【基本情報】
番号 |
2022-07 |
不正行為の種別 |
捏造、改ざん、自己盗用、不適切なオーサーシップ |
不正事案名 |
麻布大学教員による研究活動上の不正行為(捏造・改ざん等)の認定について |
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不正事案の研究分野 |
獣医学 |
調査委員会を設置した機関 |
麻布大学 |
不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名 |
麻布大学 獣医学部 准教授3名、元教授(当時)3名 |
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不正行為と認定された研究が行われた機関 |
麻布大学 |
不正行為と認定された研究が行われた研究期間 |
平成9年~令和4年 |
告発受理日 |
令和3年9月17日 |
本調査の期間 |
令和4年2月15日~令和4年8月31日 |
不服申立てに対する再調査の期間 |
- |
報告受理日 |
令和4年10月3日 |
不正行為が行われた経費名称 |
科学研究費助成事業 |
【不正事案の概要等】
◆不正事案の概要 |
1.告発内容及び調査結果の概要 令和3年7月4日、獣医学部准教授の未公表論文に改ざんの疑いがある旨の告発があり調査を実施することとなった。調査の過程で、関連する論文(公表論文)にも疑義が確認されたことから、予備調査を行った結果、本調査を行うこととし、調査委員会を設置した。関連論文(公表論文)にかかる本調査の結果、21編の論文に捏造及び改ざん(特定不正行為)、自己盗用、不適切なオーサーシップを認定した。 2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について (1)調査委員会による調査体制 5名(内部委員2名、外部委員3名) (2)調査の方法等 1)調査対象 ア)調査対象者:獣医学部准教授(被告発者)、准教授2名、元教授(当時)3名、その他共著者24名 イ)調査対象論文:22編(海外の学術誌:2002年(1編)、2006年(2編)、2011年(3編)、2012年(1編)、2013年(3編)、2014年(1編)、2015年(3編)、2016年(3編)、2017年(3編)、2022年(2編)) 2)調査方法 受領したデータ及びマテリアル等の確認、調査対象論文と研究データ等の比較分析、調査対象者及び関係者へのヒアリング、当該論文作成にあたって執行した研究費の確認 (3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論 (結論) 1)認定した不正行為の種別 捏造、改ざん、自己盗用、不適切なオーサーシップ 2)「不正行為に関与した者」として認定した者 (捏造、改ざん、自己盗用、不適切なオーサーシップ) 獣医学部 准教授(被告発者) (不適切なオーサーシップ) 獣医学部 准教授2名、元教授(当時)3名 (認定理由) 計21編の論文について、次のような不正行為があった。 ○捏造、改ざん、自己盗用 提出された統計データと論文とのデータの不一致、実験ノートや生データが確認できないもの、写真の使い回し、過度の図の加工、同様の画像の使い回しが認められた。 ○不適切なオーサーシップ 研究に関与・貢献度のない者を当人の事前承諾なく共著者とした。 (不服申立て手続) 准教授(被告発者)から不服申立てがあり、調査委員会が不服申立ての審査をした結果、再調査を行うに足る理由及び資料の提示はなかったものと判断し、不服申立てを却下した。 3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について 不正行為を認定した論文について以下の支出があった。 ・科学研究費助成事業 72,212円(不正認定論文の研究成果の発表に伴う旅費、参加費) |
◆研究機関が行った措置 |
1.論文の取下げ 准教授(被告発者)に対して不正認定論文の取り下げを行うよう勧告した。 2.被認定者に対する大学の対応(処分等) 学内処分等については、今後大学の就業規則等に基づき、検討を行う予定。 3.競争的資金等の執行停止等の措置 准教授(被告発者)の科学研究費助成事業の研究課題の研究費について、大学の規程に基づき使用中止を命じた。 |
◆発生要因及び再発防止策 |
1.発生要因 ・准教授(被告発者)は対外的な業績(論文数、科研費取得状況)を維持することに執着していた傾向があり、研究の科学的目的から社会的評価へと研究の動機づけが変化したと考察されること。 ・准教授(被告発者)は大学が実施する研究倫理教育を受講済みであったが、研究データの適正・公正な使用方法、論文執筆に関する研究倫理の認識が欠如していたこと。 ・論文化前のデータや統計値を共著者に共有していないなど、准教授(被告発者)の共著者に対する情報の非公開があったこと。 ・研究指導する立場にありながら、学生と論文投稿用のデータを並べて直接ディスカッションするようなことをせず、研究室のセミナーのような形でのみ進捗確認を行なっていたこと。 ・ほとんどの動物実験データと分析結果を出した学生に対し、データ使用に関する事前の了解を得ず、また、著者に加える学生の取捨選択を准教授(被告発者)のみが実施していたこと。 ・准教授(被告発者)がすべての決定権を単独で有し、データ加工、論文執筆から投稿までを繰り返し経験することで、次第に研究倫理の重要性よりも唯我独尊的な研究姿勢を優先するようになったと考えられること。 2.再発防止策 1)学長より、公正かつ責任ある研究活動及び研究不正防止に関するメッセージを発信する。学長メッセージは大学ホームページでの公開、大学内各所にポスターを掲示し、大学において研究不正は決して許されないことであり、懲戒処分の対象となることを周知徹底する。 2)研究倫理教育の受講をこれまでどおり継続する事に加え、受講管理のより一層の徹底を図る。また、倫理講習会において研究不正について重点的に取り扱うこととし本事例のほか、他の研究教育機関での事例などを学習する体制を整える。教員にあっては、所属研究室内で所属学生等に研究倫理に関する教育や周知を行うこととし、研究倫理に関する意識付けを徹底する。 3)研究者が個人で研究データを記録・保存することが捏造又は改ざんを生みやすい環境を生むことを踏まえ、大学、学部、研究科単位での研究データの一元的記録・保存・管理を行うためのデータ管理体制を整備すべく、昨今のオープンサイエンスの考え方とセキュリティについて検討ならびにセミナー開催を行う。 4)学術論文作成に関するオーサーシップ・ポリシーを策定する。学術論文の作成時には、共著者間で研究データの検証とその評価を必ず行うことをルールとする。 5)研究不正が起こりにくい環境を醸成することを目的とし、大学内各所の掲示板でポスターを貼付し、研究不正告発の受付窓口が置かれていることを改めて周知徹底する。 |
◆配分機関が行った措置 |
特定不正行為(捏造・改ざん)が認定された論文は、科学研究費助成事業の成果として執筆された論文であり、かつ、科学研究費助成事業について捏造・改ざんと直接的に因果関係が認められる経費の支出があった。このため、資金配分機関である日本学術振興会において、経費の返還を求めるとともに、当該資金への申請及び参加資格の制限措置(令和5年度~令和14年度(10年間))を講じた。 |
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