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特定非営利活動法人 バイリンガル・バイカルチュラルろう教育センター

あきらめなければ夢は実現する。新たな「ろう教育」の提案と普及を!

所在地…〒143-0016 東京都大田区大森北1-30-1三喜屋ビル2階
TEL…03-5767-5057 FAX…03-5767-5057
URL…http://www.bbed.org/ E-Mail…info@bbed.org

東京都大田区

1 団体の概要

代表者名…玉田雅己
設立年月…1999年4月 認証日…2003年5月8日
有給スタッフ数…常勤/0名、非常勤/1名
事業規模(09年度決算収入)…5,809,210円
(内訳:事業収入1,271,915円、会費499,000円、補助/助成金3,166,105円、寄付金786,347円、その他85,843円)

活動の目的・趣旨

 ろう児に対するバイリンガル(日本手話及び日本語)、並びにバイカルチュラル(ろう文化と聴文化)教育の推進活動として、デフ・スクールの運営、教育支援、研究活動、普及活動などを行い、ろう児の健全育成を図る。また、情報を広く提供し理解を広げることで、一般市民とろう者(ろう児を含む)との交流を推進し、聴者とろう者の平等な社会形成の増進に寄与することを目的とする。

団体の設立経緯

 日本には、およそ100のろう学校があるが、ろう者(聞こえない人)の言語である「日本手話」で授業を行っているところは少ない。手話を使うと日本語を覚えられなくなるということから、「補聴器をつけて聞こえにくい耳で聞き、口形を真似て声を出す」聴覚口話法という教育が基本となっている。しかし、これは、聴者(聞こえる人)と同じように聞く・話すことを目標としているもので、ろう児にとっては、厳しい場合もある。
 1999年、若いろう者たちが、「自分たちも手話で教育されたら、もっとたくさんの知識を得られたはず」と、ろう児を手話で教育するフリースクール「龍の子学園」を立ち上げ、日本手話を第一言語、書記日本語(読み書き)を第二言語とするバイリンガル教育の研究・実践を始めた。2003年に、バイリンガル・バイカルチュラルろう教育センター(以下、BBED(Bilingual Bicultural Education Center for Deafchildren))として、NPO法人格を取得した。
 口話教育に疑問を持ち始めたろう児の保護者たちがこの教育に賛同し、学校設立を目指して支援活動を開始。2008年には、東京都の教育特区として日本手話で学ぶ学校法人「明晴学園」の設立に至った。

主な活動内容

1.ろう学校及びろう児の保護者への支援事業
  • 日本手話教室
  • 聞こえないお子さんの家族のための両親講座
  • おとうさん、おかあさんのための手話文法講座
  • 手話絵本「のっと君」の貸し出し
2.ろう教育研究事業
  • バイリンガルろう教育教材開発  
3.日本手話普及事業
  • iアプリケーション「実用日本手話」
  • 企業のHP手話動画制作
4.ろう文化理解推進事業
  • 総合学習プログラム
〈言葉の説明〉

■「日本手話」と「日本語対応手話」の違い
 ろう者の「日本手話」は、日本語とは別の独立した言語である。独特の文法体型を持っていて、日本語とは語順が違う。「日本手話」には、手の形・位置・動きに意味があるだけでなく、肩の向き・うなずき・顔の表情・眉や口の動きなどにも文法的な意味を持つ。「日本語対応手話」は、日本語の語順で手話単語を並べたもので、その原型は聞こえる人によって作られているため、ろう児には理解しにくいものである。ろう学校で使われている「手話」はこれにあたる。

■バイリンガルろう教育とは?
 日本の場合で言えば、「日本手話」と「書記日本語(読み書き)」という2つの言語を使ってろう児を教育することである。日本手話は、かれらの母語となる言語であり、すべてのろう児が自然に容易に確実に身につけ、人間形成がされる。それを土台にして日本語の読み書きを学ぶことによって、子どもたちの理解力・言語力・学力が年齢相応に発達し、情緒も安定して成長する。現在の日本のろう教育は、「聴覚口話法」という聞こえにくい耳で聞き、自分では聞き取りにくい声で話せるようになることを目標にする教育法が主流だが、世界の多くの国では、バイリンガル教育が実践され、その成果が報告されている。

■バイカルチュラルってなに?
 ろう者と聴者(聞こえる人)は違う文化を持っており、それぞれ歴史的に受け継がれ無意識に身につけているものである。例えば、使っている言葉、呼びかける方法、どんなことを失礼だと思うか、どんな芸術やスポーツを好むか、などに違いがある。この違いを知らないと、ろう者と聴者が理解し合うことは難しくなるため、バイカルチュラル(ろう文化と聴文化)ろう教育が大切なのである。

2 主な教育関連事業の紹介

事業名称 ろう学校及びろう児の保護者への支援事業

1.日本手話教室

 日本手話でのコミュニケーションを豊かにして、ろう児の子育てがより楽しいものになるための応援プログラムとして実施している。講師との会話を通じて、ろう者の自然な手話を習得できるようにナチュラルアプローチ手話教授法により、指導している。
 ろうのお子さんの両親及び家族を対象に、6カ月(12回コース)で実施している。講師は、手話教師センター講師であるろう者が務める。入門・中級の2コースで行われている。

2.聞こえないお子さんの家族のための両親講座

 聞こえにくい(難聴)、または聞こえないお子さんをお持ちのご家族を対象に、両親講座を開講している。赤ちゃんが聞こえない、聞こえにくいと診断された親御さんの不安を軽減させるために、「耳の構造と聞こえについて」「聞こえない赤ちゃんの楽しい子育て」「手話で育てるとどうなるの?」「聞こえる両親に育てられた経験」「社会の中で活躍するろう者たち」「聞こえない子を持つ保護者との交流」など、分かりやすい内容で講座を展開し、聞こえないことへの理解を深めていく。

集中して学ぶお母さんたち
集中して学ぶお母さんたち 

3.おとうさん、おかあさんのための手話文法講座

 前述のように、ろう児の第一言語が手話であること、そしてその後の第二言語の発達や認知能力の発達に第一言語が最も大切であることから、ろうの子どもに手話環境を確保することが大切である。それは、聞こえる赤ちゃんが自然に日本語を獲得するのと同じ環境である。しかし、90%のろう児の親は聞こえるので、手話は知らない。ろうの赤ちゃんであるわが子に出会う前に、ろう者に会った経験のない人がほとんどである。
 大人が語学を学習するときには、発音と文法は欠かせないし、子どもと同じように自然に身につけようとすれば、子ども以上に時間がかかる。そのような、おとうさん、おかあさんが、手軽に学習するツールとして、ホームページ上の「手話動画」で学習できる仕組みを提供している。

4.手話絵本「のっと君」の貸し出し

 ろうの子どもたちが絵本を楽しめるように、また、お子さんがろうだと分かって戸惑っているおとうさんとおかあさんに届ける日本手話DVD「絵本ライブラリー」を作成。子育てのアドバイスやロールモデルなど、盛りだくさんの内容で、絵本と一緒に楽しめるように編集されている。
 貸し出しの対象は、0~6歳(未就学児)のろう児と、その家族であり、手話学習者用としての貸し出しは行わない。貸し出しを希望する場合は、支援会員登録と送料が必要となる。

手話絵本のキャラクター「のっと君」
手話絵本のキャラクター「のっと君」

事業名称 日本手話普及事業

iアプリケーション「実用日本手話」

 電車やバス、待ち合わせの空いた時間など、いつでもどこでも、動画で本格的な日本手話が学べる、iPhoneとiPodtouch用アプリケーション「実用日本手話」を、株式会社システムウェーブと共同で開発し、販売している。
 「実用日本手話」は、簡単な挨拶から日常会話まで、日本語文と英語文で学ぶトリリンガル(3言語)教材として有料でダウンロードできる。手話講師は、NHK手話ニュースキャスターが務めており、まゆの上げ下げや、あごの動きなど、動画をくり返し見ることで、初めは早くて読み取れない動きも、手話のリズムが見えはじめ、自然に読み取りや表現できるようになる。
 また、日本語文、英語文から日本手話を検索できるようになっており、ろう者とろう文化に関する情報も配信している。

画像と文字で分かりやすく学べる 画像と文字で分かりやすく学べる
画像と文字で分かりやすく学べる 

事業名称 ろう文化理解推進事業

総合学習プログラム

 このプログラムでは、ろう者とろう文化理解のために、小中学校の総合学習・市民科の授業で「ろうってなあに?」という講演を行っている。
 子どもたちが実際にろう者と出会い、ろう者の言語や文化についての学びを通して、多言語共生社会の一員として広い視野を持てるようになってもらいたいという期待を込めて実施している。参加してくれた子どもたちのなかに、何かしら新しい価値観が生まれてくれればうれしいと思っている。2008年度に品川区の小学校6校、大田区の中学校1校で行った。品川区の小学校では、2009年に6校、2010年に5校が継続して実施している。

手話を身近に感じる子どもたち
手話を身近に感じる子どもたち 

3 事業の成果と課題

学校法人「明晴学園」設立までの創設期

 2008年、異例のスピードで学校を設立することができたが、そこに至るまでの問題は無数にあった。「一つひとつ小石を拾って道をつくった」との言葉どおり、地道な努力を重ね、学校の設立を成し遂げることができたのである。

●多方面への問題提起

 成功の理由として挙げられるのは、現場は先生に任せ、親は口出ししない。親やBBEDは、社会に向けて問題提起、理解を得るための活動の役割に徹してきたことである。
 以下の3つの視点で、全国のろう児の親に呼びかけ、人権救済の申し立てをし、日弁連にも訴えた。

  1. ろう学校の先生になろうとする人に日本手話の教科を入れてほしい
  2. 現役の先生に手話の研修制度を設けてほしい
  3. 手話で教育をしてほしい

 6万人の署名を集め、文部科学省に意見書を提出。また、今のろう教育の問題点が対外的にも見えるように数値化を図り、1対1の会話をビデオに撮り、コミュニケーションの分析も行い、大学院生のスタッフが言語政策学会で発表も行った。

●地道で積極的な資金獲得への努力

 フリースクール「龍の子学園」のスタッフの生活を守るためにも、運営のための資金を確保しなければならないとき、前進する解決策としてNPO法人化した。社会的信用を得たうえで、多数の助成金に挑戦し、獲得することができた。
 ろう教育分野でない人たちへの理解を求め、分野を限らず様々な勉強会、セミナー、シンポジウム等に参加した。例えば、文化人や雑誌に掲載されている人の講演会などにも参加したが、そのときは、一番前か2番目の席に座り、質疑応答では必ず挙手した。まず所属と氏名を名乗り、ろう教育の現状について説明した後、講演者への質問に入る。これをスタッフで分担し、3年間で1,000回くらい行った。
 その効果として、顔の広い講演者と名刺交換、知り合いを紹介してもらうなど、多くの人と知り合いになることができた。また、参加者のなかからも、何か役に立つことがあれば、と声掛けしてくれた。その人たちが、応援団となり、1億円を超える資金を集める支援のうねりとなった。

●行政への働きかけ

 構造改革特区という制度を活用して学校法人を目指し、6次提案まで行った。2005年に最終的に提案が通ったものの、協力してくれる自治体がなかなか見つからないとき、「都知事と語る会」に参加し、石原慎太郎東京都知事に手話教育という選択肢が必要だと訴えた。知事は、ろう教育の現況に驚き、すぐに対応しようと言ってくれた。そこから2年半で設立に至った。

●資金獲得のカギ

 学校設立の場所の確保ができ、40組の家族、保護者全員が一体となって資金獲得活動を行った。多額の寄付を集められるか注目されるなか、2,500通の手書きの手紙を作成。2,000件の家に寄付のお願いチラシをポスティングし、企業100社にコンタクトをとり、30社を訪問した。数十回にも及ぶイベントや講演会、街頭募金を行い、1年で30回もメディアに取り上げられた。ろう教育と関係のない人にも共感を呼び、応援者の輪が大きく広がった。その結果、目標4,000万円に対し、7,500万円の資金が集まった。
 1回目の資金獲得の際には、40組の家族や親をまとめ、テンションを保っていくために、1カ月に1回全員で集まった。目的は学校をつくることで一致していたが、人によって温度差があり、先頭を走る人と後ろのほうの人との距離感があった。そこで、先頭を走るグループの少し後ろにいる2番目のグループをつくることで、後ろのほうの人たちを引っ張ることができた。第2グループと、先頭グループをつなぐ役割は事務局が果たすなど、運営方法も工夫した。
 2回目の資金獲得は、2009年に中学部をつくる際に行った。目標3,000万円に対して、3,500万円を集めることができた。

いきいきと学ぶ明晴学園での授業風景
いきいきと学ぶ明晴学園での授業風景 

 1回目に、石原知事と会った頃から、それまで立ちはだかっていた障壁が消えていったり、誰かが壁を壊してくれたりという怒涛の流れを経験した。
 個人の支援も大きかった。例えば、2回目の資金獲得のとき、5月のゴールデンウィークにアクサ生命保険株式会社の社員のドニーさんが北海道まで1,200キロを走り、1キロ走るごとに1,000円という募金活動を社員が行った。アクサ生命の社員(ろう者が多い)が、BBEDが資金を集めていることを知って、この行動につながり、80万円が集まった。この話がアクサ生命の社長にも届き、翌年は社長も一部を一緒に走り、東京から箱根経由でアクサ生命の支店を回って大阪までのチャリティロードとなった。
 外資系企業が集まるチャリティ・ランウオークでは、参加費5,000円を寄付先を指定して寄付するという企業の寄付合戦を実施していた。各企業が寄付先候補として10団体を挙げるが、J.P.モルガン社が明晴学園を推薦してくれた。

4 今後の展望

ろう学校の先生への情報提供

 全国のろう学校の先生の中には、手話が分からず、子どもたちと手話でコミュニケーションを取ることが難しい方もいる。BBEDでは、ろう学校の先生のバイリンガル教育の指導者研修を行いたいと考えている。ろう学校の先生が手話で授業するために必要なカリキュラムを作り、言語の先生、バイリンガルの先生、日本手話の先生等、それぞれ先生の教育に1年間ぐらいかけてじっくり取り組んでいきたいと思う。

継続への努力

パワーあふれる玉田氏と板垣氏(右から)
パワーあふれる玉田氏と板垣氏(右から) 

 ろう児を持つお母さんがNPOで仕事をしたり、ろうの子どもたちが成長してNPOを運営していってほしいと考えている。そのためには、スタッフとして賃金を払えるようにしなければならない。
 ろう教育の内容は、ろう者やろう教育の専門家に任せ、BBEDは、その後方支援として、助成金の獲得や外部への働きかけなどの資金集め、家族への支援、広報などを担い、きちんと役割分担することが大切だと考えている。
 また、これまで、ひたすら走り続けてきたが、ろう児の親でも、みんなが同じような気持ちで関われるとは限らない。賛同者を見つけ、一緒に学びながら育てていくことが必要だと思う。

(ヒアリング応対者:ディレクター 玉田さとみ氏、事務局長 板垣恵子氏)

 最終的な目標は、聞こえない子どもが聞こえる子どもと同じように学べる教育環境を整備し、子どもたちが力を発揮できる社会と、正当に評価される社会をつくることである。障がいを持っている人が「どうしてほしいのか?」が大切だ。いま、障がい者にやさしい「道路」に全部変えれば、20年後にお金が掛からない社会になるのだから。

お問合せ先

生涯学習政策局生涯学習推進課民間教育事業振興室

(生涯学習政策局生涯学習推進課民間教育事業振興室)

-- 登録:平成24年03月 --