【基本情報】
番号 |
2021-13 |
不正行為の種別 |
盗用 |
不正事案名 |
研究活動上の不正行為(盗用)の認定について |
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不正事案の研究分野 |
人文社会科学 |
調査委員会を設置した機関 |
大学 |
不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名 |
准教授 |
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不正行為と認定された研究が行われた機関 |
大学 |
不正行為と認定された研究が行われた研究期間 |
平成27年度~平成28年度 |
告発受理日 |
令和3年3月22日 |
本調査の期間 |
令和3年5月14日~令和3年8月25日 |
不服申立てに対する再調査の期間 |
- |
報告受理日 |
令和4年3月7日 |
不正行為が行われた経費名称 |
科学研究費助成事業 |
【不正事案の概要等】
◆不正事案の概要 |
1.告発内容及び調査結果の概要 令和3年3月、大学研究所の編集委員会に、准教授の論文に盗用の疑いがある旨の告発があり、予備調査を行った結果、本調査を行うこととし、調査委員会を設置した。本調査の結果、論文1編について盗用(特定不正行為)を認定した。 2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について (1)調査委員会による調査体制 6名(内部委員3名、外部委員3名) (2)調査の方法等 1)調査対象 ア)調査対象者:准教授 イ)調査対象論文:1編(学内の紀要論文:2017年) 2)調査方法 告発内容の確認、予備調査結果の精査、調査対象論文の研究ノート、データ等の収集と分析、調査対象論文の元となったシンポジウムの音声記録、配布資料等の検討、先行論文との比較分析、調査対象者からの弁明書の精査 (3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論 (結論) 1)認定した不正行為の種別 盗用 2)「不正行為に関与した者」として認定した者 准教授 (認定理由) 引用であるとする適切な記載が認められない、先行論文と極めて類似する表現が多数含まれており、その表現方法の類似性と記述内容の同一性は、偶然の一致とみなすことができるレベルを遥かに超えていた。 3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について 科学研究費助成事業による研究成果であるが、不正行為を認定した論文の作成過程において、直接関係する経費の支出は認められなかった。 |
◆研究機関が行った措置 |
1.論文の取下げ 被認定論文の取り下げを勧告した。 2.被認定者に対する大学の対応(処分等) 学校法人の就業規則及び懲戒手続きに関する規程に基づき、「懲戒処分(停職1か月)」とした。 |
◆発生要因及び再発防止策 |
1.発生要因 本件の主たる発生要因は、調査対象者における研究倫理意識の欠如である。論文中、多数の盗用(5頁中8箇所)が認められたこと、そして弁明において調査対象論文をシンポジウムの報告文であり、論文ではないと主張していることから、不正調査委員会は、本件を調査対象者の引用ルールに関する規範意識の欠如、および口頭発表ベースの報告書に関しては引用ルールを順守しなくてもよいとする安易な考えに起因するものである。 大学では、定期的に研究倫理研修会(全教員対象)やコンプライアンス研修会(科研費採択者対象)を実施しており、引用ルールを遵守することの重要性についても繰り返し注意喚起をしてきた。調査対象者も研究倫理研修会とコンプライアンス研修会を受講していたにも関わらず、このような事態を引き起こしたのは、本人の引用ルールに関する規範意識の欠如と口頭発表ベースの報告に関する認識の歪みによるものである。 2.再発防止策 発生要因を踏まえ、次の3項目を研究不正防止強化の要点とする再発防止策を講ずる。 1.本学における研究倫理教育の強化 ①大学に所属する全専任教員等を対象として実施する。(実施主体:学術情報センター) (ア)研究倫理教育として実施してきた研究倫理研修会やコンプライアンス研修会を整理統合し、現在、科研費の申請者に限定されていたり、3年に1回が義務付けられていたりするなどの体制を改め、全専任教員に1年1回以上の受講を義務づける。 (イ)研究倫理に関わる啓発活動を1年に4回以上実施する。(具体的には、研究不正の事例の紹介等、研究倫理に関わる情報の提供をメール等で実施する。) ②研究所に所属する全所員を対象として実施する。(実施主体:各研究所) 研究所の共同研究活動、紀要の発行、さらには、所員の研究倫理教育について、研究所に義務づける。 これにより、大学として実施する「2.投稿におけるチェックリスト作成の義務化」に加えて、それぞれの研究所の研究領域・活動の特色等を踏まえた研究所独自の研究倫理教育の計画と実施が可能となる。 (具体的には、1年1回以上、全所員を対象とした1回30分以上の研究倫理教育の実施を研究所に義務づける。) 2.投稿におけるチェックリスト作成の義務化(実施主体:各研究所及び紀要編集委員会) 本学教員が論文を投稿するに際しては、当該研究の計画から論文執筆までのあらゆる段階で、研究不正に該当するような行為がないかどうかの自己確認を行い、そのチェックリストを各自が保管する。とくに本学紀要への投稿については、このチェックリストを研究所および紀要編集委員会へ提出することを義務づける。(具体的には、全学の共通チェックリストを本学独自に作成し、投稿時にその提出を著者に義務づけ、内容の確認を研究所及び紀要編集委員会に義務づける) ※当該チェックリストに、無料で使用できるコピペチェッカーを用いたセルフチェックの結果を含める。 3.研究不正防止委員会の学術情報センターの外部委員会化(規程改訂) 研究不正防止活動を含む研究倫理教育においては、現行の規程においては、学術情報センターと研究不正防止委員会が重複し、かつ、独立して担当することになっている。学術情報部長が両組織の長を兼務しているとはいえ、研究倫理教育の立案から実施までを一貫して組織的に扱うことは研究不正防止においても重要である。したがって、学術情報センター規程を改訂し、研究不正防止委員会を学術情報センターの外部委員会として位置付けることとする。 なお、上記の「1.本学における研究倫理教育の強化」及び「2.投稿におけるチェックリスト作成の義務化」は、2022年4月から実施することとし、「3.研究不正防止委員会の学術情報センターの外部委員会化」については、2022年3月中に規程を改訂し、2022年4月から施行する。 |
◆配分機関が行った措置 |
科学研究費助成事業について、盗用と直接的に因果関係が認められる経費の支出はなかったため、返還を求めるものではないが、盗用が認定された論文は科学研究費助成事業の成果として執筆された論文である。このため、資金配分機関である日本学術振興会において、資格制限の措置(令和4年度~令和9年度(6年間))を講じた。 |
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