国際卓越研究大学の認定、国際卓越研究大学研究等体制強化計画の認可等

 

 法律又は政令の名称

 国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化に関する法律案

 規制の名称

 国際卓越研究大学の認定、国際卓越研究大学研究等体制強化計画の認可等

 規制の区分

 新設

 担当部局

 研究振興局大学研究基盤整備課大学研究力強化室

 評価実施時期

 令和4年2月

 

1 規制の目的、内容及び必要性 

(1) 規制を実施しない場合の将来予測(ベースライン)

 近年、英米や中国の大学が豊富な資金を背景に国際競争力を高めているのに対して、我が国の大学は大学ランキングや研究論文数等の面でも長く低迷が続いており、その要因としては、大学運営に係る資金の規模や、寄附や資産運用などの多様な財源からの豊富な資金が土台となっているなどの財政構造の違いがあることが挙げられている。英米のトップ大学には、1大学の有する基金が数兆円にのぼり、その運用益が 1,000 億円以上となる大学がある中、我が国の大学は基金自体が数百億円の規模となっている。この資金の規模や資産運用の管理体制の弱さに関する問題に対処するため、令和3年の通常国会において成立した国立研究開発法人科学技術振興機構法の一部を改正する法律等により、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)に 10 兆円規模の「大学ファンド(※)」を設けたところである。
 このような英米等の大学との財政規模の差がある状況の中で、「大学ファンド」からの支援を希望する大学数は少なくないと考えられる。しかしながら、「大学ファンド」の運用益(3,000億円を想定)の規模を考慮すれば、本法案による制度(後述1(2))の新設を行い、支援対象を限定しない場合には、英米のトップ大学に比肩する「大学ファンド」による重点支援を行うことができなくなり、結果として、世界と伍する研究大学が形成されず、我が国の大学は大学ランキングや研究論文数等の面でも長く低迷が続いている現在の状況がさらに悪化することが想定される。
※令和2年度第3次補正予算で0.5兆円、令和3年度補正予算で0.6兆円の政府出資金が措置されるとともに、令和3年度財政投融資計画で4.0兆円、令和4年度財政投融資計画で4.9兆円を計上し、10兆円規模としている。

(参考:政策関連文書)
■緊急提言~未来を切り拓く「新しい資本主義」とその起動に向けて~(令和3年11月8日新しい資本主義実現会議)(抄)
Ⅱ.成長戦略
1.科学技術立国の推進
(1)科学技術立国の推進に向けた科学技術・イノベーションへの投資の強化
① 10兆円規模の大学ファンド・大学改革
 世界最高水準の研究大学を形成するため、10兆円規模の大学ファンドを本年度内に実現し、運用を開始する。また、世界と伍する研究大学に求められる、ガバナンス改革や外部資金確保の強化などの大学改革の実現に向けて、新たな大学制度を構築するための関連法案の次期通常国会への提出を目指す。
 
■「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」(令和3年11月19日閣議決定)(抄)
Ⅲ.未来社会を切り拓く「新しい資本主義」の起動 
1.成長戦略 
(1)科学技術立国の実現
①  科学技術・イノベーションへの投資の強化
世界最高水準の研究大学を形成するため、10 兆円規模の大学ファンドを本年度内に実現する。本年度末目途に運用を開始し、世界に比肩するレベルの研究開発を行う大学の博士課程学生、若手人材育成等の研究基盤への大胆な投資を行う。……また、世界と伍する研究大学に求められる、ガバナンス改革など大学改革の実現に向けて、新たな大学制度を構築するための関連法案の次期通常国会への提出を目指す。本ファンドの支援に当たっては、参画大学における自己収入の確実な増加とファンドへの資金拠出を慫慂する仕組みとし、世界トップ大学並みの事業成長を図る。将来的には、政府出資などの資金から移行を図り、参画大学が自らの資金で大学固有基金の運用を行うことを目指す。あわせて、科学技術分野において世界と戦える優秀な若手研究者の人材育成や質の高い国際共著論文の産出等を促進する。それらにより、世界最高水準の研究環境の構築や高等教育の質の向上を図る。

(2) 課題、課題発生の原因、課題解決手段の検討(新設にあっては、非規制手段との比較により規制手段を選択することの妥当性)

[課題及びその発生原因]
 1(1)に記載のとおり、課題は、我が国のトップレベルの研究大学の研究の国際競争力が低下する一方で、世界トップレベルの研究大学の研究の国際競争力が向上していることであり、その原因として、研究資金の規模に差があることが挙げられる。
 
[規制以外の政策手段の内容]
 上記の課題を解決するためには、10兆円規模の「大学ファンド」の運用益による支援を、数を絞って重点的に行う必要があるが、支援を受ける地位を限定して運用することについては、法律に基づかない枠組みによる実施では事実上非常に困難が伴うほか、この地位の制限を公平かつ透明な仕組みの下で実施するためには、法律による制限に勝る代替手段は存在しない。
 
[規制の内容]
1.(国際卓越研究大学の認定)
 大学の設置者は、当該大学が国際的に卓越した研究の展開及び経済社会に変化をもたらす研究成果の活用が相当程度見込まれるものであることの文部科学大臣の認定を受けることができることとしている。なお、認定に際しては、大学の設置者に、申請書に認定要件に該当することを証する書類等を添えて文部科学大臣に提出することを求める。また、国際卓越研究大学の認定要件に該当しなくなったと認めるときは、文部科学大臣が認定を取り消すことができることとしている。
2.(国際卓越研究大学研究等体制強化計画の認可)
 国際卓越研究大学の設置者は、国際卓越研究大学研究等体制強化計画を作成し、文部科学大臣の認可を受けることができることとしている(認可された計画(以下「認可計画」という。)を変更しようとする場合も同様)。なお、国際卓越研究大学の設置者に対しては、当該認可計画に従った事業の実施を求めることとしている。また、認可計画が認可基準を満たさなくなった場合等には、文部科学大臣が認可を取り消すことができることとしている。
3.(定期報告)
 国際卓越研究大学研究等体制強化計画の認可を受けた国際卓越研究大学の設置者は、定期的に、当該認可計画の実施状況について、文部科学大臣に報告しなければならないこととしている。
4.(報告又は資料の提出)
 文部科学大臣は、必要があると認めるときは、認可を受けた国際卓越研究大学の設置者に対し、当該認可計画の実施状況に関し報告又は資料の提出を求めることができることとしている。

2 直接的な費用の把握

(3) 「遵守費用」は金銭価値化(少なくとも定量化は必須)

 本規制により、国際卓越研究大学の認定、国際卓越研究大学研究等体制強化計画の認可及び認可計画の実施状況を把握するための定期報告等が行われ、当該規制によって生ずる遵守費用・行政費用としては以下のものが考えられる。しかしながら、それらはいずれも、法律によらずに「大学ファンド」からの助成対象を選定する場合でも必要となるものであり、かつ両方を比べた場合の費用の差も軽微なものと考えられることから、規制の新設に伴う追加的な費用に当たるとは考えられない。
 【遵守費用】
 〇国際卓越研究大学の認定、国際卓越研究大学研究等体制強化計画の認可、定期報告等に係る申請書等の作成に係る人件費や時間費用の事務負担が生じる。
 【行政費用】
 〇国において、上記の申請等を受け付けた上で、申請内容等の精査や審議会等の審議・運営に係る人件費や時間費用の負担が生じる。

(4) 規制緩和の場合、モニタリングの必要性など、「行政費用」の増加の可能性に留意

 (規制の新設のため該当せず)

3 直接的な効果(便益)の把握

(5) 効果の項目の把握と主要な項目の定量化は可能な限り必要

 我が国の大学の国際競争力を高め、イノベーションの創出を促進するため、国際的に卓越した研究活動や社会経済にインパクトを与える研究成果活用の面で極めて高いポテンシャルを有する大学に注目し、当該大学の国際的な存在感を一段と高めるための総合的な支援を実施することにより、優れた人材の獲得や投資・支援の増加などの研究及び研究成果活用事業の集積・成長を図る好循環が構築される。これにより、国際卓越研究大学において、一般の大学ではなしえないような、世界トップクラスの研究者・学生が糾合する研究領域の創出・育成などによる革新的な研究成果が生み出されるとともに、それを活用することでイノベーションを創出することが期待され、その効果は社会全体に対して裨益するものである。
 また、重点支援を行うための対象大学の絞り込みについては、法律により明確に要件を規定することで、関係者における応募・審査の準備活動等に要する費用、行政側におけるそのような活動等に対応する費用を軽減することになると考える。

(6) 可能であれば便益(金銭価値化)を把握

 ―

(7) 規制緩和の場合は、それにより削減される遵守費用額を便益として推計

 (規制の新設のため該当せず)

4 副次的な影響及び波及的な影響の把握

(8) 当該規制による負の影響も含めた「副次的な影響及び波及的な影響」を把握することが必要

 当該規制による副次的な影響及び波及的な影響は想定されない。

5 費用と効果(便益)の関係

(9) 明らかとなった費用と効果(便益)の関係を分析し、効果(便益)が費用を正当化できるか検証

 2(3)に記載の費用は規制の新設に伴う追加的な費用には当たらない。また、3(5)に記載のとおり、イノベーションの創出による効果が社会全体に対して裨益することで得られる効果(便益)は計り知れないと考えられることなどから、本規制を導入することは妥当である。

6 代替案との比較

(10) 代替案は規制のオプション比較であり、各規制案を費用・効果(便益)の観点から比較考量し、採用案の妥当性を説明

 大学の認定を行わず、事業計画の審査・認可だけによることも考えられる。しかしながら、世界と伍する研究大学となるための体制強化についての事業計画の実現性を審査・認可する上では、必ず、その計画の実施者である大学の体制全体を含めて計画の前提を審査せざるを得ないため、事業計画の審査・認可だけによることにしたとしても、手続きの費用を減じることにはならず、かつ、3(5)の後段に記載のとおり、無用な応募・審査等を減らす効果を持たないことから、かえって非効率になると考えられる。

7 その他の関連事項

(11) 評価の活用状況等の明記

 (該当なし)

8 事後評価の実施時期等

(12) 事後評価の実施時期の明記

 本規制には見直し条項が設けられていないことから、規制改革実施計画(平成26年6月24日閣議決定)を踏まえ、本規制に係る規定の施行の日から5年を目途に事後評価を実施することとする。

(13) 事後評価の際、費用、効果(便益)及び間接的な影響を把握するための指標等をあらかじめ明確にする。

 国際卓越研究大学への支援が開始されると、国際卓越研究大学の体制強化や事業成長の進捗状況について、随時、モニタリングを実施することになる。その際、高い自律性と厳しい結果責任を求めるべく、コミットメント(例えば、「研究力」や「事業成長」に係る定量的なアウトカム指標の目標値など)の達成状況(結果)を客観的指標に基づいて確認することを想定していることから、これらを事後評価の指標として設定することが考えられる。

以上
 

国際卓越研究大学の認定、国際卓越研究大学研究等体制強化計画の認可等(要旨)

 

 法律又は政令の名称

 国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化に関する法律案

 規制の名称

 国際卓越研究大学の認定、国際卓越研究大学研究等体制強化計画の認可等

 規制の区分

 新設

 担当部局

 研究振興局大学研究基盤整備課大学研究力強化室

 評価実施時期

 令和4年2月

 規制の目的、内容及び必要性

[規制の目的、必要性]
 我が国のトップレベルの研究大学の研究の国際競争力が低下する一方で、世界トップレベルの研究大学の研究の国際競争力が向上しているという課題があり、その原因として、研究資金の規模に差があることが挙げられる。
 上記の課題に対処するため、令和3年の通常国会において成立した国立研究開発法人科学技術振興機構法の一部を改正する法律等により、国立研究開発法人科学技術振興機構に10兆円規模の「大学ファンド」を設けたところであるが、この「大学ファンド」の運用益による支援は、数を絞って重点的に行う必要がある。支援を受ける地位を限定して運用することについては、法律に基づかない枠組みによる実施では事実上非常に困難が伴うほか、この地位の制限を公平かつ透明な仕組みの下で実施するためには、法律による制限に勝る代替手段は存在しない。
※政策関連文書において、「新たな大学制度を構築するための関連法案の次期通常国会への提出を目指す。」こととされている。
 
[規制の内容]
1.(国際卓越研究大学の認定)
 大学の設置者は、当該大学が国際的に卓越した研究の展開及び経済社会に変化をもたらす研究成果の活用が相当程度見込まれるものであることの文部科学大臣の認定を受けることができることとしている。なお、認定に際しては、大学の設置者に、申請書に認定要件に該当することを証する書類等を添えて文部科学大臣に提出することを求める。また、国際卓越研究大学の認定要件に該当しなくなったと認めるときは、文部科学大臣が認定を取り消すことができることとしている。
2.(国際卓越研究大学研究等体制強化計画の認可)
 国際卓越研究大学の設置者は、国際卓越研究大学研究等体制強化計画を作成し、文部科学大臣の認可を受けることができることとしている(認可された計画(以下「認可計画」という。)を変更しようとする場合も同様)。なお、国際卓越研究大学の設置者に対しては、当該認可計画に従った事業の実施を求めることとしている。また、認可計画が認可基準を満たさなくなった場合等には、文部科学大臣が認可を取り消すことができることとしている。
3.(定期報告)
 国際卓越研究大学研究等体制強化計画の認可を受けた国際卓越研究大学の設置者は、定期的に、当該認可計画の実施状況について、文部科学大臣に報告しなければならないこととしている。
4.(報告又は資料の提出)
 文部科学大臣は、必要があると認めるときは、認可を受けた国際卓越研究大学の設置者に対し、当該認可計画の実施状況に関し報告又は資料の提出を求めることができることとしている。

 直接的な費用

 遵守費用

 当該規制によって生ずる費用としては以下のものが考えられるが、それらはいずれも、法律によらずに「大学ファンド」からの助成対象を選定する場合でも必要となるものであり、かつ両方を比べた場合の費用の差も軽微なものと考えられることから、規制の新設に伴う追加的な費用には当たるとは考えられない(行政費用についても同様)。
〇国際卓越研究大学の認定、国際卓越研究大学研究等体制強化計画の認可、定期報告等に係る申請書等の作成に係る人件費や時間費用の事務負担が生じる。

 行政費用

〇国において、上記の申請等を受け付けた上で、申請内容等の精査や審議会等の審議・運営に係る人件費や時間費用の負担が生じる。

 直接的な効果(便益)

 我が国の大学の国際競争力を高め、イノベーションの創出を促進するため、国際的に卓越した研究活動や社会経済にインパクトを与える研究成果活用の面で極めて高いポテンシャルを有する大学に注目し、当該大学の国際的な存在感を一段と高めるための総合的な支援を実施することにより、優れた人材の獲得や投資・支援の増加などの研究及び研究成果活用事業の集積・成長を図る好循環が構築される。これにより、国際卓越研究大学において、一般の大学ではなしえないような、世界トップクラスの研究者・学生が糾合する研究領域の創出・育成などによる革新的な研究成果が生み出されるとともに、それを活用することでイノベーションを創出することが期待され、その効果は社会全体に対して裨益するものである。

 副次的な影響及び波及的な影響

 当該規制による副次的な影響及び波及的な影響は想定されない。

 費用と効果(便益)の関係

 「直接的な費用」は規制の新設に伴う追加的な費用には当たらず、イノベーションの創出による効果が社会全体に対して裨益することで得られる効果(便益)は計り知れないと考えられることなどから、本規制を導入することは妥当である。

 代替案との比較

 大学の認定を行わず、事業計画の審査・認可だけによることも考えられる。しかしながら、世界と伍する大学となるための体制強化についての事業計画の実現性を審査・認可する上では、必ず、その計画の実施者である大学の体制全体を含めて計画の前提を審査せざるを得ないため、手続きの費用を減じることにはならず、かつ、「直接的な効果(便益)」の後段に記載のとおり、無用な応募・審査等を減らす効果を持たないことから、かえって非効率になると考えられる。

 その他の関連事項

 該当なし。

 事後評価の実施時期等

 本規制には見直し条項が設けられていないことから、本規制に係る規定の施行の日から5年を目途に事後評価を実施することとする。

 


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研究振興局大学研究基盤整備課大学研究力強化室

(研究振興局大学研究基盤整備課大学研究力強化室)