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特定非営利活動法人 ひろしまね

持続可能な暮らしのために、地域の仕組みをつくる

所在地…〒696-0603 島根県邑智郡邑南町下口羽978番地
TEL…0855-87-0775 FAX…0855-87-0775
URL…http://hsnt.jp/ E-Mail…info@hsnt.jp

島根県邑智郡邑南町

1 団体の概要

代表者名…安藤周治
設立年月…1986年5月 認証日…2004年4月30日
有給スタッフ数…常勤/0名、非常勤/0名
事業規模(09年度決算収入)…31,592,088円
(内訳:事業収入31,557,088円、会費35,000円)

活動の目的・趣旨

 「住んでいる人が幸せで、充実した暮らしが実現できるような地域づくり、訪れるひとが心癒され、住みたくなるような、理想的な住環境を創造する」ことを目指す。

団体の設立経緯

 地域づくりが全国的に広がった1990年代末から、広島県と島根県境のまちやむらで地域づくりに関わる人たちの交流が始まり、「江の川流域会議(ごうのかわりゅういきかいぎ)」を発足させた。過疎化の進む流域の課題を探り、農林業の振興、広域観光の可能性の議論や、水質保全に係る調査も手掛けた。2002年には、文部科学省の生涯学習まちづくりモデル支援事業で「やる気満々講座」を実施して人材育成の手法を探った。2000年に入って地域は、少子高齢化の象徴的な姿が見えだした。いわゆる「限界集落」である。「ここに暮らし続けたい」という古老の願いを叶えるための仕組みを「もう一つの役場(集落支援センター)」と名づけて提言を整理した。それを具体化して広めるために、人格のある「ローカル・ドゥー&シンクタンク」を目指して、ひろしまねを立ちあげた。

主な活動内容

1.地域総合調査研究事業

 「新しい旅」のための地域資源調査、モデルツアーの実施、ガイドブックの作成など

2.調査研究、講座の実施等の事業

 地域観察調査研究会である「我聞塾」の実施
 ネットワーク・広域交流活動支援(江の川流域連携活動の参画、支援)
 環境保全活動(観察会実施、指導者養成講座の開催)
 住環境づくり研究(古民家・古建材再生活用等の学習、研究会の開催)

3.地域住民活動支援事業

 高齢社会へ向けた対策を進めるための調査と、社会実験の実施
 独居世帯の安全見守りシステムの開発とモデル設定による実証実験

4.地域協働イベント

 小規模高齢者集落の地域行事等への協力、共催

5.IJU(移住)プロジェクト

 都市への出身者団体の再興と「災害時食糧担保」等、新規プログラムの企画、展開まちとむらの交流、移住交流などのPRや説明会など

2 主な教育関連事業の紹介

事業名称 我聞塾

 地域の課題を発見し、現状の把握、解決のためのプログラムづくり、作業の展開等々、地域づくりを進めるのに、バックボーンとして頼れる学問領域はどんな分野かと検討した先に「民俗学」を据えた。西日本で民俗学といえば歩く巨人と評された宮本常一。武蔵野美術大学で宮本の薫陶を受け、後に近畿日本ツーリスト株式会社のPR雑誌「あるくみるきく」の編集長を務めるなどした山崎禅雄氏を師として学ぶ「地域観察研究会」が我聞塾である。2010年に8年目を迎えた。

囲炉裏端での我聞塾の様子
囲炉裏端での我聞塾の様子 

続けないと意味がないと月1度の開催を継続

 「一人でも開きましょう。続けないと意味がない」と、山崎氏と開催時に約束し、月1回の開催を続け、ひろしまねの定例会にもなってきている。活動エリアの広島・島根両県からの参加者の男女比は8:2程度。職種、所属も多彩で、参加者が10名を下ることはない。メーリングリストで開催案内を送るが、口コミでの広がりもある。
 座学では宮本の著書や調査に同行したお弟子さんのレポートを教材とするが、様々な趣向を凝らしている。変わったところでは花札をめくり、その1枚から何が読み取れ、何を語るかの回も好評だった。「1枚の写真から」をテーマとした回では、無機質な写真からでも、これまでの経験や体験をフル動員して写真の奥にあるものを探り出しながら、時間と距離を超えて洞察力の先に見えるものを語る。
 座学だけではなく、春と秋には野山に出かけ、山菜・野草、秋の果実、野の実りものを採取し、午後調理をして会食、酒宴も開く。その道中も地形、植生、神社仏閣、集落のありようなど、その見方や歴史を見分する。また地元の人への「聞き取り」は重要なプログラムである。
 そして、1年に1度、宮本の足跡を訪ねる旅も続ける。これまで生地の山口県東和町(現周防大島町)や長崎の対馬、宮崎県などへも遠征をして、著書の現場に立ち、宮本の体験を追う感動を味わっている。

現場から出発した調査研究や事業

 民俗学に地域づくりの極意を学ぶとした「我聞塾」の哲学は、「暮らしや現場の声をもとにしたボトムアップの活動」と表現できる活動として、各種の調査、研究事業においてその成果を見ることができる。地域の調査においては現状の把握がまず重要だが、現場に立つこと、そして地域全員の声を聞く「悉皆調査」など、現場をあるき、みて、きいたことが、例えば次のような各種の調査研究や政策に成果を見せている。

1.総務省の「集落支援員制度」
 地域に出かけて聞いた「農業関係の補助金制度はありがたいが、それを申請、実施、報告するのが難儀になってきた。補助金よりも補助人が欲しい」という声が始まりだった。総務省の過疎問題懇談会委員で理事長の安藤氏の発言が具体化した。田舎で働き隊、地域おこし協力隊の制度のきっかけにもなっている。
2.「もう一つの役場(集落支援センター)」
 ひろしまねでは、少子高齢化の極度に進行する中山間地にあって、住み慣れた地域で生きる喜びや充実感を持った暮らしを創るために、新しい社会システムとして有効であると、10年前から提案してきた。その実証実験として、2007年、国のジョイントプロジェクト「国土施策創発調査事業」を島根県との共同(協働)研究として行った。また、2008~09年度国土交通省の「新たな公によるコミュニティ創生支援モデル事業」によって、様々な地域の課題を掘り起し、その解決策を探り、社会実験的取り組みを実施することができた。
3.内閣府・国土交通省の地方の元気再生事業による「ニューツーリズムの広域的多面的展開による、中山間地域の活性化に関する調査」
 この事業は、高齢者の「年金が減ってきた。月もう1万円か2万円あるといいんだが」という、つぶやきから始まった。大きな家に老人夫婦か独り住まい。そこに旅の人を泊めることができないかという「新しい旅」の提案でもあった。新しい旅とは、体験型の旅の提案でもある。高齢者の経験や体験を旅の人に伝えてもらおうと、「むらの名人さん」と称して出番をつくる。昔とった杵柄をビジネスにする試みでもある。

ヒアリング応対いただいた安藤氏
ヒアリング応対いただいた安藤氏 

3 事業の成果と課題

行政の地域の現状把握を補完

 アンケート用紙を使っての地域の現状把握の方法もあるが、2~3時間をかけて信頼関係が垣間見えてからの本音の一言二言に、耳を傾けるところにソーシャルサービスの原点があり、それはソーシャルビジネスの種にもなる事柄が多い。また、県立広島大学や島根県立大学、中国からの実習生なども加えて出かけるが、若い人を連れ立っての訪問は高齢者に喜ばれる。
 ひろしまねには、年間100件を超す視察や講演依頼があり、市町村合併後、さらに手薄になってきた感のある行政の地域の現状把握の補完的作業を、NPOなど地域の団体がすべきではないかと伝えているという。

地域の資源は無限大――成果と期待は大きい

 少子高齢化が極度に進む中山間地域では、いまも集落をいかに閉じるのがいいのかを考えているところもある。しかしながら、訪ねてあるき、みて、きくと、これまで見えなかったものが、見えてくる。他の地域の人やモノとの組み合わせによって、また時代の流れなどを併せ考えると、新しい中山間地域の価値が生まれるのではないかとの期待も生まれる。
 中山間、過疎地域の高齢者は、市町村合併後さらに暮らしの厳しさを実感し、あきらめ感から、絶望感さえ持つ人が出はじめている。高齢化する地域内のマンパワーだけでは、閉塞感も限界論も出る。地域外から人が入り、地域の課題を共に探り、個々の思いや願いを聞くことで、少し気が晴れ、小さな実験に期待が広がる。
 役所やJA以外の団体や個人が地域と協働することで、新しい経験や体験を通じて、暮らしの場面で学びあう学習のチャンスは、新しい時代の地域社会をつくり上げるのではないかと期待が寄せられている。人が暮らしてきた地域の歴史、ものづくりのできる農地や林野を有する地域。何よりも、経験豊かな高齢者が多く暮らす地域という資源のある中山間地域。まだまだこれからと、地元のお年寄りとNPOとの協働のプログラムを探っている。

財源確保で「もう一つの役場」の期待に応える

 我聞塾は参加費など独自の予算で運営し、社会実験などは、国や県などからの受託事業で実施してきた。人柄のいい所長、バリバリ企画して実施する若い担当者、受付庶務担当と3人態勢で試算すると運営費は年1,300万円ほどかかる。新しい旅のエージェントでの手数料や農地や林野の管理のための事務受託料、特産品の製造販売収益など様々に収入源を探しているが、300万円ほどが不足するという。
 そこで、可能な限り行政からの指定管理や行政業務のアウトソーシングを受けて収入を図っている。これも別の見方をすれば地域分権であり、住民自治の延長線上に位置するともいえる。期待される「もう一つの役場」だが、継続のための財源確保が最大の課題である。

4 今後の展望

「口羽を手ごぉする会」の実働へ着々と

 「手ごぉする」というのは方言でお手伝いをするとの意味。邑南町口羽地区(小学校区規模)の集落での相互扶助を組織的に展開しようとしている。取り組みを軌道に乗せようと、地区社会福祉協議会の部会として位置づけ、小規模ながら具体的に実働への準備を始めている。2011年度には動きを始める予定である。

子ども農山漁村交流プロジェクトの様子
子ども農山漁村交流プロジェクトの様子 

ローカルエージェントの動き

 新しい旅の提案として「銀河鉄・道の旅」を進めようと「中国路・元気づくり協議会」を立ち上げ、60人ほどの会員登録を受けた。モデルツアーの実施や、観光協会、商工会、商工会議所などと連携して、「子ども農山漁村交流プロジェクト」での農家ホームステイの拡大を目指している。先々には修学旅行生の受け入れも広島、島根両県の6市町で展開できないかと議論を展開している。
 また、外国からの観光客を見込んで、3カ国語で「銀河鉄・道の旅」のガイドブックも作成する。これも県、市町、観光協会などとの連携で進めたいと考えている。

(ヒアリング応対者:理事長安藤周治氏)

 ひろしまねでは、活動を進めるのに「島根県中山間地域研究センター」(http://www.pref.shimane.lg.jp/chusankan/)と常に連携をとっている。情報を求めるにも、研修先(宿泊施設も併設)としても非常に頼りになる施設である。中山間地域が専門領域であるが、地域づくり全般、住民活動に関しても助言、指導などを仰ぐこともできる。

お問合せ先

生涯学習政策局生涯学習推進課民間教育事業振興室

(生涯学習政策局生涯学習推進課民間教育事業振興室)

-- 登録:平成24年03月 --