長寿社会における生涯学習政策フォーラム2012in鳥取(パネルディスカッション)議事録

【司会】 それでは、時間となりましたので、これから後半のパネルディスカッションを始めたいと思います。
パネルディスカッションの司会進行につきましては、コーディネーターの村上様にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【村上氏】 それでは、後半のパネルディスカッションを始めたいと思います。
よろしくお願いします。
皆さん、ありがとうございました。基調講演の棒田さんを初め福井さん、常野さんの事例紹介、非常に多くの気づきと大切なキーワードがあったかと思いますが、まず棒田さんの話から全体像、それから鳥取の地方における福井さんの事例、常野さんの首都圏において関係が薄くなっている地域でどのように新しい組織をつくっていくのか、多方面の話があったかと思います。このパネルディスカッションでは、大きな話だけではなくて、皆さんの実体験も踏まえてお話を伺いたいなと思っています。
棒田さんの話の最後のところで、イクジイの大きなポイントとして、きっかけと仲間と実行する場、それが大切だ、そしてそこに楽しみや喜びがある中で、イクジイとして、これからそういう人がふえていくのではないかというお話で締めがありました。既に実行されている常野さんなり、福井さんはまだお孫さんはいらっしゃらないですが、年齢的にも同世代の方々、50代後半、60代ぐらいの方、これから定年退職される方が、定年されてからではなくて、仕事がある程度落ちついて、50代になってから、そこから少しずつシフトしていけるような生き方というものがあるといいのかなと思うのです。その辺も踏まえて、まず常野さんから、どういうきっかけでこういった活動をされるようになったのか、お話をお伺いしたいのですが。

【常野氏】 私は、仕事をしているときには、地域との関係は、全く接触がなかったのです。それが仕事をやめて、急に社会福祉協議会に入れということで、それが僕のボランティア活動の最初だったわけです。そこから、学校支援の動きとして朝の交通整理とか、そういう形もやってみました。しかし、これが大変でした。いろんなしがらみが私にくっついていまして、子供とか地域の人たちに大きい声であいさつをしろと言っても、あいさつができないのです、声が出ない。それが吹っ切れるまでの間、大変なストレスを感じました。きっかけは無理やりこれをやれということでした。
それで、私の女房の兄が近くにいて、地域活動をすごく活発にやっていまして、それに無理やり言われて入ったのですが、一つ皮がむけたら、こんな楽しい有意義なことはほかにないなと思って、今は楽しみながら苦しんでいます。

【村上氏】 ありがとうございます。
福井さんも、プロフィールでは都内で仕事をしてからこちらに移り住んできて、全く何もないところからいろんな活動をされたと思うのですが、そこのきっかけなり。

【福井氏】 僕の場合は、子育てから始まります。都内のマンションに住んで、妻は教員だったので、半ば妻の命令により子育てと家事は、ダブルインカムを続けたいので半々ということで、27年前に半分請け負って子育てをしていたら、マンションとはいえ、マンションという小さな地域のかかわりが自分が子育てをするときにとても役に立ったという実体験がありました。
その後、子供が大きくなるに従ってどんどん仕事にのめり込んでいって、僕は42歳のときに人生を一回リセットして、妻の父の介護のために鳥取に移住してきたのですが、実は僕、鳥取に来たとき、だれ一人、知っている人がいなかったのです。全く知っている人がいなくて、ネットワークもなくて、それで、仕事を始めて、妻の父の介護のために田舎に来たと言ったら怒られますが、ほぼ都落ち感があって、周りに知っている人もいないし、つまらなかったのですが、中学校のPTA会長を、これも半ば無理やり押しつけられて会長を2年したのですが、そのときに地域とかかわるようになりました。そうしたら、子供が小さいころにマンションという地域の中で人、地域とかかわった、助かった感がよみがえってきて、やっぱり地域というのは大事だなあと思い始めたら、鳥取に知っている人が当然ふえてきますよね、ネットワークができて。そこから、自分がこの土地に住んでいる実感がわき、心も豊かになっていくというか、気も楽になっていく。仕事にもいい影響があるという、そこがやっぱり地域とのかかわりの一番のきっかけだと思います。

【村上氏】 なるほど。では、お二方とも、自分からというよりは、外からのきっかけがあったということですね。

【福井氏】 そう、外圧です。

【村上氏】 外圧が。男性は、そういうのがないとなかなか難しいですよね。

【福井氏】 そうですね、元祖イクメンとか言われて、27年前にイクメンをしていたのですねとか、意識の高いパパだったのですねと言われると、全くそんなことないよと。単に妻がぶち切れただけですという話なのです。そういうきっかけがあると、男性も一歩踏み出せるのですよね。だから、そういうきっかけづくりを僕らがしてあげた方がいいのかなという気はしています。

【村上氏】 それが先ほど福井さんが言われた、NPO活動として種をまくという感じですね。

【福井氏】 そうですね、はい。

【村上氏】 それで、常野さんみたいなキーパーソンが生まれる、そのキーパーソンを見つけるなり仲間をふやすために、何かネタはありますか。

【常野氏】 非常に難しい質問ですけれども、ただ、私どもは、学校との関連を非常に強く持っておりまして、まずPTAの役員が一つ、無理やりみんながやらせられるらしいのですが、そのPTAの役員を卒業した人たちを受け入れる仕組みを何かつくろうということで、実は協力会というのをつくったのです、学校協力会です。ですから、PTAの役員が終わりますと、会長は学校協力会の会長になる。その協力会というのは、そこから抜けられない。やくざの世界と一緒だとよく言うのですが、当然、都合で抜けられる方はいますが、そういう形で、そこで切ってしまわずに個々につないでいくという形の動きを、私どもではなくて、私どもの先人がつくっておいてくれました。そういう面では非常にスムーズです。ですから、そこを維持するために、20幾つかのボランティア団体があるのですが、その団体が学校に徹底的に協力するのですね。そうすると、PTAのお母さん、お父さんが抜けられなくなるというところもあるのだろうと思いますが、そんな形の仕組みで仲間をつくっています。ですから、そこからの動きが我々のキーパーソンになってくる一つのルートだと考えております。

【棒田氏】 一つだけいいですか。無理やりも確かにあると思いますが、これはうちの横浜市港北区の事例ですが、ママたちがジイたちに力をかしてくださいと頭を下げました。頼られるとうれしいですか。ジイたちの心をちょっとくすぐるというわけではないのですが、実際に、小学生のお母さんたちで働いていない人はいない。では、災害が起きたらどうするのかというところで、3.11をきっかけに、もう一回町内会のおじちゃんたちに頼もうという部分があって、今回、子供会の方から町内会のジイ、バアたちに、私たちは戻ってくるまでに時間がかかる人たちが多いので、何かあったときには子供たちのことをよろしくお願いしますというお話を今回しました。そうすると、そうだよな、ではもう少しつながれるところ、ふだんから顔を見合わせる機会をふやそうかという話に今、なってきています。

【村上氏】 なるほど。今、棒田さんから本当にいいキーワードだったのは、防災なり地域を守るという点で、やっぱり東日本大震災の後、皆さんからも「きずな」という言葉が出たと思うのですが、その重要性が今、いろんなところで認識されていて、それをどうつくるかというのは大切だと思います。地域のセーフティーネットという観点でも、やっぱり高齢者と乳幼児というのは、弱者なのですが、そこをどう守っていくか、地域でつながることは大事だなと非常に思いますよね。
もう一つ、先ほどのお話の中で、常野さんの方から「寂しいをつなぐ」というキーワードがあって、なかなか新しい考え方だなと思いながらも、弱い者同士というのは、今まで高齢者はそう見られていたではないですか。福祉の対象として高齢者なり子供は弱い存在で、守らなければいけないと思われていたのですが、そこをつなげることによって何か新しい力が互いにエンパワーメントし合えるものがあるのかなと、話を聞いていてすごく思ったのですけれども、その辺はどうでしょうか。

【常野氏】 全くそのとおりの動きですね。弱い者というよりは、高齢者の方は知識と経験はすごいものを持っているわけですよ。日本をここまで持ってきたのも高齢者だと思いますしね。それをそのままほっておくことはないだろうと。

【村上氏】 そうですよね。

【常野氏】 だから、それを個々に生かすことがすごく大事だというのは、やっぱり人間関係、きずなができていないと、実は何にもできないのですよ。
あの災害のときに、私は非常に悲しい思いをしました。学校との関係もあって、よく知っていた近所の子供が、お母さん、お父さんが共稼ぎで東京に行っていたのを私は知っていますし、子供が一人でいるというのも知っていましたので、では、うちにおいでよと、うちに来て御飯を食べなよと言っても、来なかったのです。本当に悲しかったですけれども。
ただ、それは日常のきずなのつくり方がやはり違っていたのだと思います。そういうこともありまして、子供と接するということがすごく大事だということと、どう接したらきずなまで行くのか、これが最後に残ってくる課題かなと思っております。

【福井氏】 子供と高齢者、実は高齢者と言うと、カテゴライズはなかなか難しいと思っていて、イクジイのカテゴライズだと、もう50代前半から、もう40代後半から、上はお孫さんがいる人まで青天井で、だからどこでカテゴライズするのかちょっと難しいとは思うのですが、イクジイ世代の人たちと子供のきずなというのは、今おっしゃったとおり、しっかりつくっていかなければいけない。意外とつくりやすいのですが、イクジイ世代とママのきずながつくりにくい。
さっき棒田さんが横浜のことを言われたみたいに、3.11があって、関東では危機感がありましたよね。すごく揺れたし、どうしようという危機感はありましたが、例えば西日本では全くないですよ、危機感が。放射能の影響もないし、揺れもしなかったし、危機感もない。やっぱり危機感がないと、そういうふうにママが助けを求めないのですよね。そうすると、イクジイ世代とママとのきずなはすごくつくりにくいのですよ。

【村上氏】 なるほど。

【福井氏】 仕掛けもつくりにくいし、そこは何か、それこそいいヒントがあったら欲しいなと思うぐらいですけれども、そこをつながないと、イクジイ世代と子供だけきずなができても、やっぱりママの許しがないと子供は動けないといったとこがあって、3者のきずなみたいなものが必要になっていくのかなと思いますが、その辺、棒田さんはどう思われますか。

【棒田氏】 大体今、私が行政さんなどからは、孫で呼んでいただくことが一番多いのですが、正直なところ、今、3箇年計画を私はお話ししています。一番初めに、祖父母世代に話をする。でも、祖父母世代にスイッチが入っても、今度は子育て世代の方に聞く耳を持てる人がいないと一緒には動けないのです。なので、次の種まきはママたちにする。そしてその次に両者が会う、若しくはその次に、初めから多世代が入っているメンバリングの組織を何かつくるという形を、今は板橋区、今度は戸塚区、それから私のところは子育てひろば拠点というところで、今、3箇所でモデル的にというか、自発的に立ち上がる形でやっているのですが、ママたちとジイ・バア世代たちをつなぐといったときに、私が今、推奨しているのは、ゼロから3歳を持つ子育て世代と上の世代をまずはつなぎましょうと言っています。
というのは、いろんな方たちとお話をしていくと、傷ついているジイ・バア世代も結構多いのですね。知らない人に声をかけられたら、そのまま反応せずに立ち去るとか、変な教育が今、学校でされているので、無視をされたとか、お母さんから、うちの子供には変な声をかけないでくださいという声があるということなので、まずゼロから3の小さい子たちに上の世代の方たちは声をかけてくださいと。
それから、ママたちには結構シビアな話をしています。実際にこれは神奈川県警で伺った話なのですが、誘拐が起きました、事件に巻き込まれました。子供の写真を見せたときに、これはどこどこのだれだれちゃんだねと言った方の目撃情報は100%信じられると。でも、そのときに、黒いランドセルを背負った男の子というと山のようにいますよね。確かにこの子が通ったかもしれない、通った気もしますという情報源というのは、ほぼ当てにならないと。一番の捜査のかぎになるのは目撃情報だということなのです。ということは、お母さんたちに私がお話をするまでに、親の役割として、今の時代、とても大事なことは、地域に子供の顔をどれだけ売れるのか、それがもしかしたら親の質を問われているのかもしれませんよという話を結構シビアにしてしまいます。それも、同じ世代だといないので、違う世代でないと駄目だよという話をしています。

【福井氏】 そうですよね。昼間人口が減るところに、そこにまだいる人を使うということですよね。

【棒田氏】 はい。

【福井氏】 ある意味ママの危機感をどうあおるかですね。

【棒田氏】 それ以外はもうないですね。

【福井氏】 そうですよね。
あと僕が、広島でイクジイの講座をしたときに、結構おじいちゃんが来てくれて、講座をしたのです。どっちかというと基礎啓発系のやつを、孫育てなどをやっていたのですが、来てくれたおじいちゃんたちの半分ぐらいが、もう既に外遊びを子供と一緒にやっていて、外遊びで自分たちがアイテムをつくって山遊びみたいなことをやっている集団だったのです。
すごい人がいるなと思って彼らの話を聞いてみたら、彼らは、自分の地域ではないところの山で山遊びの拠点をつくって、そこに子供をどんどん呼んで、子供に山遊びをさせているおじいちゃんの集団だったのです。
僕は地域で子育てという話をするではないですか。そうすると、こっちのおじいちゃんたちは、自分たちも子供とかかわっていると言われるのですが、今イクジイで言う地域の子育てとは違うカテゴリーで……。

【棒田氏】 はいはい、遊牧民みたいなものですね。

【福井氏】 そうそう。そっちは、おじいちゃんも乗るのですよ、地域よりも。だから山の中に迷路みたいなものをつくったり……。

【棒田氏】 好きでつながるということですか。

【福井氏】 そうですね、そうそう。その辺だと、ママたちも連れていくのですよ。ただ、地域の普通のおじいちゃんのところには余り行かないのですよね。だから難しいなと思っているのですが。

【棒田氏】 というか、地域のおじいちゃん、おばあちゃんのよさを、知っているパパやママが実は少ないのですね。

【福井氏】 少ないですね。

【常野氏】 そうですね。これを一気にふやすというのは実はすごく難しいことで、例えば近所のおじいちゃんたちに声をかけてもらうと、子供たちは喜ぶし、安心だし、何かあったときに安心だよねと思ってくれる人が初めは1人でも、もうしようがないかなと。1人を2人にして、2人を3人にして、そのよさを知った人が仲間に伝えていく、実はこれは物すごく地道な作業かなと思っております。もしかしたらイクメンは、ブームである程度人数はふえるかもしれませんが、本当の意味での地域のきずなというのは、そう簡単には生まれてこないのかなと、多少時間はかかるのかなとは思っています。

【福井氏】 そうですね。

【村上氏】 ちょっと話が戻るのですが、先ほど福井さんからイクジイとママのつながりについて、どうしたらいいのかなということがあったのですが、僕がイクジイをやっていて最近すごく可能性を感じるのは、イクジイとママ、特にワーキングマザーは、非常に親和性が高いのではないかと思っています。
なぜかというと、よくあるのが、おばあちゃんとの確執というと、棒田さんともよく話すのですが、やっぱり専業主婦だったおばあちゃんと、それから今、働きに出たいと思っているママでは、先ほどデータでもありましたが、意識としては女性も社会進出したいし、経済的にもやっぱり出ないと、働かないとやっていけないという層のお母さんとおばあちゃんでは、やっぱり衝突があると。育児のトレンドのギャップもあったりして、福井さんもおっしゃっていたみたいに、そこでやっぱり問題があるけれども、おじいちゃんは現役時代に働いていたので仕事に対しての理解がある。もう一つは、現役時代、おじいちゃんたちは子育てをほとんどしてこなかった人たちなので、ゼロから今の子育てのトレンドを一緒に学ぶことができるので、うまくいくと、ママとおじいちゃんというのがすごく理解し合える可能性があるのではないかと僕は思っています。

【棒田氏】 共有できているところは、したいけれどもできないという、時間をどう使ったらいいのか、したいけれどもできなかった気持ちの共有はジイと働くママたちは意外とできていますね。おばあちゃんとするよりは、おじいちゃんの方が。なので、娘とジイの関係の関係改善というのは、データ的にも見られているというデータが今、出ています。

【村上氏】 そこが、今、日本経済の復興は高齢者と女性の活用だと言われていて、今回も高齢者の生涯学習なり社会でこれから元気に頑張っていただくというテーマですし、女性の社会進出も、働く「なでしこ」大作戦で今、推進しているところなので、ここがやっぱりキーワードになってくるのかなと僕は思っています。

【福井氏】 そうですね、僕の事例発表のときにも言わせていただきましたが、公民館を拠点に使いたいと思ったときに、公民館ではどんな事業をしているのだろうと詳しく調べてみたら、高齢者には老後の事業しかしていません。カラオケ教室、おばあちゃんたちは民謡教室、そば打ち。余り未来を見据えた事業というのはなくて、子供のためには子供のための事業しかしていない。そういう枠組みを壊して、ママのための事業と子供のための事業と高齢者のための事業を、全部一つにする必要はないけれども、重なる部分をつくっていくような事業づくりを公民館の方でしていくと、自然にそこも接点が生まれてくるのかなと。

【村上氏】 そうですね。

【福井氏】 はい。困っていて、だれかの手がかりたいと思っているママは山ほどいて、でも、手をかしてと言いに行く場所もないというのが現状で、だから言いに行く場所ができて、そこに人がいればつながるのかなと、今、話を聞いていて思いました。

【村上氏】 そうですね。

【福井氏】 東京とか千葉とか横浜の公民館はどうですか。公民館活動は崩壊していますか。

【棒田氏】 横浜には公民館がございません。はい。

【常野氏】 柏ですけれども、公民館は、非常に活発に動いています。ですから、公民館の部屋がとれないのです。でも、それも今言われたように、老人は老人の事業で……。

【村上氏】 その点と点をつなぐものは、公民館に余りないですよね。

【福井氏】 ないですよね。公民館の高齢者向けに、何で民謡なのだろうと思うのです。僕も65歳になったら民謡を好きになるのかなあと。

【村上氏】 ブルースで民謡を……。

【福井氏】 今の団塊の世代の人たちというと、ビートルズ世代ではないですか。65歳ぐらいのおじいちゃんがビートルズのコピーバンドをつくって公民館でやるというのがあったりすると、ママも、若い子たちも、子供たちも喜ぶと思います。公民館の組立ての仕方というのは、何か一方向的なのですよね。

【棒田氏】 変わらないのですか。

【伊藤氏】 来年から変えますから。

【村上氏】 仕掛ける側も、高齢者像をやっぱり変えていかなければいけないですね。

【福井氏】 そうです、そうです。高齢者イコール民謡ではなくて、世代が変わってきています。僕もあと10年たつと66になるのですが、でも多分音楽の嗜好などは変わらないですよね、そういう意味では。食べ物の嗜好は年とっていくと変わっていきますけれども、好きだった音楽とか小説とか絵は変わらないのではないですか。考えると、僕らの世代がその世代になったときには、全然違う視点で見なければいけないけれども、多分ずっと何十年同じ視点でしか見ていないというところが、公民館を拠点にするには、そこが一つ問題かなあという気がします。

【常野氏】 さっき話そうかと思ったのは、幼児との関係というのは、実は我々はまだそこまで行っていないのですよ。私たちの茶論の横が、実は児童センターなのですが、幼児がすごくそろっているのです。今はお母さん方に、実はここでこんなことをやっているよ、あなた方に何か要望があるのであれば、そういうイベントをやっていこうかねと。それから、児童センターで企画するものに関しては、多世代が協力して動いていきますよという形の、今、種まきをやっていて、それが幼児から小学校、中学校という形で動いていけたらと考えています、そんな形で種まきをしているところです。

【村上氏】 やっぱり行政が縦割りだったり、セクションが分かれていくと、そこのつながりというのは子育てだけでも難しかったりしますよね。

【棒田氏】 横浜の場合ですけれども、公民館ではなく、これは多分、部署が文科省さんとは別になるのですが、中学校区に1区、地域に福祉拠点というのがあるのです。これが「福祉拠点」と、「福祉」というのは何を意味するのですかと横浜市に本当に聞きたいのですが、1階はデイケアセンターです。私はできる前から、福祉拠点の意味を教えてくださいという話をしました。子育て世代に対しては、1階はデイケアセンターでしっかりと施設を持っています。外から見ると、もう本当に高齢者の施設にしか見えない。それで、何をしてもらえるのですか、私たちは何ができるのですかと聞いたところ、お部屋をお貸ししますと、それが地域の福祉拠点という、あとはお住まいの皆さんで御自由に使ってくださいと。
ものすごくもったいないなと。やっぱり箱をつくって、その箱に一番初めに顔をつけてしまうと、その顔というのはなかなか変わらないのですよね。だから物をつくっていったときに、初めから多世代が見えるような形とか、福祉とは何なのかという部分が見える形でつくった方がつくりやすかったのかなというのがあって、実は今年の4月に立ち上げた子育て支援のひろばは、もう初めから、20歳から上は80歳までが構成メンバーです。立ち上げにかかわったメンバーが、どちらかというと行政に顔がきいたり町内会の主たるメンバーであったりで、私が立ち上げのときの代表なのですが、基本的には、私はこんなことをしていて横浜にいる時間が余り多くありませんので、2箇月たった時点で、今、小学生のお子さんがいるママに代表の方は引継ぎをしました。
だから、せっかくできたとしても、同じ人がずっと牛耳ってしまうというのが地域の問題でもあると思うのです。かかわった人というのが抜ける勇気を持つと、次の人が今度立ってくる。それでどんどん世代を変える。今やっている方たちもつながりを広げていく努力をしていかないと広がらないかなと。実は、すごく地主さん系が強くて、鈴木さん、横溝さん、木村さんという、町内会で集まると、この3方しかいないのですね。そこにうちの地元はどれだけ違う名字を入れ込むかというのが、まず大きな目標だったのですが、やっと少し入りました。そこで世代がえをどんどんしていく。多分いろんな地域、地方も多分そういったところが多いと思うので、働きかけていく、変えていくというのも、パワーは要るし、かなりへこむこともありますけれども、頑張っていただきたいと思います。

【村上氏】 ありがとうございます。
本当に話題は尽きず、まだまだ話し足りないところがあると思いますけれども、定時を過ぎてしまいましたので、最後、皆さんに一言お願いしたいのと、少しお時間が許すようでしたら、会場からも質疑応答を何名か頂きたいと思います。では一言ずつお願いします。
常野さんの方から、よろしいでしょうか。お願いします。

【常野氏】 この活動は、先ほど言いましたように、始まったばかりなのですが、これからの動きとして、どうしてもこの日本に必要な動きだと思いますので、これをできるだけ成功させて、お役に立つのであれば、どこかのお役に立っていきたいなと思っております。ただ、まだまだこれからやらなければいけないことが山積されていまして、頑張っていこうと思っております。

【福井氏】 先ほど危機感が大切だと棒田さんから聞いて思ったのですが、田舎の危機感とは何だろうなと考えてみました。実はそれは、イクジイの概念にしっかりと当てはまるもので、田舎の危機感は若い人がいない、子供がいない、地域が続かないなのです。もう地域崩壊の危機感、まさにそれが来ています。
では、地域に子供がいて、活性化して地域が続いていくためには、やっぱり子育てがしやすい地域というのを若い人たちに認識してもらう必要がある。これは補助金でもなければ、例えば医療でもなくて、地域力という、周りのみんなが子供を見ているよという総力だと思うのです。そこにやっぱりイクジイの力は欠かせないなあと。そのために、これからもこの鳥取の中で地域拠点である公民館を攻めながら、公民館の人と一緒になってそういうことが啓発していけたらなと思います。

【棒田氏】 孫育て、それからイクジイというところなのですが、私は初めにも話させていただいたのですが、とにかくどちらか片方だけでは無理なのです。ジイたちだけが頑張っても無理、つながらない。ママたちの方だけで今の子育ては大変大変と言っているだけでもつながらない。そこを本当にどうつなげていくのかという部分が、私の中で、もうここ数年、ずっと課題としてはあるわけです。イクジイという形で、全国各地でジイたちが今、立ち上がってくれているので、ジイたちに頑張ってもらいつつ、ママたち子育て世代にもう少し耳を傾ける広い心を私の方からも情報発信していきたいなというのと、あとはやっぱり子供たちにふるさとをつくるということが、今、都会の中ではキーワードとして生まれつつありますので、そのあたりもこれからは展開していければと思います。ありがとうございました。

【村上氏】 ありがとうございました。
では、会場から何か御質問がありましたら、挙手をお願いいたします。

【会場発言】 米子から来ました、73歳でイクジイ1年生です。
私は、50年間、仕事をしてきまして、それで、昨年、仕事をやめたのですが、まさに今言われたように企業戦士で、特に30代は家に一度も帰らないぐらいな仕事をしていまして、子育ては全部家内に任せてきました。ただ、ここに来て、娘の子供が小学校3年生で発達障害、いわゆる学習障害なのですが、それを見ていて、何とかイクジイをしてやらなければいけないなと思ってかかわってきたのですが、かかわり方として、子供に教育するとか教えるという視点ではなしに、私が今思っているのは、人生、社会人として50年過ごしていると、常野さんもそうだと思いますが、人生を客観的に見ることができると思うのです。お母さん方、娘から見ると、学習障害とか問題児というと大変びびってしまうのですが、そんなことはないよと、長い人生いろいろあるわいなという目で、いわゆるジジイの人生経験をうまく活用して、人生を俯瞰的に見ている、そのジジイ力をもう少し活用するという意味で、じいさんの違った視点が物すごく重要ではないかなと思うのです。
多分小学校5年ぐらいから高校1年ぐらいまでが人生で一番多感な時代で、高校に入ると、もう大学受験のレールに乗ってしまうし、大学に入ったら就職のことになってしまう、レールが決まってしまうので、多分さっき言われたように、1歳、2歳の子供に対しては、じいさんは案外役に立たないかもしれないけれども、多分小学校3年ぐらいから高校1年ぐらいまでの間は、何らかの形で子供にいろんなことに興味を持たせる仕事ができるのかなと。
子育てというのは、客観的に言うと3つの要素で、子供に体力をつけること、子供が自信を持つこと、そして社会に受け入れられること、この3つがあれば人生生きていけると思うので、そういう意味で、もう少しじいさんの人生経験を生かした子育てという視点が、今の話の中にはなかったのですが、そういうことがあってもいいのかなという感じがしたもので、意見を言わせてもらいました。

【棒田氏】 多分それは大前提ですね。基本的に経験であったり、その人その人が持っている御自身の財産を、逆に次なる世代に私はきちんとつないでほしいなと思っています。

【福井氏】 そうですね、仕事をしていらしたときに積み重ねたスキルや経験というのは、仕事をやめた時点で僕はなくなるものではないと思っているので、やはりこれは地域に返していくものなのかなと。そこで地域への子育て支援とか、まず第一歩は自分のお孫さんへの子育て、イクジイということになっていくと思うので、その経験を地域に返していくということがまず大前提、地域や自分の子供や自分の孫に返していくということが大前提なのかなと思うので、是非今御意見を頂いた方のように思っていただく方が少しでもふえていくのがイクジイの啓発になっていくのかなあと思いました。

【常野氏】 全くそのとおりでございまして、やはりこの経験をぷつっと切る必要は何もないので、恩返しのつもりで、今の気持ちは地域にどう恩返しができるかということだけなので、持っているものをみんな出して、そしてそれが子供たちの役に立つ。先ほども言いましたように、単なる選択肢の幅が広がってくるとか、苦労していることが解消できるということでいいと思います。何も国語の成績がどうだとか、数学の成績がどうだということは、私は考えていませんので。子供の選択肢の幅が少しでも広がったら、こんないいことはないなと思っておりますので、そんな生き方をしていきたいと思っています。

【会場発言】 ありがとうございました。

【村上氏】 ほかにもきっと質問されたい方はおられると思いますけれども、時間が過ぎてしまいましたので、登壇者の方々に質問がありましたら、終わってからでも直接お願いします。
私、今の質問を受けて思ったのは、なぜ私たちファザーリング・ジャパンでイクジイをやっているのかというところにもつながってくるのかなと思います。イクメンブームが来て父親の育児参画はふえたのですが、まだまだ時間的にも参加の人数的にも低い状態が続いています。やっぱり子育てには母性も必要ですし父性も必要だと思います。特に父親の役割というのが子供の、先ほどおっしゃったような多感な時期に社会ですとか自立を教えることは親の大きな役割なのですが、なかなか父親と子供の関係性が乏しいところで、このイクジイの経験やスキルというものが、そこをかわりに子供たちに伝えられるものがないかなと思って、ファザーリング・ジャパンとしてイクジイプロジェクトをやっています。なので、高齢者、おじいちゃん、おばあちゃんの世代と孫だけではなくて、そこの間のお父さんとお母さん、多世代における協力によって次世代を育成していきたいなと考えています。そのような社会をつくりたいなと思っています。
特に今回、文部科学省の生涯学習と一緒に今やっていましたけれども、私の方から発達段階の話を少しさせていただきたいと思いますが、エリクソンという有名な方がいまして、発達段階は8段階があると。その幼少期から老いるまでの8段階の中で対立する2つの概念を、そこで成長していくのだという考え方があるのですね。その壮年のところで、次世代の育成に行くのか停滞するのか。そこで最後、更に終わりが英知で終わるのか絶望で終わるのかという考え方があるのですね。
今、高齢者の方々が3,000万人、65歳以上の方がいる社会の中で、その人生を停滞で終わらせるのか次世代育成のために使っていただくのか、それによって豊かな日本をつくり上げていくには何ができるのかというのを、これから皆さんでまた考えていっていただきたいなと思います。
棒田さんは「創続」という、つくる続きというのをやっていまして、生きてきたあかしとかきずなを、ではどうやって自分の子供たち、孫たちに伝えていったらいいのかというセミナー等もやっていますので、また機会があったら、その話もどこかの場で聞いていただけたらなと思います。
本日は、時間がかなりオーバーしてしまったのですけれども、皆さん、お付き合いを頂き、ありがとうございました。
そして、きょう登壇していただいた棒田さん、福井さん、常野さんに、また最後、皆さんから拍手で感謝していただきたいと思います。ありがとうございました。

【司会】 皆様、お疲れさまでございました。
これで、今回の分科会のプログラムはすべて終了でございます。
2点ほど伝達事項がございます。
一つは、この後3時20分から、メーンシンポジウムが小ホールで行われます。お時間のある方は、是非御参加いただければと思います。
また、配付資料の中にアンケート用紙を入れてございます。これは今後の事業とか、様々なところで参考にしていきたいと思っておりますので、是非御記入いただきまして、出口のところでお渡しいただければと思います。
もし筆記用具をお持ちでない方がいらっしゃいましたら、スタッフにお声がけいただけましたらお貸しいたしますので、アンケートへの御協力、是非よろしくお願いいたします。以上でございます。

(終了)

お問合せ先

生涯学習政策局社会教育課環境・高齢者担当

(生涯学習政策局社会教育課環境・高齢者担当)

-- 登録:平成25年01月 --