北里大学元教授による研究活動上の不正行為(改ざん)の認定について

【基本情報】

番号

2021-09

不正行為の種別

改ざん

不正事案名

北里大学元教授による研究活動上の不正行為(改ざん)の認定について

不正事案の研究分野

医学・放射線科学

調査委員会を設置した機関

北里大学

不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名

北里大学 医療系研究科 元教授

不正行為と認定された研究が行われた機関

北里大学

不正行為と認定された研究が行われた研究期間

告発受理日

令和3年7月6日

本調査の期間

令和3年10月4日~令和3年12月16日

不服申立てに対する再調査の期間

報告受理日

令和4年3月29日

不正行為が行われた経費名称

基盤的経費(私学助成)

 

【不正事案の概要等】

◆不正事案の概要

1.告発内容及び調査結果の概要
 令和3年6月30日に、北里大学医療系研究科の教授に対して、学会抄録を作成するにあたって実験データの書き換えを指示された旨の告発があった。予備調査の結果を受けて本調査を行うこととし、調査委員会を設置した。本調査の結果、学会抄録について改ざん(特定不正行為)を認定した。
 
2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について
(1)調査委員会による調査体制
   7名(内部委員3名、外部委員4名)
 
(2)調査の方法等
 1)調査対象
  ア)調査対象者:北里大学医療系研究科 元教授
  イ)調査対象論文:1編(学会発表:2021年)
 2)調査方法
   通報者からの申立書、日本放射線技術学会総会学術大会抄録及び被通報者から提出された意見書の精査及びヒアリングを行い、事実関係等を確認した。
 
(3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論
 (結論)
  1)認定した不正行為の種別
    改ざん
  2)「不正行為に関与した者」として認定した者
    北里大学医療系研究科 元教授

  (認定理由)
  告発者が発表した学会の抄録に、臨床では現実的なものではないとの理由から、実際の実験とは異なる実験データの書き換えを指示し、作成・登録させたことについて、改ざんを認定した。
 
 (不服申立て手続)
  本調査結果を被通報者に通知したところ、不服申立てがなされたが、再調査を求める理由が従前と変わらないものであり、再調査の実施を要するとは認められないため、不服申立てを却下した。
 
3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
 不正行為を認定した論文について以下の支出があった。
 ・基盤的経費(私学助成) 13,000円(学会参加費)

◆研究機関が行った措置

1.論文の取下げ
 学会抄録の取下げ又は訂正の措置を勧告した。
 
2.被認定者に対する大学の対応(処分等)
 依願退職(令和4年3月31日付)のため、懲戒委員会への諮問を行わず、調査結果の公表により本人の反省を促し、研究倫理観の改善に資するよう、厳重注意処分とした。(令和4年2月26日開催の臨時理事会にて審議、承認)

3.競争的資金等の執行停止等の措置
 研究費の使用中止を命じた。(令和4年2月26日開催の臨時理事会にて審議、承認)

◆発生要因及び再発防止策

1.発生要因
 被通報者は、実験の前提条件を12㏉から4㏉に書き換えたことは自身も認めていたが、学会への抄録登録及び発表について、社会に与える影響を十分に認識していなかった。これは、被通報者自身が研究に対する責任感に欠け、研究不正に関する理解が欠如していたと考えられる。
 
2.再発防止策
 研究活動不正防止倫理委員会は本調査の結果を踏まえ、学長に対し下記のとおり是正措置等について勧告を行った。

 ①研究者に対する研究倫理教育の徹底
  本事案は、被通報者の研究に対する責任及び研究不正に関する理解の欠如により発生した。被通報者は、何処に不正があり、何が問題なのか理解していない状況である。研究者への研究倫理教育を徹底されたい。
 ②研究における教員と学生のコミュニケーション(相談・協議・指導)の見直し
  被通報者は、「通報者と何度も議論を重ねており、一方的に書き換えを指示したことはない」と主張しているが、本事案は、通報者からの申立てにより発覚した。教員と学生のコミュニケーションの在り方を再考し、あるべき姿へ見直されたい。
 ③学生が相談しやすい環境の整備
  本事案は、通報者が第三者への相談を早期に行うことで、研究活動上の不正を防止できたと思料される。研究活動において何らかの懸念が生じた際に、学生が気軽に相談できる環境を整備されたい。
 
 大学では、令和3年2月1日付「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」の改正を踏まえ、令和4年3月1日に教職員(公的研究費の管理・執行に関わる事務職員、研究者)に対して説明会を開催した。冒頭に理事長から①ガバナンスの強化、②意識改革、③不正防止システムの強化についての説明と不正根絶に向けた決意表明がなされ、公的研究費ハンドブック改訂に際して、従来からの「詳細版」の他に、新たに重要なポイント等を絞った「研究者用」を作成し、研究活動における不正行為撲滅に向けた対策を進めている。
 また、学長は上記勧告を受け、当該部門長(医療系研究科長)に対し、研究活動上の不正行為 の防止に向けた対応計画の策定について、早急に取り纏め提出(提出期限:令和4年3月28日)するよう通知した。
当該部門長(医療系研究科長)は、学長からの上記通知を受け、下記のとおり研究活動上の不正行為の防止に向けた対応計画を策定し、学長へ提出(令和4年3月24日)した。

 ①学生指導体制の見直し
  現行の指導体制は学生指導委員長のみで委員がいない形となっており、事案が発生すると、研究科長、専攻主任、学生指導委員長、事務職員等で対応してきたが、これを各学群より各1名(全9名)、職位を問わず若手教員を中心に委員として推薦してもらい「学生指導委員会」を設置する。(2022年7月設置予定)
 ②相談窓口の設置
  学生の研究活動上の悩みを早期に発見し、不当に扱われることを未然に防ぎ、教員、学生が良好な関係性を築けるよう相談窓口(仮称)を設置する。(2022年7月設置予定)
  1)相談窓口の相談員は教員又は学生係が担当する。
  2)教員の相談員は学生指導委員(委員長を除く)がこれにあたる。
  3)教員の相談員が相談を受けた場合は、その内容を研究科長、学生指導委員長、学生係、に連絡し対応を協議する。
  4)学生係が相談を受けた場合は、その内容を研究科長、学生指導委員長に連絡し、学生指導委員長の指示を受ける。
  5)対応を協議する場合は必要に応じて学群長、専攻主任を加えることができる。
 ③FDの実施
  人権侵害として相談されるような学生への不適切対応が生じないよう、教員に対するFDを実施する。テーマは以下の2つ。
  1)研究不正・研究倫理
   どのようなものを研究不正というのか、どのような研究倫理が求められるのか、事例をあげ研修する。毎年4月~7月に講演、オンライン、オンデマンドで実施する。全研究指導教授の受講を義務付ける。
  2)アカデミックハラスメント
   どのようなものがアカデミックハラスメントに該当するのか事例をあげ研修するとともに、研究活動において教員、学生が良好な関係性を築くためにはどのような意思疎通が適切であるかを研修する。実施期間は未定。全研究指導教授の受講を義務付ける。

 

◆配分機関が行った措置

 資金配分機関である文部科学省において、不正行為が認定された研究者に対して、競争的資金等の資格制限の措置(令和4年度~令和8年度(5年間))を講じた。

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究環境課

研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874
メールアドレス:jinken@mext.go.jp

(科学技術・学術政策局研究環境課研究公正推進室)