摂南大学、常葉大学教員等による研究活動上の不正行為(サラミ出版、多重投稿、不適切なオーサーシップ)の認定について

【基本情報】

番号

2022-1

不正行為の種別

サラミ出版、多重投稿、不適切なオーサーシップ

不正事案名

摂南大学、常葉大学教員等による研究活動上の不正行為(サラミ出版、多重投稿、不適切なオーサーシップ)の認定について

不正事案の研究分野

経営情報、マーケティング

調査委員会を設置した機関

摂南大学、常葉大学、A公立大学

不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名

摂南大学教員、常葉大学元教員、A公立大学教員、B民間企業社員、C私立短期大学元教員、F自由業、G私立大学教員、H民間企業代表

不正行為と認定された研究が行われた機関

摂南大学、常葉大学、B民間企業、C私立短期大学、G私立大学、H民間企業、I私立大学短期大学

不正行為と認定された研究が行われた研究期間

平成26年~平成31年

告発受理日

平成31年4月26日・令和元年5月7日(第1、第2の告発)、令和元年7月26日(第3の告発論文群AB、論文群C)

本調査の期間

令和元年6月26日~令和2年10月22日(第1、第2の告発)、令和元年10月7日~令和3年9月22日(第3の告発論文群AB)、令和元年10月7日~令和3年8月11日(第3の告発論文群C)

不服申立てに対する再調査の期間

令和3年8月16日~令和3年9月22日、令和3年11月18日~令和3年12月13日(第1、第2の告発)、令和3年11月18日~令和3年12月13日(第3の告発論文群AB)、令和3年10月27日~令和3年12月15日(第3の告発論文群C)

報告受理日

令和4年4月22日(第1、第2の告発、第3の告発論文群AB)、令和4年4月19日(第3の告発論文群C)

不正行為が行われた経費名称

科学研究費助成事業、基盤的経費(私学助成を含む)

 

【不正事案の概要等】

◆不正事案の概要

1.告発内容及び調査結果の概要
 平成31年4月、令和元年5月、同年7月の3回にわたり、複数論文について、多重投稿や著しい内容重複の疑いありとする内容の告発があった。被告発者が所属する大学において予備調査を行った結果、摂南大学、常葉大学、A公立大学が本調査の実施を決定し、告発の案件単位で調査委員会(合同調査委員会)を設置した。本調査の結果、計24編の論文について、サラミ出版、多重投稿、不適切なオーサーシップを認定した。
 
2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について
(1)調査委員会による調査体制
  第1の告発:12名(内部委員6名、外部委員6名)
  第2の告発:8名(内部委員4名、外部委員4名)
  第3の告発論文群AB:8名(内部委員4名、外部委員4名)
  第3の告発論文群C:4名(内部委員2名、外部委員2名)
 
(2)調査の方法等
 1)調査対象
  ア)調査対象者
  ・第1の告発:A公立大学教員、摂南大学教員、常葉大学元教員、B民間企業社員
  ・第2の告発:摂南大学教員、常葉大学元教員、C私立短期大学元教員、その他共著者2名
  ・第3の告発論文群AB:摂南大学教員、常葉大学元教員、C私立短期大学元教員、F自由業、G私立大学教員、H民間企業代表、その他共著者5名
  ・第3の告発論文群C:常葉大学元教員
 
  イ)調査対象論文
  ・第1の告発:7編(海外の学術誌:2018年(6編)、学内の紀要論文:2018年(1編))
  ・第2の告発:3編(海外の学術誌:2014年(1編)、2016年(1編)、学会発表:2015年(1編))
  ・第3の告発論文群AB:15編(海外の学術誌:2015年(1編)、2016年(4編)、2017年(4編)、2019年(1編)、学内の紀要論文:2015年(1編)、2016年(1編)2017年(1編)、2018年(1編)、学会発表:2015年(1編))
  ・第3の告発論文群C:3編(海外の学術誌:2017年(3編))
 
 2)調査方法
 ・告発内容の確認、予備調査結果の確認
 ・合同本調査の実施に関する基本方針の確認
 ・調査対象論文の確認及び論文間の比較分析
 ・調査対象者からの事情聴取
 
(3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論
 (結論)
  1)認定した不正行為の種別
   サラミ出版、多重投稿、不適切なオーサーシップ
  2)「不正行為に関与した者」として認定した者
  (サラミ出版、多重投稿、不適切なオーサーシップ)
    摂南大学教員、常葉大学元教員
  (サラミ出版、不適切なオーサーシップ)
    C私立短期大学元教員
      (サラミ出版)
    A公立大学教員、B民間企業社員、F自由業、G私立大学教員、H民間企業代表
 
 (認定理由)
  計24編の論文について、以下のような不正行為があった。
  ・第1の告発: 論文7編において、1編の論文にまとめるべき成果等について、先行論文へのリファレンスなく複数の独立した論文として出版されていた。(サラミ出版)
  ・第2の告発:論文1編において、多数の箇所で先行論文とほぼ同様の文章を使って別個の論文として発表していた。(多重投稿)また、論文に関与していないものを共著者として掲載した。(不適切なオーサーシップ)
  ・第3の告発論文群AB:論文計14編について、本来の論文に至る考察の1資料でしかない実験結果を主たる違いとし、独立した論文として相互のリファレンスも不十分なまま連続的に出版した。(サラミ出版)
  ・第3の告発論文群C:論文2編において、適切なリファレンスを欠き、外形的に著しい重複のある論文を別個の論文として発表。(多重投稿)
 
 (不服申立て手続、再調査結果)
  一部の調査対象者より、認定内容に関する異議申立てがあり、再調査の実施を決定。再調査では、調査対象者と専門領域を同じくする研究者に参考意見を求める等、改めて審議を行った。再調査の結果、「不適切なオーサーシップ」の認定を追加したほか、認定内容や経費の支出に係る一部を修正して認定した。
 
3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
 科学研究費助成事業及び基盤的経費(私学助成を含む)による研究成果であるが、不正行為を認定した論文の作成過程において、直接関係する経費の支出は認められなかった。

◆研究機関が行った措置

1.論文の取下げ
 各調査実施大学の学長より、不正認定された全ての論文の取下げ勧告を行った。
 
2.被認定者に対する大学の対応(処分等)
[摂南大学]
 被認定者に対して、懲戒(譴責)の処分を決定。
 
[常葉大学]
 被認定者について、本調査以前に大学を退職しているため、学内規程等に基づく処分の対象とはしない。
 
[A公立大学]
 被認定者の不正事案への関与の時期が前任校在籍時であることから、前任校へ調査結果を報告。

◆発生要因及び再発防止策

1.発生要因
 ・被認定者や調査対象者において、「好ましくない研究行為(QRP)」に関する認識、不正を行うことによる学術の発展における悪影響に関する認識が不足していた。
 ・紀要を除いて、投稿先はすべていわゆるハゲタカ出版社の疑いがあり、適切な査読や確認が行われなかった可能性がある。投稿先の妥当性を確認する体制が整っていなかったことも発生要因の一つである。
 
2.再発防止策
[摂南大学]
 ・学長より、大学の全構成員に対し、研究不正に関する注意喚起を行い、特定不正行為だけでなく、「好ましくない研究行為(QRP)」に対しても、学術の健全な発展を損なうものとして厳正に対処する旨を表明。
 ・不正行為防止に係る責任体系を見直し、関連するガバナンスの強化。
 ・他大学発生事例の共有、全学的な意思決定機関における再発防止案の審議とその内容の周知。
 ・学部等が運営する紀要等について、第三者による査読の導入。
 ・研究倫理教育の受講周期を倫理教育責任者の判断で短縮を可能とした。
 ・研究倫理委員会に全ての学部長を加え、不正防止のガバナンス体制の見直しを実施。
 ・論文の重複チェックシステム(iThenticate)の導入。
 ・論文投稿先に関する指針策定に着手するとともにいわゆるハゲタカ出版社への投稿に関する注意喚起(業績からの除外、経費返還)の実施。
 
[常葉大学]
 ・学長を筆頭に担当副学長、学部長、研究科長が研究倫理教育に責任を持ち、全学的な研究不正の防止及び研究倫理意識の醸成に取り組む。
 ・競争的研究費の申請・交付にあたり、e-ラーニング等の教材の定期的受講。
 ・本事案に関する調査報告会やいわゆるハゲタカ出版社への投稿リスクやケーススタディを取り入れた研究倫理に関する研修会を開催し、教職員に対し、注意喚起の機会を設け、研究者倫理の向上及び不正行為防止の意識を高める。
 ・学内規程の一部を改正し、研究活動における不適切な行為を含む研究不正の定義を明確化し、資料、情報及びデータ等の利用や管理について適切な措置を求め、研究活動における遵守すべき教職員の責務について規定。
 
[A公立大学]
 ・研究倫理教育及びコンプライアンス教育の受講を徹底するとともに、el CoREに加え、令和3年度からe-APRINの本格導入に着手し、令和4年度より全教員受講分の予算を確保。
 ・学内の研究不正防止規定について、研究倫理教育受講の受講義務、告発等対応窓口、予備調査の具体的内容、調査委員会の役割、不正にかかる判断基準の明記などの一部を改正
 ・文部科学省通知「研究活動における不正行為の防止の徹底について」を全教員へ周知。

 

◆配分機関が行った措置

特定不正行為が認定されていないため、研究者に対する措置は講じない。 

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究環境課

研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874
メールアドレス:jinken@mext.go.jp

(科学技術・学術政策局研究環境課研究公正推進室)