人間文化研究機構国立国語研究所准教授による研究活動上の不正行為(盗用)の認定について

【基本情報】

番号

2021-12

不正行為の種別

盗用

不正事案名

人間文化研究機構国立国語研究所准教授による研究活動上の不正行為(盗用)の認定について

不正事案の研究分野

日本語教育

調査委員会を設置した機関

人間文化研究機構

不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名

人間文化研究機構国立国語研究所日本語教育研究領域 准教授

不正行為と認定された研究が行われた機関

人間文化研究機構

不正行為と認定された研究が行われた研究期間

平成22年度~令和元年度

告発受理日

令和2年9月9日

本調査の期間

令和2年11月4日~令和3年10月28日

不服申立てに対する再調査の期間

報告受理日

令和4年3月17日

不正行為が行われた経費名称

科学研究費助成事業
基盤的経費(運営費交付金)

 

【不正事案の概要等】

◆不正事案の概要  

1.告発内容及び調査結果の概要
 令和2年9月2日、人間文化研究機構国立国語研究所日本語教育研究領域の准教授(以下「准教授」という。)が国内外の研修会等講演時に使用した13編の発表資料について、盗用が行われているとの告発が機構にあった。告発を受理した上、予備調査を行った結果、本調査を行うこととし、調査委員会を設置した。本調査の結果、13編の発表資料について盗用を認定した。
 
2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について
(1)調査委員会による調査体制
   4名(内部委員2名、外部委員2名)
 
(2)調査の方法等
 1)調査対象
  ア)調査対象者:人間文化研究機構国立国語研究所日本語教育研究領域 准教授
  イ)調査対象論文:13編(国内外の研修会等講演(発表):2010年(1編)、2015年(1編)、2016年(4編)、2017年(2編)、2018年(4編)、2019年(1編))
 2)調査方法
   告発内容の確認、予備調査結果の確認、先行研究成果発表資料と調査対象発表資料等の比較確認、調査対象者からのヒアリング・弁明の検討
 
(3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論
 (結論)
  1)認定した不正行為の種別
    盗用
  2)「不正行為に関与した者」として認定した者
    人間文化研究機構国立国語研究所日本語教育研究領域 准教授
 
 (認定理由)
  1編については、引用に当たる部分が明確に示されていないことから著しく不適切であり、さらに被告発者が告発者の了解の範囲を逸脱して流用したものと認められる。
その他12編については、謝辞や参照等の記載が認められるものの不十分であり、さらに、複数年度にわたり改められることなく繰り返し行われていることから、これらの行為は研究者としてわきまえるべき基本的注意義務を著しく怠っているものと認められる。
 
 (不服申立て)
  認定結果に対して准教授から不服申立てがあったが、調査委員会で審議を行い、再調査を行わず不服申立てを却下することを決定した。
 
3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
 以下について、不正行為を認定した研究発表に係る交通費や滞在費等直接関連がある経費支出があった。
 ・基盤的経費(運営費交付金) 755,866円(外国旅費、国内旅費)
 ・科学研究費助成事業 1,089,008円(外国旅費)

◆研究機関が行った措置

1.論文の取下げ
 不正行為を認定した13編のうち認定時にWEB掲載されていた1編について、掲載取下げ等の適切な手続きをとるよう勧告を行った。
 
2.被認定者に対する機関の対応(処分等)
 人事処分について手続き中。

◆発生要因及び再発防止策

1.発生要因
 准教授が研究発表を行う際に当然守るべき研究者倫理(他者の研究成果については適切な引用をすること等)に関してその重要性を十分に認識していなかったことにある。また、初めに発表した2010年は、組織的に十分な教育・研修が行われていなかったことも要因であると考える。また、2015年以降は、機構による研究倫理教育が実施されていたにもかかわらず発生しており、准教授が不正行為の具体例や出典の明示等、研修で学んだことをしっかり実践していなかったと言える。この点は、受講者が研究倫理を理解し、習得できたかどうかの確認を組織として十分に行ってこなかったことが副次的な遠因と言える。
 
2.再発防止策
 人間文化研究機構として再発防止策に取り組むとともに、機構内の各研究所へ本事案を共有し、今後の機構の研究倫理教育におけるガバナンスの強化を図る。

 ○機構長による行動規範の周知徹底
  機構長が、そのリーダーシップの下、各機関に「大学共同利用機関法人人間文化研究機構における研究活動に係る行動規範」(以下、「行動規範」という。)を改めて通知し、研究公正の周知徹底を図る。
 ○国立国語研究所における再発防止策
 1)ケーススタディの実施
   国立国語研究所においては、今後全ての教職員が研究公正についての認識を不断に見直す機会を設けることとし、機構主催の研究倫理研修会の内容に基づいた研究所独自のケーススタディの実施を通して類似事案の再発防止の徹底を図る。
 2)チェックリスト及び誓約書の提出
   ケーススタディの実施後、理解度の確認のためのチェックリストを提出させるとともに、研究不正行為を行わない旨の「誓約書」を提出させることとする。
 ○人間文化研究機構における研究倫理教育実施体制の見直し
 1)研究倫理教育の受講対象者へのフォローアップについて
   機構の定める研究倫理教育(日本学術振興会によるe-Learning「エルコア」の受講等)を、機構及び研究所への採用※後原則2週間以内に受講することに加えて、新たに3年度ごとに受講することとする。
 ※当該研究者が研究機関に所属、または当該研究機関で受入開始(外国人研究者等)、研究プロジェクトへの参画(所属機関において研究倫理教育を未受講の機構外研究者等)等を含む。
 2)研究倫理研修会への参加について
   機構主催で実施している研究倫理研修会への参加について、これまでは研究倫理教育等の既受講者の参加を任意としてきたが、令和4年度より毎年度の参加を必須とし、研修会当日都合がある者は後日動画視聴等による参加を確認することとする。
   同研究倫理研修会においては、機構における不正行為防止体制、通報・相談窓口の説明の他、具体的事例の紹介等を行い、さらに理解度チェックリストに基づく確認等を実施している。今後もこれらを確実に実施していくとともに、今回の事例を受けた適切な引用方法の説明や具体的事例の紹介、剽窃チェックシステムの利用事例の紹介等の啓発活動を充実させることとする。

 

◆配分機関が行った措置

 資金配分機関である文部科学省において、不正行為が認定された研究者等に対して、競争的資金等の資格制限の措置(令和4年度~令和8年度(5年間))を講じた。また、特定不正行為(盗用)が認定された発表資料は、科学研究費助成事業の成果として執筆された発表資料であり、かつ、科学研究費助成事業について盗用と直接的に因果関係が認められる経費の支出があった。このため、資金配分機関である日本学術振興会において、経費の返還を求めるとともに、当該資金への申請及び参加資格の制限措置(令和4年度~令和8年度(5年間))を講じた。 

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究環境課

研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874
メールアドレス:jinken@mext.go.jp

(科学技術・学術政策局研究環境課研究公正推進室)