旭川医科大学教員による研究活動上の不正行為(二重投稿)の認定について

【基本情報】

番号

2022-2

不正行為の種別

二重投稿

不正事案名

旭川医科大学教員による研究活動上の不正行為(二重投稿)の認定について

不正事案の研究分野

医学

調査委員会を設置した機関

旭川医科大学

不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名

旭川医科大学 准教授、元教授

不正行為と認定された研究が行われた機関

旭川医科大学

不正行為と認定された研究が行われた研究期間

平成31年~令和2年

告発受理日

令和2年10月30日

本調査の期間

令和2年12月25日~令和4年1月31日

不服申立てに対する再調査の期間

報告受理日

令和4年3月31日

不正行為が行われた経費名称

科学研究費助成事業、基盤的経費(運営費交付金)

 

【不正事案の概要等】

◆不正事案の概要

1.告発内容及び調査結果の概要
 令和2年10月26日に、旭川医科大学准教授が令和2年6月に英文誌に掲載した論文について、令和2年5月に発行された国内学会誌に掲載された論文との二重投稿の疑いがある旨の告発があった。予備調査の結果を受けて本調査を行うこととし、調査委員会を設置した。本調査の結果、論文1編について二重投稿が行われたと認定した。
 
2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について
(1)調査委員会による調査体制
  8名(内部委員4名、外部委員4名)
 
(2)調査の方法等
 1)調査対象
  ア)調査対象者:旭川医科大学 准教授、元教授、その他共著者5名
  イ)調査対象論文:1編(英文誌に掲載された英文論文:2020年)
 2)調査方法
  被告発者への事情聴取、共著者へのヒアリング、和文論文及び英文論文による二重投稿箇所の精査・確認、関係経費の支出状況の確認を行った。
 
(3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論
 (結論)
  1)認定した不正行為の種別
    二重投稿
  2)「不正行為に関与した者」として認定した者
    旭川医科大学 准教授、元教授
 
 (認定理由)
  責任著者である准教授は、先行投稿した学会の投稿規定や二重出版の諸条件等を確認することなく投稿に至ったことから、研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったものと言わざるを得ず、二重投稿を認定した。
元教授は、論文掲載前に二重投稿の懸念をもった状況であったにもかかわらず、共著者として論文の修正や撤回といった行為を行わなかったことから、責任著者ではなく論文執筆にも携わっていないが、研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったものと言わざるを得ず、二重投稿を認定した。
 
3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
 科学研究費助成事業、基盤的経費(運営費交付金)による研究成果であるが、不正行為を認定した論文の作成過程において、直接関係する経費の支出は認められなかった。

◆研究機関が行った措置

1.論文の取下げ
 調査対象論文は、すでに取り下げられており、和文論文の投稿先である学会により、二重投稿・出版であると認定され、准教授へ書面による厳重注意処分が科された。
 
2.被認定者に対する大学の対応(処分等)
 准教授は、学内規程(職員懲戒規程)に基づき譴責処分とした。元教授はすでに退職しており学内規程が適用されないが、職員であったならば「譴責」処分に相当する事案である旨の文書を通知した。

◆発生要因及び再発防止策

1.発生要因
 准教授は、研究者としてわきまえるべき責務や研究倫理意識を欠き、投稿先等の投稿規定等を確認せずに、先行投稿した和文論文とまったく同一の論文でなければ問題ないという認識のもと、英文論文を投稿した。これは、被告発者個人の研究に対する姿勢の問題によるところが大きいが、組織として教職員全体の不正防止等への教育が不足していることも一因であると考えられる。なお、准教授及び共著者(当時大学在籍者)はすべて研究倫理教育を受講済みであった。しかし、論文投稿時の注意点や適切なオーサーシップのあり方等についての講習内容が不十分であったことは否定できない。
 責任著者である准教授が責任をもって論文内容を確認すべきところであるが、共著者を含め、研究チームとして論文内容が先行論文と本質的に同じ論文であることを十分に確認しなかったことが一因であると考えられる。
 
2.再発防止策
 発生要因を踏まえ、論文投稿に際しての留意点、管理責任体制等について、さらに全職員に対して以下の注意喚起を行った。
 1) 論文投稿時における留意点を再度周知徹底し、特定不正行為である「捏造」「改ざん」「盗用」(自己盗用も含め)のみならず、「二重投稿の危険性」や「適切なオーサーシップのあり方」についても改めて注意喚起を行い、論文内容については、責任著者が責任をもって確認すべきであることに加え、共著者も十分確認すべきであることを再認識させる。
また、規程の見直しや研究者ハンドブックの改訂等を行い再周知すると共に、研究倫理講習等に論文投稿時における留意点を追加することで、今後も定期的に周知する仕組みを構築し、併せてe-ラーニングシステムによる理解度確認等の実施も検討する。
 2) 管理責任体制等を改めて周知し、研究不正を未然に防ぐためには、コンプライアンス推進責任者等が適切に指導することが重要であることを再認識させるとともに、不正行為の告発等受付窓口について、告発のみでなく相談窓口として利活用できるよう改めて周知して、研究者が報告・相談できる環境であることを再認識させる。

 

◆配分機関が行った措置

特定不正行為が認定されていないため、研究者に対する措置は講じない。 

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究環境課

研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874
メールアドレス:jinken@mext.go.jp

(科学技術・学術政策局研究環境課研究公正推進室)