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教育関係NPOの成果と課題

 本事例集では、教育関係の事業を展開するNPO法人393団体の事例を5巻に分けて紹介し、そのうち100団体にヒアリング調査を行った。
 ヒアリングを行った団体は、分野、活動内容、対象等も多様であるが、ここでは、5巻を通して、100団体のヒアリングから共通して浮かび上がった教育関係NPOの成果と課題をまとめた。また、NPOと行政等との連携・協働の課題と解決策について、教育委員会からの意見聴取も踏まえてまとめている。
 複数の団体が共通した内容を挙げている場合も多いが、ここでは、特徴的な内容を抜粋して紹介している。

1.教育関係NPOの特徴

 教育関係NPOの活動の特徴として、以下のような点が見受けられた。

1.幅広い事業内容・形態や対象の拡大傾向

 教育関係NPOが行う事業は、講座や出前授業、研修会、イベント、教材の作成、居場所づくり、情報発信、相談業務、調査・研究、助成事業など様々である。一つの事業から発展して、あるいは事業展開の必要性から、他の事業を手掛けるようになる団体も見られる。また、対象がより広がる傾向が見られる。

参考事例
  • 子供向けの自然体験教育事業から始まり、実践で教育を学ぶ教師・指導者プロジェクトやリスクマネジメントに対する研修会等を行う安全教育、国際理解教育等、幅広い活動を展開している。(グリーンウッド自然体験教育センター、Vol2.-2)
  • 成人求職者を対象とした社会起業家養成スクールの運営の中で、「人生のより早い段階での起業家教育の必要性」が浮かび上がってきて、中学生向けのプログラムを開始した。(ネイチャリング・プロジェクト、Vol5.-1)

2.専門性を持って活動している

 活動分野における専門性を持って活動しているのがNPOの特徴でもあるが、その中で、専門性を高め維持するために、スタッフの研修や調査研究、資格制度等に力を入れる団体や、専門性を持った外部の人材と連携する団体も見られた。

参考事例
  • 夏の自然体験キャンプや森の子自然学校などに関わるスタッフの多くが、自然体験活動の普及活動を行っている特定非営利活動法人自然体験活動推進協議会(通称:CONE)の自然体験活動指導者育成制度でトレーニングを受け、トレーナー、インストラクター、リーダーなどの資格を持っている。(自然体験共学センター、Vol2.-2)
  • 寄附市場を支える人材育成のための認定ファンドレイザー資格認定事業を立ち上げて、NPO法人の資金調達力を向上させる。(日本ファンドレイジング協会、Vol5.-4)

3.地域性や地域の資源を生かした活動をしている

 地域課題の解決というNPOのミッションとも関連するが、自然、歴史、建造物、人材等、地域の資源を活用した活動が多い。

参考事例
  • 京都の伝統建築物を生かして、歴史的建造物の保存と、それを生かしたまちづくり活動を展開している。(古材文化の会、Vol4.-1)
  • 北海道の自然を生かして、自然学校や自然体験村の活動を展開している。(ねおす、Vol4.-2)
  • 専門的な知識を持つ地域の人材が講師として起業家教育を行ったり、地域住民が趣味や特技を生かしてクラブ活動を支援するなど、地域ぐるみで子供を支援している。(夢育支援ネットワーク、Vol1.-1)

活動の成果としては、主に以下のような点が挙げられた。

1.活動の継続や広がり

 活動の継続、他地域への広がりなどが成果の一つとして挙がっている。中には、モデル事業として全国へ広がっている活動や、NPOの活動から全国のネットワークが構築された事例も見受けられる。

参考事例
  • 理念や活動に共感した全国各地のNPO等が、シブヤ大学のモデルを参考に街をキャンパスに見立てて、地域密着型の生涯学習と新しい地域コミュニティづくりを支援する活動を進めている。(シブヤ大学、Vol1.-2)
  • 教育コーディネーターのパイオニアとしてその取り組みが評価され、「キャリア教育コーディネーターネットワーク協議会」の全国事務局も担っている。(スクール・アドバイス・ネットワーク、Vol1.-1)

2.子供や大人の変化

 教育活動の成果として、子供や大人の気づき、成長や変化も挙げられた。子供など学習するがわの成長だけでなく、教えるがわの教師や地域住民など大人自身が成長したとする事例も多い。

参考事例
  • 学校の授業という子供たちにとっての「日常」の中でアートに触れることは、子供たちの感性を刺激し、また他者の存在を意識するきっかけになる。(BEPPUPUROJECT、Vol4.-4)
  • 公民館と連携して地域を巻き込んだ講座やプロジェクトを実施する中で、これまで社会教育施設を利用するだけだった講座参加者の間で、地域社会へ貢献したいという思いが強くなっている。(なはまちづくりネット、Vol2.-1)

3.人材育成等の好循環

 NPOの活動により、人が育ち、更にその人々が若い世代や地域の新たな人材を育てるという、「好循環」も成果として多く挙げられた。

参考事例
  • 学生ボランティアの中から、ボランティアの学生を取りまとめるリーダーが育ち、活動を継続するための基盤となっている。(キッズドア、Vol1.-2)
  • キッズクラブを卒業した子供たちが、ボランティアスタッフとして卒業後も活動に参加するケースが増えてきており、教育の循環が生まれている。(夢職人、Vol2.-2)
  • 時間をかけて中長期的に成果を生むような取り組みが、人材育成と地域づくりの一体化を生んでいる。地域で育った人材が次の人材を育てるという、地域内におけるノウハウの伝達が行われる循環の形をつくっている。(NPO推進青森会議、Vol5.-1)

4.地域の活性化や雇用の促進・創出

 実際に地域が活性化したり、新たな雇用の創出といった具体的な成果が現れている。地域全体で教育を支える仕組みづくりができたとする団体も見られる。

参考事例
  • 子供たちの活動に地域の人々の協力を取り入れた結果、地域全体が活性化された。地域からも子供たちに参加の要請がくるようになった。(のびーの宮崎、Vol3.-1)
  • 街道探訪会の開催で、地元の方に草刈りをしてもらった道を通ると、参加者は地元の協力に感謝する。それが地元の方たちにも励みとなり、自分たちの地域の価値に気付き見直し始める人が増えた。(東北みち会議、Vol5.-2)
  • NPOスタッフ養成研修で、採用するNPOにとっても安心してゆっくり採用を決めることができ、採用後のミスマッチもなく、即戦力として業務を担うことができる。(NPOサポートセンター、Vol5.-1)

2.成功の秘けつ、ノウハウ

 活動の成果を上げるために団体が行っていることや工夫として、以下のようなことが挙げられた。

1.地域・社会の課題解決やニーズに合った活動、先駆的な活動を行う

参考事例
  • 職人の後継者不足や観光客数が減っている状況の中で、後継者を育成し、体験学習の参加者を呼び込むことに成功した。(北海道職人義塾大學校、Vol1.-3)
  • 「議員インターンシップ」という先駆的な取り組みから始まり、インターネットや携帯サイトなど若者が得意とするメディアからの議員・政治情報提供などを通じたシティズンシップ教育も提供している。(ドットジェイピー、Vol1.-3)
  • 大学連携を目的として、最先端のICTを活用した統合型eラーニングシステムを開発し、各大学からの見学・相談等も年々増加している。(サイバー・キャンパス・コンソーシアムTIES、Vol1.-4)

2.社会へ発信してより広く活動を認知してもらう

参考事例
  • 客観性をもって中退の実態調査を行い、現状と原因を分析した『中退白書2010――高等教育機関からの中退』を発刊した。(NEWVERY、Vol2.-3)
  • 消費者への予防教育活動等の活動について、西日本新聞「家族の経済セミナー」での連載、くまもと経済、朝日新聞、熊本日日新聞掲載などの執筆活動等によって講座依頼が増えたことも成果と言える。(消費者教育NPO法人お金の学校くまもと、Vol3.-2)

3.地道な活動の継続により信頼を得る

参考事例
  • 電話相談や講座の参加者の増加など、活動がここまで広がったのは、設立以来、地道に活動を続けてきたからにほかならない。地道に活動を続けているからこそ、ネットワークが広がり、支援者との信頼関係が芽生えた。20年間の活動実績が信用につながってきた。(ささえあい医療人権センターCOML、Vol3.-2)
  • 活動を続けていくうちに徐々に支援の輪が広がった。「小さなことでも、継続して続けることが大事」である。(放課後NPOアフタースクール、Vol2.-2)

4.中間支援組織やネットワークを利用・強化する

参考事例
  • 充実した活動の秘けつは、NPO中間支援団体の活用。税理士の派遣や、経理や謝金等の相談に乗ってもらったこともあり、非営利の専門家として自信をつけることができた。(子どもの人権アクション長崎、Vol2.-4)
  • NPO同士のネットワークが役立っている。同じような講座を開講するときに内容を教えてもらったり、新しい企画について相談する。また、「NPO起業講座」のときには、いろいろなNPOの理事長の方に講師に来てもらい、ネットワークが広がった。(栃木県シニアセンター、Vol3.-3)
  • 行政機関はもとより、商工会議所などの商工団体、大学、地元金融機関などを中心とした産業界、地元公民館・PTAから保護者に至るまでの広範なネットワークを形成して、地域社会全体で児童や生徒のキャリア形成をバックアップしていく体制を構築している。(鳳雛塾、Vol1.-3)

5.NPOの柔軟性やコーディネート力を生かす

参考事例
  • NPOの柔軟性を生かして、24時間いつでも電話やメールでの相談を受け付け、対応できる体制をとっている。(トイボックス、Vol2.-3)
  • 最近では不登校に悩む小中高生のみならず、ニートやひきこもり、非行や様々な障害の背景を持つ幅広い年代層が参加している。既存の教育や福祉の垣根を越えて、様々な人と融合し、互いに学びあう活動を続けてきた結果だと考えている。(フリースペースたまりば、Vol2.-4)
  • 学校・行政・地域をつないでコーディネートするのはNPOの重要な役割。また、子供に合わせて大人たちも方向を組み替えていくという柔軟性も、コーディネートの際には必要である。(アサザ基金、Vol4.-2)  

3.課題とその解決策

 NPOの活動課題も、その活動内容や分野、対象により様々であるが、ここでは共通してみられる課題を幾つか取り上げ、団体が実際に行っている課題への解決策を紹介する。

1.運営資金の不足

 多くの団体が、活動の課題として資金不足を挙げている。助成金や補助金、委託事業の多くは単年度単位であり、継続的に資金確保をすることが難しいという課題が見える。
 その解決策として、特定の収入源に依存せず、多様な収入源を模索する必要性が指摘されている。自主事業の収入や、会費・寄附の拡充により、幅広く市民から支援を得て多様な資金調達を確保することが重要であり、その解決に向けて様々な努力・工夫をしている様子がうかがえる。

参考事例
  • キャンプなどの事業に参加した子供の保護者やこれまでの参加者などを「後援会」として組織し、次の開催のための寄附金をもらうことで、安定した資金源づくりに取り組んでいる。(えひめ子どもチャレンジ支援機構、Vol2.-2)
  • 小口の寄附、私募債の発行、民間銀行からの融資など、資金調達の多様化を図っている。(日本グッド・トイ委員会、Vol3.-1)
  • 学校での出前授業に使用する開発教育の教材費に一定の寄附をセットにすることで、寄附を増やす取り組みを行っている。(開発教育協会、Vol1.-1)
  • 会費振り込みのお礼状と領収書を送る際に、必ず手書きの挨拶を添える。会員に図書館活動への共感と、支援していることを実感してもらう。(高知こども図書館、Vol1.-2)
  • 2011年にはマドレ基金を設立し、無償プログラム運営の財源を賄うべく、寄付を募る。(マドレボニータ、Vol3.-1)
  • 個人・法人等に対して、社会投資家からの寄附金を財源として、資金支援だけでなく、経営診断・指導等の直接支援が受けられる助成制度「“志”民(しみん)ファンド」を創設している。(大阪NPOセンター、Vol5.-1)
  • 今後更に寄附金が受けやすくなるように、認定NPO法人になることを目指している。(大泉国際教育技術普及センター、Vol4.-3)

2.団体経営の課題

 経営に関しては、特に事業戦略やマーケティング等の課題が挙げられた。そのため、企業で実施されているマーケティングや事業戦略の手法をNPOの経営に取り入れる団体も見受けられる。
 また、NPOではミッションのもとに様々な人が集まり活動を行うという企業にない特性がある。多くの人に団体のミッションを知ってもらうとともに、スタッフ間でミッションの共有を行う団体もある。

参考事例
  • 民間企業と同じく経営と執行を分離することで意思決定の透明性を図り、組織基盤の強化を図っている。(G-net、Vol5.-3)
  • 企業向けのバランススコアカードをNPO向けに改良したり、運営に経営の視点を入れるために企業の社長に理事に加わってもらったり、理事会をオープンにしたりといった、経営上の工夫も様々に行っている。(ボラみみより情報局、Vol5.-3)
  • 代表理事の経営コンサルタントとしてのノウハウを生かし、plan(計画)-do(実行)-check(評価)-act(改善)のPDCAサイクルを取り入れ、参加者の募集から実行、財務も含めて全体を管理している。(えがおつなげて、Vol2.-2)
  • 属人的な業務運営を避け、細かなことまでもマニュアル化・ルール化して、安定したサービスを誰でも同じように提供できるように工夫している。(ブレーンヒューマニティー、Vol2.-2)
  • ホームページ、ブログ、ツイッター、広報誌、助成報告会などを通じて積極的に情報開示を行い、活動に対する社会的な認知を広げることで、多くの市民や企業からの寄附を得てファンドの充実を図っている。(神奈川子ども未来ファンド、Vol5.-4)
  • 初期に少人数で運営していたときには問題ではなかったが、職員が増えた今、法人の考え方について改めて意思統一をする機会を設けている。(「育て上げ」ネット、Vol1.-3)

3.人材の獲得・育成

 ヒアリング団体の多くは、人材育成を重点課題として挙げている。特に財政基盤のぜい弱さから雇用が継続できない、人材を育成しても給与が低いため定着せずノウハウが蓄積されない、スタッフが高齢化して次代を担うスタッフがいない等の声が聞かれた。また、ボランティアに頼る運営についての課題も見られた。
 雇用の確保や人材育成のために、外部スタッフの活用や、研修の充実、またNPO同士の連携による取り組みも増えている。

参考事例
  • ボランティアと有給スタッフとの役割分担の明確化と、ボランティアリーダー育成を実施する。(ホース・フレンズ事務局、Vol2.-3)
  • 団体運営にかかる労力を軽減し、より一層団体の力を強化するために考えた答えは、「プロボノ」(専門家による社会貢献活動)から協力を得ることであった。(FatheringJapan、Vol3.-1)
  • 事業から管理業務まで幅広く団体の活動を支えるボランティアに、スタッフと同様の責任を与え、プロ意識を育てている。(夢職人、Vol2.-2)
  • 催物の参加者であった人が、次はボランティアスタッフとして活動の手伝いをし、やがて自分の企画を行うようになる、という流れが存在する。ボランティアの層が厚いため、スタッフはコーディネートに専念することができ、たくさんのイベントを同時並行で実行できる。(登別自然活動支援組織モモンガくらぶ、Vol4.-2)
  • NPO間、企業、行政等も含めて相互評価できるような仕組みをつくること、また団体の枠を超えてキャリア形成支援や人材育成を行い、それらをある程度共通化することによってコストを下げ、人材の質の底上げを図っている。(ユースビジョン、Vol5.-2)

4.行政・企業等との連携・協働について

(1)行政・企業等との連携・協働のメリット・成果

 NPO側のメリットとしては、資金面や社会の信頼、活動の広がり、といった点が多く挙げられた。また、広報や場所の提供など資金以外の支援も重要であることが示された。
 一方、企業からは、社会貢献ができる、社員のモチベーションがあがる等の評価を得ている。行政等からは、教育活動の充実、地域教育力の向上、経費削減効果などが挙がっている。また、NPO、行政の双方から、互いの特性を生かして足りない部分を補うことができるという声も多い。

参考事例
  • 行政からの後援が他の組織からの信用につながり、教育機関や企業、研究機関などとの連携がしやすくなるため、引き続き積極的に働きかけをしていきたい。(アースウォッチ・ジャパン、Vol4.-2)
  • 必要物資に対する現物給付、広報誌での活動の告知や大学側の教室の無料開放など、資金面以外の支援が活動継続の上で役立っている。(東京学芸大子ども未来研究所、Vol2.-1)
  • 企業からの寄附プログラムは、協賛・寄附という形の直接的な資金提供、物資等の提供、各種キャンペーンやイベントなどで広報の機会提供を受けるものがある。(神奈川子ども未来ファンド、Vol5.-4)
  • 企業からの支援の形態は、社内報への掲載やセミナーの会場の無償貸与など様々であり、企業が出せるリソースと企業のニーズに合わせてNPO側も提案する必要があると考えている。広報面での支援依頼も行っている。(チャイルドライン支援センター、Vol2.-4)
  • 授業等ですぐに使えるシナリオ設定やワークシート・グッズ等のすべてを取りそろえた教材は、多忙でなかなか教材研究に手が回らない学校の先生方から好評を得ている。(C・キッズ・ネットワーク、Vol3.-2)
  • 個人情報を取り扱う登録業務は行政が行い、NPO側は移住者の引っ越しを手伝うなど細やかさを生かして家主・移住希望者の窓口業務を担うなど、行政、NPO双方の特性を生かした協働ができた。(尾道空き家再生プロジェクト、Vol4.-1)

(2)行政・企業等との連携・協働の課題、解決策と提案

 NPO側からは、NPOに対する理解の不足や行政との方向性の違い等が課題として示された。一方、行政側からは、NPO側の事業の進め方が行政の既存の方式やルールに合わない、どの団体と協働すればいいのか分からないなどが挙げられた。
 これらの課題に対しては、NPO側から情報共有の場を増やす等の解決策や提案が挙げられている。

1.互いの情報共有や意思疎通、理解がなかなか進まない

 NPO、行政双方から、互いの情報共有や理解、意思疎通の不足が課題として多く挙げられた。また、行政側から協働するNPOの評価をどのようにすればいいのか分からない、NPO側からはNPOに対するきちんとした評価がされないといった課題も出された。
 解決策・提案としては、NPOのコーディネート機能をうまく生かして、互いの交流や情報交換の場を増やすこと、中間支援組織等を活用してネットワークをつくること、互いの役割を明確にすること等が挙げられた。

参考事例

<解決策>

  • 行政でできること、できないこと、NPOができること、できないことを出し合いながら、妥協点を見いだすとともに、事業運営に際しては円滑な運営に向けた調整を行った。(わかやまNPOセンター、Vol2.-1)
  • 委託事業を始めるときは、必ず行政の担当者にも声をかけ、市民が強い思いを持って課題を克服するために行動している現場を実際に見てもらい、課題を解決するに当たってどのような施策が必要か判断してもらう機会を事業の初期段階で提供している。(浜松NPOネットワークセンター、Vol3.-4)
  • 行政職員と一般市民が、同じテーブルで一緒に学ぶ。講座で疑似体験し、実際の現場でも協働を進めやすくする。(まちづくり学校、Vol4.-1)
  • 企業との協働において、率直な意見交換ができる「場づくり」や、双方のプログラムに対する前向きな「姿勢」の共有が、協働によるプログラムを支え、継続・発展につながる。これは、企業がNPOと協働する場合の重要なスタンスといえる。(NPOサポートセンター、Vol5.-1)
  • NPO法人は、行政にはないノウハウや経験を持ち、新たな仕事を創るものだという意識が行政内に広まるまで、地道に活動を続け、実績を重ねることがNPO法人の評価の底上げに直結する。(グリーンスポーツ鳥取、Vol4.-4)
  • 企業と接点を作るに当たっては、中間支援組織からの紹介によって、企業のCSR担当者との接点が生まれており、今後、企業と出会うため、より多くのきっかけを模索していきたい。(TRYWARP、Vol1.-4)
  • 学校の先生、研究者、行政の担当者、学生などが、授業づくりについての研究や情報交換をする場でアイディアが生まれたり、お互いをつなぐコーディネートの場となっている。(企業教育研究会、Vol1.-1)
  • 最も有効なのは行政に足を運ぶことである。顔の見える関係で情報を集めるのが一番効果が高い。(With優、Vol2.-3)

<今後に向けての提案>

  • 企業は学校との直接の接点がないため、NPOがその間に入ることで、子供たちのためになるように放課後プログラムをコーディネートすることが可能となる。(放課後NPOアフタースクール、Vol2.-2)
  • 法人格としては借入れがしにくい、社会的信用がないなどで、運営上厳しい。行政や民間が担えない部分を担っているNPO法人の活動内容を評価し、正当な社会的評価がなされるべきである。NPO法人の信用調査や事業内容の評価を行う第三者機関の設置が必要である。(パンゲア、Vol4.-3)

2.行政・企業等のニーズや方向性と合わない、ルールの違い

 NPO側からは、学校の日程と合わない、単発のプログラムが多く効果を上げるのが難しいといった声があがった。一方、行政からは行政の方式やルールに合わないといった声が聞かれた。
 解決策としては、お互いのニーズに合った提案をしてWin-Winの関係を目指すこと、協働のルールづくりを行うことなどが挙げられた。

参考事例

<解決策>

  • 行政と協働の際には、納税の理解促進や投票率向上につなげるため、税金の導入や模擬投票をプログラムに入れるなど、行政のニーズに応える形でプログラムをつくった。企業向けには、集客効果と地域のブランドを構築するパッケージとして安心安全のためのリスク対策も盛り込んだプログラムとした。(こども盆栽、Vol1.-3)
  • 学校の実態に配慮し、学校のニーズに応えられるよう、団体のコーディネーターが学校担当者との検討を重ね、それぞれに応じたカリキュラムを構築して実施している。(未来図書館、Vol1.-3)
  • 学校の日程が決まっており、単発的授業で効果があるのかが疑問。このため、行った授業の内容について別途生徒がワークショップを行うなど、後につなげる工夫を行っている。(からだとこころの発見塾、Vol1.-2)

<今後に向けての提案>

  • 協働で大切なのは、どうやったらWin-Winの関係を築くことができるかである。企業からの寄附に対して何を返せるか、行政にとってのメリットは何かを考えることが必要であり、自分たちの得だけを考えては駄目である。逆に相手のメリットを考えることで、自分たちにも得るものがある。(ボラみみより情報局、Vol5.-3)
  • 行政は、自らの縦割りを克服するために行政内の理解を進め、その上で地域社会の再生に向けてNPOとの本格的な協働関係を構築し、「新しい公共」時代を築いていく必要がある。(北海道NPOサポートセンター、Vol5.-1)
  • すべての行政、経済団体が「NPOとの協働」を掲げた担当部署等を設け、恒常的に協働を推進していく仕組みをつくっていくことが必要ではないか。(パートナーシップ・サポートセンター、Vol5.-2)
  • 行政から奨励されている取り組みでは、定員や登録制度が存在する。必要としている子供たち全員が集まることのできるより開かれた場所にするために、活動に対する行政側の理解と何らかの良策が必要となる。(のびーの宮崎、Vol3.-1)

3.行政や企業と対等な関係を築く力が不足している、自主性が損なわれる

 NPO側からは、行政や企業と対等な関係を結ぶことが難しく、安易な下請になりかねない、協働することで、財政面やミッションなどの点でNPOの自主性が損なわれるといった声が上がった。
 解決策としては、NPO自身が力をつけること、助成金や補助金だけに頼らず多様な収入源を確保すること等が挙げられた。

参考事例

<解決策>

  • 行政からの補助がなくなるということを前提に、ビジネスモデルをつくらなくてはならない。そのために、企業や学校、大学への働きかけを行っている。(教育プラットフォーム北海道、Vol1.-3)
  • 企業から助成金があることで、企業のために活動を行っているかのような誤解を招く可能性がある。NPO法人として中立の立場であることをいかに見せるかという課題に対し、行政、企業、大学との対等なパートナーとして、公益のための活動であることが伝わるようにしている。(NPO支援センターちば、Vol5.-2)
  • 芝生化に対しては、行政以上のノウハウを持つ実績が認められ行政とのパートナーシップが進んだ。(グリーンスポーツ鳥取、Vol4.-4)
  • 従来は応援会費が活動を支える大きな収入源となっていたが、「行政の資金を活用しているため、会費は必要ないのでは」との意識が広まり、会費収入が半減した。生徒と保護者、ボランティアが作成した手芸品を販売する「工房たまりば」を設立し、そこから収入を得るなどして差額を補填するなどの工夫を行っている。(フリースペースたまりば、Vol2.-4)

<今後に向けての提案>

  • 市民と行政が対等な関係で協働することが必要。市民側の特徴は、地域社会の課題にきめ細やかに対応し、個別具体的なケースを把握できることにある。一方、行政は大きな情報のネットワークを活用し、行政の信頼性を利用して幅広く地域の協力を得ることができる。(ふらっとステーション・ドリーム、Vol3.-3)
  • 行政の受託事業に意欲的に取り組むほど、基幹事業への取り組みが遅れてしまい、受託事業に経営が左右されやすい。今後は、行政からの事業受託以外の資金調達チャネルを増やすことで、事業を安定させ、団体の目的に沿った活動展開を目指している。(G-net、Vol5.-3)
  • 行政との協働では、団体のポリシーと違うことは拒否できるように、NPO自身が力をつけることが重要である。(アサザ基金、Vol4.-2)

NPOと行政・企業等との連携・協働のメリット・成果、課題、解決策

  メリット・成果 課題 解決策
NPO側から
  • 地域や社会の信頼が増す
  • 安定的な資金調達ができる
  • 場所の提供や広報等の支援が得られる
  • 活動の幅が広がる
  • 行政の方針に合わせすぎると、NPOのミッションとかい離する
  • 助成金等が終了すると、事業が継続できない
  • 個人情報保護や公平性の問題など、行政の制約に左右される
  • 専門性と経営力を高め、行政と対等に意見交換等ができる力をつける
  • 自主事業など多様な収入源を持つ
企業・行政側から
  • NPOの専門性が高いため、教育活動が充実する
  • 行政では難しいきめ細やかな対応や市民の目線での教育活動ができる
  • 地域の人が参加することで、地域の教育力が向上する
  • 行政の方式やルールに合わない、協働のルールづくりができていない
  • NPOに関する情報が少なく、どの団体と協働すればいいのか分からない
  • NPOと協働するためのルールづくりを行う
  • NPO側が情報を積極的に発信する
NPO、企業・行政双方から
  • それぞれの強みや特性を生かし単独ではできない事業ができる
  • 地域の人材の発掘や地域活性化など、地域全体への効果が期待できる
  • お互いの情報共有や意思疎通、人材交流の機会が少ない
  • お互いのニーズや方向性が合わない
  • 対話、意見交換、交流、情報交換の場を設ける
  • お互いのニーズをすり合わせ、Win-Win の関係をつくる
  • NPOの評価の基準や評価機関を設ける

5.むすび――これからのNPO、行政に求められること

 調査事例を通して明らかになったのは、既に多くの教育関係NPOが、そのネットワークや資源を生かして、地域をつなぎ、地域の教育力向上を図る取り組みを行い、一定の成果と評価を得ていることである。一方で、安定した財源確保や後継者の育成など多くのNPOが共通して持つ課題も浮かび上がった。
 また、NPOと行政・企業の連携・協働が、NPOの活動・事業推進だけでなく、地域の課題解決にとって非常に重要であることが示された。さらに、NPO・行政・企業等が互いに連携をとりながら情報共有や相互理解を深めていくこと、また様々なネットワークにより情報や課題を共有することが、それぞれが抱える課題の解決にとって有益であることも示唆された。
 本事例集をきっかけに、「新しい公共」の担い手として教育関係NPOの活動がより活発化するとともに、NPO・行政・企業等の連携・協働が一層推進され、様々な地域や社会の課題解決に向けた動きとなることが期待される。

お問合せ先

総合教育政策局生涯学習推進課民間教育事業振興室

(総合教育政策局生涯学習推進課民間教育事業振興室)

-- 登録:平成24年02月 --