【基本情報】
番号 |
2021-02 |
不正行為の種別 |
捏造、改ざん |
不正事案名 |
研究活動上の不正行為(捏造・改ざん)の認定について |
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不正事案の研究分野 |
地震地質学 |
調査委員会を設置した機関 |
大学 |
不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名 |
元教授 |
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不正行為と認定された研究が行われた機関 |
大学 |
不正行為と認定された研究が行われた研究期間 |
平成27年度~平成30年度 |
告発受理日 |
平成31年4月8日 |
本調査の期間 |
令和元年6月28日 |
不服申立てに対する再調査の期間 |
- |
報告受理日 |
令和3年9月22日 |
不正行為が行われた経費名称 |
科学研究費助成事業、基盤的経費(運営費交付金を含む。) |
【不正事案の概要等】
◆不正事案の概要 |
1.告発内容及び調査結果の概要 平成31年4月、元教授の論文について複数の捏造・改ざんの疑いがある旨の通報があった。予備調査を行った結果、本調査を行うこととし、調査委員会を設置した。本調査の結果、論文4編について、捏造及び改ざんが行われたと認定した。 2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について (1)調査委員会による調査体制 1)部局調査委員会 名称:研究公正調査委員会(令和元年6月19日設置) 6名(内部委員3名、外部委員3名) 2)本部調査委員会 名称:研究公正調査委員会(常設) 10名(内部委員5名、外部委員5名) (2)調査の方法等 1)調査対象 ア)調査対象者:元教授 イ)調査対象論文:9編(海外の学術誌:2013年(5編)、2017年(3編)、2018年(1編)) 2)調査方法 ウェブ上で公開されている情報やGoogle Earth、被引用文献などの書面等調査、共著者からの聞き取り調査を行った。 (3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論 (結論) 1)認定した不正行為の種別 捏造、改ざん 2)「不正行為に関与した者」として認定した者 元教授 (認定理由) 〇調査の結果、調査対象論文4編において、故意又は研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠った行為による不正行為(捏造・改ざん)を認定した。 〇元教授の自説を有利に後押しするものであり、かつ、研究分野の特性上ミスとは考えられない、故意による捏造・改ざん(18件) ・亀裂や断層の位置を示すデータ点のクラスター群を異なる点にコピー・アンド・ペーストしているが、国土地理院の資料と照らし合わせると、ペーストされた位置には亀裂群は存在しなかったとみられる。ペーストされている位置は、2018-08調査の調査対象論文以来の主張をデータ点数を増やすことにより補強する位置である。 ・論文の主張に合わない断層の存在を知っていながら図から消している。 ・実際に存在しない規模及び位置のgrabenを描いている。生データが存在しないところにまでgrabenを描いている。 ・キャプションに事実と異なることを記載している。など 〇研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことによる捏造・改ざん(19件) ・東西方向と南北方向の縮尺が実際と大きく異なるにもかかわらず、そのことが明記されない地形図を断りなく歪んだまま利用している。 ・断層の位置や方向や長さを示すことを目的にするにもかかわらず、大きく歪んだ地図を断りなく利用している。地表の観察地点などを示すための衛星写真や航空写真が断りなく大きく歪んだ状態のまま利用している。 ・元教授の論文や著書において、同じ情報について矛盾した記述をしている(熊本地震によって地表に現れたという断層の変位量分布図が、複数の論文間で異なる)。 ・先行研究の図に依拠した主張が、実際には先行研究の図を無断で書き換えて主張している(断層変位量分布図について、先行研究の図では左ずれ断層と右ずれ断層の変位量が棒グラフで示されているが、不正認定した図では左ずれの棒グラフだけが削除されている。)。 ・共著者が提供したデータを理解せず、本質的に間違った方法で提示している(LiDAR観測の結果を示した図において、熊本地震で現れた断層付近の地表の隆起量と沈降量を示しているように提示されているが、「標高差分」と記すべき量である。元教授はLiDAR観測を理解せず、共著者から詳細を聞くことなく、論文の最重要なデータを本質的に誤った方法で提示した。)。など (当該論文の共著者の関与について) 調査対象論文の共著者はいずれも当該研究の遂行に寄与しているものの、論文の執筆における共著者の役割は限られたものであるため、研究不正への関与はなかったと判断した。 (不服申立て手続) 元教授から不服申立てがあり、申立て内容を審議した結果、調査結果を覆すような新たな事実は提示されなかったことから、再調査の必要性は認められないと判断した。 3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について 不正行為を認定した論文について以下の支出があった。 ・科学研究費助成事業 87,114円(英文校正)、215,702円(論文掲載料) ・基盤的経費(運営費交付金を含む。) 85,183円(英文校正)、381,639円(オープンアクセス料)、463,180円(論文別刷代)、650,443円(論文掲載料) |
◆研究機関が行った措置 |
1.論文の取下げ 元教授に対して撤回の勧告を行った。 2.被認定者に対する大学の対応(処分等) 大学の就業規則に基づき、懲戒解雇相当とした。 |
◆発生要因及び再発防止策 |
1.発生要因 ・元教授は研究公正に関する研修を受講していなかったこと ・論文の作成過程を通じて、事実についての十分なチェックを行わなかったこと ・論文作成過程において、元教授が自身の研究を含めて先行研究を軽視し、またそれに関する情報収集・事実確認を怠ったこと ・共著者に原稿を投稿前に見せずに投稿するなど、論文の作成過程で最も基本的な作業を軽視する元教授の習慣が不正の温床になったこと ・共著者としての責任に関する理解が共同研究者や研究協力者に浸透していなかったこと 2.再発防止策 (1)再発防止策 ①全構成員に対して、研究公正に係る監督者(専攻長等)が、各専攻等で全教員が参加する会議などの機会を利用して、研究公正に関する全学的取組の説明の周知・徹底を強化する。先行研究の確認・引用方法も含めた研究公正に対する意識の向上や論文作成時における責任著者と共著者の役割についての理解を再確認するとともに、責任著者には共同研究者や研究協力者に対し共著者としての役割を伝える責任もあることの自覚も促す講習を行う。 ②研究上のデータ及び資料の保存について、研究データ・資料の取り扱いや保存をより徹底するために毎年定期的に全構成員に対して注意喚起をする場を設ける。また、学生への研究公正チュートリアル等の機会を利用し研究データ・資料の取り扱い・保存の重要性を強調して説明を行う。 ③大学院生が若手研究者として研究生活をスタートするにあたり、基本的な規範を学ばせる取組として、指導教員から研究公正に対する意識の向上や論文作成時における責任著者と共著者の役割とそれぞれの責任を含んだ規範教育の徹底に加え、研究倫理・研究公正に関する全学共通の大学院共通科目の受講をガイダンス等において引き続き強く推奨する。 ④教員人事選考の過程において、採用前の所属機関における、研究倫理教育(研究公正研修)の受講状況の確認を必須とし、採用候補者の調査報告書にその確認状況を明示する。 ⑤新規採用者は、着任後1ヵ月以内に本学が指定するe-Learningによる研究公正研修を受講することを徹底する。 ⑥定期的に外部から専門家を招いて研究公正の講演会を行い、公正な研究活動を推進するための意識の向上に努めるとともに、講演会の講演内容を全構成員が視聴できる体制を構築する。 (2)全学的な再発防止策 ①教職員に対するe-Learningによる研究公正研修について、受講が確認できない対象者については、速やかに受講させるよう再度、周知・徹底する。 ②教職員に対する啓発を図るため、過去の不正について具体的事例を取り上げた資料を作成し、注意を促す。 ③教職員に対する啓発を図るため、現職の研究者(教職員及び大学院生を含む)を対象として、研究者の視点にたった研究公正に係る講演の実施を検討する。 |
◆配分機関が行った措置 |
特定不正行為(捏造・改ざん)が認定された論文は、科学研究費助成事業の成果として執筆された論文であり、かつ、科学研究費助成事業について捏造・改ざんと直接的に因果関係が認められる経費の支出があった。このため、資金配分機関である日本学術振興会において、経費の返還を求めるとともに、当該資金への申請及び参加資格の制限措置(令和2年度~令和8年度(7年間))を講じた。 |
研究公正推進室
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