共通) 教授に対し、告発及び予備調査で指摘された疑義についての見解と、論文に掲載された図表等の全てについて、実験担当者と論文の図表の作成者を提示するよう求めるとともに、弁明の機会を付与した。また、調査対象者に対して書面及びヒアリング調査を実施した。 (3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論 1 岡山大学 (結論) 1)認定した不正行為の種別 捏造 2)「不正行為に関与した者」として認定した者 岡山大学 学術研究院医歯薬学域 教授 (認定理由) 調査対象論文の計113カ所の画像・グラフ・図等について、論文に記載した動物の数を用いた実験を実際には行っておらず、実在しない偽りの結果を論文上で示した、故意等による捏造が認められた。なお、これらの計113カ所の画像・グラフ・図等は全て当該教授が作成したものであり、それぞれの実験の詳細を記載したノート及び生データ・一次データ・原図等の、実験を実際に実施したことの客観的な証拠となる資料の調査委員会への提出は為されなかった。 (不服申立て手続) 教授から不服申立てがあり、調査委員会で審議した結果、新たな証拠の提示はなく調査委員会の認定を覆すものではないと判断し、不服申立てを却下した。 2 国立循環器病研究センター (結論) 1)認定した不正行為の種別 捏造、改ざん 2)「不正行為に関与した者」として認定した者 国立循環器病研究センター 研究所循環動態制御部 元室長(現 岡山大学 学術研究院医歯薬学域 教授) (認定理由) 元室長からは科学的根拠に基づく説明がなく、また、実際に元室長の入手した動物数と実験に必要な動物数との間に大きな乖離があることから、当該論文自体が、相当広い範囲にわたって研究活動が実際に行われずに、架空の実験結果で構成されており、相当数の図表で故意による不正行為が行われたと判断した。 (不服申立て手続) 元室長から不服申立てがあり、調査委員会で審議した結果、新たな証拠の提示はなく調査委員会の認定を覆すものではないと判断し、不服申立てを却下した。 3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について 科学研究費助成事業、革新的先端研究開発支援事業による研究成果であり、不正行為を認定した論文について以下の支出があった。 ・革新的先端研究開発支援事業 193,662円(英文校正費(消費税相当額を含む)) |
◆研究機関が行った措置 |
1.論文の取下げ 被認定者に対し、不正認定論文の取り下げを勧告した。 2.被認定者に対する研究機関の対応(処分等) 今後、被認定者に対して速やかに厳正な処分等を行う。 |
◆発生要因及び再発防止策 |
1.発生要因 ・被認定者は、本来確保されるべき研究公正を著しく軽視し論文作成を行い、科学者としてあるべき真摯さや誠実な姿勢からかけ離れたものであったこと。 ・科学者として当然に備えるべき「科学界に対して真正なる結果を報告する」という意識、倫理観が欠如していたこと。 2.再発防止策 1 岡山大学 従前より研究倫理教育において、研究不正ととられかねない行為を具体例として例示し、その防止に取り組んでいる。今後は構成員全員を対象として本来確保されるべき研究公正を研究者一人一人に実践させるべく、研究不正・論文不正に焦点を当てたコンプライアンス研修会を定期的に開催する予定である。 特に、「自らの倫理観によって不正はしない」というマインドを研究者一人一人が自身の責務として維持できるレベルになることを目指した研修を目指す。一方で、構成員全員が漏れなく受講できるように、e-learningシステムを活用する。 2 国立循環器病研究センター 本事案の発生以降各般にわたる再発防止に取り組むとともに、再発防止の取組が効果的なものとなっているかどうかを検証することを目的とし、「研究実施体制及び組織体制検証会議」を設置し、令和3年7月16日に報告書を取りまとめた。 報告書では、研究不正の発生防止のための提言を盛り込んでおり、提言実施のための工程表を作成、公表し、提言内容の実施に向けて取り組んでいる。 工程表の中には、以下のような本事案の再発防止に資する対応も含まれており、工程表を着実に実施することにより再発防止に取り組む。 ・職員が倫理や規則に則り研究業務を遂行し、このことに管理職が責任を持つことについて、コンプライアンス研修で徹底する。 ・コンプライアンス研修で、志向倫理的研修(自らの損得に基づく前慣習レベルや「ルールだから」という慣習レベルの予防倫理的な研修にとどまらず、「自らの倫理観によって不正はしない」という脱慣習レベルへと昇華していく要素を盛り込んだ研修)を試行的に実施する。 ・(研究倫理に関する)ルール設定や倫理教育を適切に行うことができる効率的な体制の在り方を検討し、より適切な体制を構築する。 ・実験記録の電子化と、その記録を第三者が監視できるシステムの構築について、研究所で本格実施の後、病院、オープンイノベーションセンターでも実施へ向けて取り組む。 |
◆配分機関が行った措置 |
特定不正行為(捏造・改ざん)が認定された論文は、科学研究費助成事業及び革新的先端研究開発支援事業の成果として執筆された論文であり、かつ、革新的先端研究開発支援事業において捏造・改ざんと直接的に因果関係が認められる経費の支出があった。このため、資金配分機関である日本学術振興会及び日本医療研究開発機構において、被認定者に対し、実施する事業への申請及び参加資格の制限措置(令和5年度~令和11年度(7年間))を講じるとともに、日本医療研究開発機構において、経費の返還を求めた。 |
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