法律又は政令の名称 |
日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律案 |
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規制の名称 |
日本語教育機関の認定制度の創設等 |
規制の区分 |
新設 |
担当部局 |
文化庁国語課 |
評価実施時期 |
令和5年2月 |
我が国には日本語の指導を行う教育機関が多数存在するものの、現行制度においては日本語教育の質の確保という観点からの十分な監督が行われていない状況にある。このため、日本語教育機関としての外形をもって留学生等を募集し、授業料を徴収しながら、例えば外国人に対して日本語の指導をするために必要な知識及び技能を十分に有しない者が指導を行っていたり、不十分な施設及び設備に多数の外国人を受け入れるなど課題があるものも存在する。
また、外国人が日本語を学ぶ教育機関を選択するに当たって、学習環境の整備状況等について、正確かつ必要な情報を得ることが難しい状況にある。さらに、企業における外国人材受入れのニーズは高いが、日本語教育の人手・ノウハウが不足しており、適切な日本語教育機関や教師の確保・充実が求められている。
このような課題は今後も引き続き継続すると考えられ、我が国において生活に必要な日本語を理解し使用する能力が十分でない外国人が、質が一定程度担保され、かつ自身の状況に合った適切な教育機関を選択することは困難となり、企業等における外国人受け入れに障害が生じることが考えられる。また、学ぶ意欲のある外国人が生活に必要な日本語能力を習得できず、社会的な疎外を招くこととなり、共生社会実現の阻害要因になり得る。
在留外国人に対する調査によれば、日本語能力が低い者ほど、生活環境全般の満足度について「どちらかといえば満足していない」や「満足していない」と回答する割合が高くなる傾向にあることや、日本語学習における困りごととして、「日本語教育を学べる場所・サービスに関する情報が少ない」、「自分のレベルに合った日本語教育が受けられない」といった、日本語教育へのアクセスに関する課題について多くの在留外国人が回答しており、(「在留外国人に対する基礎調査(令和3年度)報告書」(令和4年8月 出入国在留管理庁))新たな制度の導入により、在留外国人が抱えている困難を取り除くことが喫緊の課題である。
[課題及びその原因]
現在、外国人が、在留資格「留学」により、専修学校、各種学校又は、設備・編制に関して各種学校に準ずる教育機関において、専ら日本語の教育を受けようとする場合には、「当該教育機関が法務大臣が文部科学大臣の意見を聴いて告示をもって定める日本語教育機関であること。」が上陸のための条件とされている。
このため、出入国在留管理庁において日本語教育機関の告示基準(以下「告示基準」という。)を定め、設備及び編制に関して各種学校に準ずる教育機関であるかを確認しており、現在、当該告示基準を満たす教育機関(以下、「法務省告示機関」という。)として、833校(令和5年2月現在)が告示されている。
告示基準に基づき、地方出入国在留管理局は法務省告示機関に対し、基準への適合性その他運営状況について点検を行うよう求めることができるが、あくまで入管法の目的である在留の公正な管理を図るために行われているものであり、その観点も各種学校に準ずる設備及び編制を有するかどうかであって、そこで行われている日本語教育の質を確保するために必要な教育課程、教員の資格についてまで担保できるものではない。
このため、例えば、
・日本語教育機関としての外形をもって留学生等の生徒を募集し、授業料を徴収しながら、外国人に対して日本語の指導をするために必要な知識及び技能を十分に有しない者が指導を行っている場合
・募集要項に記載されている入学予定者の日本語能力レベルとカリキュラムの乖離が生じている場合
といった教育上の課題を有する日本語教育機関が生じている。
さらに、法務省の告示制度は、留学の在留資格で入国する外国人を受け入れる日本語教育機関のみが対象であり、就労目的の在留資格や家族や定住者などの在留資格で在留する外国人を専ら受け入れているような日本語教育機関は想定されていない。
このため、<1>のとおり、日本語に通じないために正確かつ必要な情報を得ることが難しく、自身の状況に合った適切な教育機関を選択できず、必要な日本語能力を身に付けることができないまま日本に在留する外国人が生じることとなる。
また、「日本語教育の推進に関する法律」(令和元年法律第48号)において、国内における日本語教師の資格に関する仕組みの整備その他の必要な施策を講じること、日本語教育機関における日本語教育の水準の維持向上のための評価制度等の在り方について検討を行うことが盛り込まれており、その後、「日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針」(令和2年閣議決定)において、「日本語教師の資質・能力を証明する新たな資格の制度設計を行い、必要な措置を講ずる」こととされた。本法律案は、これらの内容を踏まえて設けるものである。
[規制の内容]
日本語に通じない外国人が我が国において生活するために必要な日本語を理解し、使用する能力を習得させるための教育(以下「日本語教育」という。)の適正かつ確実な実施を図り、我が国に居住する外国人が日常生活及び社会生活を国民と共に円滑に営むことができる環境の整備に寄与するため、以下のとおり、日本語教育を行うことを目的とした課程を置く教育機関のうち一定の要件を満たすものを認定する制度を創設するとともに、当該認定を受けた日本語教育機関において日本語教育を行う者の資格を整備する。
(1)日本語教育機関の認定制度の創設
日本語教育を行うことを目的とする課程(以下「日本語教育課程」という。)を置く教育機関(以下「日本語教育機関」という。)の設置者は、申請により、日本語教育課程を適正かつ確実に実施することができる日本語教育機関である旨の文部科学大臣の認定を受けることができることとする。
なお、人的・物的体制を備えていないボランティアや家庭教師などの個人的な活動は対象にならず、一定の教育の体系性と修業期間を有する課程を置く機関が対象となる。
日本語教育機関の認定にあたっては、日本語教育課程を担当する教職員の体制、施設設備、日本語教育課程の編成及び実施の方法等の認定の基準を定め、いずれの基準にも適合しており、かつ、認定を取り消されてから一定期間が経過していないこと等の欠格事由に該当しないものを認定する。また、認定を受けた日本語教育機関(以下「認定日本語教育機関」という。)の設置者には、帳簿の備付け等、変更・廃止時の届出、日本語教育の実施状況に関する文部科学大臣への定期報告及び自己点検評価とその結果の公表、学習環境に関する情報公表の義務等が課される。また、文部科学大臣は認定日本語教育機関に対して報告徴収・勧告・命令を行うことができることとするとともに、認定日本語教育機関が義務に違反した場合等の認定の取消しに係る規定を設ける。
また、何人も、認定日本語教育機関ではないものについて、認定日本語教育機関という名称又はこれと紛らわしい名称を用いてはならないこととする。加えて、認定日本語教育機関の設置者以外の者は、何人も、生徒の募集のための広告等に文部科学大臣の定める表示又はこれと紛らわしい表示を付してはならないこととする。
さらに、認定日本語教育機関において日本語教育課程を担当する教員は、後述の登録を受けた者(以下「登録日本語教員」という。)でなければならないこととすることにより、認定日本語教育機関の教育の質を確保する。
なお、この認定制度は、日本語教育機関の設置者からの申請があった場合に、当該機関が一定の基準に適合することを文部科学大臣が確認するものであり、日本語教育機関の設置を許認可にかからしめるような強制的な仕組みではない。
(2)日本語教員の登録制度の創設
日本語教育を行うために必要な知識及び技能を有するかどうかを判定するために行う試験(以下「日本語教員試験」という。)に合格し、かつ、認定日本語教育機関において日本語教育を行うために必要な実践的な技術を習得するための研修(実践研修)を修了した者は、文部科学大臣の登録を受けることができることとする。
登録日本語教員は、登録事項に変更があったときは、その旨を文部科学大臣に届け出なければならないこととするほか、登録に当たっての欠格事由を整備する。登録を取り消された場合には、登録証を速やかに文部科学大臣に返納しなければならないこととする。
(3)日本語教員試験の実施に係る指定制の採用
文部科学大臣は、全国で一つの指定する試験機関(以下「指定試験機関」という。)に日本語教員試験に関する事務を行わせることができることとする。
試験機関の指定に当たっては、指定を受けようとする者が試験事務の適正かつ確実な実施が可能であることや、営利事業そのものを目的とする法人ではない一般社団法人又は一般財団法人のいずれかであること等の指定の基準を定め、いずれの基準にも適合しており、かつ、指定を取り消されてから一定期間が経過していないこと等の欠格事由に該当しないものの申請により指定する。
なお、文部科学大臣の事務の代行機関となり一つの機関のみを指定する指定試験機関については、より大臣の裁量の範囲を広げる必要があることから、その指定にあたって、必要最低限の条件及び変更を加えることができることとする。
(4)日本語教員の研修及び養成課程の実施に係る登録制の採用
文部科学大臣は、その申請に基づき、所定の科目の研修を行うこと等の要件を満たし、登録を受けた者(以下「登録実践研修機関」という。)に実践研修に関する事務を行わせることができることとする。
また、所定の科目の学習を行うこと等の要件を満たし、文部科学大臣の登録を受けた者が実施する養成課程を修了した者については、その申請により日本語教員試験の一部を免除することとする。また、登録を受けた日本語教員養成機関(以下「登録日本語教員養成機関」という。)は、養成業務の開始前に養成業務規程を定め、文部科学大臣へ届け出ることとする。さらに、養成業務の実施の状況に関する文部科学大臣への定期的な報告、財務諸表等の作成、帳簿の備付け、変更時の届出、役員の選解任の届出等を義務付けるとともに、養成業務の休廃止は文部科学大臣への届出制とする。また、文部科学大臣による立入検査等・命令・登録の取消し等を可能とする。さらに、財務諸表等を作成していないときや、その閲覧等の請求を正当な理由なく拒んだときは、その違反行為をした者は、二十万円以下の過料に処することとする。
[規制以外の政策手段の検討]
(1)・(2)
日本語教育機関における教育の質の確保については、上述の通り、既に国の制度として強制力のある告示基準が設けられているものの、告示基準では日本語教育の質の確保を担保できるものではなく、継続的な監督措置が定められていない。そのため、これらの課題に対応した新たな規制を設けることは妥当である。
また、法制度に基づかない認証制度を導入することも考えられるが、その場合、認証を受けた機関の名称独占や広告等の表示の保護について法令上担保することができず、認証を受けたと偽る機関が現れた場合でも、それを是正することができず、課題が解消されないことが考えられる。
(3)・(4)
日本語教員の日本語教育に係る試験や講習を行う民間団体や大学等が存在することから、当該試験の合格や講習の修了をもって、日本語教員の登録を行うことも考えられる。しかしながら、現状では試験及び講習の内容、基準等にばらつきがあり、日本語教育を行うための知識・技能等を担保できないことから、規制を設けることは妥当である。
[遵守費用]
主に以下のような費用が発生すると考えられる。
(1)日本語教育機関の認定制度の創設
認定を受けようとする日本語教育機関において、文部科学大臣への認定の申請に係る費用が発生する。また、認定日本語教育機関において、文部科学大臣への定期報告や変更の届出等の義務を履行する費用が発生する。
日本語教育を行っている教育機関を網羅するデータは存在しないが、例えば法務省告示機関は833機関あり、このほか、地方公共団体が住民向けに設置している日本語教育機関や、大学等の正規の課程外で設置されている課程のように入管法で指定されていないもの(大学の留学生別科)も存在する。このため、全体の数は正確には把握できないが、施設設備や教員の体制といった要件が整った日本語教育機関を認定の対象とすることに鑑みると、これらを中心とした教育機関が中心的な対象となると想定され、こうした機関において必要となる費用は以下の通り概算される。
※平均給与額(年間)÷年間総労働時間(事業所規模30人以上)=申請者の時給
4,433,000円÷1,685時間=約2,630円
(平均給与額については、国税庁「民間給与実態統計調査」(令和3年)、年間総労働時間については、厚生労働省「労働統計要覧」(令和3年度)による。)
※認定の申請数については、法務省告示機関数や大学留学生別科等を参考に、900と仮定
あくまで仮定となるが、例えば認定に係る申請書類の作成に要する時間を1機関あたり5営業日(40時間)と仮定すると、以下の通り概算される。
約2,630円×40時間×900件=約94,680,000円
(2)日本語教員の登録制度の創設
登録を受けようとする者において、日本語教員試験の受験及び実践研修の受講に係る費用、並びに国に納付する手数料が、登録日本語教員において、氏名等に変更があった場合の文部科学大臣への届出等に係る費用が発生する。これらの受験料は、政令で定めることとしているため、現段階において試算は困難である。
(3)日本語教員試験の実施に係る指定制の採用
指定を受けようとする者において、指定の申請に係る費用が発生する。また、指定試験機関において、日本語教員試験の実施及び事業計画の作成等に係る費用が発生する。
あくまで仮定となるが、例えば指定に係る申請書類の作成に要する時間を5営業日(40時間)と仮定すると、以下の通り概算される。
約2,630円×40時間=約105,200円
(4)日本語教員の研修及び養成課程の実施に係る登録制の採用
登録を受けようとする機関においては、登録の申請に係る費用、登録を受けた研修機関(以下「登録実践研修機関という。」及び登録を受けた養成機関(以下「登録日本語教員養成機関という。」において、実践研修又は養成課程の実施に係る費用、文部科学大臣への定期報告等の義務の履行に係る費用等が発生する。
実践研修及び養成課程の実施内容については、今後の検討によるため概算が困難であるが、例えば登録に係る申請書類の作成に要する時間を1機関あたり3営業日(24時間)と仮定すると、以下の通り概算される。
約2,630円×24時間=約63,120円
[行政費用]
主に以下のような費用が発生すると考えられる。
(1)日本語教育機関の認定制度の創設
認定日本語教育機関の認定の審査の実施等に係る費用。また、認定日本語教育機関から提出される定期報告書の確認などの必要な監督を行うための費用。
審査の具体的な内容を定める文部科学省令が定まっていないことなどから、あくまで仮定となるが、例えば申請書類の確認に要する時間を1校当たり2時間と仮定すると、以下のように概算される。
約900校×2時間×234,400円/160時間=約2,637,000円
※給与は国家公務員行政職俸給表より、係長級として3級1号俸(234,400円)を使用し、8時間×5日×4週間=160時間を除して算出。
(2)日本語教員の登録制度の創設
登録日本語教員の登録の審査の実施、登録証の交付及び日本語教員登録簿の維持管理等に係る費用。審査の具体的な内容を定める文部科学省令が定まっていないことなどから、あくまで仮定となるが、例えば登録内容の確認に1人当たり15分要すると仮定すると、以下のように概算される。
約13,000人(法務省告示校の教員数の概算)×234,400円/160/4=約4,761,250円
約10,000人(日本語教育能力検定試験の受験者数)×234,400円/160/4=約3,662,500円/年
(3)日本語教員試験の実施に係る指定制の採用
指定試験機関が行う試験事務が満たすべき基準の策定や、指定の審査の実施等に係る費用。また、指定試験機関から提出される試験事務の実施に関する規程等の審査等の必要な監督を行うための費用。試験事務業務のデジタル化を図るためのシステム導入に要する費用。試行試験の実施に要する費用。
例えば、試験事務業務のデジタル化を図るためのシステム導入及び試行試験の実施に向けては、令和5年度予算(案)として160,000,000円を計上している。
(4)日本語教員の研修及び養成課程の実施に係る登録制の採用
登録実践研修機関及び登録日本語教員養成機関の登録の審査等に係る費用。また、登録実践研修機関及び登録日本語教員養成機関から提出される定期報告書等の確認などの必要な監督を行うための費用。
審査の具体的な内容を定める文部科学省令が定まっていないことなどから、あくまで仮定となるが、仮に登録実践研修機関に係る申請数が250、申請書類の確認に1校当たり1時間要すると仮定すると以下のように概算される。
約250校×1時間×234,400円/160時間=約366,250円
※給与は国家公務員行政職俸給表より、係長級として3級1号俸(234,400円)を使用し、8時間×5日×4週間=160時間を除して算出。
(規制の新設のため該当せず)
(1)日本語教育機関の認定制度の創設
日本語教育機関の認定制度の創設後、認定を受けた日本語教育機関の情報を公表することにより、日本語教育を受けることを希望する外国人が、認定を受けた日本語教育機関のリストの中から学ぶ場所を選択することができることとなる。これにより、学習者が日本語教育を受けたり、企業等が外国人従業員に対し日本語教育を受けさせたりするに当たって、質が一定程度担保され、かつ自身の状況に合った適切な教育機関を選択することが可能となる。
(2)日本語教員の登録制度の創設
日本語教員の登録制度の創設により、試験に合格し、かつ、所定の研修を修了した者のみに資格を付与することとなり、有資格者の提供する業務の質の担保が可能となり、認定日本語教育機関における日本語教育の適正かつ確実な実施が図られることとなる。
(3)日本語教員試験の実施に係る指定制の採用
日本語教員試験の実施に係る指定制の採用により、日本語教員試験について、全国で一つの指定する機関に試験事務を行わせることができるため、日本語教員試験の全国的な水準の確保と公正性の担保が可能となる。
(4)日本語教員の研修及び養成課程の実施に係る登録制の採用
実践研修及び養成課程の実施に係る登録制の採用により、実践研修及び養成課程において、所定の科目の学習が一定の時間数について確実に行われる体制が担保される。また、現在、日本語教師等の養成・研修を実施している機関・施設は約250あり、すでに民間のノウハウが蓄積されているところ、登録制の採用により、広く民間の知見を活用することが可能となる。
日本語教育の適正かつ確実な実施を図り、我が国に居住する外国人が日常生活及び社会生活を国民と共に円滑に営むことができる環境が整備されるものであるが、それによる便益の規模に関しては予測が困難であるため、金銭価値化は困難である。
(規制の新設のため該当せず)
(1)日本語教育機関の認定制度の創設
我が国に居住する外国人が生活に必要な日本語能力を習得できる環境が整備されることにより、外国人の生活全般の満足度が向上することが見込まれるとともに、日常生活及び社会生活を円滑に営むことが可能となる。また、我が国に居住する外国人が生活に必要な日本語能力を習得することで、社会活動、経済活動が外国人と共に円滑に営まれることにつながる。これにより、外国人を我が国の社会に包摂し、共生社会を実現することにつながる。さらに、認定日本語教育機関で実施される教育活動等の情報を広く公表することにより、地域住民にもその活動に理解が得られるようになることも期待される。
(2)日本語教員の登録制度の創設~(4)日本語教員の研修及び養成課程の実施に係る登録制の採用
国家資格化による日本語教師の必要性、重要性の社会的認知により、これに就こうとする者の増加が期待できるとともに、国が一定以上の知識及び技能を有する者であることを証することにより、日本語教育機関における登録日本語教員の待遇の改善にもつながり得ることから、日本語教育を行う人材の更なる確保が期待できる。
本制度の導入により、2のとおり遵守費用及び行政費用が発生するものである。一方で、現在、日本語学校という外形を有して生徒募集をしながら、実際には不十分な教育しか行われていないような機関が存在しており、日本語教育の質の確保が十分になされていない。
このような状況において、(1)~(4)の仕組みは、
・学習を希望する者や、外国人材の受入れを希望する企業に対し、適切な日本語教育機関を選択できる機会を提供できる
・認定日本語教育機関の情報が多言語で発信されることにより、国内外に向けた情報提供が可能となり、一定の質を確保した機関が外部から選択されやすくなる
ものであり、日本語教育の適正かつ確実な実施を図り、我が国に居住する外国人が日常生活及び社会生活を国民と共に円滑に営むことができる環境の整備に寄与するものである。
これらの便益は、遵守費用及び行政費用をはるかに上回ると考えられる。
(1)日本語教育機関の認定制度の創設、(2)日本語教員の登録制度の創設について
これらの対象として、日本語教育を行うことを目的とする課程を置く教育機関に限らず、ボランティアや家庭教師などを対象に含めることも考えられる。しかし、ある程度の期間にわたって体系的な教育が行われ日本語能力について一定の習得レベルを身に付ける場合には学習者に相応の負担があるものであるからこそ、法律によってその適正かつ確実な実施を図り、学習者を保護する必要性が生じてくるものであるため、日本語教育を行うことを目的とし一定の体系性と修業期間を有する課程を置く教育機関を対象とすることが妥当である。
(3)日本語教員試験の実施に係る指定制の採用 について
一般社団法人又は一般財団法人以外の者であることを欠格要件から外すことも考えられるが、一定のガバナンスが法律上確保されていることを担保するとともに、営利事業そのものを目的とする法人ではないことを求めるため、一般社団法人又は一般財団法人以外の者であることを欠格要件とすることは妥当である。
(4)日本語教員の研修及び養成課程の実施に係る登録制の採用について
登録機関に対して文部科学大臣への定期報告を義務付けているところ、これらを求めないことも考えられるが、文部科学大臣が定期的に登録機関の活動を把握し、指導・助言の端緒とすることで登録機関の事務の適正性を担保する必要があることから、定期報告を義務付けることは妥当である。
なし。
当該規制については、日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律案附則第5条において法施行後5年経過時に見直す旨が規定されているため、施行から5年後の令和11年(予定)に事後評価を実施する。
(1)日本語教育機関の認定制度の創設
・日本語教育機関の認定件数
・認定日本語教育機関における生徒の在籍数
・認定日本語教育機関の修了者数
(2)日本語教員の登録制度の創設
・登録日本語教員の数
・登録日本語教員のうち認定日本語教育機関において日本語教育課程を担っている者の数
(3)日本語教員試験の実施に係る指定制の採用
・日本語教員試験の受験者数
・日本語教員試験の合格者のうち、登録日本語教員として登録された者の数
(4)日本語教員の研修及び養成課程の実施に係る登録制の採用
・登録実践研修機関の登録の申請件数
・登録日本語教員養成機関の登録の申請件数
以上
法律又は政令の名称 |
日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律案 |
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---|---|---|
規制の名称 |
日本語教育機関の認定制度の創設等 |
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規制の区分 |
新設 |
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担当部局 |
文化庁国語課 |
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評価実施時期 |
令和5年2月 |
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規制の目的、内容及び必要性 |
日本語に通じない外国人が我が国において生活するために必要な日本語を理解し、使用する能力を習得させるための教育(以下「日本語教育」という。)を行う機関は我が国に多数存在するものの、現在の仕組みの下では、日本語教育の質の確保という観点からの十分な監督が行われていない状況にある。具体的には、日本語学校という外形を有して生徒募集をしながら、例えば外国人に対して日本語の指導をするために必要な知識及び技能を十分に有しない者が指導を行っていたり、不十分な施設及び設備に多数の外国人を受け入れていたりするような機関も存在している。 |
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直接的な費用 |
遵守費用 |
主に以下のような費用が生じると考えられる。 |
行政費用 |
(1)・(3)・(4) |
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直接的な効果(便益) |
(1)日本語教育を適正かつ確実に実施することができる機関であることを認定により明らかにし、認定を受けた日本語教育機関の情報を公表することにより、質が一定程度担保され、かつ学習者等の状況に合った適切な日本語教育機関を選択することが可能となる。 |
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副次的な影響及び波及的な影響 |
(1)外国人の生活全般の満足度が向上することや、外国人を我が国の社会に包摂し、共生社会を実現することにつながる。 |
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費用と効果(便益)の係 |
本制度の導入により、上記の遵守費用及び行政費用が発生するものである。一方で、現行の仕組みでは、日本語教育の質の確保が十分になされていないところ、本制度の導入は日本語教育の適正かつ確実な実施を図り、我が国に居住する外国人が日常生活及び社会生活を国民と共に円滑に営むことができる環境の整備に寄与するものであり、効果が費用をはるかに上回ると考えられる。 |
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代替案との比較 |
(1)・(2) |
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その他の関連事項 |
特になし。 |
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事後評価の実施時期等 |
施行から5年後(令和11年予定)に事後評価を実施する。 |
文化庁国語課