【基本情報】
番号 |
2022-12 |
不正行為の種別 |
捏造 |
不正事案名 |
広島大学元助教による研究活動上の不正行為(捏造)の認定について |
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不正事案の研究分野 |
歯学 |
調査委員会を設置した機関 |
広島大学 |
不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名 |
広島大学 大学院医系科学研究科 元助教、教授 |
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不正行為と認定された研究が行われた機関 |
広島大学 |
不正行為と認定された研究が行われた研究期間 |
平成25年~平成27年 |
告発受理日 |
令和2年9月1日 |
本調査の期間 |
令和2年11月12日~令和4年3月28日 |
不服申立てに対する再調査の期間 |
- |
報告受理日 |
令和4年10月6日 |
不正行為が行われた経費名称 |
科学研究費助成事業、基盤的経費(運営費交付金) |
【不正事案の概要等】
◆不正事案の概要 |
1.告発内容及び調査結果の概要 令和2年7月20日、研究発表(学会でのポスター発表)について捏造の疑いがある旨の告発があった。予備調査の結果を受けて本調査を行うこととし、調査委員会を設置した。本調査の結果、研究発表(ポスター発表・抄録)について、捏造(特定不正行為)が行われたと認定した。 2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について (1)調査委員会による調査体制 7名(内部委員3名、外部委員4名) (2)調査の方法等 1)調査対象 ア)調査対象者:大学院医系科学研究科 元助教、教授、その他共著者・関係者4名 イ)調査対象論文:1編(学会での研究発表:2015年) 2)調査方法 ・調査対象ポスター、抄録、当該データ等の確認 ・調査対象者からの聞き取り調査 (3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論 (結論) 1)認定した不正行為の種別 捏造 2)「不正行為に関与した者」として認定した者 大学院医系科学研究科 元助教 3)「不正行為に関与していないものの、不正行為のあった研究に係る論文等の責任を負う著者」として認定した者 大学院医系科学研究科 教授 (認定理由) 元助教は、抄録の記載にあわせる形で、薬剤投与期間の異なる都合のよいデータ(CT等組織画像及びグラフ2点)を故意にポスターに挿入し、また実際には存在しないPCRバンド図を使用してポスターを作成し、更にその不適切なポスターを研究発表の段階において追記修正・貼り紙又は正誤表により訂正することなく、故意性をもって印刷時のまま発表していることから、捏造を認定した。 教授は、研究発表(学会でのポスター発表)の責任著者として学会発表に参画しており、不正行為に関与していないものの、不正行為のあった研究発表(学会でのポスター発表)の責任を負う者と認定した。 (不服申立て手続) 被認定者2名より不服申立てがあり、申立て内容を検証した結果、本調査の結果及び認定の内容を覆すに足るものでないと判断し、不服申立てを却下した。 3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について 不正行為を認定した研究発表について以下の支出があった。 ・科学研究費助成事業 計86,140円(学会ポスター印刷費、旅費) ・基盤的経費(運営費交付金) 10,000円(学会参加費) |
◆研究機関が行った措置 |
1.論文等の取下げ 被認定者に対し、ポスター発表の抄録の取り下げを勧告した。 2.被認定者に対する大学の対応(処分等) 元助教は令和4年10月31日付けで退職したため、懲戒に相当する量定として出勤停止1日相当とした。 教授については、ポスター発表において特定不正行為に関与していないものの、不正行為のあった研究に係る論文等の責任を負う者であるが、他に認定された非違行為があるため、これらを総合的に判断して、出勤停止5日として処分した。 |
◆発生要因及び再発防止策 |
1.発生要因 元助教は、ポスターの抄録の結果の記載に沿った構成とするため、薬剤投与期間を都合よく変えた図やグラフを掲載し、また、PCRバンド図についても抄録の結果の記載の根拠として明確に示すため、自身が考える結果を表すバンド図を作製し発表している。根拠データの条件を杜撰に扱っていることや結果ありきの方法論を構築していることが窺われ、科学者としての研究姿勢そのものに問題があると言わざるを得ない。 教授は研究発表(学会でのポスター発表)前に自身が認識していた範囲の誤りについての発表当日の訂正の確認を怠っており、当該発表の責任著者として、ポスターの作成から発表に至る過程を監督し、発表内容の科学的適切性を最終確認する義務を充分に果たしたとは言えない。 一方、教授、元助教ともに大学の研究倫理教育を受講し、確認テストにも合格していた。知識と意識の観点から見たとき、教授及び元助教は不正行為に関して机上にて基本的な理解はしているものの、実際の研究活動において、不正行為防止に向けて求められる研究者としての倫理観に欠けていることは否めず、この乖離が本事案を惹起する要因となっている。 2.再発防止策 ・全学会議において、総括責任者より、本事例の発生要因とその影響、関係者の処分などを含めて解説する。また、各部局等の長に対して、本事例を所属部局等の会議において、共有するよう申し入れる。 ・研究倫理教材に本事案の解説を追加し、大学院生から教員に至る研究者に対して、その影響の大きさを含めて理解を促し、徹底する。 ・令和3年4月に大学の学術・社会連携室に研究倫理の啓発を所掌する産学連携法務部門を設置し、部局等への説明資料の中に、本事案の概要説明及び影響などを盛り込み、リスク回避のための事例として周知する。 |
◆配分機関が行った措置 |
特定不正行為(捏造)が認定された研究発表(学会でのポスター発表)は、科学研究費助成事業の成果であり、かつ、科学研究費助成事業について捏造と直接的に因果関係が認められる経費の支出があった。このため、資金配分機関である日本学術振興会において、経費の返還を求めるとともに、当該資金への申請及び参加資格の制限措置(元助教:令和5年度~令和9年度(5年間)、教授:令和5年度(1年間))を講じた。 |
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