文部科学省政策評価実施要領

廃止平成14年3月31日
平成13年3月15日
文部科学大臣決定

1  評価の目的
   (1)   国民に対する行政の説明責任(アカウンタビリティ)の徹底
    政策評価の実施を通じて、行政と国民との間に見られる行政活動に関する情報の偏在を改善し、行政の透明性を確保することにより、国民に対する行政の説明責任(アカウンタビリティ)を徹底し、行政に対する国民の信頼性の向上を図る。

  (2)   国民本位の効率的で質の高い行政の実現
    政策評価の実施を通じて、民間でできるものは民間に委ね、政府の行政活動の範囲について行政が関与する必要性がある分野に重点化・適正化を図るとの観点を徹底することにより、「行政サービスの利用者」としての国民が求める質の高い行政サービスを必要最小限の費用で提供する効果的・効率的な政策運営を実現する。
  また、政策評価の結果を企画立案やそれに基づく実施に反映させるとともに、政策評価の継続的な実施を通じて得られる知見を行政組織が学習・蓄積していくことにより、政策の質の向上及び行政の政策形成能力の向上を図る。

  (3)   国民的視点に立った成果重視の行政への転換
    政策評価の実施を通じて、政策の実施のためにどれだけの資源を投入したか(インプット)、あるいは、政策の実施によりどれだけのサービス等を提供したか(アウトプット)、サービス等を提供した結果として国民に対して実際どのような成果がもたらされたか(アウトカム)ということを重視した行政運営を推進することにより、政策の有効性を高めていく。また、職員の意識改革を進め、手続面を過度に重視するのではなく、国民的な視点に立って成果を上げることを一層重視する行政運営に重点を置くことによって、国民にとって満足度の高い行政を実現する。


2  評価の実施体制
  (1)   政策評価会議
    文部科学省が行う政策評価に関する決定を行うため、事務次官を議長とする政策評価会議を設置することとする。
政策評価会議は、評価結果の政策への反映方針等の重要事項について省議に諮り、その方針に基づいて決定を行うものとする。

  (2)   政策評価担当組織
    政策評価担当組織は、大臣官房政策課評価室とする。

  (3)   政策評価会議、評価室、調整部局及び政策所管部局等との役割分担
    政策評価会議の庶務は評価室で行うこととする。
    評価室においては、主に次のような業務を調整部局(予算、法令、組織・定員及び税制に関する省全体の調整を担当する課をいう。以下同じ。)及び政策所管部局等の協力を得て担当することとする。
    実施要領及び運営の方針の策定・改定など所管行政の政策評価に関する基本的事項の企画及び立案
    政策所管部局等が行う評価書の作成の支援(評価手法に関する知見の提供等)、必要な助言
    省における評価状況の取りまとめや公表など政策評価の総括
    政策評価を担うことができる人材の養成・確保の推進
    評価手法の調査研究の推進
    省内の政策の横断的な評価や複数の部局にまたがる政策の評価書の作成の取りまとめ
    評価対象の指定、評価の取りまとめ、目標等の設定及び評価結果の反映に対する意見付与にあたっては、評価室は調整部局と調整するものとする。

  (4)   政策評価に関する有識者会議
    文部科学省が行う政策評価の客観性を高めるため、学識経験者等からなる政策評価に関する有識者会議を設置することとする。
    政策評価に関する有識者会議の役割は、主に次のとおりとする。
    実施要領及び運営の方針の策定・改定などに関する助言
    評価の結果及び政策の企画立案への反映に関する助言
    評価手法の調査研究に関する助言
    政策評価に関する有識者会議の庶務は評価室で行うこととする。


3  評価の方式
  (1)   事業評価
  1   基本的性格
    主として事前の時点で評価を行い、途中や事後の時点での検証を行うことにより、当該事業の採否、選択等に資する情報を提供することを主眼とする。

  2   評価対象
    事務事業が中心となるものと考えられるが、所掌する政策の性質等に応じ必要があればおおむね施策として捉えられる行政活動のまとまりについても対象とする(以下「事業等」という。)。
    当面、評価室が指定する新規事業等、大規模な拡充・改善を実施する予定の事業等及び既存の主要事業等について対象とする。

  3   評価方法
    事業評価シート(様式1)を用いて「事業評価書」を作成することとする。
    評価の内容等は、主として次のようなものとする。
  1   意図・目的(事業等が何を対象として、何を達成しようとするものなのかを説明。)
  2   必要性(公益性の有無、政府関与の必要性、国と地方の役割分担の適切さ、民営化・外務委託の可否、新規の場合に○○年度から事業等を開始する必要性などの観点から検討を行い、事業等の必要性を説明。)
  →  「政策評価に関する標準的ガイドライン」における「必要性」「優先性」の観点に留意
  3   適正性の評価(事業等を実現する具体的手段が、考えられる代替手段に比し有効であり効果的であることの説明。可能な限り費用対効果分析、コスト分析等、定量的な評価を行う。それが不可能な場合には、定性的な評価を行う。また、過去に同様の事業等を行っている場合には、それからの教訓を踏まえた適正性の評価を行う。)
  →  「政策評価に関する標準的ガイドライン」における「効率性」「有効性」「公平性」の観点に留意
  4   達成効果・達成時期(事業等によって達成されることが期待される効果を、可能な限り定量的な形で説明(中長期的な効果のみならず、単年度の効果についても示すようにする)。)
    また、当該事業等に係る計画等がある場合にはそれを添付し、事業の全体像を明らかにするとともに、必要に応じて関連する資料を添付することとする。
    必要に応じて、事業の途中の時点で、事業等の進捗状況、期待された効果が得られつつあるか、事業等の意図・目的等が依然として妥当であるか等について検証するとともに、事業の終了後に、事業等の実施により当初期待された効果が得られたかどうか等について検証し、翌年度以降の予算要求等に反映させることとする。

  4   評価スケジュール
    各事業ごとに、政策所管部局等において「事業評価書」を作成し、評価室に提出する。
    評価室において「事業評価書」の取りまとめを行う。
    取りまとめた「事業評価書」に基づき、次年度概算要求までに、政策評価会議において評価を決定する。
    毎年度末までに「事業評価書」を公表する。
    評価の実施に当たっては、評価の手法及び結果について、政策評価に関する有識者会議の助言を受けることとする。

    施設整備事業、研究開発及びODA事業については、評価の内容の充実、評価の透明性の向上など評価の取組の一層の改善・充実を図ることとし、当面、次のような方針で取り組むこととする。(実績評価及び総合評価についても同様。)
  【施設整備事業】
    文部科学省所管の施設整備事業(研究開発等他の評価手法が確立し、かつ、実施されているものに係る事業等を除く)については、大臣官房文教施設部を中心に事業所管部局等と連携して実施することとする。
  【研究開発】
    「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱的指針」(平成9年8月内閣総理大臣決定)を踏まえつつ、国費によって実施される研究開発全般を対象とした評価について、科学技術・学術政策局計画官を中心に関係局課と連携して実施することとする。
  【ODA事業】
    「ODAの透明性、効率性の向上について」(平成10年11月対外経済協力関係閣僚会議幹事会申合せ)に留意しつつ、大臣官房国際課を中心に関係局課と連携して実施することとする。

    規制については、「規制緩和推進3か年計画(再改定)」(平成12年3月31日閣議決定)の趣旨を踏まえつつ、評価に必要な情報・データの収集を進め、可能なものから順次評価に取り組むこととする。

  (2)   実績評価
  1   基本的性格
    各施策ごとに、あらかじめ達成すべき目標を設定し、それに対する実績を測定しその達成度を事後に評価することにより、施策の達成状況についての情報を提供することを主眼とする。

  2   評価対象
    共通の目的を有する行政活動の一定のまとまり(おおむね施策程度のまとまりに相当すると考えられるもの。以下「施策等」という。)を対象とする。
    当面、評価室が指定する施策等について対象とする。

  3   評価方法
    実績評価シート(様式2)を用いて「実績評価書」を作成することとする。
    評価の内容等は、主として次のようなものとする。
  1   基本目標(主要な施策等に関し、国民に対して「いつまでに何についてどのようなことを実現するのか」を分かりやすく示す、成果(アウトカム)に着目した目標を設定。)
  2   達成目標(具体的な達成水準を示すことが困難な基本目標については、これに関連した測定可能な指標を用いて、それぞれの指標ごとに達成水準を示す具体的な目標を設定。)
  3   施策実現手段(当該施策等を実現するための事業等及び予算額等を記載。)
  4   目標達成状況(達成年度までの各年度において、基本目標又は各達成目標ごとの達成度及びそれに関するコメントを記載。)
    目標については、定期的・継続的に実績を測定し、必要に応じて、随時、関係する施策等の改善・見直し又は目標自体の見直しを行うこととする。
    目標期間が終了した時点で、目標期間全体における取組や目標に対する最終的な実績等を総括し、目標がどの程度達成されたかについて評価し、必要に応じて、施策等や次の目標期間の目標設定の在り方について見直しを行うこととする。

  4   評価スケジュール
  〈目標等の設定〉
    各施策等ごとに、政策所管部局等において、あらかじめ達成すべき目標等を設定し、評価室へ提出する。
    評価室において、目標等の取りまとめを行う。
    取りまとめた目標等に基づき、毎年度末までに、政策評価会議において各施策の目標等を決定する。
    目標等の設定に当たっては、政策評価に関する有識者会議の助言を受けることとする。
  〈評価の実施〉
    設定した目標について、政策所管部局等において、前年度における達成状況等の評価を実施し、「実績評価書」を評価室に提出する。
    評価室において、「実績評価書」の取りまとめを行う。
    取りまとめた「実績評価書」に基づき、毎年6月頃までに、政策評価会議において評価を決定する。
    次年度概算要求の公表と同時に「実績評価書」を公表する。
    達成状況等の評価の実施に当たっては、政策評価に関する有識者会議の助言を受けることとする。

  (2)   総合評価
  1   基本的性格
    特定のテーマを設定し、様々な角度から掘り下げて総合的に評価を行い、政策の効果を明らかにするとともに、問題点の解決に資する多様な情報を提供することを主眼とする。

  2   評価対象
    特定の行政課題に関連する行政活動のまとまり(おおむね政策(狭義)や施策ととらえらえる行政活動のまとまりに相当すると考えられるもの。以下「政策・施策」という。)を対象とする。
    当面、評価室が指定するテーマについて対象とする(毎年1〜2テーマ程度)。

  3   評価方法
    評価の内容等は、主として次のようなものとする。なお、評価のテーマや評価対象の性質等によって評価の内容は一定のものではなく、必ずしもすべての内容が該当するものではない。
  1   政策・施策の効果の発現状況を様々な角度から具体的に明らかにする。その際、政策・施策の直接的効果や因果関係、場合によっては、外部要因の影響についても掘り下げた分析を行い、さらに、必要に応じ波及効果(副次的効果)の発生状況及びその発生のプロセスなどについても分析する。
  2   1を踏まえ、政策・施策に係る問題点を把握するとともに、その原因を分析する。
  3   政策・施策の目的が依然として妥当性を有しているかについて検討する。また、必要に応じて、行政関与の在り方からみて行政が担う必要があるかなどについても検討する。
  4   必要に応じて、政策・施策の効果とそのために必要な費用(マイナスの効果や間接費用を含む。)を比較・検討する。また、国民にとってより効率的で質の高い代替案はないかについて検討する。
  5   関連する政策・施策との間で、整合性が確保されているかについて検討する。
  6   場合によっては、他の政策・施策よりも優先的に実施する必要があるかについても検討する。

  4   評価スケジュール
    毎年度初頭にテーマを選定し、年度末までに取りまとめ・公表することとする。
    具体的なスケジュールについては、評価対象に応じて適宜対応することとする。


4  評価結果の政策への反映
  (1)   反映方法
    政策所管部局等は、それぞれの評価結果を踏まえ、政策の見直し、改善をどのように行うべきかを検討し、反映方針の素案を評価室に提出する。
    評価室において、反映方針の案の取りまとめを行い、その際、評価室は、必要に応じて意見を付すこととする。
    取りまとめた反映方針の案に基づき、次年度概算要求までに、政策評価会議において反映方針を決定する。
    事業評価の結果については、今後の新規事業等を企画立案する際にも参考とすることとする。
    反映状況を検討するに当たっては、政策評価に関する有識者会議の助言を受けることとする。

  (2)   反映する政策の企画立案作業等
    予算要求
    法令等による制度の新設・改廃
    組織・定員要求
    税制改正要望
    各種中長期計画の策定        等


5  評価結果等の公表
  (1)   公表内容
  1   評価結果
    対象とした政策の目的・目標、具体的内容、実現手段(関連する予算額等を含む。)、成果・実施等
    評価の際に使用した仮定等の前提条件、評価手法・指標、データ
    評価の過程で聴取した学識経験者、民間等の意見等
    評価の結論

  2   評価結果の政策の企画立案への反映状況
    評価結果に基づく措置状況(内容、時期、今後の予定等)

  (2)   公表方法
    報道発表
    文部科学省ホームページへの掲載
    窓口での配布 等


6  政策評価を実施するに当たって考慮すべき事項
  (1)   審議会、諮問委員会等第三者の活用
    国民に対して評価の客観性等を示すことが重要であることにかんがみ、政策評価の実施に当たっては、審議会、諮問委員会等第三者の積極的な活用を図ることとする。

  (2)   評価手法の調査研究
    文部科学省の所掌する分野の中には、目標や効果を定量的に示すことが困難なものや効果がすぐに表れないためにある程度中長期的に効果を見なければならないものもあることに留意し、そのような政策についても、政策評価を実施することの重要性に鑑み、評価手法の研究開発、向上に努めることとする。
  そのため、外国における実施例を含めて調査研究を行い、その情報の提供に努めるとともに、類似事業間における評価指標や評価手法の共通化について調査研究を行うこととする。
  さらに、評価手法の研究開発に当たっては、理論と実務の両面からのアプローチが必要であり、国立教育政策研究所、科学技術政策研究所をはじめとする研究機関の協力も得ながら対応することとする。

  (3)   実施要領の見直し等
    政策評価制度は新たに導入される制度であり、実施の過程を通じてその改善・発展を図るべきである。したがって、政策評価の実施状況、評価手法の研究開発の動向等を踏まえ、必要に応じ本実施要領を見直し、改定するものとする。


7  政策評価に関する外部からの意見・要望等の窓口
  文部科学省大臣官房政策課評価室政策評価係
  〒100-8959  東京都千代田区霞が関3−2−2
TEL  03−3581−4211(内線3037)
FAX  03−3581−4598
E−mail  seihyoka@mext.go.jp
ホームページアドレス  https://www.mext.go.jp


-- 登録:平成21年以前 --