学校法人の理事、監事、評議員及び会計監査人の選任及び解任の手続等に関する規定等の整備

 法律又は政令の名称

 私立学校法の一部を改正する法律案

 規制の名称

 学校法人の理事、監事、評議員及び会計監査人の選任及び解任の手続等に関する規定等の整備

 規制の区分

 新設、改正(拡充)

 担当部局

 高等教育局私学部私学行政課

 評価実施時期

 令和5年2月

 

1 規制の目的、内容及び必要性 

(1) 規制を実施しない場合の将来予測(ベースライン)

 私立学校法(昭和24年法律第270号。以下「私学法」という。)に定めるところにより設立される学校法人は、私人の寄附財産等によって自発的に設立された法人として自主性を有する一方、その設置する学校が公の性質を有することに由来する公共性をも有している。
 学校法人のガバナンスについては、これまで、累次の制度改正により、時代の要請に合わせた強化が図られてきたが、国会附帯決議や閣議決定(※)により、不祥事防止のより実効性ある措置など、更なる学校法人制度改革の検討が強く要請されている。
 また、「学校法人制度改革の具体的方策について」(令和4年3月29日 大学設置・学校法人審議会学校法人分科会学校法人制度改革特別委員会)においては、学校法人固有の文脈を考慮しつつ、これまで各法人に委ねられていたガバナンスの基本構造を法的規律において明確にしておくべきであることが示されている。
以上を踏まえ、我が国の公教育を支える私立学校を設置する学校法人において、一部の理事や理事長による逸脱した業務執行等の不適切な法人運営を未然に防ぎ、社会の信頼を得て、一層発展していくため、学校法人の管理運営制度の抜本的な改善を図ることとする。具体的には、これまで各学校法人の寄附行為にその多くを委ねていた理事・監事・評議員・会計監査人の選解任の手続等に係る規定を整備するとともに、理事会及び評議員会の権限を整理し、その招集方法や議事録の作成・備置き等の運営等に関する規定を明確に定めることとするほか、これまで私学法に定めのなかった「会計」に関する規定を整備し、計算書類等の作成・備置きやその監査等について新たに定めることとする。
 今般の改正が行われなかった場合には、理事長及び理事・理事会に対するけん制機能が十分に発揮されず、理事長の独断的な法人運営等の不適切な運営があった場合の是正が図られないことが考えられる。また、今般の改正は、各学校法人の自律的なガバナンスの発揮を促すために、これまで法的規律では明確になっておらず、各法人の寄附行為に委ねていた事項につき最低限の規律を設けるものであるところ、改正が行われなかった場合には、自浄作用が十分に作用せず、逸脱した業務執行や不適切な法人運営を未然に防ぐことが困難となる。さらに、学校法人のガバナンスが十分に強化されないことにより、予算や事業計画等についての学校法人の意思決定が適正に行われないなど円滑な法人運営がなされず、その設置する学校における教育活動及び研究活動に支障が生じ、質が低下する等、私立学校の健全な発達が十分に図られないおそれがある。
 
(※)国会附帯決議や関連する閣議決定
○学校教育法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(抄)(令和元年5月16日参議院文教科学委員会)※衆議院もほぼ同内容
七 学校法人における監査の実効性や客観性を高めるため、理事長・理事と親族関係にある者の監事への就任を禁止するなど、監事として適切な人材の在り方について検討し、必要な措置を講ずること。
八 学校法人における監事については、理事長・理事に対する第三者性・中立性を確保し、監事の牽制機能が十分に発揮されるよう、その選任の透明性・公平性を担保する必要な措置を講ずること。
九 学校法人における自律的なガバナンスの改善に資する仕組みを構築するため、理事長の解職に関する規定の追加を検討するなど、社会の変化を踏まえた学校法人制度の在り方について不断の見直しに努めること。また、学校法人の不祥事や不正等が繰り返されることのないよう、これらに対する告発が隠蔽されずに適切に聞き入れられる仕組みの構築等、より実効性のある措置について速やかに検討すること。

○経済財政運営と改革の基本方針2022(令和4年6月7日閣議決定)(抄)
第4章 中長期の経済財政運営
5. 経済社会の活力を支える教育・研究活動の推進
  学校法人について、沿革や多様性に配慮しつつ、社会の要請に応え得る、実効性あるガバナンス改革の法案を、秋以降速やかに国会に提出する。
 
○経済財政運営と改革の基本方針2021(令和3年6月18日閣議決定)(抄)
第3章 感染症で顕在化した課題等を克服する経済・財政一体改革
4.デジタル化等に対応する文教・科学技術の改革
手厚い税制優遇を受ける公益法人としての学校法人に相応しいガバナンスの抜本改革(注)につき、年内に結論を得、法制化を行う。
(注)「経済財政運営と改革の基本方針 2019」(令和元年6月 21 日閣議決定)等を踏まえた社会福祉法人や公益法人と同等のガバナンス機能を発揮するためのガバナンス改革。
 
○経済財政運営と改革の基本方針2019(令和元年6月21日閣議決定)(抄)
第3章 経済再生と財政健全化の好循環
2.経済・財政一体改革の推進等
(1)次世代型行政サービスを通じた効率と質の高い行財政改革
<3>EBPMをはじめとする行政改革の推進
新公益法人制度の発足から10年が経過したことから、公益法人の活動の状況等を踏まえ、公益法人のガバナンスの更なる強化等について必要な検討を行う。公益法人としての学校法人制度についても、社会福祉法人制度改革や公益社団・財団法人制度の改革を十分踏まえ、同等のガバナンス機能が発揮できる制度改正のため、速やかに検討を行う。
 
○教育未来創造会議「我が国の未来をけん引する大学等と社会の在り方について(第一次提言)」(令和4年5月10日)(抄)
Ⅲ.具体的方策
1.未来を支える人材を育む大学等の機能強化
(6)大学法人のガバナンス強化
<具体的取組>
<1>社会のニーズを踏まえた大学法人運営の規律強化
・学校法人における理事・理事会、監事及び評議員・評議員会の建設的な協働・ 相互牽制を確立すべく、意思決定権限についての理事会と評議員会の権限分配の見直しや、理事と評議員の兼職禁止を図るとともに、外部理事の数の引き上げや会計監査人による会計監査の制度化を行うなど、学校法人の沿革や多様性にも配慮しつつ、かつ、社会の要請にも応え得る、実効性ある改革を実施する。

 

(2) 課題、課題発生の原因、課題解決手段の検討(新設にあっては、非規制手段との比較により規制手段を選択することの妥当性)

[課題及びその原因]
 学校法人のガバナンスについては、一部の理事や理事長による逸脱した業務執行等の不適切な法人運営を未然に防ぎ、自律的なガバナンスを発揮するための理事長及び理事・理事会に対するけん制機能の強化が課題となっている。現行の私学法においては、特に、理事・監事・評議員の資格及び選解任、理事会及び評議員会の運営等に関する規定や会計及び計算書類等に関してほとんど規定が置かれていないため、これらの規定を整備することで、学校法人が自らその運営の透明性を高め、公益性の高い法人として適切に説明責任を果たしていくことが急務である。
 
[規制以外の政策手段の検討]
 学校法人のガバナンスを強化するにあたっては、私立学校関係団体において作成しているガバナンス・コードの改訂等を促すことによる自発的な行動改善に向けた働きかけや、学校法人に対する強制に当たらない行政指導等の方法、強行規定ではなく任意規定を設けることによる対応も、私学法の改正を代替し、又は補完する政策手段として想定されるところである。しかし、現行法制度下における理事長の独断的な法人運営等による不祥事の発生等に鑑みると、法律上の義務を課さなければ、学校法人によって対応にばらつきが生じるなど、その適切かつ確実な実行が担保されず、結果としてガバナンスが強化されないことが考えられる。さらに、学校教育法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(平成31年4月10日衆議院文部科学委員会)において、「学校法人の不祥事が繰り返されることのないよう、より実効性のある措置について速やかに検討すること」とされている。以上を踏まえ、学校法人のガバナンスの改善の実効性を担保するためには、強制力を有する「規制」を政策手段として選択する必要があると考える。
 
[規制の内容]<概要>
「執行と監視・監督の役割の明確化・分離」の考え方から、理事・理事会、監事及び評議員・評議員会の権限分配を整理。私立学校の特性に応じた形での各機関の「建設的な協働と相互けん制」の確立を目指す。
具体的には、これまで各学校法人の寄附行為にその多くを委ねていた理事・監事・評議員・会計監査人の選解任の手続等に係る規定を整備するとともに、理事会及び評議員会の権限を整理し、その招集方法や議事録の作成・備置き等の運営等に関する規定を明確に定めることとするほか、これまで私学法に定めのなかった「会計」に関する規定を整備し、計算書類等の作成・備置きやその監査等について新たに定めることとする。
 
詳細は以下の通り。
 
1.理事会及び理事について
(1)理事の資格
○ 現行の私学法第38条第8項第1号及び第2号に掲げる者のほか、以下<1>~<3>に掲げる者は、理事となることができないこととするなど、理事の欠格要件を定める。
 <1> 法人
 <2> この法律の規定に違反し、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
 <3> 所轄庁の解散命令があった場合において、その解散の日前30日以内に当該学校法人の役員(理事及び監事をいう。以下同じ。)であった者で解散の日から2年を経過しないもの
○ 理事は、監事又は評議員を兼ねることができないこととする。
○ 理事・評議員近親者等である理事の数や割合に一定の上限を設けるとともに、理事近親者等の監事への就任を禁止する。

(2)理事の選任及び解任
○ 理事は、寄附行為の定めるところにより、理事選任機関において選任することとする。理事選任機関は、理事を選任するときは、あらかじめ、評議員会の意見を聴かなければならないこととする。
○ 理事の任期の上限を定め、理事の任期が監事及び評議員の任期を超えてはならないこととする。あわせて、理事に欠員が生じたときの規定を整備する。
○ 理事の解任事由を定め、当該事由のいずれかに該当するときは、寄附行為をもって定めるところにより、理事選任機関において、当該理事を解任することができることとする。また、評議員は理事選任機関が機能しない場合に、理事の解任を請求する訴えを提起できることとし、具体的な手続きを定める。
 
(3)理事会及び理事の職務、理事会の運営等
○ 業務に関する重要な決定は理事会で行い、理事に委任できないことを明確化する。
○ 業務執行を行う理事等についての規定を整理するとともに、業務執行を担う理事に理事会に対する職務執行状況の報告を義務付ける。
○ 理事会の招集等に係る規定を整備する。
○ 理事会の議事録の作成を義務付け、作成した議事録については、理事会の日から10年間、学校法人の主たる事務所に備え置かなければならないこととする。また、議事録については、電磁的記録で作成することも可能としたうえで、債権者による閲覧・謄写請求に係る規定についても整備し、当該請求があったときにはその請求に応じなければならないこととする。
 
2.監事について
(1)監事の資格
○ 監事について、評議員、職員、子法人役員(監事若しくは監査役又はこれらに準ずる者を除く。)、子法人に使用される者との兼職を禁止する。また、監事近親者の監事への就任を禁止するほか、評議員近親者等の監事就任を制限する。さらに、監事の欠格要件を定めることとする。
 
(2)監事の選任及び解任
○ 監事は、寄附行為をもって定めるところにより、評議員会において選任することとする。
○ 監事の任期の上限を定めることとする。
○ 監事の解任事由を定め、当該事由のいずれかに該当するときは、評議員会において、当該監事を解任することができることとする。また、評議員は評議員会が機能しない場合に、監事の解任を請求する訴えを提起できることとし、具体的な手続きを定める。
 
(3)監事の職務等
○ 監事は、理事、職員及び学校法人の子法人に対して事業の報告を求め、業務及び財産の状況の調査をすることができることとする。
○ 監事は、理事が評議員会に提出しようとする議案の調査を義務付けるとともに、評議員会に出席し意見を述べなければならないこととする。
○ 監事は、現行法の第37条第3項第5号に規定するときに加え、不正の行為がなされ、又は法令若しくは寄附行為の重大な違反が生ずるおそれがあると認めるときは、遅滞なく、その旨を所轄庁、理事会及び評議員会等に報告しなければならないこととする。

3.評議員会及び評議員について
(1)評議員の資格
○ 評議員の選任は、評議員の年齢、性別、職業等に著しい偏りが生じないように配慮して行わなければならないこととし、教職員や役員・評議員近親者等について、評議員の総数に占める数や割合に一定の上限を設けることとする。また、評議員の欠格要件を定めることとする。
 
(2)評議員の選任及び解任
○ 評議員は、寄附行為をもって定めるところにより選任及び解任を行うことを明確に規定するとともに、学校法人と評議員との関係は、委任に関する規定に従うこととする。
○ 評議員の任期の上限を定めることとする。あわせて、評議員に欠員が生じたときの規定を整備する。
 
(3)評議員会及び評議員の職務、評議員会の運営等
○ 評議員会は、その決議によって、監事に対し、理事の行為の差止請求や責任追及の訴えの提起を求めることができることとする。また、評議員は監事が機能しない場合に、理事の行為の差止を請求する訴えを提起できることとし、具体的な手続きを定める。
○ 評議員による寄附行為等の閲覧・謄写請求に係る規定について整備し、当該請求があったときにはその請求に応じなければならないこととする。
○ 評議員会の招集等に係る規定を整備する。
○ 評議員会の議事録の作成を義務付け、作成した議事録については、評議員会の日から10年間、学校法人の主たる事務所に備え置かなければならないこととする。また、議事録については、電磁的記録で作成することも可能としたうえで、債権者による閲覧・謄写請求に係る規定についても整備し、当該請求があったときにはその請求に応じなければならないこととする。
 
4.会計監査人について
(1)会計監査人の資格
○ 学校法人において、任意に会計監査人を置くことができることとする。
○ 会計監査人は、公認会計士又は監査法人でなければならないこととするほか、欠格事由等を定めることとする。
 
(2)会計監査人の選任及び解任
○ 会計監査人は、評議員会において選任することとする。
○ 会計監査人の任期は選任後1年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時までとする。あわせて、会計監査人に欠員が生じたときの規定を整備する。
○ 会計監査人の解任事由を定め、当該事由のいずれかに該当するときは、評議員会において当該会計監査人を解任することができることとする。また、監事による会計監査人の解任も認めることとする。
 
(3)会計監査人の職務等
○ 会計監査人は、計算書類(貸借対照表及び収支計算書をいう。以下同じ。)及びその附属明細書並びに財産目録その他の文部科学省令で定める書類を監査したうえで、会計監査報告を作成し、監事及び理事会に提出しなければならないこととする等、会計監査人の職務権限に関する規定を整備する。
○ 会計監査人は、理事、職員及び学校法人の子法人に対して会計に関する報告を求め、業務及び財産の状況の調査をすることができることとする。
○ 会計監査人による会計帳簿又はこれに関する書類の閲覧・謄写請求に係る規定を整備し、当該請求があったときにはその請求に応じなければならないこととする。
○ 会計監査人は、その職務を行うに際して理事の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは寄附行為に違反する重大な事実があることを発見したときは、遅滞なく、これを監事に報告しなければならないこととする。
○ 定時評議員会において会計監査人の出席を求める決議があったときは、会計監査人は、定時評議員会に出席して意見を述べなければならないこととする。
○ 理事は、会計監査人又は一時会計監査人の職務を行うべき者の報酬等を定める場合には、監事の過半数の同意を得なければならないこととする。
 
5.評議員又は会計監査人の損害賠償責任等について
○ 評議員及び会計監査人についても、役員同様にその任務を怠ったときは、学校法人に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負うこととするとともに、その職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負うこととする。加えて、責任免除等に係る必要な規定を整備する。
 
6.会計及び計算書類等について
(計算書類等の作成等について)
○ 学校法人は、文部科学省令で定める基準に従い、会計処理を行わなければならないこととし、会計帳簿や計算書類等(計算書類及び事業報告書並びにこれらの附属明細書をいう。以下同じ。)を作成しなければならないこととする。
○ 計算書類等は、文部科学省令で定めるところにより、監事の監査を受けなければならないこととする。会計監査人を設置する学校法人(以下「会計監査人設置学校法人」という。)においては、計算書類及びその附属明細書については、監事の監査のほか、会計監査人の監査を受けなければならないこととする。
○ 理事は、監査を受けた計算書類等について理事会の決議による承認を受け、計算書類及び事業報告書の内容について評議員会の意見を求めなければならないこととし、具体的な手続きについても新たに規定することとする。
 
(計算書類等の備置き及び閲覧等について)
○ 学校法人は、会計帳簿の閉鎖の時から10年間、会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならないこととする。
○ 学校法人は、計算書類等及び監査報告(会計監査人設置学校法人においては会計監査報告を含む。以下同じ。)を、定時評議員会の日の1週間前の日から5年間、その主たる事務所に備え置かなければならないこととするとともに、その写しを、定時評議員会の日の1週間前の日から3年間、その従たる事務所に備え置かなければならないこととする。これらの書類については、電磁的記録で作成することも可能としたうえで、債権者等による閲覧・謄写請求に係る規定についても整備し、当該請求があったときにはその請求に応じなければならないこととする。
○ 学校法人は、毎会計年度終了後3月以内に(学校法人が成立した日の属する会計年度にあっては、当該成立した日以後遅滞なく)、文部科学省令で定めるところにより、<1>財産目録、<2>役員及び評議員の氏名及び住所を記載した名簿、<3>役員に対する報酬等の支給の基準を記載した書類(<1>~<3>を「財産目録等」という。以下同じ。)を作成し、当該書類を5年間その主たる事務所に備え置くとともに、その写しを、当該会計年度に係る定時評議員会の日から3年間その従たる事務所に備え置かなければならないこととする。これらの書類については、電磁的記録で作成することも可能としたうえで、利害関係人による閲覧・謄写請求に係る規定についても整備し、当該請求があったときにはその請求に応じなければならないこととする。

7.大臣所轄学校法人等の特例規定について
○ 都道府県知事が所轄庁である学校法人でその事業の規模又は事業を行う区域が一定の基準に該当するもの及び文部科学大臣が所轄庁である学校法人(以下「大臣所轄学校法人等」という。)に対し、会計監査人の設置を義務付ける。
○ 大臣所轄学校法人等のうち、その事業の規模又は事業を行う区域が一定の基準に該当するものについては、常勤の監事を定めることを義務付ける。
○ 大臣所轄学校法人等の理事のうちには、外部理事が2人以上含まれなければならないこととする。
○ 大臣所轄学校法人等に対し、内部統制システムの整備を義務付けるほか、寄附行為の変更や任意解散及び合併の決定は、理事会の決議に加え、評議員会の決議も要することとする等の規定を設けることとする。
 
8.罰則等について
 次のいずれかに該当する場合においては、その違反行為をした学校法人の役員、評議員、会計監査人若しくはその職務を行うべき社員、清算人、仮処分命令により選任された役員、評議員若しくは清算人の職務を代行する者、役員、評議員若しくは会計監査人の職務を一時行うべき者として選任された者は、20万円以下の過料に処することとする。
<1> 理事会及び評議員会の議事録、会計帳簿若しくはこれに関する資料、計算書類等、監査報告及び財産目録等に記載し、若しくは記録すべき事項を記載せず、若しくは記録せず、又は虚偽の記載若しくは記録をしたとき。(*現行の私学法第66条第4号及び第6号から、対象となる書類を拡充)
<2> 寄附行為、理事会及び評議員会の議事録、計算書類等及び監査報告、財産目録等について、書類又は電磁的記録を備え置かなかったとき。(*現行の私学法第66条第2号から、対象となる書類を拡充)
<3> 寄附行為、理事会及び評議員会の議事録、会計帳簿若しくはこれに関する資料、計算書類等、監査報告及び財産目録等に係る閲覧・謄写請求に係る規定に違反して、正当な理由がないのに、書面若しくはその写し若しくは電磁的記録に記録された事項を文部科学省令で定める方法により表示したものの閲覧又は書面の謄本若しくは抄本の交付若しくは電磁的記録に記録された事項を電磁的方法により提供すること若しくは当該事項を記載した書面の交付を拒んだとき。(*現行の私学法第66条第3号及び第7号から、対象となる書類を拡充)
<4> 監事の選任を評議員会の目的としないとき又は選任の議案を提出しないとき。
<5> 監事又は会計監査人による調査を妨げたとき。
<6> 評議員の請求した事項を会議の目的としないとき。

2 直接的な費用の把握

(3) 「遵守費用」は金銭価値化(少なくとも定量化は必須)

[遵守費用]
 今般の私学法の改正による規制の新設及び拡充に伴い、学校法人において、次に掲げるような遵守費用が発生するものと考えられる。
 
・寄附行為の変更に係る所轄庁の認可を受けるために必要となる申請手続に係る費用
 各学校法人においては、寄附行為の役員、評議員及び会計監査人の定数、選任及び解任の方法や、会計に係る規定を変更し、所轄庁(文部科学大臣又は都道府県知事)の認可を受ける必要があるところ、その準備のための事務作業に係る人件費等の費用が発生することが考えられるが、その準備のために必要な時間・体制はそれぞれの学校法人の規模及び設置する学校種等によって大きく異なることから、当該費用を定量化又は金銭価値化した上で推計することは困難である。
 
・学校法人が新たな役員及び評議員を選任するために必要となる費用
 役員及び評議員の資格及び任期等に係る私学法の規定が改正されることから、学校法人においては、新たにそれらの職務に当たる者を選任することに伴い、それらの職務に当たる者に支払う報酬及び選任等に係る事務作業の人件費等の費用が発生することが考えられる。
 各学校法人によって新たに選任する必要のある者の人数が異なるところであり、かつ、その人数を定量的に推計することが困難であることから、当該費用を定量化又は金銭価値化した上で推計することは困難である。
 
・会計監査人を選任するために必要となる費用
 大臣所轄学校法人等においては、会計監査人を設置する義務が発生することから、会計監査人に支払う報酬及び選任等に係る事務作業の人件費等の費用が発生することが考えられる。
 私立学校振興助成法に基づく私学助成を受ける学校法人は、既に現行の同法第14条第3項の規定によって公認会計士又は監査法人による監査を受けることが義務付けられており、大臣所轄学校法人のほとんどが、実際に同項の規定により監査を受けているところである(※1)。私立学校振興助成法に基づく監査を、私学法に規定する会計監査人による監査とすることで、直ちに会計監査の報酬単価や時間数(※2)が変動し、学校法人において要する遵守費用が大幅に増額することは想定できない。
※1 令和2年度において大臣所轄学校法人は669法人(文部科学省調べ)であるところ、日本公認会計士協会「監査実施状況調査(2020年度)」によると、同年度に私立学校振興助成法に基づく監査を受けた大臣所轄学校法人は644法人である。
※2 「監査実施状況調査(2020年度)」によると、学校法人における監査報酬の時間当たりの平均単価は13,223円、1監査対象当たり時間の平均は141.0時間となっている。
 
[行政費用]
 今般の私学法の改正による規制の新設及び拡充に伴い、所轄庁において、次に掲げるような行政費用が発生するものと考えられる。
 
・寄附行為の認可のための基準の改正に要する費用
 文部科学省においては、今般の法改正後に私立学校法施行令及び私立学校法施行規則をはじめとする政省令や、寄附行為審査基準告示及び寄附行為作成例の改正を行う必要があり、その改正作業に係る人件費等の費用が生じる見込みである。
 また、都道府県私立学校主管部局においても、法改正後に文部科学省が示す寄附行為審査基準告示や寄附行為作成例を参酌しつつ、各都道府県における寄附行為の認可のための基準の見直しを図る必要があり、その準備のための事務作業に係る人件費等の費用が生じることが考えられる。
所轄庁が寄附行為の認可のための基準の改正に要する時間は、現在各所轄庁で定めている認可のための基準の内容等に影響を受けるものと考えられることから、当該費用を定量化又は金銭価値化した上で推計することは困難である。
 
・寄附行為の認可のための審査に要する費用
 各学校法人においては、寄附行為の規定を変更し、所轄庁の認可を受ける必要があるところ、寄附行為の変更の認可の申請を受ける所轄庁において、認可のための審査の事務に要する人件費等の費用が発生することが考えられる。
所轄庁が認可のための審査に要する時間は、当該所轄庁が所管する学校法人の数及びそれらの学校法人において要する寄附行為の変更の程度等に影響を受けるものと考えられることから、当該費用を定量化又は金銭価値化した上で推計することは困難であるものの、仮に1つの学校法人(大臣所轄学校法人)の寄附行為の変更認可のための審査の事務に、担当者1名で6時間を要するものと仮定すると、大臣所轄学校法人の寄附行為の変更の認可に係る行政費用は次のようになる。
 1,765円(担当者の時給)×6時間(認可のための審査に要する時間)×1人=10,590円
 10,590円×670法人(令和3年時点での大臣所轄学校法人の数)=7,095,300円
※「国家公務員モデル給与例」(給与勧告の仕組みと本年の勧告のポイント 令和4年8月人事院)における35歳係長級の給与例を基に算出した担当者の時給
 1,765円=273,600円(月額給与)÷20(平均的な1か月の労働日数)÷7時間45分(1日あたりの労働時間)

(4) 規制緩和の場合、モニタリングの必要性など、「行政費用」の増加の可能性に留意

 (規制の拡充のため該当せず)

3 直接的な効果(便益)の把握

(5) 効果の項目の把握と主要な項目の定量化は可能な限り必要

 今回の私学法の改正では、これまで各学校法人の寄附行為にその多くを委ねていた理事・監事・評議員・会計監査人の選解任の手続等に係る規定を整備するとともに、理事会及び評議員会の権限を整理し、その招集方法や議事録の作成・備置き等の運営等に関する規定を明確に定めることとしている。また、これまで私学法に定めのなかった「会計」に関する規定を整備することとし、計算書類等の作成・備置きやその監査等について新たに定めることとしている。
これらにより、学校法人に置かれる各機関の「建設的な協働と相互けん制」が確立され、法人運営の適正性及び透明性が一層確保されることとなる。
 そして、ガバナンスが強化される結果として、不適切な法人運営が行われる蓋然性が相当程度低減するとともに、不適切な運営が行われた場合であっても学校法人自らがそれを是正していくことが容易となり、学校法人において、その特性である自主性及び公共性を向上させ、社会の信頼を得て一層発展していくことが可能となる。
さらには、私立学校における教育活動及び研究活動の質の向上等、私立学校の更なる発展に資することとなると考えられる。 
 

(6) 可能であれば便益(金銭価値化)を把握

 -

(7) 規制緩和の場合は、それにより削減される遵守費用額を便益として推計

 (規制の拡充のため該当せず)

4 副次的な影響及び波及的な影響の把握

(8) 当該規制による負の影響も含めた「副次的な影響及び波及的な影響」を把握することが必要

 今般の私学法の改正による副次的な影響及び波及的な影響は想定されない。

5 費用と効果(便益)の関係

(9) 明らかとなった費用と効果(便益)の関係を分析し、効果(便益)が費用を正当化できるか検証

 「2 直接的な費用の把握」の<3>において示したとおり、学校法人においては、寄附行為変更のための所轄庁の認可の申請手続に係る費用や、新たな役員及び評議員等の選任に係る費用が生じるほか、所轄庁においては、寄附行為の認可のための基準の改正や寄附行為認可のための審査に係る費用が生じることが想定されるが、これらの措置は学校法人の運営の適正性及び透明性の確保のために必要な措置であり、このことにより学校法人がその自主性及び公共性を一層向上させ、ひいては私立学校及び我が国の教育の一層の発展に資することとなるもので、便益が費用を上回ることが考えられることから、当該規制を導入することが妥当である。

6 代替案との比較

(10) 代替案は規制のオプション比較であり、各規制案を費用・効果(便益)の観点から比較考量し、採用案の妥当性を説明

 代替案として、規制の対象範囲を狭め、例えば大学・短大・高等専門学校等を設置し、広域的にその事業を展開している大臣所轄学校法人等のみを対象とした法改正を行うことも考えられるが、一部の理事や理事長による逸脱した業務執行等の不適切な法人運営を未然に防ぎ、必要に応じて自ら是正を行う必要性は、所轄庁の違いによって異なるものではない。また、学校法人の有する公共性も、所轄庁の如何に関わらず同様であるところ、その運営の透明性を高め、説明責任を果たしていくため、学校法人全体に対し、理事・監事・評議員の資格及び選解任に係る規定を置くとともに、理事会及び評議員会の運営等に関する規定を整備する規制案を採用することが適当と判断した。
 また、会計及び計算書類等に関する規定の整備については、現行のとおり私立学校振興助成法に基づいて定められる学校法人会計基準に規定の大部分を置いたうえで、学校法人会計基準の改正によって学校法人の財務会計の透明性を同程度に高めることとすることも、代替案として想定されるところである。この場合には、改正後の規制は私立学校振興助成法に基づく私学助成を受けている学校法人のみに適用されることとなるが、会計及び計算書類等に関する規定の整備による法人運営の透明性の向上は、一部の学校法人にのみ求められるものではない。このため、学校法人全体として財務会計の透明性の向上を図る規制案を採用することが適当と判断した。
 
<「デジタル時代の規制・制度について」における見直しの基準を踏まえた検討>
 なお、大臣所轄学校法人等において設置が義務付けられる会計監査人は、公認会計士又は監査法人でなければならないこととしているため、本規制は「デジタル時代の規制・制度について」(令和2年6月22日規制改革推進会議)5.(3)<4>「特定の資格保有者による業務独占の見直し」の基準に該当することとなる。
(参考:「デジタル時代の規制・制度について」(令和2年6月22日規制改革会議)
 5.規制・制度の類型化と具体的な見直しの基準
 (3) 業規制の見直し
  <4>特定の資格保有者による業務独占の見直し
 デジタル技術の発展により、ネットやリモート技術を活用した事業展開が容易になってきている。特定の資格保有者しか業務ができない規制・制度についても、業務の一部をデジタル技術によって支援・補完・代替することによって、柔軟かつ消費者利便に合致した新たなサービスの提供が可能となる。業務の一部をデジタル技術によって行うことを業務独占の範囲から除外するなど、業務独占を定める規制のあり方を見直すべきである。
 
 したがって、代替案としては、業務の一部をデジタル技術等によって行うこと等が想定されるが、学校法人における会計監査人の職務は、高度な専門的能力と独立性が求められるものであり、これらを備えた職業会計専門家が担うことが必要と考えられるため、職業会計専門家が担うことを定めた規制案を採用することが適当と判断した。

7 その他の関連事項

(11) 評価の活用状況等の明記

 (該当なし)

8 事後評価の実施時期等

(12) 事後評価の実施時期の明記

 私学法の改正附則において、この法律の施行後5年を目途として、施行状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする旨が規定されているため、当該規定に基づき、施行から5年後(令和12年)を目途に事後評価を実施する。

(13) 事後評価の際、費用、効果(便益)及び間接的な影響を把握するための指標等をあらかじめ明確にする。

 各学校法人における理事会及び評議員会の開催回数や、業務執行を担う理事の理事会への業務執行の状況報告の回数、所轄庁による措置命令の件数等の学校法人の運営状況に係る指標を事後評価の指標として設定することが考えられる。

以上
 

学校法人の理事、監事、評議員及び会計監査人の選任及び解任の手続等に関する規定等の整備(要旨)

 法律又は政令の名称

 私立学校法の一部を改正する法律案

 規制の名称

 学校法人の理事、監事、評議員及び会計監査人の選任及び解任の手続等に関する規定等の整備

 規制の区分

 新設、改正(拡充)

 担当部局

 高等教育局私学部私学行政課

 評価実施時期

 令和5年2月

 規制の目的、内容及び必要性

[規制の目的及び必要性]
 我が国の公教育を支える私立学校を設置する学校法人において、一部の理事や理事長による逸脱した業務執行等の不適切な法人運営を未然に防ぎ、社会の信頼を得て、一層発展していくため、学校法人の管理運営制度の抜本的な改善を図る必要がある。
 
[規制の内容]
 「執行と監視・監督の役割の明確化・分離」の考え方から、理事・理事会、監事及び評議員・評議員会の権限分配を整理。私立学校の特性に応じた形での各機関の「建設的な協働と相互けん制」の確立を目指す。
 具体的には、これまで各学校法人の寄附行為にその多くを委ねていた理事・監事・評議員・会計監査人の選解任の手続等に係る規定を整備するとともに、理事会及び評議員会の権限を整理し、その招集方法や議事録の作成・備置き等の運営等に関する規定を明確に定めることとするほか、これまで私学法に定めのなかった「会計」に関する規定を整備し、計算書類等の作成・備置きやその監査等について新たに定めることとする。

 直接的な費用

 遵守費用

・寄附行為の変更に係る所轄庁の認可を受けるために必要となる申請手続に係る費用
・学校法人が新たな役員及び評議員を選任するために必要となる費用
・会計監査人を選任するために必要となる費用

 行政費用

・寄附行為の認可のための基準の改正に要する費用
・寄附行為の認可のための審査に要する費用

 直接的な効果(便益)

・学校法人に置かれる各機関の「建設的な協働と相互けん制」が確立され、法人運営の適正性及び透明性が一層確保される。
・不適切な法人運営が行われる蓋然性が相当程度低減するとともに、不適切な運営が行われた場合であっても学校法人自らそれを是正していくことが容易となり、学校法人において、その特性である自主性及び公共性を向上させることができる。
 
⇒私立学校における教育活動及び研究活動の質の向上等、私立学校の更なる発展に資することとなると考えられる。

 副次的な影響及び波及的な影響

 今般の改正による規制の拡充による副次的な影響及び波及的な影響は想定されない。

 費用と効果(便益)の関係

 学校法人においては、寄附行為変更のための所轄庁の認可の申請手続に係る費用や、新たな役員及び評議員等の選任に係る費用が生じるほか、所轄庁においては、寄附行為の認可のための基準の改正や寄附行為認可のための審査に係る費用が生じることが想定されるが、これらの措置は学校法人の運営の適正性及び透明性の確保のために必要な措置であり、このことにより学校法人がその自主性及び公共性を一層向上させ、ひいては私立学校及び我が国の教育の一層の発展に資することとなるもので、便益が費用を上回ることが考えられることから、当該規制を導入することが妥当である。

 代替案との比較

 代替案として、規制の対象範囲を大臣所轄学校法人のみに狭めた法改正を行うことも考えられるが、不適切な法人運営を未然に防ぎ、必要に応じて自ら是正を行う必要性は、所轄庁の違いによって異なるものではなく、学校法人の有する公共性も、所轄庁の如何に関わらず同様であるため、学校法人全体に対して規定を整備する規制案を採用することが適当と判断した。
 また、会計及び計算書類等に関する規定の整備については、私立学校振興助成法に基づいて定められる学校法人会計基準の改正によって行うことも、代替案として想定されるが、この場合は私学助成を受けている学校法人のみが対象となることとなる。法人運営の透明性の向上は、一部の学校法人にのみ求められるものではないことから、学校法人全体に対して規定を整備する規制案を採用することが適当と判断した。

 その他の関連事項

 該当なし。

 事後評価の実施時期等

 私学法の改正附則において、この法律の施行後5年を目途として、施行状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする旨が規定されているため、当該規定に基づき、施行から5年後(令和12年)を目途に事後評価を実施する。

 

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(高等教育局私学部私学行政課)