【基本情報】
番号 |
2022-10 |
不正行為の種別 |
盗用、改ざん、二重投稿 |
不正事案名 |
奈良学園大学・名古屋経済大学元教授による研究活動上の不正行為(盗用・改ざん等)の認定について |
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不正事案の研究分野 |
教育学 |
調査委員会を設置した機関 |
1:奈良学園大学 |
不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名 |
奈良学園大学 人間教育学部 元教授(同 名古屋経済大学 人間生活科学部 元教授) |
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不正行為と認定された研究が行われた機関 |
1:奈良学園大学 |
不正行為と認定された研究が行われた研究期間 |
- |
告発受理日 |
1:令和2年9月17日 |
本調査の期間 |
1:令和2年10月16日~令和4年6月30日 |
不服申立てに対する再調査の期間 |
- |
報告受理日 |
1:令和4年12月8日 |
不正行為が行われた経費名称 |
基盤的経費(私学助成を含む) |
【不正事案の概要等】
◆不正事案の概要 |
1.告発内容及び調査結果の概要 1 奈良学園大学 人間教育学部元教授の単著論文2編について、盗用、二重投稿、その他不適切な行為・研究倫理に反する行為の疑いがある旨の告発があった。予備調査の結果を受けて本調査を行うこととし、調査委員会を設置した。本調査の結果、論文1編に盗用(特定不正行為)、論文1編に二重投稿が行われたと認定した。 2 名古屋経済大学 奈良学園大学元教授が名古屋経済大学在籍時に論文についても盗用の疑いがあるとして、令和2年12月3日に奈良学園大学より調査協力の申し入れがあった。予備調査の結果を受けて本調査を行うこととし、調査専門委員会を設置した。本調査の結果、6編に盗用(特定不正行為)、2編に盗用及び改ざん(特定不正行為)を認定した。 2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について (1)調査委員会による調査体制 1 奈良学園大学 令和4年3月まで 14名(内部委員7名、外部委員7名) 令和4年4月以降 13名(内部委員6名、外部委員7名) 2 名古屋経済大学 4名(内部委員2名、外部委員2名) (2)調査の方法等 1)調査対象 ア)調査対象者:奈良学園大学 人間教育学部 元教授(同 名古屋経済大学 人間生活科学部 元教授) イ)調査対象論文 1 奈良学園大学 2編(学外の紀要論文:2018年(1編)、2020年(1編)) 2 名古屋経済大学 11編(学内の紀要論文:2016年(3編)、2017年(3編)、2018年(5編)) 2)調査方法 1 奈良学園大学 調査対象論文、研究データ等の比較分析、先行研究と調査対象論文との比較分析、調査対象者及び関係者からの聞き取り調査等 2 名古屋経済大学 調査対象論文と先行研究との比較分析、調査対象者からの弁明、共同執筆者からの意見聴取、研究費の使途に関する調査 (3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論 1 奈良学園大学 (結論) 1)認定した不正行為の種別 盗用、二重投稿 2)「不正行為に関与した者」として認定した者 奈良学園大学 人間教育学部 元教授 (認定理由) ・論文1編について、適切な引用の記載が認められず、引用箇所は総括に相当する部分で約6割がほぼ表記を変えずに転用されていた。また、元教授が考案した文章であるかのような体裁に書き換えられており、引用元文献の記述を故意による盗用と認定した。 ・元教授が過去に投稿した先行論文と新たに投稿した調査対象論文1編を比較分析した結果、同一文章を時系列加工しており、同一手法における議論の新展開及び新規考察の明記が不十分であり、過去の論文の体裁を加工したことは否めず、故意による二重投稿と認定した。 (不服申立て手続) 本調査結果を調査対象者に通知したところ不服申立てがなされたが、調査委員会での審議の結果、再調査は行わないと決定した。 2 名古屋経済大学 (結論) 1)認定した不正行為の種別 盗用、改ざん 2)「不正行為に関与した者」として認定した者 名古屋経済大学 人間生活科学部 元教授 (認定理由) ・論文8編について、先行研究を適切な手続きを経ることなく流用しており、盗用と認定した。また、盗用を認定した論文のうち2編については、先行研究記載の調査結果を真正ではないものに変更しており、改ざんについても認定した。 ・盗用を認定した論文のうち2編は、盗用部分が論文全体の過半を占めていた。 ・元教員は、先行研究を一時的に仮置きして原稿を作成したところ、自分の文章と思い違いをしたなどとして故意による盗用ではない旨などを主張したが、流用の状況等に基づき、元教員の主張は排斥された。 (不服申立て手続) 本調査結果を調査対象者に通知したところ不服申立てがなされたが、不服審査委員会での審議の結果、再調査は行わないと決定した。 3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について 基盤的経費(私学助成を含む)による研究成果であるが、不正行為を認定した論文の作成過程において、直接関係する経費の支出は認められなかった。 |
◆研究機関が行った措置 |
1.論文の取下げ 1 奈良学園大学 大学の規程に基づき、調査対象論文の取り下げを勧告する予定。 2 名古屋経済大学 盗用を認定した論文は図書館リポジトリにおいて閲覧を停止しているが、発行した雑誌編集委員会の審議を経て削除し、元教授に通知する予定。 2.被認定者に対する大学の対応(処分等) 1 奈良学園大学 元教授はすでに退職済みであり、退職後相当の期間が経過しているので、調査対象者に対する懲戒処分は行わず、研究費等の返還も求めない。 2 名古屋経済大学 元教授はすでに退職済みであり、退職後相当の期間が経過しているので、調査対象者に対する懲戒処分は行わず、研究費等の返還も求めない。 |
◆発生要因及び再発防止策 |
1.発生要因 1 奈良学園大学 被告発者は、定期的に大学が実施する研究倫理・コンプライアンスに関する研修を受講し、研究者等の行動規範及び公的研究費の使用に係る行動規範を遵守する旨の誓約書を提出しており、研究倫理に関する基本的な知識は持ち得ていたはずであるが、研究者の責務や研究倫理の理解が十分浸透せず、被告発者自身に自覚の欠如があったこと。 2 名古屋経済大学 ・大学採用当初から特定不正行為を意図的かつ継続的に行っており、研究者としての倫理観が著しく欠如していたこと。 ・大学で行ってきた研究倫理教育が不十分かつ不徹底であったと考えざるを得ないこと。 ・論文の掲載を許可した大学の紀要編集委員会によるチェック体制が十分機能していなかったこと。 2.再発防止策 1 奈良学園大学 1)研究倫理教育の強化 eラーニングに加えて、外部講師による対面・オンラインでの研究倫理・コンプライアンス研修について、授業の都合等により参加できない研究者等のために、後日視聴できる体制を整え、受講を徹底し、研究公正・研究倫理に対する理解の定着を図る。 2)啓発活動の推進 不正防止のための啓発活動について、ポスター掲示以外に、定期的にリーフレットを配付するなど、実施回数、方法を増やして取組を充実させる。 2 名古屋経済大学 1)個人の研究資質・能力を採用時に判定しうる能力の向上 研究は基本的に研究者の倫理観に依存している部分が大きいのが現状であるため、採用の際に審査対象論文を研究不正の有無の観点からもチェックを行い、採用時において研究資質・能力を判定し、不適格者の雇用を未然に防ぐことができるような体制を整備する。 2)研究倫理教育の徹底 日本学術振興会研究倫理e-ラーニングプログラム全員受講の徹底、理解度チェックによる理解の状況確認、それらの教授会等による周知・点検などの研究倫理教育を行っているが、さらに、科研費や学内研究費の申請時にそれらを受講していることの証明を求めるなど、研究倫理について十分理解していることを確認する。また、隔年で行っている科研費説明会における研究倫理に関する研修会に加えて、他の研究倫理に関する研修会を定期的に実施し、それらへのすべての教員の完全な受講の体制を確保する措置をとる。 3)研究不正のチェック体制の整備 大学の紀要への掲載について、編集委員会における不正検出ソフトの利用などによる不正チェック体制を早急に整備するとともに、投稿されたすべての原稿に対して、リサーチマップへの登録を義務付け、関係者によるチェックの機会を容易にする措置をとる。 |
◆配分機関が行った措置 |
資金配分機関である文部科学省において、不正行為が認定された研究者に対して、競争的研究費の資格制限の措置(令和5年度~令和10年度(6年間))を講じた。 |
研究公正推進室
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