専修学校となるために最低限必要な学習時間に関する基準の見直し等

 法律又は政令の名称

 学校教育法の一部を改正する法律案

 規制の名称

 専修学校となるために最低限必要な学習時間に関する基準の見直し等
 (1)専修学校となるために最低限必要な学習時間に関する基準の見直し
 (2)専修学校の専門課程の入学資格の見直し
 (3)専修学校における自己評価制度の見直し

 規制の区分

 新設、改正(拡充)

 担当部局

 総合教育政策局生涯学習推進課専修学校教育振興室

 評価実施時期

 令和6年2月

 

1 規制の目的、内容及び必要性 

<1> 規制を実施しない場合の将来予測(ベースライン)

 専修学校は、学校教育法第124条において「職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図ること」が目的とされており、医療福祉、工業、IT等の分野において、実践的な職業教育機関として人材を輩出してきた。
専修学校には、高等課程、専門課程、一般課程の3つの課程が位置づけられているが、このうち、高等学校における教育の基礎の上に教育を行う専門課程を置く専修学校(いわゆる専門学校)は、教育に関する国際統計の標準である「国際標準教育分類(ISCED)」において高等教育機関に相当するものとされる一方、従来、高等学校卒業者とは同等の学力ではない者も含めて広く入学者を受け入れ、職業教育を行う教育機関として構想されていたため、大学とは教育面での制度が異なる部分がある。
 しかしながら、人生100年時代やデジタル社会の進展の中で、職業に結びつく実践的な知識・技能・技術や資格の修得に向けて、リスキリング・リカレント教育を含めた職業教育の重要性が高まっていること等を踏まえ、専修学校専門課程における教育と大学における教育との間の制度的な整合性を高め、両者の間の円滑な移行を可能にするための制度の整備等が求められている。このような状況を踏まえ、専修学校となるために最低限必要な学習時間に関する基準を、大学・高等専門学校と同様に「単位数」により定めることができるようにするとともに、専修学校の専門課程の入学資格について、大学の入学資格と同様の規定とする。
 さらに、専門課程における教育の質の保証を推進するため、全ての専門課程を置く専修学校は大学と同等の項目での自己点検評価を義務付けることとする。
 上記の規制が速やかに実施されなかった場合、専修学校専門課程の高等教育段階の職業教育機関としての位置付けが明確でないことにより、専修学校専門課程修了者の社会的評価が相対的に低く、就職の際に不利になる可能性がある。また、専門課程で学んだ学修成果の大学での単位認定等が円滑に行われず、専門課程在籍者の学ぶ機会が十分に確保されない恐れがある。
 さらに、今般の改正では、上記に加え、専修学校における専攻科の設置に係る規定の創設、一定の要件を満たす専修学校専門課程の修了者への称号の付与等についても措置を講じることとしている。上記の規制が実施されなかった場合、こうした施策の実施に支障が生じ、専修学校専門課程修了者の学修継続の機会の確保及び学修成果の社会的な評価について、適切な環境が整備されない恐れがある。

<2> 課題、課題発生の原因、課題解決手段の検討(新設にあっては、非規制手段との比較により規制手段を選択することの妥当性)

(1)専修学校となるために最低限必要な学習時間に関する基準を、大学・高等専門学校と同様に「単位数」により定めることができるようにすることについて
 
[課題及びその発生要因]
 現行の学校教育法第124条及び専修学校設置基準において、専修学校は文部科学大臣が定める授業時数以上であることとされており、原則として、各専修学校においては所定の授業時数の履修をもって学生の修了が判定されている。他方、大学においては単位数が、卒業要件や学位授与要件として定められている。
 このように、在籍者の学習成果の認定に関して専修学校と大学では制度が異なることにより、専修学校専門課程の学生が大学との単位互換を行う際や、専修学校専門課程から大学に編入学した学生について大学の卒業要件となる単位を計算する際に、当該学生の学修成果を授業時数から単位数に換算する手間が生じており、専修学校専門課程の在学者や卒業者が大学に移行する際などに一定の障害になっており、これを解消する必要がある。
 また、「専修学校の質の保証・向上に関する調査研究協力者会議報告書」では、単位制を導入することで、一定の授業時間数の履修だけでなく、専修学校教育の特性を踏まえた適切な方法で授業科目ごとの学修成果を評価し、単位を与えることとなり、学修の修了を適切に認定できるようになることから、専修学校専門課程への単位制の導入が提言されている。
 
[規制の内容]
 専修学校の設置に係る基準における教育課程編成の下限を単位数によっても定められるようにする。

[規制以外の政策手段の検討]
 学校教育法第124条おいて、専修学校は文部科学大臣が定める授業時数以上であることとされていることから、これを実現するためには、学校教育法を改正し、規制の内容を変更する必要があり、専修学校における選択肢を増やす手段としてこれに代替する政策手段はない。
 
(2)専修学校の専門課程の入学資格について、大学の入学資格と同様の規定とすることについて
 
[課題及びその発生要因]
 現行の学校教育法第125条第3項において、専修学校専門課程は、「高等学校若しくはこれに準ずる学校若しくは中等教育学校を卒業した者又は文部科学大臣の定めるところによりこれに準ずる学力があると認められた者」に対して、教育を行うこととされており、各専修学校では、この要件を満たす者に入学資格を付与することが求められている。
他方、大学における入学資格は、「高等学校…を卒業した者…又は文部科学大臣の定めるところにより、これと同等以上の学力があると認められた者」となっており、専修学校専門課程と異なっている。
 大学と専修学校専門課程の違いである高等学校卒業と「同等以上の学力」と「準ずる学力」の具体的な違いは、例えば、専修学校の高等課程を修了した者の取扱いについて見ると、専修学校専門課程の入学資格では高等課程のうち3年以上の課程を修了した者であれば足りるが、大学入学資格ではさらに一定の基準を満たした文部科学大臣が指定する課程を修了した者に限られている。
 現在では3年制以上の高等課程のうち、ほとんどのものが上記の文部科学大臣の指定を受けるなどして大学入学資格が認められており、学力の観点での専修学校専門課程の入学資格と大学の入学資格の違いが実態としてはほとんどなくなっている。それにもかかわらず、法律上の要件が異なるため、専修学校専門課程は高等教育段階の教育機関としての位置づけが明確ではなく、専修学校専門課程の在学者や卒業者が大学に移行する際や就職の際の学修歴の評価に一定の障害になっており、これを解消する必要がある。
 
[規制の内容]
 専修学校専門課程の入学資格を、大学の入学資格と同様の規定である「高等学校若しくはこれに準ずる学校若しくは中等教育学校を卒業した者又は文部科学大臣の定めるところによりこれと同等以上の学力があると認められた者」とする。

[規制以外の政策手段の検討]
 専修学校専門課程の入学資格を大学の入学資格と同様の規定とすることについては、ガイドライン等による自発的な取組を促す働きかけや、各専修学校に対する強制に当たらない行政指導等の方法も考えられるところである。しかしながら、各専修学校における任意の対応では、対応にばらつきが生じることから、専修学校専門課程の高等教育段階の職業教育機関としての位置付けの明確化や、専修学校専門課程の在学者・卒業者の大学への移行の円滑化等が十分に実現されない恐れがある。
 これを踏まえ、全ての専修学校専門課程の入学資格が大学と同様になるよう、専修学校専門課程の設置に係る規制の内容を変更することとする。
 
(3)専門課程を置く専修学校は大学と同等の項目での自己点検評価を義務付けることについて
 
[課題及びその発生要因]
 専修学校の学校評価については、専門課程、一般課程及び高等課程を通じて、初等中等教育段階の学校評価の規定である学校教育法第42条の規定が準用されている。他方、大学・高等専門学校(以下「大学等」という。)については、学位の国際通用性を高める観点から、海外の高等教育機関で一般的に行われている評価を参考に、より厳しい自己点検評価が行われている(法第109条)。
 
(参考)初等中等教育段階の学校評価は、学習指導、生徒指導等の教育活動を中心に評価を行うこととなっているが、大学等の自己点検評価においては、教育及び研究だけでなく、組織及び運営並びに施設及び設備について広く評価を行うこととなっており、さらに、評価結果を公表することとなっている。
 
 今般の改正により、専修学校専門課程の入学資格を大学と合わせて高等学校卒業と同等以上の学力とするとともに、単位制を採用できるようにして、大学と専修学校専門課程との間で教育面での制度的な同等性を確保し、学生の移行を容易にすることとしている。これに伴い、専修学校専門課程における教育の質の確保についても、大学と同等となるようこれまで以上に厳格に行うことが必要である。
  
[規制の内容]
 改正前は、教育活動を中心とした自己評価が専修学校に義務付けられていたが、改正後は、専門課程を置く専修学校には、大学等と同等の項目、具体的には、従来から対象となっていた教育活動に加え、組織及び運営並びに施設及び設備についても自己点検評価を義務付けることとする。
 
[規制以外の政策手段の検討]
 単位制の採用、入学資格に係る規定の改正といった措置は全ての専門課程を置く専修学校に適用されるものであり、大学等の教育との質の同等性を確保するためには、全ての専門課程を置く専修学校が大学並びの自己点検評価を行うことが不可欠である。そのため、あくまで自主的な取組を促すに留まる努力義務等ではなく、義務として規定することが必要である。
 

2 直接的な費用の把握 

<3> 「遵守費用」は金銭価値化(少なくとも定量化は必須)

[遵守費用]
(1)・(2)
 単位制の採用・入学資格に係る規定の改正に伴い、既に専門課程を置いている専修学校は学則を変更し、所轄庁に届出を行うための費用が発生する。学則変更の手続きのために必要となる人件費については、それぞれの専修学校の規模(学科数等)や国家資格養成施設に係る各種規程との調整状況等により大きく異なることから、当該費用を定量化又は金銭価値化した上で推計することは困難である。
 また、施行日以降に新設される専修学校については、改正後の規定に基づき設置することが必要となる。新設の専修学校の場合には、設置基準に規定される他の要件とあわせて設置認可の申請を行うことが想定されるため、本件に関する費用を切り分けて算出することは困難である。
 
(3)
 専門課程を置く専修学校には、大学等と同等の自己点検評価が義務付けられることにより、評価項目を拡充し、組織及び運営並びに施設及び設備についても広く自己評価を行うことが求められる。これにより、各専修学校では、追加の書類作成等が必要となり、一定の事務負担・費用が生じる。
 他方、専修学校における学校評価ガイドライン(平成25年3月 文部科学省)では、組織及び運営に関するものは「学校運営」又は「教育活動」の項目の中で、施設及び設備に関するものは「教育環境」の項目の中で自己評価を行うことを専門課程を置く専修学校に求めており、既に当該ガイドラインに基づく評価を行っている学校も少なくないところである。
 自己点検評価の項目の拡充のために必要となる人件費については、既に対応している専修学校も少なくなく、学校によって状況が大きく異なることから、当該費用を定量化又は金銭価値化した上で推計することは困難である。

[行政費用]
 所轄庁である都道府県には、既存の各専修学校からの届出を受領するための費用が発生する。また、施行日以降に新設される専修学校については、改正後の規定による設置認可を行うための費用が発生する(ただし、改正前に発生していた設置認可を行うための費用と同等)。
 所轄庁が届出の受領及び認可のための審査に要する時間は、当該所轄庁が所管する専修学校の数等に大きな影響を受けるものであることから、当該費用を定量化又は金銭価値化した上で推計することは困難である。

<4> 規制緩和の場合、モニタリングの必要性など、「行政費用」の増加の可能性に留意

 (該当なし)

3 直接的な効果(便益)の把握

<5> 効果の項目の把握と主要な項目の定量化は可能な限り必要

   単位制の導入により、大学との単位互換や、専修学校専門課程から大学に編入学した学生について大学の卒業要件となる単位を計算する際の学修成果の換算が容易となり、大学と専修学校専門課程との間での学生の移動が円滑化されることが想定される。
 また、専修学校専門課程の入学資格の見直しにより、専修学校専門課程の高等教育段階の教育機関としての位置づけが明確化され、国家資格の取得を目指す者等が進学先を選ぶ上での専修学校専門課程の魅力向上につながることが考えられる。
 さらに、大学と同等の項目での自己点検評価を義務付けることにより、専修学校専門課程の情報公開の充実や教育の質の向上が期待される。

<6> 可能であれば便益(金銭価値化)を把握

 (該当なし)

<7> 規制緩和の場合は、それにより削減される遵守費用額を便益として推計

 (該当なし)

4 副次的な影響及び波及的な影響の把握

<8> 当該規制による負の影響も含めた「副次的な影響及び波及的な影響」を把握することが必要

 これまでは、3年制以上の専修学校高等課程を修了した者については全て専修学校専門課程への入学が認められていたが、今般の改正により、大学への入学資格と同様、一定の要件を満たす専修学校高等課程を修了した者に限られることとなる。
 他方、3年制以上の専修学校高等課程については、多くの学校では既に大学入学資格を得られることとなっている。
 このため、従来であれば専修学校専門課程の入学資格を得られていたが今回の改正に伴い得られなくなる高等課程を置く専修学校の数は3校とかなり限られており、実態として、そうした専修学校高等課程に通っている生徒のうち、影響を受ける生徒はいないと考えている。
 その上で、過去に3年制の専修学校高等課程を修了した者や、現在既に専修学校高等課程に入学している生徒については経過措置を設けて専修学校専門課程に入学できるようにする予定であり、制度の変更によって不利益を被る生徒が出ないようにする予定である。

5 費用と効果(便益)の関係

<9> 明らかとなった費用と効果(便益)の関係を分析し、効果(便益)が費用を正当化できるか検証

 費用としては、2<3>に示した通り、既存の専門課程を置く専修学校は、学則を変更し、所轄庁である都道府県に届出を行う必要があるほか、自己点検評価の項目を拡充することとなり、追加の書類作成等が必要となる。また、施行日以降に新設される専修学校については、改正後の規定に基づき設置することが必要となる(ただし、改正前に発生していた設置認可を行うための費用と同等)。
 便益としては、2<5>に示した通り、専修学校専門課程の生徒の大学への移行の円滑化、専修学校専門課程の魅力及び質の向上といったことが考えられる。
 規制の新設となる自己点検評価の拡充については、現行の学校評価ガイドラインに基づき、既に充実した評価を実施している専修学校も少なくないところである。
 また、規制の変更及び新設に要するコストを最小化するため、専修学校の学則変更に係る事務や都道府県の学則変更の届出の受領に関する事務について余裕を持って行うことができるよう、法律の成立から施行まで1年半程度の期間を設け、施行期日を令和8年4月1日とすることとしている。

 本制度改正については、全国知事会や、全国中小企業団体中央会、全国高等学校長協会からも改正の意義を認める旨の文書が出されている。
 
 以上を踏まえると、便益が費用を上回ることが考えられ、当該規制を導入することは妥当である。

6 代替案との比較

<10> 代替案は規制のオプション比較であり、各規制案を費用・効果(便益)の観点から比較考量し、採用案の妥当性を説明

 専修学校となるために最低限必要な学習時間に関する基準の見直しについては、当該基準が法律に定められた規制である以上、この内容を変更し、「単位数」によっても定められるようにするためには、法律改正により規制の内容を変更するほかない。
 
 専修学校専門課程の入学資格の見直しについては、ガイドラインによる自発的な取組を促す働きかけ等も考えられるところである。しかしながら、専修学校専門課程が高等教育段階の教育機関であることの位置づけが制度上明確でないことが課題となっており、各専修学校における任意の対応では、対応にばらつきが生じることから、当該課題の十分な解決につながらず、それによって目指そうとする専修学校専門課程の在学者・卒業者の大学への移行の円滑化等が十分に実現されない恐れがある。
 
 規制の新設となる大学と同等の項目の自己点検評価の義務付けについては、代替案として、規制の対象範囲を狭め、生徒数が200人以上の専修学校など、一部の学校のみを対象とすることも考えられるが、入学資格の見直し、単位制の採用といった措置は全ての専門課程を置く専修学校に適用されるものであり、大学等の教育との質の同等性を確保するためには、全ての専門課程を置く専修学校が大学並びの自己点検評価を行うことが不可欠である。
 
 このため、専修学校となるために最低限必要な学習時間に関する基準の見直し、専修学校専門課程の入学資格の見直し、専修学校における自己評価制度の見直しを行うことが適当と判断した。

7 その他の関連事項

<11> 評価の活用状況等の明記

 (該当なし)

8 事後評価の実施時期等

<12> 事後評価の実施時期の明記

 本規制については、学校教育法の一部を改正する法律案附則第3条において法施行後5年後を目途に見直しを行う検討条項が設けられているため、当該規定に基づき、施行から5年後の令和13年(予定)を目途に事後評価を実施する。

<13> 事後評価の際、費用、効果(便益)及び間接的な影響を把握するための指標等をあらかじめ明確にする。

 専門課程を置く専修学校が実施している自己点検評価の状況や専修学校専門課程の教育効果(例:修了生の就職率等)を事後評価の指標として設定することが考えられる。
 
 また、専修学校専門課程修了者の賃金等、専修学校に係る各種データは、専修学校の実態を知る上で有用であることから、こうした各種調査、統計等の数値も参照しつつ、専修学校の振興に取り組む。

   以上
 

専修学校となるために最低限必要な学習時間に関する基準の見直し等(要旨)

 法律又は政令の名称

 学校教育法の一部を改正する法律案

 規制の名称

 専修学校となるために最低限必要な学習時間に関する基準の見直し等
 (1)専修学校となるために最低限必要な学習時間に関する基準の見直し
 (2)専修学校の専門課程の入学資格の見直し
 (3)専修学校における自己評価制度の見直し

 規制の区分

 新設、改正(拡充)

 担当部局

 総合教育政策局生涯学習推進課専修学校教育振興室

 評価実施時期

 令和6年2月

 規制の目的、内容及び必要性

 専修学校は、学校教育法第124条において「職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図ること」が目的とされており、医療福祉、工業、IT等の分野において、実践的な職業教育機関として人材を輩出してきた。
 専修学校には、高等課程、専門課程、一般課程の3つの課程が位置づけられているが、このうち、高等学校における教育の基礎の上に教育を行う専門課程を置く専修学校(いわゆる専門学校)は、教育に関する国際統計の標準である「国際標準教育分類(ISCED)」において高等教育機関に相当するものとされる一方、従来、高等学校卒業者とは同等の学力ではない者も含めて広く入学者を受け入れ、職業教育を行う教育機関として構想されていたため、大学とは教育面での制度が異なる部分がある。
 しかしながら、人生100年時代やデジタル社会の進展の中で、職業に結びつく実践的な知識・技能・技術や資格の修得に向けて、リスキリング・リカレント教育を含めた職業教育の重要性が高まっていること等を踏まえ、専修学校専門課程における教育と大学における教育との間の制度的な整合性を高め、両者の間の円滑な移行を可能にするための制度の整備等が求められている。
 このような状況を踏まえ、(1)専修学校となるために最低限必要な学習時間に関する基準を、大学・高等専門学校と同様に「単位数」により定めることができるようにするとともに、(2)専修学校の専門課程の入学資格について、大学の入学資格と同様の規定とする。
 さらに、(3)専門課程における教育の質の保証を推進するため、全ての専門課程を置く専修学校は大学並びの自己点検評価を義務付けることとする。
 上記の規制が速やかに実施されなかった場合、専修学校専門課程の高等教育段階の職業教育機関としての位置付けが明確でないことにより、専修学校専門課程修了者の社会的評価が相対的に低く、就職の際に不利になる可能性がある。また、専門課程で学んだ学修成果の大学での単位認定等が円滑に行われず、専門課程在籍者の学ぶ機会が十分に確保されない恐れがある。
 さらに、今般の改正では、上記に加え、専修学校における専攻科の設置に係る規定の創設、一定の要件を満たす専修学校専門課程の修了者への称号の付与等についても措置を講じることとしている。上記の規制が実施されなかった場合、こうした施策の実施に支障が生じ、専修学校専門課程修了者の学修継続の機会の確保及び学修成果の社会的な評価について、適切な環境が整備されない恐れがある。

 直接的な費用

 遵守費用

(1)・(2)
 単位制の採用・入学資格に係る規定の改正に伴い、既に専門課程を置いている専修学校は学則を変更し、所轄庁に届出を行う費用が発生する。また、施行日以降に新設される専修学校については、改正後の規定に基づき設置することが必要となる。

(3)
 専門課程を置く専修学校には、大学等と同等の自己点検評価が義務付けられることにより、評価項目を拡充し、組織及び運営並びに施設及び設備についても広く自己評価を行うことが求められる。これにより、各専修学校では、追加の書類作成等が必要となり、一定の事務負担が生じる。

 行政費用

 所轄庁である都道府県には、既存の各専修学校からの届出を受領するための費用が発生する。また、施行日以降に新設される専修学校については、改正後の規定による設置認可を行うための費用が発生する(ただし、改正前に発生していた設置認可を行うための費用と同等)。

 直接的な効果(便益)

 単位制の導入により、大学との単位互換や、専修学校専門課程から大学に編入学した学生について大学の卒業要件となる単位を計算する際の学修成果の換算が容易となり、大学と専修学校専門課程との間での学生の移動が円滑化されることが想定される。
 また、専修学校専門課程の入学資格の見直しにより、専修学校専門課程の高等教育段階の教育機関としての位置づけが明確化され、国家資格の取得を目指す者等が進学先を選ぶ上での専修学校専門課程の魅力向上につながることが考えられる。
 さらに、大学と同等の項目での自己点検評価を義務付けることにより、専門課程を置く専修学校の情報公開の充実や教育の質の向上が期待される。

 副次的な影響及び波及的な影響

 これまでは、3年制以上の専修学校高等課程を修了した者については全て専修学校専門課程への入学が認められていたが、今般の改正により、大学への入学資格と同様、一定の要件を満たす専修学校高等課程を修了した者に限られることとなる。
 他方、3年制以上の専修学校高等課程については、多くの専修学校では既に大学入学資格を得られることとなっている。
 このため、従来であれば専修学校専門課程の入学資格を得られていたが今回の改正に伴い得られなくなる高等課程を置く専修学校の数は3校とかなり限られており、実態として、そうした専修学校高等課程に通っている生徒のうち、影響を受ける生徒はいないと考えている。
 その上で、過去に3年制の専修学校高等課程を修了した者や、現在既に専修学校高等課程に入学している生徒については経過措置を設けて専修学校専門課程に入学できるようにする予定であり、制度の変更によって不利益を被る生徒が出ないように対応する予定である。

 費用と効果(便益)の関係

 費用としては、既存の専門課程を置く専修学校は、学則を変更し、所轄庁である都道府県に届出を行う必要があるほか、自己点検評価の項目を拡充することとなり、追加の書類作成等が必要となる。また、施行日以降に新設される専修学校については、改正後の規定に基づき設置することが必要となる(ただし、改正前に発生していた設置認可を行うための費用と同等)。
 便益としては、専門課程の生徒の大学への移行の円滑化、専門課程の魅力及び質の向上といったことが考えられる。
 規制の新設となる自己点検評価の拡充については、現行の学校評価ガイドラインに基づき、既に充実した評価を実施している専修学校も少なくないところである。
 また、規制の変更及び新設に要するコストを最小化するため、専修学校の学則変更に係る事務や都道府県の学則変更の届出の受領に関する事務について余裕を持って行うことができるよう、法律の成立から施行まで1年半程度の期間を設け、施行期日を令和8年4月1日とすることとしている。
 
 以上を踏まえると、便益が費用を上回ることが考えられ、当該規制を導入することは妥当である。

 代替案との比較

 専修学校となるために最低限必要な学習時間に関する基準の見直しについては、当該基準が法律に定められた規制である以上、この内容を変更し、「単位数」によっても定められるようにするためには、法律改正により規制の内容を変更するほかない。
 専修学校専門課程の入学資格の見直しについては、ガイドラインによる自発的な取組を促す働きかけ等も考えられるところである。しかしながら、専修学校専門課程が高等教育段階の職業教育機関であることの位置づけが制度上明確でないことが課題となっており、各専修学校における任意の対応では、対応にばらつきが生じることから、当該課題の十分な解決につながらず、それによって目指そうとする専修学校専門課程の在学者・卒業者の大学への移行の円滑化等が十分に実現されない恐れがある。
 規制の新設となる大学並みの自己点検評価の義務付けについては、代替案として、規制の対象範囲を狭め、生徒数が200人以上の専修学校など、一部の学校のみを対象とすることも考えられるが、入学資格の見直し、単位制の採用といった措置は全ての専門課程を置く専修学校に適用されるものであり、大学等の教育との質の同等性を確保するためには、全ての専門課程を置く専修学校が大学並びの自己点検評価を行うことが不可欠である。
 
 このため、専修学校となるために最低限必要な学習時間に関する基準の見直し、専修学校専門課程の入学資格の見直し、専修学校における自己評価制度の見直しを行うことが適当と判断した。このため、全ての専門課程を置く専修学校に大学等と同等の自己点検評価を義務付けることが適当と判断した。

 その他の関連事項

 該当なし。

 事後評価の実施時期等

 施行から5年後(令和13年予定)を目途に事後評価を実施する。

 

お問合せ先

総合教育政策局生涯学習推進課専修学校教育振興室

(総合教育政策局生涯学習推進課専修学校教育振興室)