大阪医科薬科大学元講師による研究活動上の不正行為(捏造、改ざん)の認定について

【基本情報】

番号

2022-13

不正行為の種別

捏造、改ざん

不正事案名

大阪医科薬科大学元講師による研究活動上の不正行為(捏造、改ざん)の認定について

不正事案の研究分野

医学

調査委員会を設置した機関

大阪医科薬科大学

不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名

大阪医科薬科大学 医学部 元講師

不正行為と認定された研究が行われた機関

大阪医科薬科大学

不正行為と認定された研究が行われた研究期間

平成27年~平成30年

告発受理日

令和3年9月15日

本調査の期間

令和4年4月6日~令和5年1月31日

不服申立てに対する再調査の期間

報告受理日

令和5年1月24日

不正行為が行われた経費名称

科学研究費助成事業

 

【不正事案の概要等】

◆不正事案の概要

1.告発内容及び調査結果の概要
 令和3年9月14日、医学部元講師を責任著者とする論文に画像操作の不正の疑いがある旨の通報があった。予備調査の結果を受けて本調査を行うこととし、調査委員会を設置した。本調査の結果、論文1編について、捏造、改ざん(特定不正行為)が行われたと認定した。
 
2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について
(1)調査委員会による調査体制
  6名(内部委員3名、外部委員3名)
 
(2)調査の方法等
 1)調査対象
  ア)調査対象者:大阪医科薬科大学 医学部 元講師(責任著者)、その他共著者5名
  イ)調査対象論文:1編(海外の学術誌:2019年)
 2)調査方法
  通報内容、被通報論文、著者からの提出資料について精査すると共に、対象論文の著者全員に聞き取り調査を実施した。
 
(3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論
 (結論)
  1)認定した不正行為の種別
   捏造、改ざん
  2)「不正行為に関与した者」として認定した者
   大阪医科薬科大学 医学部 元講師
 
 (認定理由)
  元講師が担当した画像データに対する恣意的な操作の疑義について、当該部分に限定した画像データは提出されたものの、単純なミスであることを証明するための証拠(実験ノート等)が提出されなかったため、特定不正行為でないとの疑いを覆すに足る証拠を示すことが出来ず、また故意に匹敵するとの評価は免れず、捏造、改ざんを認定した。
  元講師が作成したその他の図などの結果についても、その検証に必要な実験ノート等の記録が提出されないため、データの真偽について検証することができず、特定不正行為であるとの疑いが覆されないため、捏造、改ざんを認定した。
 
 (当該論文の共著者の関与について)
  元講師以外の共著者については、実験記録を伴わない図の作成への関与は認められず、不正行為には関与していなかったと判断した。
 
 (不服申立て手続)
  本調査結果及び機関決定について責任著者(元講師)に通知したところ不服申立てがなされたが、調査委員会での審議の結果、不服申立てを却下した。
 
3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
 不正行為を認定した論文について以下の支出があった。
  ・科学研究費助成事業 806,185円(学会参加費)

◆研究機関が行った措置

1.論文の取下げ
 論文の取下げを勧告した。
 
2.被認定者に対する大学の対応(処分等)
 被認定者は令和元 年8 月8 日に諭旨解雇されているため、大学による処分の対象外。

◆発生要因及び再発防止策

1.発生要因
 1)責任著者が研究継続中に所属が変更され、所属長の間で引き継ぎが十分されておらず、組織として研究内容の掌握が不十分であったこと。
 2)実験ノート等の記載についてのルールは、大学の研究資料等の保存に関するガイドラインにおいて定めているが、その周知・徹底が不十分であったこと。
 3)実験ノートの作成が徹底できておらず、強制力のある実効的な指導(所属長による定期的な実験ノートの確認)がなされていなかったこと。
 4)オーサーシップに関する定義の共通理解が不十分で、共著者による論文原稿のチェックが十分になされていなかったこと。
 
2.再発防止策
 1)所属長による研究者の管理を行うため、研究実施届制度を定め、所属長が研究者の研究実施の状況を把握するとともに、研究実態の組織的な把握を可能とする。令和3年度の試行を経て令和4年度は本格実施に移行中となっている。
 2)医学研究科における大学院統合講義にて、実験ノート等の重要性を強調して講義を実施した。
 3)研究倫理の徹底の為、「コンプライアンス教育研修」「研究倫理教育研修」をWeb で全研究者に対して実施した。特に「オーサーシップ」については、教授会においても注意喚起を実施した。加えて、FDを実施した。
 4)研究者が実験ノートの整備等の基本的な手順を遵守しているかについて論文投稿に際し所属長が確認することを義務付け、大学の研究資料等の保存に関するガイドラインを改訂した。

 

◆配分機関が行った措置

 特定不正行為(捏造、改ざん)が認定された論文は、科学研究費助成事業の成果として執筆された論文であり、かつ、科学研究費助成事業について捏造、改ざんと直接的に因果関係が認められる経費の支出があった。このため、資金配分機関である日本学術振興会において、経費の返還を求めるとともに、被認定者に対し当該資金への申請及び参加資格の制限措置(令和5年度~令和10年度(6年間))を講じた。

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究環境課

研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874
メールアドレス:jinken@mext.go.jp

(科学技術・学術政策局研究環境課研究公正推進室)