研究活動上の不正行為(盗用)の認定について(2015-01)
【基本情報】
番号
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2015-01
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不正行為の種別
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盗用
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不正事案名
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研究活動上の不正行為(盗用)の認定について
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不正事案の研究分野
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人類学
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調査委員会を設置した機関
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大学
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不正行為に関与した者等の所属機関、部局名、職名
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助教
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不正行為と認定された研究が行われた機関
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大学
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不正行為と認定された研究が行われた研究期間
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-
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告発受理日
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平成26年1月16日
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本調査の期間
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平成26年3月11日~平成26年9月1日
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不服申立てに対する再調査の期間
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平成26年10月22日~平成26年12月24日
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報告受理日
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平成27年5月29日
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不正行為が行われた経費名
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なし
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【不正事案の概要等】
◆不正事案の概要
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- 告発内容及び調査結果の概要
本件は、通報者ら研究グループが作成し、当該グループが学会発表時に使用したパワーポイント資料の内容を助教(以下「被通報者」という。)が盗用し、当該資料を韓国語に翻訳し、被通報者の単独名義で2013年5月に発行された「韓国人間植物環境学会」の学会誌に掲載したことを内容とする通報文書の送付を受け、不正行為対策委員会において、関係する研究者への聞き取り調査及び書面調査により事実関係の調査を行った。
調査の結果、研究活動における特定不正行為である「盗用」が行われたものと認定した。
【通報者から申立てのあった不正の態様及び特定不正行為であるとする理由】
(1) 不正の態様
被通報者が、「通報者が作成した資料及び通報者ら研究グループが作成した学会発表用のパワーポイント資料」の内容を「盗用」した疑い。
(2) 研究活動における特定不正行為であるとする理由
1) 被通報者が作成に関与していないパワーポイントのデータを盗用し、通報者が過去に発表した16枚の研究成果資料のすべてにおいて、日本語の部分を韓国語に翻訳し、被通報者の単独名で学会誌に掲載したことは不正な行為であること。
2) そのほかにも、通報者が過去に発表したデータ並びに写真を無断で使用しており、これも不正な行為であること。
- 本調査の体制、調査方法、調査結果等について
(1) 不正行為対策委員会における調査体制
10名(内部委員9名、外部有識者1名)
(2) 調査の方法等
1) 調査対象
ア)対象研究者:助教
イ)対象論文等:通報者から不正行為(盗用)の疑いがあるとの指摘があった講演資料。
※被通報者が「韓国人間植物環境学会」の学会誌に掲載した資料。
2) 調査方法
通報者及び盗用があったとされる資料を作成した元大学院生からの意見聴取とともに、通報者及び元大学院生からの聴取結果を踏まえた被通報者からの意見聴取を実施した。
また、通報者ら研究グループが作成した資料と被通報者が作成した資料との比較による書面調査もあわせて実施した。
(3) 本事案に対する不正行為対策委員会の調査結果を踏まえた結論
通報者から研究活動における不正行為(「盗用」)の疑いがあると指摘があった、「被通報者が韓国人間植物環境学会において発表及び当該学会の学会誌に掲載した講演資料(パワーポイント資料)」に関し、不正行為対策委員会が実施したこれまでの調査結果を踏まえた大学の結論は以下のとおり。
(結論)
大学における規程及びガイドラインで定義する研究活動における特定不正行為である「盗用」(他の研究者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究成果又は用語を当該研究者の了解若しくは適切な表示なく流用すること)が行われたものと認定した。
なお、不正行為対策委員会における本事案に関する調査の過程において、以下のことが認められたことから、被通報者による行為の悪質性は低いものと考える。
1) 被通報者が自らの研究成果として資料を公開するのではなく、通報者を含む複数の研究者による研究成果を「韓国人間植物環境学会」の招待講演において広く紹介する目的であったとする被通報者の説明は、被通報者が不正行為対策員会に示した資料(当該学会で配付された冊子)の状況から見ても十分に理解できること。
2) 殊更に自らを利することを目的として当該学会において通報者ら研究グループの研究成果を用いた講演を行ったとまでは言えないこと。
※ 被通報者が当該学会の招待講演において用いた資料は、被通報者の申し出により既に取り下げられていることを確認している。
(認定理由)
(1) 通報者を中心に元大学院生を含めた共著者が行った研究の成果について、元大学院生が作成した原資料(パワーポイントスライド16枚)を、通報者、作成者である元大学院生及び共著者からの使用許可を得ることなく、被通報者がこれを韓国語に翻訳し、韓国の学会(「韓国人間植物環境学会」)が主催する大会の場において、講演資料として使用していること。
(2) 原資料の元となる研究は、被通報者が通報者の研究室に着任される前に実施されたものであり、被通報者は原資料(パワーポイントスライド16枚)の作成にも一切関与していないこと。
(3) 被通報者自身も原資料(パワーポイントスライド16枚)の元となる研究に参画しておらず、原資料の作成にも関与していないことを認識していること。
(4) 被通報者が原資料を翻訳し作成した講演資料は、被通報者の単独名義となっており、また、講演資料を構成する各パワーポイントスライドに対し、原資料からの引用であることを明示する適切な表示、あるいは正しい引用元の適切な表示を行うべきであったにも関わらず、その対応が不十分であること。
(5) 被通報者が作成した講演資料について、被通報者自らの意思により当該学会誌にPDFファイルによって提供しており、その対応が適切でなかったことについても自ら認識していること。
(6) 不正行為対策委員会が行った調査の結果(「盗用」を認定)に対し、被通報者からの「書面」及び「口頭」で申し立てられた不服の内容を「不正行為対策委員会」においてあらためて審議した結果、当該委員会が「盗用」が行われたたものと認定した結論を覆す理由には及ばなかったこと。
- 認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
「盗用」を認定した講演資料の作成過程において、直接の因果関係が認められる経費の支出はなかった。
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◆研究機関が行った措置
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- 競争的資金等の執行停止等の措置
競争的資金等直接の因果関係が認められる経費の支出はなかったことから、執行停止等の措置は講じていない。
- 被通報者に対する大学の対応(処分等)
不正行為対策委員会の研究活動の不正行為に関する調査報告書(最終)を受け、平成27年3月18日、職員不利益処分手続規程に基づく人事調査委員会を設置し、被通報者に対する不利益処分事由の該当性等について審議した。
なお、処分の有無を含めた審議結果について、大学における懲戒処分の公表基準に基づき、懲戒処分に該当しない事案については、処分結果の公表は行わないこととしている。
- 論文の取下げ
被通報者が当該学会の招待講演において用いた資料は、被通報者の申し出により既に取り下げられていることを確認した。
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◆発生要因及び再発防止策
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被通報者が「韓国人間植物環境学会」で講演するに至るまでに必要とされた各種手続き(他の研究者の実験データ・成果に対する使用許諾や、他の研究者の研究成果を使用するにあたっての適切な引用手続き等)に関し、被通報者における研究活動上の基本的な規範意識の甘さによって当該事案が生じたこと、学内において基本的なルールの遵守が徹底されていなかったことによる。
大学においては、「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(平成26年8月26日、文部科学大臣決定)を踏まえ、学長のガバナンスにより、平成27年1月1日付で研究活動の適正な推進及び研究活動上の不正行為を防止するための全学的な統括組織を構築した。今後、本事案と同様の事態を含め、研究活動上の不正行為を生じさせないよう、「研究倫理教育」をはじめとした取組を抜本的に強化し、着実に実施していく。
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◆配分機関が行った措置
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本件は競争的資金による経費の支出がなく、かつ、平成25年に不正が行われた事案であることから、研究機関及び研究者に対する競争的資金の返還並びに研究者に対する競争的資金への申請及び参加資格の制限を行わない。
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科学技術・学術政策局研究環境課
研究公正推進室
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