議事録3(パネルディスカッション)

【新木】  この後はパネルトークに移りたいと思います。
 パネルトークはNPO法人ファザーリング・ジャパン理事の村上誠氏にコーディネーターになっていただきまして、ただいま講演いただきました福井様、郷司様のほかに、NPO法人ファザーリング・ジャパン関西代表の和田憲明様、文部科学省社会教育課長の坪田知広にもパネリストとして参加していただき、「現実・課題・理想から実践へ…!!」をテーマにしてパネルトークを行いたいと思います。
 それでは、これから先の進行につきましては、コーディネーターの村上さんにお願いいたします。
【村上】  それでは、後半のパネルディスカッションに進ませていただきたいと思います。
 まずは講演していただいた福井さん、すばらしい体験談を話していただいた郷司さんに改めてお礼を申し上げます。引き続き、パネルディスカッションの方でも、先ほどの話を掘り下げて聞いていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 御挨拶がおくれてしまいましたけれども、私、NPO法人ファザーリング・ジャパンの理事を務めさせていただきまして、この分科会のテーマでもあるイクジイプロジェクトを推進させていただいている村上と申します。この後の時間、コーディネーターを務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 まず、私の自己紹介を軽くさせていただきたいと思います。
 イクジイを推進させているんですけれども、私自身、まだイクジイという年齢ではございません。実は、私は子供が二人おりまして、千葉の方に住んでいるんですけれども、妻と同居している父がおりまして、父がまさにイクジイなんです。現役時代は子育てをしてもらった記憶がほとんどない昔の男性だったんですけれども、子供が生まれまして、先ほどメインシンポのオープニングで渥美さんがおっしゃったみたいに、私も介護を経験しました。母が4年ほど前に倒れまして、介護を3年ぐらいやったんですけれども、その際に、介護と子育て、そして仕事の両立がなかなか大変な中で、父が――孫ができると男性ってすごい変わるんですよね。孫は本当にかわいいということで、かなり育児の方も協力していただいて、そこから私の体験をもとにイクジイというものの必要性をすごく感じました。
 先ほど、福井さんのお話でも同居率の話が出てきて、全国的に同居している家庭というのは8%ぐらいしかないと。地方だともう少し高いんですけれども、同居、近居を含めても、なかなか親の手を借りて育児をサポートしてもらえる家庭というのは非常に少なくなってきている。その恩恵を私の方はあずかれているんですけれども、世の中のイクジイという響きは、まだ自分の孫育てをするおじいちゃんのイメージが強いと思います。
 でも、今回のテーマでもあるように、今は地域のおじいちゃんが必要ですし、これから地域を強めていくキーパーソンになるのではないかと思いまして、私たちイクジイプロジェクトでは、単なる自身の孫育てだけではなくて、地域の子供たちを見守り育てる、そして育むおじいちゃんが増えていくことが、これからの日本の非常に大きな糧になるんじゃないかと思いまして、それを推進しているところでございます。
 私の自己紹介が少し長くなってしまいましたけれども、ここから、このパネルディスカッションには、今、右にいらっしゃる文部科学省生涯学習政策局社会教育課長であられる坪田さんにも御登壇いただきまして、もう一方、一番左のファザーリング・ジャパン関西の代表を務めて、今、地域でイクジイ講座等々を積極的にされている和田さんにも登壇していただきます。
 それでは、先ほど登壇された福井さん、郷司さんは既に紹介をお聞きしましたので、この場では省略させていただきまして、ここから登壇されるお二方に軽く自己紹介をしていただきたいと思います。
 まず坪田課長、よろしくお願いいたします。
【坪田】  公職の立場はもういいので、個人の立場でここから参加したいと思っております。
 私は三人の子供の父親で、二人目のときに育児休業も3か月取っております。平成16年なので、自分で言うのも何ですけれども、イクメンの先駆けに近いところかなと思っております。あと、今、小学校のPTAの会長もしております。
 今日、ほかの分科会では、育児のためにどうやって特別休暇をとるかというのが議題みたいですけれども、私、今年は今、35日ぐらい、PTAの会長としての仕事やもちろん子供が熱を出してということで有休を取ったりしておりますので、かなり上位にランキングされる取得率じゃないかなと。そうやると、国だからできるんじゃないか、暇なんじゃないかということがあるんですけれども、実は全然そういうことはなくて、人手不足ですけれどもやりくりしている。そういう話も後ほどできたらと思っております。
 ほかに、おやじ日本というNPO法人の委員もやっていたり、様々なことをやってここまで来ました。今日は是非郷司さんや福井さんなどの先輩を追っかけて、イクジイになる道を歩みたいと思っています。
 どうぞよろしくお願いします。(拍手)
【村上】  よろしくお願いいたします。
 それでは、和田さん、軽く自己紹介をよろしくお願いします。
【和田】  皆さん、こんにちは。御紹介にあずかりました、NPO法人ファザーリング・ジャパン関西の和田と申します。
 今日はちょっとエプロンをしてきたんですけれども、これは衣装でも何でもなくて、私の普段着です。うちは妻が看護師で働いておりまして、私が主に家事、育児をしながらNPO活動をしています。大阪の箕面市というところに住んでいまして、今、ファザーリング・ジャパン関西で、関西一円のいろいろなところでイクジイ講座という形で、関西においてイクジイを推進しようと活動しております。
 私も村上さんと恐らく似た年代、団塊ジュニアの昭和49年生まれなんです。娘が二人おりまして、4年生と6歳で妻は看護師、うちの場合主人なんですけれども。主人は看護師をしております。あと、ファザーリング・ジャパンは父親の支援を始めたんですけれども、そこから発展してイクジイ講座。
 私は、地元では主夫をしながら、いろいろ地元のボランティア活動であったり、保育園の保護者会、小学校のPTA、子供会でお話会といろいろな活動をさせてもらったり、家を開放じゃないけれども、年に2回ぐらい和田家お泊まり会と言って、近所の子に泊まってもらったりしております。
 ということで、イクジイ関連の話はまたこれから出てくると思いますので、自己紹介はこれぐらいで、よろしくお願いいたします。(拍手)
【村上】  ありがとうございます。それでは、パネルディスカッションを進めさせていただきたいと思います。
 私の方で皆さんにまず聞いてみたいと思うのは、イクジイという言葉を今回初めて聞かれた方もいらっしゃるかもしれないんですけれども、きっと今時の高齢者、おじいちゃん像というものが、実は私たちが考えていたおじいちゃん像からかなり変わってきているんじゃないかなと私は感じているんです。地域で活動されていたり、今日はイクジイとして郷司さんもいらしているので、いわゆる昔のおじいちゃんって縁側でお茶をすすっているとか頑固じじいとか、そういうイメージじゃない、今時の高齢者像から、きっとこれから私たちやここに来られている行政の方々とかも、そういう方々をどういうふうに地域に巻き込んでいこうかなといったときに、僕はまず今時の高齢者像を知りたいと思ったんですけれども、どうでしょうか、活動されている中なり地域で触れている方々を見て。
【福井】  高齢者像というか、全体を見渡してこうであるということは言えないと思うんですが、一つは、おじいちゃん、おばあちゃんの年齢が二極化しているということは言えますね。これは、結婚年齢の高齢化と若齢結婚、いわゆるデキ婚ですね。おめでた婚の社会化ということで、18歳、19歳で子供を産む子のおじいちゃん、おばあちゃんは40代です。35歳を過ぎてから結婚して子供を産む人のおじいちゃん、おばあちゃんは、既に60代後半、70代であると。実は、男性の平均結婚年齢31歳になろうとしておりますが、その層が一番結婚するわけじゃないということです。祖父母の年齢の二極化というのは、全体像、大きなカテゴリーからすると、それは社会的にははっきり言えることかなと思います。
【村上】  和田さん、イクジイ講座やられていてどうですか。
【和田】  そうですね、いまだにおじいちゃん、おばあちゃんのイラストって、おばあちゃんはおだんご頭で、おじいちゃんはつえをついていると。そんなおじいちゃんほとんどいないですよね。あと、何でしょう。私自身が子供のころにイメージしたおじいちゃんと今のおじいちゃんって、確かに全然違っていて、あえてここやから言うんですけれども、すごい幼稚やなって感じるんです。あえて言いますけれども。僕の父親の話をしますと、僕の父親は昭和20年生まれなんですけれども、僕は二人兄弟で弟と二人いまして、僕と弟が家から独立して家を出てから、自宅のリビングに50インチのプラズマテレビを買って、それで夜な夜なベン・ハーを一人で見ているという。
 さっき福井さんがおっしゃっていたみたいに、自分の……。何でしょう、もちろん高度成長期を支えてくださって、働かれていたのはすごくわかるんです。そのリソースを退職してから全て自分につぎ込んでしまうという方の割合が、全員が全員でないと思うんですけれども、とても多いと感じています。イクジイ講座に来られる方は、やっぱりそれに関心がある方なのでそういう方ではないんですけれども、その面でも二極化しているのかなというイメージはあります。
【福井】  さっきも打合せのときに話したみたいに、九州1周を回る豪華列車できましたよね。ほとんど団塊の世代の御夫婦が利用者だというのが、リソースは自分にということですね。
【村上】  そう言われていますけれども、郷司さん、どうですか。
【郷司】  いや、自分は全然該当してないと思いますのでよくわからないですけれども。自分は普通の人と違うなと昔から思っていて、あまのじゃくというか、基本的には友達を持たない。自分は自分。でも、人の意見は一応聞いて、悪ければ直すけれども、変に見られても別に全然構わないと。それは人それぞれでいいんじゃないのという感じでやっていますので、今のほかのじじばばさんがどうかというのは、自分自身関心ないんです、はっきり言って。自分は自分のやりたいことをやればそれでいいし、人に迷惑かけているわけではないので、それでいいんじゃないかなと思っています。
【村上】  そうですね、郷司さん、団塊の世代なんですよね。
【郷司】  真ん中です。
【村上】  真ん中ですか。今、団塊の世代の話が出ましたけれども、おじいちゃん像というのがあって、団塊の世代は、確かにバイタリティーがあるとか、先ほど福井さんも少しおっしゃったように、本当に日本の高度成長期を築き上げてきたぐらいパワーがある方々がいらっしゃって、その方が定年退職されて何をやるんだというところで、もったいないパワーが実際あるなとは思います。そこをどうするのかというところが一つの課題なのかなと思ったのと、今回、文科省さんと一緒にやって、生涯学習というキーワードがこの分科会があるんですけれども、そのバイタリティーをどこに持っていくかというところなのかなと思うんです。
 和田さんのお父さんみたいに自分の趣味に走るのか、幾つになっても勉強していく、その勉強の先に何があるのかというところなのかなと思ったんですけれども、どうなんでしょう、坪田さん。
【坪田】  今日はタイトル付けにもあるように、未来を育てるというのは、まさに子供の世代なんですけれども、よく社会保障費とかを高齢者に使い過ぎているんじゃないかと言われています。消費税も高齢者の医療費、年金が増えて、年間1兆円ずつ増やさなくちゃいけないということで、やむなくのことなんですけれども、じゃあ、子供にはどれだけ使っているかというと、世界のOECD加盟国平均でも、日本は教育も児童福祉のお金も最低レベルなんです。
 そういう現実をすぐにはなかなかひっくり返せないんだけれども、高齢者がますます学んで元気になって、自分が豊かになるだけではなくて、それを若い世代、子供に還元していく。そして、子供がよりよく育つと。人口減少で少子化はやむを得ないんですけれども、全ての子供がよりよく育つようになっていくということで、取りこぼさない、子供たちが育ってまた未来を支えていくという好循環をつくっていくという意味で、学びと活躍、これに代表する何か象徴的な言葉がイクジイということなのかなという受けとめをしています。
 非常にいい傾向になってきているなと思いますし、やっぱり学んで何か成果が出ないと、そうじゃないという説もありますけれども、目に見える成果──子供の笑顔でもいいんですよね。別に報酬がなくても数字で表れなくても、子供が笑顔をつくってくれた、それで今日はよく眠れるみたいなことが健康寿命を延ばす。だから、自分にも返ってくるということなので、本当にいい傾向だと思います。
【村上】  ありがとうございます。まさに今おっしゃったとおりに、自分に返ってくるものがあると気付けるかどうかって大きいと思いました。
【福井】  そうですね。団塊の世代の方々は、僕は昭和31年生まれなので10歳ぐらい先輩なんです。僕が仕事を始めた頃に10年先輩、鬼のような先輩がいっぱいいました。この人たちの特徴は、学生のころに社会にコミットして、夢破れた人たちなんですよ。1960年から始まった学生運動、70年を迎え、私もぎりぎり端っこにぶら下がっている世代なんですけれども、情熱をかけて社会にコミットをすごくしたんです。結局何も変わらなかったという失望感を持っている。さっき郷司さんがおっしゃったように、自分が頑張る。周りの人の目は気にしないという世代になってきたのかなと思うんですが、よく付き合ってみると、社会に未練を残しています。社会を見捨てられない世代でもあるんですよ。だから、そこをどうくすぐって、どこのスイッチを入れてあげるかによって、社会にどっと流れてくる可能性がある世代だなと思います。
【村上】  なるほど。じゃあ、よく高度成長の話とかで、団塊世代が築き上げてきたということは言うけれども、実際、自分たちが社会に対して何かやったというリアリティーはそんなに感じてないということなんですか、社会活動という形でいうと。
【福井】  学生運動がはやってと言ったら怒られますね。激化していた時代は、学生の多くが政治に興味を持ち、社会のひずみに興味を持っていましたよね。そこに対してすごく情熱的にコミットしていたのに、それが成就しなかったのが余りにもショックだったんだろうなという気はしますね。
【村上】  なるほど。じゃあ、経済は豊かにしたけれども、社会改革の面ではやりきれなかった思いがある世代だと。
【福井】  そうですね。世代の感覚としては残っているんじゃないかなと。
【村上】  どうですか、リアリティー、郷司さん。
【郷司】  福井さんの腰を折るわけじゃないんですけれども、僕は学生時代、全くノンポリで、大学は封鎖されましたけれども、それにはノータッチでせっせとアルバイトをしていた人間です。だから、社会に対してうんぬんというのはないんですけれども、定年後に何かやろうと思ったときに、趣味とかに走る方は多いですよね、ものすごく。
【村上】  そうですね、多いですね。
【郷司】  でも、自分は趣味だけというのは何となく自分が納得できなくて、社会的に何か貢献せんとまずいやろうなというところが大前提なんですよね。やっぱりボランティアかなという感じで今まで来ているんですけれども。
【村上】  そうですね、そういった切り口で入られるイクジイの方も、私も本当に何人もお会いしているんですけれども、やはり先ほど郷司さんのお話にもあったように、最初すごくわかりにくくて、どこから取っついていいかわからなかったり、いろいろな講座を受けて、ようやく今にたどり着いたという流れですよね。そのあたりのわかりにくさというものなり、郷司さんはそこに飛びつけたからよかったんですけれども、なかなかその情報が少ないとか、踏み出すのが難しいという方の方が多いんじゃないかなと思うんですけれども、周りを見ていてどうでしょうか。
【郷司】  ほかの人と比較したことはないんですが、自分自身は、最初はわからなかったです、確かに。だから、男性料理の教室に行って、食進会に入ったんですね。食進会はボランティアですよね。男性料理教室は単なる教室で、教えてもらうだけですけれども、食進会に入ってボランティアだな、じゃあ、ほかに何かあるかなというので、市の広報を結構細かく見るようになったんです。そうしたらいろいろ載っていると。それから、インターネットでホームページも見ると、いろいろな講座とかも書いてある。何だこんなにあるんだというんで、片っ端から本当に受けていました。毎月のように講座を受けては団体に入っていたという感じです。だから、ピークのときは20を超えていたと思います。毎日のようにどっか行っていましたからね。結局、自分なりに経験して選んで、今残っているという感じなんですけれども、その中で自分に合ったものを選んでいけば、それから得た何か新しいものをつくってもいいですし、その人なりに考えていけばいいんじゃないかなと思います。ただ、広報とかを本当に細かく読んでいくと、いろいろ載っているんですね。情報がないという言葉をよく聞きますけれども、見ていないんじゃないのと。
【村上】  なるほど。何かありますか。
【福井】  和田さんも多分共通意見だと思うんですが、僕も広島とか山口でイクジイ講座をやるんですけれども、イクジイ講座に来るおじいちゃんって、最初からそういう面を持っていますよね、ある意味。
【和田】  そうですね。最初から全員郷司さんなんですよ。
【福井】  そうそう。コミットしようという思いがあるんですよ。
【和田】  ぶっちゃけそうなんですよ。
【福井】  あとは妻に行ってこいと言われましたみたいな、パパ講座と同じような感じがあります。ただ、やっぱり大きく二極化していますね。全く地域社会にコミットしない人と、自分の生きがいのためにいろいろなことを勉強しようという人の二極化は激しいかなと思います。あとは、生涯学習をずっと続けていて、生涯学習の果てが見えないですよね。だから、これを勉強していて、何で達成感を得たらいいだろうという、その着陸点がないので、学習のための学習になっちゃっている。
【村上】  ああ、自分のためだということですか。
【福井】  そうですね。学習したことが何か社会の役に立つような着陸地点が見えると、もっといいのかなと思いますけれども、その辺が公民館がうまく用意できていないところかなという気はします。
【村上】  なるほど。先ほど福井さんの方で、世代をつなげるみたいな話が少しあったと思うんですけれども、僕が思うのが、福祉というとどうしても弱者に対して施すイメージがすごく強くて、その中で、子供や高齢者が福祉の対象だというイメージがすごく強い気がしていて、僕はそこが何か変わらないかなと思っているんです。
 こういう活動をしていると、高齢者の方々とお子さんとかをつなげると、互いに補えるものと得るものが非常にあると思うんです。年配の方のいろいろな経験や知恵を子供に伝えるのと同時に、子供からもきっと得られるもの、それは子供の笑顔や親からの感謝の言葉かもしれないんですけれども、そこがうまくマッチングするとうまく回るんじゃないかなという期待を僕はすごくしています。そのあたりは、先ほど、福井さんが公民館のコンテンツ的な話をしていたんですけれども、そのあたり少し何かアイデアとか可能性があればちょっと。
【福井】  公民館の事業で、いろいろなところを見ても、おじいちゃんが出てくるとアイテムは昔遊びなんですよね。オンラインゲームをしないんですよ。でも、おじいちゃんはオンラインゲームするんですよ。子供たちもオンラインゲーム大好きですよね。オンラインゲームをやり過ぎる弊害というのはありますが、そこをコントロールしながら、何でおじいちゃんをオンラインゲームで公民館に集めないんだろうと僕はいつも思うんですよ。公民館にオンラインゲームというアイテムはない。昔遊びだったりしますよね。
 逆に、あとは、ずっと高度経済成長時代を支えてきたビジネスマンとしてのスキルがありますよね。「24時間戦えますか」の人たちですから。ビジネスマンとしてのスキルを公民館で生かせるような講座を、何か公民館は考えないのかなと思います。例えば、郷司さんの世代だと、一般的にパソコンは苦手と思いがちじゃないですか。いや、そうでもないんですよ。
【村上】  そうですね。
【福井】  その業界にいた人は、相当スキルの高い人がいるので、そういう人を使った小学生向け、中学生向けのパソコン教室みたいなものというのは、どうも公民館の思考の中から出てこないようでして、パソコン教室は高齢者向けみたいな、高齢者が教えればいいのに高齢者が習いに来る教室しかしない、その辺の仕組みを根底からごろっと変える発想の転換は必要かなと思います。
【村上】  なるほど。
【福井】  郷司さんはエンジニアだったから、エンジニアで得たスキルを何か、ちっちゃい子供じゃなくて、もう少し中学生や高校生に話してあげることだってできるだろうし、何かそういう使い方を何でしないのかなとは思いますね。
【村上】  郷司さんとも今フェイスブックでやりとりしていますもんね。すごいんですよ、郷司さん。
【郷司】  僕らの世代は、パソコンを強制的に与えられた世代なので、それまでワープロさえ打ったことのないのに、いきなりパソコンをどんと与えて使えと言われて。一生懸命人差し指であかさたな。パソコンのかわりですね、最初の。あっという間にメールだ、インターネットだってなって。使えるようになったんでよかったんですけれども。自分のスキルを生かそうという考えは、すみません、ないですね。ちょっと専門が一般受けしないことなのでまず使えないから、一般的な理科系のことでお手伝いするのはできるかなとは思います。
 たださっき、楽しみは何かなという話があったんです。僕の楽しみは、子供さんは、自分が普段会っている子以外でも、手を振ったりしてにこって笑ってやると返してくれるんですよね。これが一番の楽しみっていうか、子供さんのあの笑顔というのは何にも代えられないというか、そういうところです。
【村上】  ありがとうございます。和田さん、何かありますか。何かそこに置かれているものがありますけれども、せっかく持ってきてくれたので。
【和田】  そうなんですよ。今、福井さんがおっしゃった、今のおじいちゃん像の転換というところもあるんですけれども、それとはまた対極に、昔遊びとか昔ながらのことって、僕が個人的に思うのは、乳児の世話は、僕ら親よりも多分おじいちゃん、おばあちゃんの方が得意かなって思います。
 おじいちゃん、おばあちゃんと幼児の共通点は何かというと、同じ話を何回でもするんですよね。「いないいないばあ」という絵本があって、これ、日本で一番売れている絵本なんです。1964年初版で、今年500万部突破したそうなんですけど、この絵本は何かというと、「いない、いない、ばあ。にゃあにゃが、ほらほら、いない、いない……ばあ。いない、いない、ばあ。くまちゃんが、ほらね、いない、いない……ばあ」と最後までこれなんです。これ、実は親はめっちゃつらいんですよ。うちの子供はちょっとベビーサインをしていたんで、最後まで読んだら「もっかい」ってこうベビーサインするんですけど、「もっかい」「もっかい」って延々読まされるというのを。親世代って忙しいんですけど、この絵本を、遊んでもらって楽しかった思い出が一つもない僕の父親が、うちの次女が1歳のときに膝の上でこれを20分間読んでいました。「いない、いない、ばあ」って。
 おっしゃっていた目の前の笑顔とかっていうのと、あと、本当に手触りっていうか、子供の遊び――オンラインゲームももちろんよくて、楽しいんですけれども、子供の生活の中からすごい手触りとかアナログ感覚とか、きめの細かいものが失われてきていると思っています。例えば、幾つか持ってきたんで、全部出します。
【村上】  よろしくお願いします。
【和田】  これって知ってはりますか。ベイブレードという、2年ぐらい前まで全国の小学生ではやっていたやつなんですけど、これどうやって回すかといったら、突っ込んでカシャっとして、えいやと引っ張ったら、めっちゃよう回るんです。これはこれで楽しいんですよね。これを昔のベーゴマみたいにステージの上で戦わせるんですけど、誰でも回せるし力加減も何にも要らないんです。
 こっちのこまは、わりかし僕らより上の世代の方は回せる方が多いんです。僕ら世代はあんまり回せないです。多分、半分もいないんちゃうかなと思うんです。こまは、こうやってひもを掛けていくんです。これはどういう作業かといったら、皆さん、多分こま回しできる人は意識してないんですが、こまってひも巻くとき、最初ちょっと強めに巻いて、だんだん緩めていかないと──こんなん誰も意識してやってないですよ。けど、じゃないと崩れちゃうんですよ、ひもが。これをきゅって回すんです。これは簡単に回るけれども、回るまで時間がかかるし、実は、これに比べたらすごくきめが細かい。力加減、アナログ感覚が全然違うんです。
 あと、僕、この間福井さんとお話ししていてびっくりしたのが、福井さんが小学生のときに電動鉛筆削りが出たとおっしゃっていて、今、電動鉛筆削りはさすがに廃れて、さすがに今時の若いもんは楽し過ぎやろうとなったみたいで、うちの小学校はみんなほとんどこんな昔ながらの手回し式なんです。これも簡単に回せますけど、肥後守というこっちと比べてどっちが豊かか。豊かというか、力加減とか生きる力とか、危険な刃物を持つ作業というのは、どっちが生きるやろうと思ったら、全然豊かさの質が違うと思います。
 僕が思うに、おじいちゃんたちに今の親世代にこびてもらう必要は全然ないと思っていて、おじいちゃん、おばあちゃんたちの世代は、おじいちゃん、おばあちゃんたちにしかできないことを子供に伝えてくださることで、多分、子供の興味の幅とかが広がるんじゃないかなと思っています。それで、意見ぶつかってけんかになるかもしれないんですけど、けんかしないと理解できないでしょう、お互いにというのはちょっと思いました。
 世の中、けんか避けよう、争い避けようでどうなったかというと、すごいのっぺりした世の中になってきたのかなと思って。それを、ごつごつ感とか手触り、きめの細かさ、力加減というのを伝えられるのは、今のおじいちゃんたちなのかなと思っています。遊びとか生活の中で。
【村上】  そうですよね。下手すると、おじいちゃん、おばあちゃんの役割が、忙しいときに預かってもらうだけというふうに親は感じたり、あとはお財布代わりにしているようなところがあるじゃないですか、都合よく。そうじゃなく、きっとおじいちゃん、おばあちゃんならでは、おじいちゃん、おばあちゃんしかできないことがあるんじゃないかなと僕も思います。
【福井】  財布代わりは別として、忙しいときにおじいちゃん、おばあちゃんを使って、預かってもらうというのを、おじいちゃん、おばあちゃんは逆利用しちゃえばいいのかなと思っています。
 忙しいパパ、ママにとっては、もう何でもいいから預かってと。最も助かることですよね。
【村上】  そうなりがちですよね。
【福井】  預かった子供を自分の生きがいにする、自分の達成感に持っていくという利用の仕方をしたらいいんじゃないかな。両方が――こっちもおじいちゃん、おばあちゃんに何か教えてほしいと思って預けるし、おじいちゃん、受け手側も何かしてあげられるんじゃないかなと、そうすることが理想的でしょうけれども、なかなかそれは現時点では難しいと思います。
 忙しく働いている共働きのパパ、ママがとにかく預かってというのをおじいちゃん側はうまく利用して、郷司さんがさっきおっしゃっていましたけれども、とにかく楽しい、面白いというのを得られるわけですよね。だから、それはある意味ウィンウィンなのかなって気はします。
【村上】  そうですね。
【和田】  多分先ほどお話で出たと思うんですけれども、今の子供たちは、知らない人に挨拶してはいけませんと教育されているのに、学校では挨拶しなさいと言われるという、すごく引き裂かれたメッセージを受けて、混とんの、矛盾の中にいるんですね。
 イクジイ講座をいろいろなところでしていても、おじいちゃんたち、おばあちゃんたち──おじいちゃん、おばあちゃんという世代の方じゃない方もいらっしゃいますけれども、おっしゃるのは、「今の子供は挨拶しても挨拶返してこへんねん」「今の子は挨拶しない」とおっしゃるんですけれども、子供が何で挨拶しないかというと、親などに知らない人に挨拶するなと教育されているからなんです。それは当たり前なんです。
 じゃあ、子供がどんな人に挨拶、どんな相手に会ったら挨拶できるのかといったら、知っている人ですよね。知らない人に挨拶するなと言ってんやから、知っている人に挨拶できます。でも、子供にとって知っている人って誰、そこ線引けますかということを考えたら、子供にとって知っている人ってどんな人かといったら、子供が安心できる人なんですよ。自分の味方やって確信できる人。その人は、例えば自分の親やったり、友達の親やったり、小学校、幼稚園の先生やったりという人もいると思うんですけれども、例えば、よく買物に行くスーパーのレジ打ちのおばちゃん、よく買物に行くコンビニのアルバイトのお兄さんは、知っている人知らない人っていったら、それは子供自身がその人が安心できるかどうか、自分の味方って確信できるかどうかによって変わってくる。
 僕は地元で子供会をしていまして、隔週土曜日に公園掃除を一緒にしているんです。それを地元のおじいちゃんたちのボランティア団体さんと一緒にしているんです。そこの代表でモリさんというおじいちゃんは、小学校の通学路に遊歩道があるんですけれども、毎日その花壇に水をやってはるんです。そのおじいちゃん、花壇に水やるのをわざわざ子供の下校時間に合わせて水やってはるんです。今、子供会といっても、小学生全員が入っているわけじゃなくて、うちわりかし大きくて800人いる小学校のうち、20人しか入っていないんです。そのモリさんってチョボラという団体の方なんですけれども、ほとんどの小学生にとっては、チョボラのモリさんということも知らないんです。1年生が入学して、最初の1週間、モリさんが何ぼ挨拶しても挨拶しないんですけど、めげずに──別にそんな頑張ってはるわけじゃないんですけれども、挨拶し続けることで、1週間、2週間したら自然に挨拶するようになるでと。それは単にモリさんが、名前も知らんし、住んでいるところも知らんけれども、でも、通学路で毎日水をやっていて、自分に毎日声をかけてくれる安心できる人になったからと。
 先ほど地域のお話があったんですけれども、子供が伸び伸び育てる地域はどんなかといったら、知らない人が多い地域じゃなくて、知っている人が多い地域。だから、システムとかっていう話も大事ですけれども、まず子供を見たらにっこり笑って声を掛けてあげる。そこから始まることで、子供たちにとっては知っている人がどんどん増えて、より伸び伸びする地域になるんじゃないかなと思っています。
【村上】  ありがとうございます。ちょうど今地域の話が出たんで、これから先地域について少し話していきたいと思うんですけれども、どうですか、郷司さんが住んでいらっしゃる地域はどういった地域ですか。
【郷司】  地域というのは、すごい範囲が広いですよね。広くて狭くて。まず自分の家の周りは、いわゆる新興住宅地というんですか、もともとの地元の人が全くいないところです。
【村上】  やっぱりこのあたりでもそういったところは多いですか。
【郷司】  多いというのは。
【村上】  新興住宅街って結構多かったりするんですか。
【郷司】  宗像の中にですか。
【村上】  ええ。
【郷司】  多いと言ったら多いですかね。だけど、昔からある農業や漁業をされているところは昔からの方たちが多くて、宗像の場合は、コミュニティーというか小学校単位が基本ですけれども、コミュニティーによって性格がいろいろ違います。
 自分が活動しているのは、地元というよりも、宗像市内共通のメイトムという市民活動交流館というのがあるんですけれども、そこでの活動がほとんどで、本当に自分が住んでいるところはあんまりしてないんですよ。あんまりというか全くしてないんです。ごみ掃除をたまにやっているぐらいで、それは個人的なものです。ほかはしていません。
【村上】  なかなか地元でいいことをしようとしても、ハードルが高かったりしますよね。そのあたりは、きっと自分がやらなくてもほかの誰かが、ジイがいてくれたりすると、回り巡って地域がよくなるのかなとは思います。
【福井】  地元のためにいいことをする人が増えるのが、僕は一番いいと思っているんです。僕は最年少自治会長として相当苦労した結果得たのは、そういう人は増えない。ほっといても増えない。仕掛けが要る。いいことだと思ってしているわけじゃないけれども、結果いいことになるような仕掛けをつくってあげなきゃいけないということがよくわかりました。特に新興住宅街では、地域のためにということが、都市化するとどんどん恥ずかしい行為になっていくんです。
【村上】  ですよね。そこはハードルありますよね。
【福井】  ハードル高いんですよね。だから、いいことをしているという意識じゃなくて、したら地域のためになったということを重ねていくと、その人にも達成感が出てくるので、そういう仕掛けが地域のために必要だと思います。
【村上】  そうですよね。わかります。先ほど和田さんが言ったのと似ているんですけれども、私の住んでいる地元でも、朝の登下校時におじいちゃん、おばあちゃん――老人会に地域の小学校の校長先生が話に行って、毎日皆さんお散歩しますよねと。お散歩するんだったら、登下校の時間に合わせてもらえませんかと声を掛けたんです。それだったら、どうせ毎日、犬の散歩したり健康のために歩いているから、その時間にやるよと快諾してくれたんです。
 そうしたら、おじいちゃんたちがいざ散歩してみたら、朝の登下校時に車通りが多くて、子供たちが非常に危ないと。これじゃあちょっと、何か旗でも持ってやるかという話になって、だんだんそうすると顔を覚えて、挨拶すると返してくれるし、顔を覚えてくれると、旗を持ったりとか緑の服を着ているときではなく、街のスーパーにいるときとかでも声をかけてもらえたりして、それがすごくうれしくなって、みんながやるようになってきたと。
 名前も覚えてくれるようになってくると、何とかじいちゃんって呼ばれると、周りのほかのじいちゃんが「何だ、お前、名前覚えてもらってんのか」みたいな感じで、もっと積極的にやるようになると。そういうきっかけ一つのものでも、それで地域が広がっていくというのが、うちの地元で一つあって、そういった何か簡単なものだったりするんですよね。種が1個まかれると広がったりするのかなとは思いますね。
【福井】  そうですね。挨拶で広げていくんだと、これは学校が陥りがちなんですけれども、アイテム1個に絞っちゃうんですよ。でも、挨拶できない人もいるんですよ。挨拶じゃなくて、違うアイテムで地域と関われるアイテムを用意してあげる必要があるんです。それは多分相当複数のアイテムが必要になってくると思うんです。そうすると、何らかの形でみんなが地域に関われるようになってくる。1個のアイテムに絞るから、できる人とできない人ができて、できない人はどんどんすねていくわけです。そこが地域がかい離していく原因なのかなと思いますけれども。
【和田】  やっぱり挨拶できない大人っていますよね。
【村上】  いますね。
【和田】  うちの小学校でも、今、長女が4年生なんですけれども、1年生のときから街に立ち始めたおじいちゃんがいらっしゃったんですけれども、長女の通学路でもあり、次女の保育園のルートでもあるんですけれども、幾ら挨拶しても最初は本当に仁王立ちしてはったんですよ、腕組みして。子供たちもその前を黙って通ると、前に信号機あるんやけれども。でも、毎日挨拶していたら、今、立ち止まって天気の話ができるようになったんです。いろいろなソースを用意するというのと、あとは継続するということ。さっき言っていた、子供が安心する人になれるのって時間かかるんですわ。逆に挨拶できない大人が挨拶できるようになるのも時間がかかるという前提で、システムづくりとか、いろいろなリソースつくったりとかっていうのも、ちょっと長い視点で、1年、2年、3年とか、下手したら10年という単位で考える必要があるのかなと思っています。
【福井】  いい例で、鳥取県はなぜか小学校の芝生化というのがすごい進んでいるんですよ。小学校に芝生張ると、最初はみんな喜んで張るんですけれども、メンテナンスがすごい大変なんです。夏休みの水やりとか、夏は週に1回か2回、朝早く芝を刈るとか、挨拶しないけれども、そういうことを黙ってやってくれる人が地域にいるんです。それを子供は見ているし、先生や親も、実はあそこの人が芝生を毎日刈ってくれているんだよということを生徒に知らせる。だから、そういう存在が輝けるアイテムみたいな、和田さんがおっしゃるとおり、それを継続して、時間をかけてやっていくということは、子供とじいちゃんを結びつけるすごく大切なこと。そのうち、子供が手伝いに行くかもしれないし、芝生刈り見に行くかもしれないじゃないですか。そういう意味でアイテム、誰もが関われる、関わり方をつくっていくのがいいと思います。
【村上】  そうですよね。大人の姿を見ていますよね。そこを我々は本当に意識しなくちゃいけないと思います。私も通学のときに立ったりするんですけれども、やっぱり信号無視するのは大人だったりするんですよね。子供が通学しているときに、ピューと渡ってくる大人がいたりするわけじゃないですか。そこだったり、ポイ捨てする大人がいたりして、テーマである「日本の未来を育てよう」といって、今時の子供はなってないぞみたいな風潮があったり、子供のいろいろなものが昔と比べて、挨拶できないとか、体力が落ちているとか、マナーがなってないと見ちゃうのではなくて、まずは私たち大人が、背を正すことがすごく必要なんじゃないかなと非常に思います。
【福井】  そうですね。今の子供ができないことって親のせいだと言われて、その親の親は今のじいちゃん、ばあちゃんなんですよね。完全に自分の鏡の鏡なので、それはもう心してかからなきゃいけないだろうなと思います。僕も上の娘が28歳で、じいちゃんになってもおかしくない年なんですけれども、孫が生まれたら、その孫に対して僕はどう接していいか、実は今、わからないんですよ。子供が自分の鏡として結果が出てきている。その子供が子供をつくって子育てをする。それに対して、僕はどうコミットしたらいいんだろうと、結構イクジイとして悩むところがやっぱり出てきますよね。そういう意味でも、地域全体で自分たちの姿が鏡となって子供に映るんだと思わないと、それだけでもイクジイの効果はありますよね。そう思うだけでも。
 

まとめ

【村上】  ありがとうございます。話は尽きないんですけれども、時間が来てしまいました。
 まさに私たち大人、そして年配の先輩たち自ら、私たちがまだ変わっていく姿を見せていくことが大事なのかなと最後に思いました。生涯学習という観点で見ても、私たちが学び続けていくことを子供たちも見ていくのかなと思いますし、地域を変えていくには私たちが立ち上がっていく必要があるのかなとはちょっと思いました。
 時間が押してしまっているんですけれども、最後に一言ずつ短く頂いていきたいと思います。
 では、和田さんの方からよろしくお願いします。
【和田】  最後に、大人が見本になろうという話が出たんですけれども、今、人って成果が目に見えるものしか評価しないのかなと。先ほどフェイスブックの話も出ていましたけれども、フェイスブック見たら、みんないい人なんですよ。悪い人一人もいなくて。そういう人に「いいね!」をつけて評価が上がるという世の中なんです。でも、さっきおっしゃっていた、雪かきじゃないけれども、ほっといたら崩れていく社会を何も言わずに支えてくれている人がいるということを大人が評価するという見本を、子供に見せないといけないのかなと思っております。ありがとうございます。
【郷司】  決して自分たちの世代、イクジイ、イクバア、みんなお年寄りの方含めて、主役ではないと。主役になりたい、なろうとしている人が多分多いと思うんですけれども、僕は主役ではないというのをモットーというか、あくまでも若手の世代が主で、自分たちはお手伝いをと。主役をやろうとすると、どうしてもぶつかったりいろいろしますもんね。僕は僕でそれでいいんじゃないかなと思って、今、やっています。是非そういう人が増えたらいいなと思っています。
 以上です。
【福井】  私は、基調講演でもお話しさせていただいたように、小さな地域の中で、顔を知った人、名前を知っている近所のおじいちゃんやおばあちゃんが、ごくごく短時間託児ができるモデルをつくりたいと思っております。逆に、九州でつくりませんか。これは行政ともお話をしなきゃいけないですし、いろいろな絡みが出てきますが、そのモデルを是非日本の中の各所につくって、それが日本全体に広がっていけばいいなと思っております。
 以上です。
【村上】  ありがとうございます。
【坪田】  皆さん、ネタの宝庫なんで、すごいなと感心するぐらい話が出たんですけれども、我々はもう今の段階で気付けたわけですから、別にジイになるのを待つ必要はなくて、父親のうちに行動すればいいのかなというのが、まず一つだと思います。
 だんだんそうなってきていると思いますけれども、ワーク・ライフ・バランスと言われて久しいですし、何をするかというと、子供が小学校にいれば、私みたいにPTA活動をやってみる。私なんて公務員宿舎に住んでいて、周りの地域は全く知らなかったですけれども、初めて育休をとったときに、昼ぶらぶらと子供を連れて歩いていたら、じいさま、ばあさまみんなが挨拶してくれて、初めて地域の人になれた気がしましたし、今、PTA活動に入ると、また普段職場では接しない様々な方々と交わることができるし、いろいろな意見を聞けるということで、自分は本当に得をしているなと思います。
 こういうふうに地域デビューが早ければ、突然仕事の関係が切れて地域や家庭に放り出された後も、多分いろいろなよすがにすがっていろいろなことがやっていけると。もちろん、そういうのがなくても、ぱっといろいろなことを勉強しまくってやれる方もいらっしゃると思いますけれども、なかなかおっくうで、特に公民館のあの敷居をまたぐというのは、我々も悪いんですけれどもなかなか渡りにくい。あの雰囲気ですね。ということだと思います。本当にもっと柔い講座を設けるとか、本当に子供を預けられるということで、若い世代も公民館に立ち寄れるきっかけになるようなことをやっていけば、学んで、社会、地域に還元しようというのが出てくるのかなと思っています。
 あと、職場ですね。我々ができることは、今、現役ですから、職場で若い世代に地域にデビューする大切さとか、子供を育てる大切さとか、育休もどんどん取れたら取るということを伝えていく。だから、今、イクボスという言葉もありますよね。私たちは上司という立場になったわけですから、今、そういうことを心がけて部下にやっています。
 さらに、イクジイを目指す中で、私の最近のニュースで、フェイスブックでもかなり「いいね!」をつけてもらったんですけれども、実は今年保育士の試験に受かりました。仕事の傍らで勉強していて、出張の移動中の飛行機の中とかそういう隙間時間でお絵かきの練習とかをやったり、子供相手に読み聞かせも練習したりして、まさにいろいろな絵本を子供の前でやりました。何と2年がかりでしたけれども、保育士の資格を最終合格できたということです。プロのイクジイになりたいなと私は思っていて、やっぱり専門の知識――乳幼児を扱うときはSIDSや子供の寝かしつけとか、いろいろ難しいところもありますので、そういう知識を持った上で、あのイクジイに頼ってみよう、アドバイス受けてみようみたいな、職場でも頼られ、地域でも頼られるイクジイに自分はなりたいなということで活動しています。
 どうも今日はありがとうございました。
【和田】  保育士資格の合格率13%ですよ、独学で取って。僕も、実は主夫になったときに取ったんですけれども、めちゃめちゃ高いハードルを、お仕事をされながらって、めっちゃすごいと、今、びっくりしました。
【坪田】  ありがとうございます。最後のネタとして。
【村上】  本当に今日は皆さんありがとうございました。ファザーリング・ジャパンがなぜイクジイと地域なのかと考えたときに、働くお父さん、お母さんは、平日地域外に通勤に出ていて地域にいないんですよね。じゃあ、どうやって地域の子供たちを守るか、地域を豊かにするのかというのを、私たちお父さん、お母さんももっと意識を高めていく必要があるのと同時に、そこで我々に手が届かない地域のおじいちゃん、おばあちゃんの力を借りざるを得ないところがあるなとは思います。
 子供のためでも高齢者のためでもなく、住む全ての人たちのために地域をどうしていくかというのは、みんなで考えていく必要があると思いますので、この問題に対して、ファザーリング・ジャパンとしても、これからも親だけでなく、全ての世代がこれからの日本を豊かにしていくために、また注力していきたいなと思いますので、引き続き是非これからもよろしくお願いいたします。
 そして、今日ここに来られた方で、地域でいろいろな活動されている方、行政の方等々いらっしゃると思いますけれども、是非これからも地域を強めていくことをやっていただきたいと思いますし、私たちファザーリング・ジャパンでできることがあれば、一緒に九州、そして日本全国の地域を豊かにしていきたいなと思います。
 それで、お手元にある資料の中に、もう少し詳しい話や事例が載っていますので、また帰られてから一読していただければ、いろいろなアイデアがまた地域に持って帰れると思いますので、こちらの方も是非読んでいただけたらと思います。
 本日は、少し予定より時間がオーバーしてしまいましたけれども、長い間お付き合いいただきありがとうございました。

お問合せ先

生涯学習政策局社会教育課 環境・高齢者担当

(生涯学習政策局社会教育課 環境・高齢者担当)

-- 登録:平成26年02月 --