議事録1(冒頭~基調講演)

【新木】  お待たせいたしました。それでは、これよりファザーリング全国フォーラムin九州分科会3「ニッポンの未来を育てよう!イクジイが変える地域のカタチ」を開催したいと思います。
 私、本日の司会を務めます文部科学省生涯学習政策局社会教育課企画官の新木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本フォーラムを開催するに当たり、主催者を代表いたしまして、文部科学省生涯学習政策局社会教育課長の坪田知広から御挨拶を申し上げます。
【坪田】  皆様、こんにちは。本日は、分科会3、ファザーリング・ジャパンとの共催による「ニッポンの未来を育てよう!イクジイが変える地域のカタチ」を、ほかにも魅力的な分科会がある中で選んでいただき、本当にありがとうございます。感謝申し上げます。
 開催するに当たりまして、一言御挨拶を述べたいと思います。
 現在、御案内のとおり、四人に一人が65歳の高齢者ということで、世界的に見ても高齢化先進国、超高齢化社会という言い方もされますけれども、そういう状況にあります。そういう状況の中にあって、我々は、高齢者の方々が生涯にわたって学び続け、更に元気になって、様々な地域の場面で活躍することができるような社会をつくっていきたいと考えております。
 文部科学省では、本日配付しておりますけれども、平成23年度に「長寿社会における生涯学習の在り方」という報告書をまとめております。その中では「幸齢社会」という言い方をしています。その意味合いとしましては、高齢者自身に健康寿命を更に延ばしていただいて、生き生きと元気に最期まで人生を送っていただくということと、もう一つ、そういう高齢者たちに、子供たちと関わって育てていただくということで、日本の未来を開いていただくという、その二つを期待しておるところでございます。そのために我々行政は頑張らないといけないなと思っているところでございます。
 本日はこのテーマで、実際実践されているイクジイの方のお話や基調講演を頂いて、そして、私も参画させていただくパネルトークで様々な角度からこの問題を深掘りし、皆さんにも地域に持ち帰って実践していただけるような、イクジイを育てていただけるような、意義のあるシンポジウムにできたらなと考えております。
 最後になりましたが、この分科会の開催に大変御尽力いただきましたNPO法人ファザーリング・ジャパンの皆様、そして、開催地であります北九州市、福岡県の皆様に本当に厚くお礼を申し上げまして、開会の挨拶とさせていただきます。
 それでは、1時間半にわたるシンポジウム、どうぞよろしくお願いいたします。

【新木】  それでは、最初のプログラム、NPO法人KiRALi代表理事、福井正樹氏による基調講演を行います。
 まず、福井様の経歴を簡単に御紹介いたします。
 福井様は、東京都の出版社にて雑誌・書籍の編集に携わった後、平成10年に、奥様のお父様の介護のため、鳥取市に一家で移住されました。その後、鳥取市内でコンサルタント会社の役員を務められた後、平成22年に、子育て支援やイクメンの啓発推進・養成、ワーク・ライフ・バランスの推進などの事業を行うNPO法人KiRALiを立ち上げられ、現在まで代表理事を務めておられます。
 また、教育委員会や男女共同参画センターなどで、イクジイや男性の育児支援などに関する多数の講演活動も行われておられまして、鳥取県男女共同参画センター運営協議会会長、鳥取大学地域学部非常勤講師等も務められております。
 本日は、「イクジイが地域を変える!!~これからの子育てのカタチ」をテーマにいたしまして、基調講演を頂きます。
 それでは、福井様、よろしくお願いいたします。
【福井】  皆さん、こんにちは。先ほど課長の方からもお話がありましたが、あまたある魅力的な分科会の中から、イクジイという少しグレーがかった分科会にようこそ。イクジイという言葉がグレーを連想させるのは、「ジイ」という語感なんでしょうが、実は、イクジイという言葉はグレーではなくて、グレーからピンクやオレンジに変わっていくような社会を目指したいなというのが、私たちが考えているイクジイでございます。
 本日の基調講演は、時間が僅かしかございませんので、足早に「イクジイが地域を変える!!~これからの子育てのカタチ」と題しまして、概略をお話しさせていただきます。
 まず、今日は三つのコンテンツを立てております。「地域での子育てがなぜ必要なのか」「地域力が低下した」、「今求められている「イクジイ」のチカラ…子育てしやすい地域が未来への力を持つ!!」、この三つのコンテンツに従ってお話をさせていただきます。
 まず一つ目、地域での子育てがなぜ必要なのか。
 子育てというと、パパやママですね。もう少し拡大して、おじいちゃん、おばあちゃんですね。もう少し拡大すると、おじちゃんやおばちゃん。いわゆる身内、血縁が子育てを行うという概念を、今、私たち現代社会では持っておりますが、実は、非常に複雑で価値観が多様化した社会の中で、ママ一人の子育てはとっても苦しいという現状になっております。その中でいろいろな現象が起きておりますが、なぜ苦しいのか幾つか挙げさせていただきました。
 まずは、ネット環境の充実による子育て情報の氾濫です。子育て情報は、今のママたちは余り子育て本とかを買わずに、ネットでググって、こんなことがあったら何が原因なんだろうか、うちの子こんなんだけどどうやって育てたらいいんだろうかみたいなことを調べます。そうすると、数限りない答えが出てまいりまして、実はよく勉強してみると底辺は同じなんですが、表現の方法が違ったり、少し違った方法があると、非常に混乱するんです。どうやって子育てしていいかわからなくて、煮詰まってしまいます。これは情報の多さがマイナスに働いている部分と思っております。
 あとは、このファザーリング・ジャパンの大きな使命の一つですが、パパの子育て不在。相変わらずパパの子育て不在。少しずつよくなってきてはいるものの、まだまだ全体に広がってきていないことも一つの原因でしょう。
 あとは先輩の不在です。子育てをした経験のある先輩が身近にいない。これは都市部に特に顕著でございます。核家族化率が上がると、おばあちゃんもいない、親戚のおばちゃんで子育てした人が近くにいないとかで、困り事が聞けなくなっているんです。こういう原因でママ一人の子育ては非常に苦しい。
 日本は、実は昔は社会が子育てをしてきました。ママが苦しいときはおじいちゃん、おばあちゃんに。おじいちゃん、おばあちゃんでも駄目なときは、近所の人たち。もう少し広がった地域の中で子育てを担ってきたんですが、そこができなくなったというのも大きな原因だと思っております。
 社会全体が変わったことも、ママが苦しくなった一つの原因だろうと。
 経済の変化ですね。御存じのように高度経済成長期が終わり、非常に冷え冷えとした経済状況になっている。パパが一生懸命働いても給料は上がらないですね。だから、例えば子供の教育費や将来のことを考えて、ママも働きに出る。でも、この後データを少し出しますが、共働きになってもパパの家事、育児時間は増えないです。経済が悪くなった途端、ママは働きもしなきゃいけないし、家事育児もしなきゃいけない。なおかつ情報が氾濫して、悩みが深まっていく。どんどんどんどん追い込まれていくわけです。
 あとは、社会通念や常識の変化みたいなこともございます。あと、シングルマザーやシングルファザーの増加ですね。あとは、外で自由に遊べない子供たちが増えてきている。これは子供たちの責任ではなくて、地域の責任だと思っております。その結果、少子化にも大きな影響が出ているだろう。この少子化対策の一つとしても、地域での子育てを充実させていく必要があるだろうというふうに考えております。
 これは共働き家族の増加の数字です。赤が片働き、青が共働き。平成2年、3年ぐらいでクロスを始めまして、現在では非常に広がっている。さらに、これがどんどん広がっていくと言われております。この平成2年、3年が、先ほどの経済の変化で言いましたバブルの崩壊あたりです。そこで一気に共働きが増えてきているというデータです。
 これは、先ほどの片働きと共働きのときの夫の家事、育児時間の変化です。共働きの方が家事、育児が減っているんです。妻は働く時間がゼロから4.5時間ぐらいになって、家事、育児時間は減ってはいるけれども、相変わらずここになっている。
 これは女性労働力率と出生率の関係を表した一般的なグラフです。働く女性が増えた方が出生率は高くなるはずなんですが、日本の場合、先ほどの夫の家事、育児時間が上がらないこと、地域が子育てに参画しないことで、女性の労働力率が高くなってきても、なかなか出生率が上がってこない現象になっていると思われています。
 これは核家族化率です。これはすぐお隣の山口県を例にとりました。高齢化した山口県でも核家族率が全国で16位まで上がっているんです。非常に核家族化率は全国的に非常に高くなっているのに、自分たちだけで子育てしなければいけない状況になってきているということが言えると思います。
 ここからイクジイの話に結びつくデータです。これは日本でどれくらいの子供が生まれたかという、よくあるデータです。昭和22年から24年の間に最も多く子供が生まれていまして、年間約270万人です。平成22年には107万人、2.5分の1以下に落ちておりますが、実は、この昭和22年から24年に生まれた方々、いわゆる団塊の世代と言われる年齢の方々が、今、60歳を過ぎ65歳になろうとしている世代です。日本で一番パワーと知識とバイタリティーとお金を持っている世代の人たちです。こういう人たちに社会に目を向けてもらって、自分たちの力――財力もありますが、力やスキル、経験を社会に投資していただければいいなと思っております。そのアイテムの一つとして、イクジイがあるのかなと考えております。
 次のコンテンツ、地域力が低下した。地域力って何なのということもありますが、実は、地域全体でお互いの生活や子育てなど、様々なことを補完し合うシステムだと思っております。その補完するシステムが地域の中でどんどん希薄になっていって、ただ単にそこの地域に一緒に住んでいるだけになっているような気がいたします。その原因としまして、幾つか挙げさせていただきました。
 まずは、「アメリカ型プライバシーの日本侵略」と非常に過激に書きましたが、実は、昔、日本の村社会、地域社会の中においては、ある程度プライバシーがなかった部分がございます。これは是か非かということを論ずると、なかなか個人的な思考にも関わって、是の人も非の人もいると思いますが、昭和20年以降アメリカ文化がどっと入ってき、プライバシーという概念が入ってまいります。アメリカ型のプライバシーが日本の村社会の中に入ってきて、自分の家のことは自分の家だけ、外に情報が流れ出ないように、若しくは外から人が入ってこないようにという、非常にいびつな形でプライバシーが理解されてきたような気がいたします。
 その結果、「周りは何をする人ぞ」と。実は、地方に行っても中山間地に行っても、この意識は相当強くなってきております。特に、私は東京から15年前に鳥取市に移住したんですが、鳥取市の中にある人口5,000人ぐらいの新興住宅街に住居を求めました。世帯1,500です。ここは、もともと山があったところを切り開いて、1戸建ての新興住宅街にしたところなんですが、最も都会的です。私は東京のマンションよりも、この1,500戸の新興住宅街の方が都会的だと思いました。明らかに、周りは何をする人ぞ。
 いろいろなところから家を建てて住んでこられて、住んでこられた人のお話を聞くと、前にいたところでは、村のいろいろなしきたりやお付き合いが大変で仕方がなかった、とても嫌でそういうお付き合いをしたくないという思いでここに家を買ったと言われる方が非常に多かったです。そういう意味で、地方都市の新興住宅街は、本当にアメリカ型のプライバシーがかちっと入っていて、隣の家と余りお付き合いをしない、町内会活動もしない、公民館にも余り行かないという地域になってきております。
 私の住宅は20年ぐらい前から開発されたところで、団塊の世代の方がすごく多いんです。40代半ばぐらいに家を買い求められ、20年たった結果、今、64、5歳になられた方々が世帯主としてすごく多くおられる。この人たちが、実は周りの社会にコミットしていかない、無関心であるというところが、今、私が住んでいる地域でも大きな問題になっています。
 その中で、自然がまだある大きなきれいな団地ですので、散歩する人が多いんですが、基本的に周りに散歩している人と挨拶を交わさないです。散歩しているときに「こんにちは」と言っても、「こんにちは」と返ってくるのは約半数です。小学校では挨拶しましょう運動をしていますけれども、大人たちは挨拶をしない。誰か何かをしていても、基本的に手は貸さない、声も掛けない。いわゆる社会学で言われるところの儀礼的無関心みたいなものを、都会化された中で象徴のように皆さんしているところが見えます。
 その中で、アメリカ型のプライバシーから儀礼的無関心が加味されると、自分の子供だけがいい子ならばいい。自分の子供だけが勉強ができて、しつけもちゃんとできて、スポーツもできていればいいというふうに、どんどん子供を育てる範囲がわい小化してきているわけです。自分の家庭の中だけで完結するという形になってきております。その結果、自分の子供や自分の子供の周りにいる周囲への無関心が、結局は自らの首を絞めるような結果になっていくと。
 その団地の中で、もう4年前になりますが、私は1,500戸の団地の自治会長を4年間させていただきました。当時、まだ50代の前半で鳥取市の中でも史上最年少の自治会長だったんですが、相当苦労をいたしました。周りに対して無関心であるし、なるべくコミットしてこない。できればお金で済ませたいみたいなことがあります。
 その中で、私がお話ししたのは、自分の家の庭がすごくきれいにつくってある。それぞれの家で、自分の庭は丹精を込めてきれいな花や樹木を植えてきれいにしてある。でも、自分ちの前にある公共の道路――歩道や公共の植え込みにごみがいっぱい落ちている。果たしてこれがいい街でしょうか。果たしてこれが、皆さんが全財産を投入されて買われた家屋と土地の財産価値を守るでしょうかというお話をさせていただきました。これは自分の子供だけに目を掛けて、自分の子供だけがいいという考え方と全く同じだと思っております。どんなに自分の家の庭をきれいにしても、その家は高く売れません。周りの歩道や植え込みにごみもなく、地域全体が住みやすい、きれいだという状態にならないと、財産価値は上がってこないと思っておりますので、その話を子供への無関心にかけてお話をさせてもらったことがあります。そういう状態のところが、実は全国地方都市でも非常に多くある。これ全体が地域力が低下したということだと思っております。
 子育てしづらいです。しづらいですね。ママだけが責任を持たなきゃいけない。当然、そこが少子化につながっていく。
 そこでは小学校が一つあるんですが、7年前に660人の生徒がおりました。それが今年は520人。これは世代が継承されていない証拠です。家に次の世代が住み続けて子供を産まない。これは地方都市の悲哀で都会に出ていくということもあるんですが、一気に子供が減ってきているという現象が出てきております。今こそそういう地域に仕掛けるときではないだろうか。じゃあ、何を仕掛けるのか。これは、次の地域を担う、未来を担う子供たちを育てる新しい基軸、システム、考え方を入れていくべきだと思っております。
 今求められているイクジイの力というところに帰結するわけです。最も多い世帯主の世代、財力もバイタリティーもスキルもある人たちが、街にあふれているわけです。でも、彼らは地域に対してコミットしてこない。そういうことも含めて、地域の中で子育てがしにくくなってきていて、少子化になっている。その力を子育てに使おうではないかというのが、私が基本的にイクジイを推進したいと思った原因でございます。
 その中で、誰がどの子に関わるのか。隣近所の子が悪いことをしていて、近所のおじいちゃんが怒ったり叱ったりする。当然クレームが来ます。当たり前のようにクレームが来ます。下手をすると、警察に通報されるというのが現状です。だから、自分が目についた子に直接関わるのは、なかなかみんな腰が引けてしまうんです。だったら、誰がどの子に関わるかは、システムをちゃんとつくって、システムにきちんと守られた中で子供たちを受け入れて、関わっていく必要があるだろうと。だから、特定の誰かが誰かに関わるではなくて、地域の中にいるイクジイが、地域の子供たち全員に関わるというシステムをつくらなければいけないと思っております。
 その中で大切なのが、地域の拠点はどこだろうということになってまいります。これは真下にもう答えが書いてありますけれども、実は公民館なんですね。公民館というのは、小さな子供から高齢者まで、なかなか世代が均一に公民館利用をされていない現状にあります。これは、多分御関係の方も今日はいらっしゃっていると思いますが、やっぱり中抜けをしてしまっています。小学生までは来るんですが、中学生になるとほとんど来ない。中高校生が最も少ない。大学生も来ないですが、子育て世代も来ないんです。子供は来るんですが、特に子育て世代のパパ、ママが一緒に来るということはほとんどない。次に来ないのが働き盛りと団塊の世代です。一番多く来られるのがその上の世代で、70歳以上の方々です。70歳以上の方にとっては、民謡教室、そば打ちなど魅力的なメニューが公民館に用意してありますので、高齢者の方はすごく喜んで来られるんですが、中抜けした部分をしっかりと公民館に呼び戻す必要があるだろうと。これは様々なアイテムがあるとは思うんですが、それで公民館の中で地域の子育てを担っていくことはできないだろうかと考えております。
 そのときに、拠点と地域へのキーパーソンへのアプローチがとっても大切になってまいります。拠点の公民館は市町村が管理、担当しております。一部はNPO等に委託しているところもありますが、しっかりと行政に対してアプローチをしていく。あと、キーパーソンは町内にいらっしゃる実力者の方です。長くそこにいらっしゃる方などで、実力者といっても政治家ではないですよ。ずっとそこに住んでいて、そこのことをよく知っているおじいちゃんやおばあちゃんなどのキーパーソンへのアプローチもとっても大事になってきます。そこで、義務ではない地域活動へ参加することの快感を覚えていただきたい。最初は子育てでなくてもいいと思います。違うことで、義務ではないけど地域活動に参加してみたら楽しかった、うれしかった、自己達成感があった、満足できたという快感を、公民館のメニューを変えることによって与えてあげたらいいと思っております。結果、最終的には、公民館でイクジイの一時託児システムがつくれないかと考えております。
 このイクジイの託児システムについては、専業ママや働くママのいろいろなニーズを聞いてみました。まずは、公民館の平日の稼働率が意外と低いということがわかりました。特に和室の稼働率が低いです。夜は非常に高いんですが、平日の昼間の和室の稼働率が低い。これはインフラが整っていると言っていいのかなと思っております。
 あと、専業ママたちのニーズです。実際、専業ママたちに聞いてみたんですが、短時間託児をしてほしい。超短時間託児ですね。30分とか1時間、長くても2時間ぐらいの託児をしてもらいたい。買物、美容院、病院、飲み会と書いてありますが、ママ友とカラオケに行きたいとか、ママの心や体のリフレッシュのために託児を受けてくれるところがないんです。実は自分の親――お母さん、おばあちゃんに頼むと怒られるんですね。ママはどうも育児中はリフレッシュをしちゃいけないことになっているみたいで、ママ友とカラオケに行くんだけど子供を預かってと言うと、とても怒られる。それを地域で見てもらえたらすごく助かるけどなと、ここは特に強く話をされていました。
 そのほか、働くパパやママのニーズは、突然の発熱や保育園のお迎え、あとは夜間の一時託児です。どうしても夜間に1時間空けなきゃいけない。子供一人家に置いておくわけにはいけない、誰か預かってくれないだろうか。昔は隣のおばちゃんに預かってもらえました。隣のおばちゃんの機能をごく近所にある公民館に持たせられないだろうかということです。
 じゃあ、誰に預かってほしいのと聞きますと、信頼できる人がいいと。これは非常にアバウトな言葉ですが、信頼って何なんだと考えると、自分の家庭の状況が何となくわかっている人がいい。例えば、シングルマザーであるとか、子供が病気がちであるとか、旦那さんが夜の工場勤務で、夜、家におられないことがあるみたいな、ふわっとした家庭状況がわかっている人で、子供と日常触れ合いのある人がいいな。できれば、近所のおじいちゃんやおばあちゃんがとっても理想的だけどというのを、実は現代のママたちが答えております。そんなに数は多くないんですが何人かに聞いたところ、異口同音に、顔と姿がわかっている人がいい。全然何もわからない保育士さんに預けるよりは、近所の人でちゃんと子供を優しく見てくれることが日常的にわかっている人がいいなと言っています。
 もう一つは、地域のおじいちゃん、おばあちゃんも、小学生も下手したら中学生もちっちゃい子供も、託児の場所は集える場所に預けたい。子供だけをおじいちゃん一人が見るんじゃなくて、そこには小学生も遊びに来て、小学生と一緒に遊ぶおじいちゃんもいる。中学生が遊びに来て、おじいちゃんと一緒にオンラインゲームをする中学生もいる。そういう多年代を預かれるような場所が地域の公民館にあったらすごくいいのになということを言ったお母さんもいました。こんなニーズを満たすのは、今のところ日本の中では公民館しかないだろうなと思っております。
 公民館託児に必要なものということで、少しまとめてみました。
 まずは、やっぱりイクジイたちに子育てスキルが必要ですよね。団塊の世代の男性たちは、最も日本で仕事をし続けた人たちです。日本の高度経済成長を底支えした先輩たち、それがゆえに、自分のお子さんにも関わってない。だからスキルがまずない。スキルがないと、実は子供に触れるのがやっぱり怖い、疲れるということで離脱する人が多いんですが、このスキルを楽しく身に付けてやっていかなければいけないだろうと。
 あとはイクジイたちが公民館に関心を向けることです。民謡教室が嫌な人は、団塊の世代の音楽といえばビートルズ、ロック世代です。日本でロックに最初に関心を持った人たちが今のイクジイの世代なんです。例えば、ビートルズをネタにして、おじいちゃんたちにバンドを組んでもらって、大学生や高校生のバンドと対バンをやるという企画を公民館でやってみてもいいのかなと。イクジイたちが公民館にちょっとでも関心を向けることをやってみたらどうかなと思います。
 この辺は、公民館事業の内容をどんどん工夫してみる必要があると思います。公民館事業は、今、非常に予算が厳しくて、なかなかアクティブに行っていけないところがありますが、なるべくそこを工夫して、イクジイたちの世代が公民館に関心を向けるようにしてほしい。
 あとは、小学生、中学生、高校生たちが自由に遊べる自由スペースとして提供できるアイテムを増やしていきたい。子育て支援センターや児童館など、幾つかほかの機能はありますが、小学校区単位に一つはないんですよね。もっと広範囲に一つあって、なかなかそこに行くのにも大変という状況がありますので、地域の公民館がこういうことで活用できたらなと思います。
 ここで子育てと異世代交流が同時にできる場所を目指していく。子育てをすることによって、イクジイも現役のママやパパたちと関われるし、その上の世代とも関われる、子供たちとも関われる。これが地域全体のバランスが取れる交流になるんじゃないかと思っております。
 最後のページになりますが、「子育てしやすい地域が未来の力を持つ!!」。これを私は信じて疑いません。鳥取県や島根県、特に山陰地方といわれる非常に過疎化、高齢化が進んだ地域では、地域づくりのセミナーや講演をしてほしいという御依頼をよく頂きます。そういうところに、どうやって地域づくりをしていったらいいか、地域に一番必要なものは何ですかと地域の人に聞くと、子供と言います。次世代。明らかに子供がいないのに、この地域に未来があるわけがないと。じゃあ、地域の子供たちはどうやったら地域に残ってくれるのか。地域に帰ってくるのか。それは、やはり小さい頃から、地域の人たちがその子供たちを見守り、褒め、叱りもする。そういう地域で育った場所を子供たちは忘れないと思っております。子供たちを儀礼的無関心によって、プライバシーによって、叱りも褒めもしない。叱ったり褒めたりするのは子供たちの家族だけという地域では、やはりなかなか子供たちの豊かな心や地域愛は育っていかないと思います。
 まず、自分の子供や自分の孫をいい子に育てたいなと思ったら、自分の子や孫の隣にいる子に目をかけましょうとよく言います。自分の子供の両隣にいる子がいい子になったら、当然、自分の子供にもいい影響が絶対に出てきます。自分の周りの子供たちがどんどんいい子になっていくと、自分の子供にも影響が出てきます。自分の子供に、道でほかの人に会ったら「おはようございます」と言いなさいと教育をしても、その子は、最初は言うかもしれませんが、周りの子供たちが誰も「おはようございます」と言わないと、だんだん言わなくなってきます。自分の子供が言わない子でも、周りの子供たちが道を歩いているおじさん、おばさんに、みんなに「おはようございます」と言う子供だったら、自分の子供はほっといても「おはようございます」を言うようになる。周りの子供に関わっていくということを、地域全体でしていくべきだろうと思います。
 やはり、地域の全ての人たちが子育てに関わっていくことのメリットは、とっても大きいと考えております。公民館の再生、御近所のお付き合い、例えば子供たちが地域から外に出ていっても地域に帰ってくる気持ちが残っている。帰ってこられなくても、帰ってくる気持ちが残っていることはとっても大きいです。そういった公民館の再生も含めた地域での子育て支援に最も必要なのは、イクジイたちの力だと思っております。
 時間が参りましたので、これで終わります。ありがとうございました。(拍手)
【新木】  福井様ありがとうございました。

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生涯学習政策局社会教育課環境・高齢者教育担当

(生涯学習政策局社会教育課環境・高齢者教育担当)

-- 登録:平成26年02月 --