昭和大学元講師による研究活動上の不正行為(捏造等)の認定について

【基本情報】

番号

2022-09

不正行為の種別

捏造、不適切なオーサーシップ

不正事案名

昭和大学元講師による研究活動上の不正行為(捏造等)の認定について

不正事案の研究分野

歯学

調査委員会を設置した機関

昭和大学

不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名

昭和大学 歯学部 元講師、元教授、元助教

不正行為と認定された研究が行われた機関

昭和大学

不正行為と認定された研究が行われた研究期間

告発受理日

令和3年7月15日

本調査の期間

令和4年1月13日~令和4年8月29日

不服申立てに対する再調査の期間

報告受理日

令和4年10月6日

不正行為が行われた経費名称

基盤的経費(私学助成を含む)

 

【不正事案の概要等】

◆不正事案の概要

1.告発内容及び調査結果の概要
 令和3年7月15日、ジャーナルのチーフエディターより歯学部元講師が発表した論文内の画像の不正疑義に関する調査依頼があった。予備調査を行った結果、本調査を行うこととし、調査委員会を設置した。本調査の結果、論文8編について、捏造及び不適切なオーサーシップが行われたと認定した。
 
2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について
(1)調査委員会による調査体制
  4名(内部委員2名、外部委員2名)
 
(2)調査の方法等
 1)調査対象
  ア)調査対象者:歯学部 元講師、元教授、元助教、その他共著者9名
  イ)調査対象論文:8編(海外の学術誌:2003年(1編)、2006年(2編)、2007年(3編)、2008年(1編)、2011年(1編))
 2)調査方法
  著者の役割調査、著者保有資料確認、筆頭著者への聞き取り調査、共著者への書面調査
 
(3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論
 (結論)
  1)認定した不正行為の種別
   捏造、不適切なオーサーシップ
  2)「不正行為に関与した者」として認定した者
   歯学部 元講師
  3)「不正行為に関与していないものの、不正行為のあった研究に係る論文等の責任を負う著者」として認定した者
   歯学部 元教授、元助教

 (認定理由)
  〇捏造
  対象論文8編全てにおいて、実験のデータである確証がない画像を複数の論文に別々の実験データと詐称して使用したことから捏造を認定した。
 
  〇不適切なオーサーシップ
  元講師は、研究に貢献(寄与、関与)がないにもかかわらず論文の共著者として記載し、共著者に対して最終原稿の確認の機会を与えず、承認を得ることなく投稿を行っていたため、対象論文8編全てにおいて不適切なオーサーシップを認定した。
 
  〇不正行為に関与していないものの、不正行為のあった研究に係る論文等の責任を負う著者
  元教授は、論文1編について、元講師の研究指導者として研究の客観性を確保するよう指導する必要があったことから、不正行為に関与していないものの、不正行為のあった研究に係る論文等の責任を負う著者として認定した。
  元助教は、元講師からの提案により筆頭著者及びコレスポンディングオーサーとして論文1編を作成・発表したことから、不正行為に関与していないものの、不正行為のあった研究に係る論文等の責任を負う著者として認定した。
 
3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
 不正行為を認定した論文1編について以下の支出があった。
  ・基盤的経費(私学助成を含む) 140,352円(雑誌掲載料)

◆研究機関が行った措置

1.論文の取下げ
 コレスポンディングオーサーの元講師及び元助教に対し、不正認定論文の取り下げ勧告を行った。
 
2.被認定者に対する大学の対応(処分等)
 元講師、元教授は大学を退職しており、処分は行わない。
 元助教は大学を退職しているが、兼任講師として委嘱されているため、就業規則に基づき、処分について検討を行う。
 
3.対象論文取り下げに伴い生じる措置
 不正認定論文2編は学位審査主論文として使用されているが、コレスポンディングオーサーである元講師による不正行為を認定し、取り下げ勧告を行ったため、大学大学院歯学研究科教授会において学位記の返還について検討を行う。

◆発生要因及び再発防止策

1.発生要因
 1)元講師は研究データを適切に保管管理し、研究の客観性を担保しなければならないにも拘わらず、研究グループの責任者として研究データの保管について明確なルールを定めず、データを使用する際にどの実験のデータであるかわからなくなってしまったこともあるほど杜撰な管理体制であった。また、各論文の実験データとして確証のない画像を論文に使用しており、複数の論文に別々の実験データとして同一画像を使用しており、元講師の研究公正に対する意識が欠如していたこと。
 2)元講師は、著者基準を理解していなかったと回答しており、著者としての責任に対する認識が欠如していたこと。
 3)不正行為が行われた当時は、大学が誠実な研究活動を行うためにデータ管理やオーサーシップ等研究倫理教育を研究機関として全学的に取り組めていなかったこと。
 4)元講師は、大学院生に対して英語での論文執筆を求めていたが、英語論文作成について大学院生に指導を行わず、自ら執筆し、投稿を行っており、指導者でありながら大学院生に対する指導を行わず、自ら単独で論文執筆を行ったこと。
 
2.再発防止策
 1)現在行っている以下の研究倫理教育を引き続き実施し、研究者倫理の向上を図る。
  ・全研究者に対して、APRINのe-ラーニングプログラムの受講を義務付けている。
  ・各講座・部門において指導的立場の研究者(教授・准教授・講師)に対して、令和3年度より大学独自の研究倫理教育の2年に1回の受講を義務付けている。
  ・大学院研究科の学生に対して、学位申請資格としてAPRINのe-ラーニングプログラムの受講を必須としている。
  ・学部学生に対しては、在学中に3回の研究倫理教育を行う。
 2)不適切なオーサーシップを防止する目的として、令和3年4月にオーサーシップポリシーを制定し、適切なオーサーシップについて注意喚起を行った。また、大学院研究科の学位申請時には論文の各著者の貢献内容を記載するオーサーシップ報告書の提出を必須とし、申請者の貢献と責任について審査を行っている。
 3)「昭和大学研究活動における不正防止規程」に基づき、大学に所属する研究者に対して研究資料等の適切な保存・管理を徹底するよう周知する。また、各研究組織の研究データの管理に関する規定遵守状況を確認するため、統括研究推進センターが無作為抽出した部門の研究資料等の保存・管理状況の確認を行う。

 

◆配分機関が行った措置

競争的資金等による経費の支出がなく、かつ平成27年度より前に不正が行われた事案であることから、研究機関及び研究者に対する競争的資金等の返還並びに研究者に対する競争的資金等の申請及び参加資格の制限は行わない。 

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究環境課

研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874
メールアドレス:jinken@mext.go.jp

(科学技術・学術政策局研究環境課研究公正推進室)