【基本情報】
番号 |
2021-01 |
不正行為の種別 |
捏造、改ざん、不適切なオーサーシップ |
不正事案名 |
研究活動上の不正行為(捏造・改ざん等)の認定について |
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不正事案の研究分野 |
医学 |
調査委員会を設置した機関 |
大学 |
不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名 |
元講師、元教授、元助教、助教 |
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不正行為と認定された研究が行われた機関 |
大学 |
不正行為と認定された研究が行われた研究期間 |
- |
告発受理日 |
令和2年3月6日 |
本調査の期間 |
令和2年4月17日~令和2年11月16日 |
不服申立てに対する再調査の期間 |
令和2年12月4日~令和3年2月26日 |
報告受理日 |
令和3年3月2日 |
不正行為が行われた経費名称 |
基盤的経費(私学助成) |
【不正事案の概要等】
◆不正事案の概要 |
1.告発内容及び調査結果の概要 令和2年3月、元講師が投稿した論文について、投稿先の編集者より研究データの不正疑義に関する調査依頼があった。予備調査を行った結果、本調査を行うこととし、調査委員会を設置した。本調査の結果、論文等142編(原著論文12編、症例報告9編、関連領域と話題1編、Letter to the editor 116編、出版前原著論文4編)について、捏造・改ざん(特定不正行為)及び不適切なオーサーシップが行われたと認定した。 2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について (1)調査委員会による調査体制 5名(内部委員2名、外部委員3名) (2)調査の方法等 1)調査対象 ア)調査対象者:元講師、元教授、元助教、助教 その他共著者43名 イ)調査対象論文:論文等147編(うち、原著論文12編を除く症例報告等は、未公表論文と医療に位置づけられるものであるためガイドライン適用外。) 2)調査方法 関係資料の収集及び精査、論文と生データの照合、調査対象者への聞き取り及び書面による調査 (3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論 (結論) 1)認定した不正行為の種別 論文12編において、不正行為(捏造、改ざん及び不適切なオーサーシップ)が行われたと認定した。 2)「不正行為に関与した者」として認定した者 (捏造・改ざん)講師 (不適切なオーサーシップ)元講師、元教授、元助教、助教 3)「捏造・改ざんがあったと認定した研究に係る論文等の内容について、捏造・改ざんには関与していないが責任を負う者」として認定した者 元教授 (認定理由) ○捏造 原著論文9編について捏造を自認したこと及び論文の根拠となる生データを提出できない又はデータが欠落しており捏造ではないことを証明できなかったことから、捏造を認定した。 ○改ざん 原著論文1編について改ざんを自認したこと及び論文データと生データに相違があるが科学的な根拠に基づいた説明ができなかったことから、改ざんを認定した。 ○不適切なオーサーシップ 元講師(責任著者)は、研究に関与していない者あるいは一部に関与しただけの者を筆頭著者としたこと、研究に関与していない者を共著者としたこと、共著者の了承を得ないまま論文を投稿したことから、不適切なオーサーシップを認定した。 元教授は、元講師によって無断で共著者とされていたが、投稿後に共著者となったことを認識した事例が多数あるにも関わらず、元講師に対して適切な指導を行わなかったことから、不適切なオーサーシップを認定した。 元助教は、データ取得の一部にのみ関与した論文1編について元講師の判断により筆頭著者となり、学会発表を行い、当該論文を学位審査に使用したことから、不適切なオーサーシップを認定した。 助教は、研究への関与がないにも関わらず、論文1編について元講師の判断により筆頭著者となり、学会発表を行い、当該論文を学位審査に使用したことから、不適切なオーサーシップを認定した。 ○捏造・改ざんがあったと認定した研究に係る論文等の内容について、捏造・改ざんには関与していないが責任を負う者 元教授は、講座責任者として指導・監督する立場であり、論文の作成・公表においても指導・確認の責務が課せられているが、論文指導・確認業務を怠り、元講師の不正を未然に防ぐことができず、大学から求められている使命を全うしなかった。研究論文に関わることへの責任意識の欠如が認められることから、「捏造・改ざんがあったと認定した研究に係る論文等の内容について、捏造・改ざんには関与していないが責任を負う者」として認定した。 (不服申立て手続・再調査) ガイドラインの適用対象となる論文の認定結果に対する不服申立てはなかった。なお、ガイドラインの適用対象とならないImages in Anesthesiology 1編の認定結果について不服申立てがあり、再調査を行った結果、著しい注意義務違反には相当しないと判断し、不正行為ではないと認定した。 3.不正行為に直接関連する経費の支出 不正行為を認定した論文について以下の支出があった。 ・基盤的経費(私学助成) 71,396円(学会発表旅費) |
◆研究機関が行った措置 |
1.論文の取下げ、内容訂正 元講師に対して取下げ勧告を行った。また、不正ではないが、生データ又は根拠資料と論文記載内容に相違があり、「記載誤り」と判断した論文について、各出版社に報告して適切な対応を行うよう勧告する。 2.被認定者に対する大学の対応(処分等) 就業規則に基づき、元講師を懲戒解雇、元教授を降格、助教を譴責とした。元助教は本学を退職しているため、処分は行っていない。 被認定論文2編が元助教及び助教の学位審査に使用されていたため、元助教及び助教の学位を取り消した。 |
◆発生要因及び再発防止策 |
1.発生要因 ・研究公正に対する意識の欠如 元講師は研究遂行から論文発表までの正しいプロセスについて、講義やeラーニング教材を受講していたが、研究倫理意識が欠如していた。 ・研究内容の確認体制の欠如 元教授は、元講師の臨床業務姿勢が極めて勤勉で、学外から臨床技術に対して高い評価を受けていたため、信頼に値する教室員と評価しており、共著者の選出を含めて一任していた。そのため、元講師は講座責任者である元教授に研究相談や研究内容の確認を行わず、元教授も研究内容の定期的な確認を行っていなかった。 ・著者としての責任に対する認識及び知識・理解の欠如 各著者は、論文の著者となることの責任に対する認識及び知識・理解が欠如し、適切な判断ができなかった。 ・講座内での不適切な指導体制 元講師は講座において他の医師へ指導を行っていたが、指導態度が高圧的であり、誰も意見を言えない状況であった。また、共著者は、元講師が指導対象者を自ら選出していたため、元講師に意見を言うことで指導を受けられなくなることを恐れて指示に従わざるを得なかったと回答している。 2.再発防止策 ・公正かつ責任ある研究活動及び研究不正防止に関する学長メッセージの発信 学長より、公正かつ責任ある研究活動及び研究不正防止に関するメッセージを発信する。学長メッセージは大学ホームページでの公開、大学内各所の掲示板でのポスター貼付を行い、大学において研究不正は決して許されないことであり、懲戒処分の対象となることを周知徹底する。 ・適切な研究データの記録・保存を実行できる管理システムの構築 研究者が個人で研究データを記録・保存することが捏造又は改ざんを生みやすい環境になることを踏まえ、大学(または学部・研究科)単位での研究データの一元的記録・保存・管理を行うためのデータ管理室を整備する。 ・論文作成・投稿時における研究不正防止策の策定 学術論文作成に関するオーサーシップ・ポリシーを制定する。学術論文の作成時には、共著者間で研究データの検証とその評価を必ず行うことをルールとする。 ・講座責任者に対する指導の実施 不適切な指導の再発防止を目的として、学長より講座責任者等に対してハラスメント再発防止のための啓発指導を行った。 ・研究倫理教育の徹底 研究倫理教育の受講をこれまでどおり継続するとともに、受講管理のより一層の徹底を図る。また、倫理講習会において研究不正について重点的に取り扱うこととし、本事例のほか、他の研究教育機関での事例などを学習する体制を整える。 ・研究不正告発の受付窓口の周知徹底 研究不正が起こりにくい環境を醸成することを目的とし、大学内各所の掲示板でポスターを貼付し、研究不正告発の受付窓口が置かれていることを周知徹底する。 |
◆配分機関が行った措置 |
資金配分機関である文部科学省において、不正行為が認定された研究者等に対して、競争的資金等の資格制限の措置(元講師:令和3年度~令和9年度(7年間)、元教授:令和3年度~令和5年度(3年間))を講じた。 |
研究公正推進室
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